はじめに
- 自己炎症性疾患
- 内因性 or 外因性の物質によって引き起こされる全身性炎症性疾患であり、自然免疫の異常
- 自己免疫性疾患
- 自己抗原に対する自然免疫と獲得免疫の反応であり、自己反応性T細胞とB細胞が免疫寛容の破綻を引き起こし、慢性の炎症と局所の組織破壊を起こす
- 生物学的製剤の有効性が各疾患によって異なるのが自己炎症性疾患と自己免疫性疾患の病態の違いを示唆している
- RAではTNF中和製剤が有効であるが、sJIAとsAOSDではその有効性が限られておりIL-1β受容体アンタゴニストが有効である
- 遺伝子によるアプローチでも、遺伝子発現profilingとgenotypingが疾患によって異なっている(下図)
Autoinflammation:type1 IFN、IL-1β
- IL-1βとtype1 IFNは全く逆の炎症性メディエーターである
- sJIA患者においてIL-1βを阻害すると、IL-1β signature → type1 IFN signatureへ変化する
- Nlrp3遺伝子を欠損させ未熟なIL-1βとIL-18を産生させているlupus prone miceも、 Nlrp3遺伝子に問題のないコントロールと比較すると、type1 IFNr-responsive遺伝子をより強く発現する
- ヒトSLE患者においても、type1 IFNによって誘導されるMyxovirus resistance1発現量は、NLRP3 mRNA発現量の低下と相関する
DAMPs
- DAMPsは単球、マクロファージでのIL-1β、tyoe1 IFN産生を誘導する
- DAMPsには、ミトコンドリアによって産生されるROS, tricarboxylic acid(TCA) 代謝産物、RNA、酸化ミトコンドリアDNAが含まれることがわかってきている
- なぜミトコンドリアの器官がDAMPsをこんなに多く含んでいるか、ミトコンドリアに関連したDAMPsがIL-1β、tyoe1 IFNを誘導するかはわかっていない
- これらの疑問に応えるために、ミトコンドリアの祖先は原核生物であるという細胞内共生説理論に立ち返ってみる
- proto-ミトコンドリアと細胞内で共生することによって、プロトンポンプや電子キャリアがもたらされ、細胞によるATP合成能力が増加した
- しかしながら、真核生物と原核生物のミトコンドリアのポリペプチド、代謝産物、DNA motifが似ていることから、ミトコンドリアの成分が漏出することでそれらがdanger signalとして免疫反応によって認識されてしまう
- ミトコンドリアのN-formylated peptidesとCpG DNA repeatが外傷患者の血清に認められ、これによってformyl-peptide receptor-1 (FPR1)とTLR9を介して好中球が活性化される
- さらに、細菌感染によって活性化されたNLRP3 inflammasome複合体を制御するメカニズムは、ミトコンドリアの損傷によって活性化された上記であるとわかっている
- また、ミトコンドリアの損傷と免疫活性化に、ある種の抗生物質によるミトコンドリア毒性も関係している
- リネゾリドはミトコンドリア内部のカルジオリピン脂質の暴露を起こし、NLRP3-による炎症性反応が惹起される
<acute inflammatory pathways>
- IL-1βとtype1 IFN産生の産生はfigure2の通り
- type1 IFNによってpro-IL-1β合成は阻害される
- type1 IFNによる、NLRP3を含むinflammasomeの阻害はSTAT1を介して転写因子のレベルで行われる
- IL-1β依存性に産生亢進されるeicosanoid lipid mediator PGE2は、type1 IFN経路を阻害するのに重要であり、それによってマクロファージの中で細菌が成長するのを防いでいる
nucleic acids
- 微生物とミトコンドリアの核酸は、TLR familyの一つである細胞質RIG-1-like RNA helicase receptors(RLHs)であるRIG-1, MDA5, LGP2と、NLRP3 inflammasomeのリガンドとして作用して、それによってIL-1βとtype1 IFNを産生する
- RLHとNLRP3のシグナルカスケードは類似している(figure3)
- SLEとSjS患者では、TRIM68に対する自己抗体が認められており、これによってRLHカスケードが活性化され、type1 IFNの産生が増加する
- また、SLE患者のPBMCでは、MAVS aggregationが認められる。MAVS aggregationがある患者では抗SS-A抗体陽性率が82%であり、そうでない患者では40%である。そしてMAVS aggregationはRA患者では見られない。そのため、RLH-MAVSシグナル経路がSLEとSjS患者では病態に関わっていると考えられる。
- NLRP3とRLHは、MAVSに対して競合するため、NLRP3産生が多いと、type1 IFNの産生が阻害される
<chronic inflammatory pathway>
TCA metabolites
- 単球・マクロファージがinflammasome活性化を伴 って繰り返し活性化されると、免疫寛容が生じる
- しかし、この免疫寛容はすぐに破綻する
- A2A受容体にアデノシンが結合すると、転写因子であるHIF1αを介してinflammasomeが活性化される(figure4)
- succinateやcitrateの代謝産物など他のシグナル分子もまた、HIF1α反応性遺伝子促進してNLRP3 inflammasomeの慢性的な活性化を引き起こす
- それに応じて、TLR4による刺激の後に、自然免疫細胞はミトコンドリアのoxidative phophorylationを抑制し、ATP合成のため有酸素解糖系を利用する(Warburg effect)
- これらの代謝経路のリモデリングが、TCA cycleと解糖系酵素の活性化によって単球とマクロファージで生じる
- このリモデリングによって、結果的に、citrateとsuccinateが細胞内に蓄積する
- RA患者の滑液の代謝産物を調べた研究では、succinateが有意に多かったため、滑液でも有酸素解糖系が関与している可能性が示唆される
- HIF1α発現は、RAの滑膜組織とマクロファージで増加している
- そして、HIF1αを介してpro-IL-1βの産生が増加するのは、NFκB経路とは独立しており、炎症を増強させることに繋がる
- JAK1/TYK2はtype1 IFNからのシグナルに関与しており、tofacitinibによってtype1 IFN誘導性ケモカインが減少し、滑膜細胞のリン酸化STAT3・リン酸化STAT1が低下することがわかっている
sterol synthesis
- どのように代謝産物の蓄積がinflammasome活性化に関与し、IL-1β過剰産生に繋がるかは、mevalonate kinase deficiency (MKD) にヒントがある
- MKD患者における再発性の発熱は、組織障害とストレスによって引き起こされ、NLRP3活性化が中心的な役割を果たしている
- DAMPsの産生によって、自然免疫細胞において、TLR4を含むPRRを誘導して有酸素解糖系に代謝がスイッチする
- ATP合成経路の変更に加え、TLR4刺激はlipidomeのリモデリングも生じる
- コレステロール合成経路とTCA cycleはacetyl-CoAをacetoacetate-CoAへ代謝する際に一体となり、細胞質へ移行して最終的に肝外細胞においてHMG-CoAを変換される(figure4)
- 自然免疫細胞においてこの経路が活性化されると、HMG-CoAはコレステロールを産生されるために使用され、生理的状況では抗炎症作用を有する
- さらに、type1 IFNは、HMG-CoAによるコレステロール合成経路に影響する
- type1 IFN受容体の活性化によってCh25h遺伝子が活性化し、コレステロールをoxysterol 25- hydroxycholesterol へ変換し、これによってsterol regulatory element-binding protein 1 (SREBP - 1)が阻害され、結果的に pro-IL-1βの産生が低下する(figure4)
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