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2017年11月23日木曜日

SLEにおいて、low disease activity status(LDAS)を達成することのoutcomeへの影響について


Ugarte-Gil MF, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:2071–2074.  

背景

  • treat-to-target strategy(T2T)が、多くの慢性疾患の患者のoutcomeを改善させることがわかってきた
  • これは、SLEにおいても提唱されてきたが、T2Tを達成した場合に期待されるoutcomeに関してはわかっていなかった
  • 国際的なタスクフォースによれば、remissionは、physician's global assessment(PGA)を含むvalidated indexを使用すべきと提唱された
    • さらに、remissionは、off-therapy(抗マラリア薬のみ)とon-therapy(PSL ≦ 5 mg/day, 維持量の免疫抑制剤 or 生物学的製剤)に分けるべきである
  • 上記のremissionを達成することは難しいため、代替としてlow disease activity status(LDAS)がそれぞれの団体で提唱された。その定義は、以下の通りである。
    • Asian Pacific Lupus Consortium(APLC)
      • SLEDAI-2K ≦ 4
      • 主要臓器の活動性病変なし
      • 疾患活動性を示唆する新しい所見なし
      • PGA ≦ 1
      • PSL ≦ 7.5mg/day and 維持量の免疫抑制剤
    • Lupus Clinical Trials Consortium(LCTC)
      • SLEDAI ≦ 4
      • PGA < 1
      • PSL ≦ 7.5mg/day and 維持量の免疫抑制剤
    • Toronto Cohort 
      • SLEDAI < 3 であり、下記のうち1つのみ有する
        • 皮疹
        • 脱毛
        • 粘膜潰瘍
        • 胸膜炎
        • 心膜炎
        • 発熱
        • 血小板減少
        • 白血球減少
  • しかしながら、これらを目標にSLEの治療を行うことでoutcomeへの影響がどうなるかは検証されていなかったため、remissionとLDASがそれぞれSLEへのoutcome、臓器障害、死亡率にどう影響するのか調べた

方法
  • Grupo Latino Americano De Estudio de Lupus (GLADEL
    • 1997年より、ラテンアメリカ9カ国の34施設で開始された観察コホート
  • 疾患活動性はSLEDAIで評価し、以下に分類
    • remission off-therapy
      • SLEDAI=0
      • PSL、免疫抑制剤使用なし
    • remission on-therapy
      • SLEDAI=0
      • PSL ≦ 5 mg/day ± 維持量の免疫抑制剤
    • LDAS
      • SLEDAI ≦ 4
      • PSL ≦ 7.5 mg/day ± 維持量の免疫抑制剤
    • 適切にコントロールできていない状態
      • SLEDAI > 4 and/or PSL > 7.5 mg/day ± 寛解導入量の免疫抑制剤
  • 抗マラリア薬はどの群でも使用可
  • SLICCは年1回評価
  • outcome
    • 死亡率(原因に関わらず)
    • 新規damage(SDIが1点以上増加)
    • 重度の新規damage(SDIが3点以上増加)

結果
  • 1350症例を解析
  • baseline characteristics(table1)



  • 全体におけるoutcomeの割合
    • 新規damageが出現(SDIが1点以上増加):44.7%
    • 重度の新規damage(SDIが3点以上増加):13.1%
    • 死亡(原因に関わらず):5.8%

  • 1350症例の中のそれぞれの症例における、最終(last)・最良(best)、それぞれのstatusの分布(table2)


  • remissionとLDASがoutcomeに与える影響について(table3、年齢・性別・人種・社会経済status・医療保険・コホートに組み込まれた時期・最初のSDIによって調整した多変量解析=adjusted、hazard ratioで評価)
    • remission
      • 新規damageが出現(SDIが1点以上増加)
        • HR 0.60(95% CI 0.43 to 0.85; p=0.0042)
      • 重度の新規damage(SDIが3点以上増加):13.1%
        • HR 0.32(95% CI 0.15 to 0.68; p=0.0033) 
    • LDAS
      • 新規damageが出現(SDIが1点以上増加)
        • HR 0.66(95% CI 0.48 to 0.93; p=0.0158) 
      • 重度の新規damage、死亡率低下は有意でなかった
    • remission, LDASともに、ステロイドの関係しない新規damage、重度の新規damageに関しては、有意に低下させた

まとめ

  • remission
    • 新規damage(SDIが1点以上増加)、重度の新規damage(SDIが3点以上増加)ともに有意にリスクを低下させた
      • これは既報と同様の結果だった
  • LDAS
    • 新規damage(SDIが1点以上増加)を有意にリスクを低下させた
    • Toronto Cohortでは、LDASを達成した症例を2年間観察すると、remissionを達成した場合と再燃、積算の臓器障害、死亡率、免疫抑制剤必要性に関して同様のprognosisだった
  • 死亡率に関しては、remission, LDASともに有意に低下させることはできなかった
    • 今回のコホートでは、平均フォローアップ期間が2.4年と短く(table1)、それに伴いeventそのものが少なかったのも影響しているだろう

  • remission off-therapyを達成した症例は、the GRADEL cohortにおいては3.7%のみだった
    • 他のコホートにおける既報の結果(全てoff-therapy)
      • Toronto Cohort
        • 5年間以上remissionを維持:1.7%
        • 1年間以上remissionを維持:10.2%
      • Italian Cohort
        • 5年間以上remissionを維持:7.1%
      • Netherland's cohort
        • 5年間以上remissionを維持:12.8%
      • Spaniard cohort
        • 1年間以上remissionを維持:24%
      • PGAを含めた定義を使用しているLupus Clinical Trials Consortium(LCTC)
        • 1年間以上remissionを維持:5.4%
  • remission on-therapyを達成した症例は、the GRADEL cohortにおいては16.8%だった
    • 他のコホートにおける既報の結果(on-therapy)
      • Toronto Cohort
        • 1年間以上remissionを維持:7.6%
  • LDASを達成した症例は、the GRADEL cohortにおいては14.4%だった
    • LCTCでも14.9%で、同等だった
    • しかしながら、Asian Pacific Lupus Consortium(APLC)では88.5%だった
    • APLCの定義を用いると、Netherland's cohortでLDASを達成したのは76.0%
  • remission on-therapyの用量で使用しているステロイドそのものが新規damageに関連していることもわかる
  • limitation
    • 観察期間が短い
    • 今回のコホートでは PGAが評価できていない
      • しかしながら、ベリルマブ試験で使用されたSLE Response indexでは、治療反応性を評価する項目のなかでSLEDAIが最も影響が大きかった

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