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2017年12月18日月曜日

EGPAとIgG4の関係


Ann Rheum Dis 2012;71:390–393.

背景
  • EGPAのpathophysiologyはまだあまりわかっていない
    • HLA-DRB4の関連は報告されている
    • アレルギー性疾患の既往が関連していることは、Th2サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-13, IL-25など)とTh2ケモカイン(eotaxixin-3, TARC/CCL17など)がEGPAに関与していることからも、Th2関連疾患であることを強く示唆している
  • EGPAにおける液性免疫の関与についてはわかっていない
    • 活動性のあるEGPAの90%においてIgE高値であるが、IgGとIgGサブクラスについてはわかっていない
    • 喘息ではアレルゲン特異的IgG4が増加しているが総IgG4は増加していないこともあるように、IgGサブクラスがその疾患の病態と関連していることがしばしばある
  • fibrosis, 組織への好酸球・IgG4陽性形質細胞の浸潤、血清IgG4高値を示す疾患はIgG4関連疾患というumbrella termに分類される
    • これらは、Th2Tregが関与している
(N Engl J Med 2012; 366:539-551)

  • 今回は、EGPAにおいてもIgG4が増加していると仮説のもと、EGPAにおける局所・全身におけるIgG4の反応を調べた

方法
  • イタリアとドイツの医療機関から、24例の活動性EGPA患者、22例の安定したEGPA患者、26例の活動性GPA患者、25例のアトピー性喘息、20例の健常人を調べた
  • 全ての患者が1990ACR分類基準(以下) and/or CHCCの定義を満たす

(http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/ANCA/anca.pdf)





  • 24例の活動性EGPA患者のcharacteristicsはtable1


  • GPA患者のcharacteristicsはtableS1

結果
  • 免疫グロブリンに関して(figure1)
    • IgG
      • 活動性EGPA > 健常人、安定したEGPA、喘息患者(p<0.05)
      • 喘息患者 > 健常人(p<0.05)
      • GPA患者も健常人と比較して高い傾向だったが有意差なし
    • IgM, IgA
      • 有意差なし
    • IgE
      • 活動性EGPA > 安定したEGPA, GPA, 健常人(p<0.05)
      • 喘息患者 > 健常人(p<0.05)
    • IgG4
      • 活動性EGPA(273±36 mg/dl) > 安定したEGPA(78±16 mg/dl), GPA(106±24 mg/dl), 喘息(82±17 mg/dl), 健常人(34±7 mg/dl)(p<0.001)
        • 135mg/dLをcut-offとした場合、活動性EGPAのうち75%がIgG増加と判定された
      • GPA、喘息 > 健常人 (p<0.05)
    • IgG1, IgG2, IgG3は群間で有意差なし
    • IgG4/IgG比
      • 活動性EGPA(22%) > 安定したEGPA(9.4%), GPA(8.6%), 喘息(7.5%), 健常人(3.6%)(p<0.001)




  • IgG4値とBVAS, 障害臓器の数の関係(figure2)
    • IgG4が高いほど障害臓器の数が多く、BVASも高い
    • IgG4/IgG比も活動性が低下すると共に低下する


  • IgG4とFive Factor Scoreの関係
    • FFS ≧ 1 の場合は、FFS = 0 の場合よりもIgG4/IgG比が有意に高い(p<0.05)
    • (IgG4値はFFSによって有意差出ず, p=0.053)
  • IgG4とANCAの関係
    • IgG4/IgG比, IgG4値ともにANCA陽性 or 陰性に関係なし
  • IgG4とIgEの関係
    • IgEと相関なし(r=0.23, p=0.270)
  • IgG4 > 135mg/dl のEGPAの症例とそうでないEGPAの症例にて、臨床所見には統計学的な有意差出ず

  • ちなみに、IgEと臓器障害の数、BVAS、FFSは相関なし

  • 生検結果について
    • 活動性EGPA症例における組織中IgG4/IgG陽性形質細胞比
      • 平均:34.1 ± 9.1%
      • 3/9症例にてIgG4/IgG陽性形質細胞 > 30%

    • GPA、慢性副鼻腔炎 with/without eosinophiliaの症例と比較しても、統計学的な有意差は出ず

まとめ
  • RTXが難治性EGPAに有効なことを考慮しても、病態への液性免疫の関与はあると思われる
  • 今回の結果から、EGPAの場合、GPAなどの他の血管炎や喘息などの他のアレルギー性疾患よりも、IgG4産生が増加していることが示された
    • 特に、GPAとEGPAの違いが有意だった
  • そして、IgG4値、IgG4/IgG比が疾患活動性、FFSとも関連していた
  • ANCAに関してはIgG4との関連はなさそう
  • IgG4による臨床所見の違いは、有意差が出なかったが、サンプルサイズが少ないのでなんともいえない
  • 病理所見で、IgG4/IgG陽性形質細胞比が一般的なIgG4関連疾患で用いられるカットオフである30%を超えたのが3/9症例のみだったため、病変局所というよりは全身性にIgG4が反応して増加していると思われる
  • 今回の結果では、IgG4がbiomarkerであることに加えて、なんらかの病態への関与があるかはわからない
    • IgG4は、Fcγ受容体への結合がIgG1より弱く、補体活性化能も低いことより、抗原への中和抗体である可能性もある
N Engl J Med 2012; 366:539-551

    • しかしながら、尋常性天疱瘡では病態としての自己抗体の役割を果たすこともあり、寄生虫感染症では保護的な役割も果たす
N Engl J Med 2012; 366:539-551
Figure 3 (facing page). Pathogenetic Mechanisms in IgG4-Related Disease and Clinical Implications.
Autoimmunity and infectious agents are potential immunologic triggers in IgG4-related disease (Panel A). Interleukins 4, 5, 10, and 13 and transforming growth factor β (TGF-β) are overexpressed through an immune reaction in which type 2 helper T (Th2) cells predominate, followed by activation of regulatory T (Treg) cells (Panel B). These cytokines contribute to the eosinophilia, elevated serum IgG4 and IgE concentrations, and progression of fibrosis that are characteristic of IgG4-related disease. Massive infiltration by inflammatory cells results in organ damage (Panel C). The inflammatory-cell infiltrate leads to tumefactive enlargement of the affected sites and organ dysfunction (Panel D). Epithelial damage may result from tis- sue inflammation and immune-complex deposition. 

    • IgG4産生へシフトするのは、B細胞が成熟する炎症環境と関連しており、Th2サイトカインであるIL-4, IL-5, IL-13はIgG4産生を促進する。しかしながら、抑制的なIL-10、Th1と関連するIL-12もIgG4産生を促進する。
    • RAなど他の炎症性疾患でもIgG4が増加するので、その特異性はまだ曖昧である



札幌医科大学における5例のEGPA, 51例のミクリッツ病の解析



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