背景
- 特発性炎症性筋疾患(IIM)は、様々な症状を呈する自己免疫疾患である
- 自己抗体による分類
- 遺伝因子も知られている
- HLA-DRB1*03 & 抗Jo-1抗体
- HLA-DRB1*11:01 & 抗HMGCR抗体陽性の壊死性筋症
- HLA-DRB1*03:01 & HLA-DRB1*01:01 & IBM
- ウイルスによる免疫寛容の機序も想定されている
- しかしながら、筋繊維からのウイルスの同定はできていない
- HIV or HTLV-1に感染した患者が筋炎を発症(抗レトロウイルス薬によるミトコンドリア毒性の筋症は薬剤を中止すれば改善するため区別できる)することは、ウイルスの関与を支持している
- レトロウイルスの抗原が筋内膜のマクロファージに見つかっているが、筋繊維には見つかっていない
- 各subtypeの特徴
- DMの病理、病態
- A: 筋膜周囲の萎縮
- B: 筋内膜血管の内皮細胞への補体沈着
- C(DM患者)、D(myopathic control):DM患者では、筋内膜毛細血管の密度が減少(特に筋膜周囲)、虚血への代償性変化として内腔が拡大している
- E: immunopathogenesis
- おそらく血管内皮細胞に対する自己抗体によって活性化された活性化C3によってC3b→C3NEO→C5b-9 membrane attack complexes(MACs)を形成し、筋内膜毛細血管の内皮細胞壁に沈着する。
- これによって毛細血管が破壊され、虚血・微小梗塞が生じる。
- この変化は、筋膜周囲の萎縮と同様に、筋膜周囲に顕著である。
- 活性化された補体によってサイトカインが産生され、CD4陽性T細胞、マクロファージ、B細胞、CD123陽性plasmacytoid DCが活性化され、血管内皮細胞におけるVCAMs, ICAM発現が増加する。
- VCAM-1とICAM-1に結合するインテグリンであるVLA-4、LFA-4によって、リンパ球の筋内膜への浸潤が促進する。
- 筋周膜には、リモデリングや再生をしている線維(TGFβ、NAM、Mi-2を発現)、cell stressを受けている線維(HSP70, HSP90を発現)、免疫が活性化されている線維(MHC class1、ケモカイン、STAT1を発現)を含んでいる。
- 筋周膜には、また、自然免疫に関与する分子(MxA, ISG15, RIG1)も発現しており、type1 IFN inducible proteinが筋周膜病変に増加している。局所の線維障害から発生したRIG1シグナルによる自然免疫が、IFNβやMHC class1活性化によって局所の筋周膜の炎症を増強する。
- PM、IBM、壊死性筋症の病理
- A: PM患者。CD8陽性T細胞が、一見正常に見える筋繊維が発現しているMHC class1(通常の筋繊維は発現しておらず、おそらく活性化T細胞から産生されたサイトカインによって発現が誘導される)と複合体を形成し、筋繊維へ浸潤している。CD8-MHC class1 complexの所見が診断に有用であり、壊死性筋症などの除外できる。
- B: IBM患者。CD8-MHC class1 complexを含むPMと同様の特徴をを有している。それに加えて、慢性炎症性変化があるのが特徴。下の図では、正常に見える筋繊維の周囲に、リンパ球が浸潤した炎症性空胞が散財。T細胞の浸潤していない部位に、慢性変化の所見である膠原線維の増加・筋萎縮、自己貪食空胞(arrow)がみられる
- C: PMもIBMも、正常線維周囲にCD8+T細胞(緑色に染色)が浸潤
- D: MHC class1(緑色に染色)も広範囲に発現
- E: 一方で、壊死性筋症では、壊死性変化が著明である。下の図では、マクロファージの浸潤(F、赤色に染色)を伴って、筋繊維の壊死を認める。リンパ球の浸潤は少ない。
- G: PMとIBMにおける、T細胞を介した筋組織の障害のmechanism
- 抗原特異的なCD8陽性T細胞が、筋内膜に浸潤し、直接MHC class1を表面に発現している筋繊維へTCRを介して結合し、CD8-MHC complexを形成する
- 共刺激分子(BB1, ICOSL)とそのリガンド(CD28, CTLA-4, ICOS)が、ICAM-1, LFA-1と協同して、筋繊維におけるCD8-MHC complexを安定化させる
- Th17と制御性T細胞が、T細胞活性化の主要な役割を担っている
- 自己攻撃性のCD8陽性T細胞から産生されたパーフォリン顆粒が、筋繊維の壊死を誘導する
- 浸潤したCD8陽性T細胞は、TCR chainsがクローナルに増殖しており、抗原結合部位の配列が維持されていることから、抗原とT細胞の反応があると示唆される。これは、共刺激分子、接着分子、ケモカイン、サイトカインの発現が増加していることからも支持される。
- IFNγ、IL-1、TNFなどのサイトカインが活性化されたT細胞から産生され、MHC class1の発現とT細胞の細胞障害性を増加させる
- MHC class1の発現増加は、筋繊維におけるグリコプロテインのmisfoldingを引き起こし、endplasmic reticulumのストレスの原因となる
- 活性化したB細胞、plasmacytoid DCが、筋内膜にてクローナルに増殖し、抗原提示もしくはサイトカイン・自己抗体産生を介してこれらのprocessに関与する
- IBMの病態
- 長期間の炎症性変化と変性によって、細胞ストレスを誘導し、βアミロイド precursor protein(amyloid-β42)とmisfolded protein の沈着を認める。これはアルツハイマー病などのneuroinflammatory diseaseと類似している。
- そのため、IBMじゃ、末梢のneuroinflammatory diseaseモデルと考えることもできる
- この疾患を発症する原因はわかっていないが、ウイルス、筋肉の老化、protein misregulation, オートファジーの異常、HLA genotypesが関連していると考えられている
- 治療
- DM, PM, 壊死性筋症
- 治療反応性の評価において、CKを追うだけではいけない。これは、患者自身が良くなっていると感じている時に特にそうである。筋力が改善している時にはCKが低下するが、CK低下のみが改善の所見ではないことを注意する。
- IVIgは、PMと壊死性筋症に有効であるとのopen-label試験がある
- ステロイドとIVIgで改善しない場合には、診断を再検討する必要があり、他の膠原病による筋症なども念頭において再度筋生検を行うべきである
- 生物学的製剤もいくつか報告がある
- IBM
- T細胞による細胞障害性反応とアミロイド関連蛋白によって、炎症性サイトカインが増加しているため、免疫抑制剤が試されてきたが、いずれも失敗に終わっている
- おそらく、発症はずっと前であり、疑われるときには変性が進んでいる為であろう
- ステロイド、AZA, MMF, MTX, CyAは使用開始直後は軽度の改善をもたらすこともあるものの、長期の予後は改善しない
- IVIgも有効性を示せなかったが、一部の患者では嚥下障害に有効だった。
- 嚥下障害、関節拘縮予防、筋萎縮予防には基本的にはリハビリテーションが重要である
0 件のコメント:
コメントを投稿