Ugarte-Gil MF, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:2071–2074.
背景
- treat-to-target strategy(T2T)が、多くの慢性疾患の患者のoutcomeを改善させることがわかってきた
- これは、SLEにおいても提唱されてきたが、T2Tを達成した場合に期待されるoutcomeに関してはわかっていなかった
- 国際的なタスクフォースによれば、remissionは、physician's global assessment(PGA)を含むvalidated indexを使用すべきと提唱された
- さらに、remissionは、off-therapy(抗マラリア薬のみ)とon-therapy(PSL ≦ 5 mg/day, 維持量の免疫抑制剤 or 生物学的製剤)に分けるべきである
- 上記のremissionを達成することは難しいため、代替としてlow disease activity status(LDAS)がそれぞれの団体で提唱された。その定義は、以下の通りである。
- Asian Pacific Lupus Consortium(APLC)
- SLEDAI-2K ≦ 4
- 主要臓器の活動性病変なし
- 疾患活動性を示唆する新しい所見なし
- PGA ≦ 1
- PSL ≦ 7.5mg/day and 維持量の免疫抑制剤
- Lupus Clinical Trials Consortium(LCTC)
- SLEDAI ≦ 4
- PGA < 1
- PSL ≦ 7.5mg/day and 維持量の免疫抑制剤
- Toronto Cohort
- SLEDAI < 3 であり、下記のうち1つのみ有する
- 皮疹
- 脱毛
- 粘膜潰瘍
- 胸膜炎
- 心膜炎
- 発熱
- 血小板減少
- 白血球減少
- しかしながら、これらを目標にSLEの治療を行うことでoutcomeへの影響がどうなるかは検証されていなかったため、remissionとLDASがそれぞれSLEへのoutcome、臓器障害、死亡率にどう影響するのか調べた
方法
- Grupo Latino Americano De Estudio de Lupus (GLADEL)
- 1997年より、ラテンアメリカ9カ国の34施設で開始された観察コホート
- 疾患活動性はSLEDAIで評価し、以下に分類
- remission off-therapy
- SLEDAI=0
- PSL、免疫抑制剤使用なし
- remission on-therapy
- SLEDAI=0
- PSL ≦ 5 mg/day ± 維持量の免疫抑制剤
- LDAS
- SLEDAI ≦ 4
- PSL ≦ 7.5 mg/day ± 維持量の免疫抑制剤
- 適切にコントロールできていない状態
- SLEDAI > 4 and/or PSL > 7.5 mg/day ± 寛解導入量の免疫抑制剤
- 抗マラリア薬はどの群でも使用可
- SLICCは年1回評価
- outcome
結果
- 1350症例を解析
- baseline characteristics(table1)
- 1350症例の中のそれぞれの症例における、最終(last)・最良(best)、それぞれのstatusの分布(table2)
- remissionとLDASがoutcomeに与える影響について(table3、年齢・性別・人種・社会経済status・医療保険・コホートに組み込まれた時期・最初のSDIによって調整した多変量解析=adjusted、hazard ratioで評価)
- remission
- 新規damageが出現(SDIが1点以上増加)
- HR 0.60(95% CI 0.43 to 0.85; p=0.0042)
- 重度の新規damage(SDIが3点以上増加):13.1%
- HR 0.32(95% CI 0.15 to 0.68; p=0.0033)
- LDAS
- 新規damageが出現(SDIが1点以上増加)
- HR 0.66(95% CI 0.48 to 0.93; p=0.0158)
- 重度の新規damage、死亡率低下は有意でなかった
- remission, LDASともに、ステロイドの関係しない新規damage、重度の新規damageに関しては、有意に低下させた
まとめ
- remission
- LDAS
- 新規damage(SDIが1点以上増加)を有意にリスクを低下させた
- Toronto Cohortでは、LDASを達成した症例を2年間観察すると、remissionを達成した場合と再燃、積算の臓器障害、死亡率、免疫抑制剤必要性に関して同様のprognosisだった
- 死亡率に関しては、remission, LDASともに有意に低下させることはできなかった
- 今回のコホートでは、平均フォローアップ期間が2.4年と短く(table1)、それに伴いeventそのものが少なかったのも影響しているだろう
- remission off-therapyを達成した症例は、the GRADEL cohortにおいては3.7%のみだった
- 他のコホートにおける既報の結果(全てoff-therapy)
- Toronto Cohort
- 5年間以上remissionを維持:1.7%
- 1年間以上remissionを維持:10.2%
- Italian Cohort
- 5年間以上remissionを維持:7.1%
- Netherland's cohort
- 5年間以上remissionを維持:12.8%
- Spaniard cohort
- 1年間以上remissionを維持:24%
- PGAを含めた定義を使用しているLupus Clinical Trials Consortium(LCTC)
- 1年間以上remissionを維持:5.4%
- remission on-therapyを達成した症例は、the GRADEL cohortにおいては16.8%だった
- 他のコホートにおける既報の結果(on-therapy)
- Toronto Cohort
- 1年間以上remissionを維持:7.6%
- LDASを達成した症例は、the GRADEL cohortにおいては14.4%だった
- LCTCでも14.9%で、同等だった
- しかしながら、Asian Pacific Lupus Consortium(APLC)では88.5%だった
- APLCの定義を用いると、Netherland's cohortでLDASを達成したのは76.0%
- remission on-therapyの用量で使用しているステロイドそのものが新規damageに関連していることもわかる
- limitation
- 観察期間が短い
- 今回のコホートでは PGAが評価できていない
- しかしながら、ベリルマブ試験で使用されたSLE Response indexでは、治療反応性を評価する項目のなかでSLEDAIが最も影響が大きかった
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