Stamp LK, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:2065–2070.
Stamp LK, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1522–1528.
- 痛風患者において、血清尿酸値(SU)を下げることは重要であり、国際的なガイドラインでもSU < 6mg/dL(痛風結節がある場合はSU < 5mg/dL)が推奨されており、それによって尿酸結晶の融解、痛風再燃の抑制、痛風結節の消失が期待される
- 複数の尿酸降下薬(ULT:urate-lowering therapies)が痛風に対して開発されてきているが、アロプリノールは低コストであり、頻用されている
- FDAでは最大800mg/dayまで、ヨーロッパでは最大900mg/dayまで、使用を承認されているが、日常診療では300mg/day以上使用することは少ない
- その症例のクレアチニンクリアランス(CrCL)によって決められている使用量(CrCL based doses)以上の用量でアロプリノールを使用することで、有害事象、特にアロプリノール過敏性症候群(AHS:allopurinol hypersensitivity syndrome)のリスクが増加するかに関しては、議論の余地がある
- AHSは、典型的には、使用を開始した最初の8週間に発症し、発症リスク因子はCKD、初期開始用量である。
- CKDとAHSの関連から、アロプリノール最大投与量はCrCL based dosesが推奨されているが、これによって目標SU値を達成できない症例も多い。
- EULAR 2016 recommendation for gout(Ann Rheum Dis 2017;76:29–42.)は、CrCL based dosesでのアロプリノール投与によって血清尿酸値(SU)が下がりきらないようであれば、ULTを変更するように推奨している
- 一方で、ACR 2012 guidelines for gout(Arthritis Care Res 2012;64:1431–46.)は、CKDの場合でも、CrCL based dosesでのアロプリノール投与によってSUが下がりきらないようであれば、CrCL based dosesを超えて漸増するように推奨している
- 今回は、目標SUに向かって、CrCL based dosesを超えてアロプリノールをしていく漸増法(DE:dose escalation)の有効性と安全性を調べるために、以前に報告した、12ヶ月間のrandomized, controlled, parallel-group, comparative 臨床試験(Ann Rheum Dis 2017;76:1522–8.)を、さらに12ヶ月間延長したopen-label extension 試験を行なった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※もとの試験について(Ann Rheum Dis 2017;76:1522–8.)
方法
結果
- randomized, controlled, parallel-group, comparative clinical trial
- ニュージーランドの2施設で実施
- 2012年3月〜2014年3月に、以下のthe American Rheumatism Association 1977 preliminary classification for gout(Arthritis and Rheumatism, Vol. 20, No. 3 (April 1977))を満たし、CrCL based dosesのアロプリノールを1ヶ月間以上使用してもSU ≧ 6mg/dLの症例をrecruit
<the American Rheumatism Association 1977 preliminary classification for gout(Arthritis and Rheumatism, Vol. 20, No. 3 (April 1977))>
- アロプリノールに不耐の既往がある症例、アザチオプリンを使用している症例は除外(CKDは除外せず)
- 以下に割付し、12ヶ月間フォロー
- 同じ用量を継続(control)
- DE:dose escalation
- SU < 6mg/dLとなるまで1ヶ月おきに増量(CrCL < 60 mL/min:50 mg/d 、CrCL ≥60 mL/min:100 mg/d )し、SU < 6mg/dLを達成したら維持
- 抗炎症薬による予防投与 or 治療は臨床医の判断で可
- primary endpoint
- SU低下
- 有害事象
結果
- 183人を解析
- control群:93人
- DE群:90人
- baseline characteristics
- 平均年齢:60.2 才
- 男性:87.4%
- baseline SU:7.15 mg/dL
- 痛風罹患期間:17.2 年
- 腎機能:平均Cr 1.58mg/dL、平均CrCL 60.2 mL/min
- CrCL < 60mL/min:52%
- BMI:35.2 kg/m2
- 痛風発作の間隔:中央値3年(IQR 1-8)
- baseline アロプリノール用量:269 mg/day
- 痛風結節を有する割合:44.2%
- 最終観察時の平均ΔSU
- control群:ー0.34 mg/dL
- DE群:ー1.5 mg/dL
- p<0.001
- mean difference:1.2 mg/dL (95% CI 0.67 to 1.5, p<0.001)
- 12ヶ月時点でのSU < 6mg/dL達成率
- control群:32%
- DE群:69%
- 重度有害事象
- control群:43 events(25症例)
- DE群:35 events(22症例)
- アロプリノール関連有害事象は1例のみ
- 死亡症例はそれぞれ5例だったが、いずれもアロプリノールとは関係なし
- LFT軽度増加が両群ともに最も多い有害事象
- 中等度γGTP増加がわずかな症例で認めた
- 腎機能の推移は両群間で有意差なし
結論
- CrCL based dosedを超える用量でアロプリノールを使用することは、目標SU値まで低下させるのに有効であり、漸増法であれば安全に行えることが示された
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以下、さらに上記試験を12ヶ月延長したextension 試験について
- 上記試験に参加した183人を以下に割付
- control(〜12ヶ月)→DE群(12〜24ヶ月)(control/DE群):93人
- 73/93症例(78.5%):12ヶ月時点まで治療継続
- 68/93症例(73.1%):24ヶ月時点まで治療継続
- DE群(〜12ヶ月)→DE群(12〜24ヶ月)(DE/DE群):90人
- 70/90症例(78.9%):12ヶ月時点まで治療継続
- 69/90症例(76.7%):24ヶ月時点まで治療継続
- baseline-24ヶ月における、平均ΔSU
- control/DE群:ー1.4 mg/dL
- DE/DE群:ー1.7 mg/dL
- p=0.14
- mean difference:ー0.3 mg/dL (95% CI ー0.7 to 0.1, p=0.14)
- 平均SU(baseline→24ヶ月時点)(figure1A)
- control/DE群:7.13 → 5.7 mg/dL
- DE/DE群:7.18 → 5.4 mg/dL
secondary endpoint
- 最終観察時点でのSU < 6mg/dL達成率(figure1B)
- control/DE群:69.1%
- DE/DE群:79.7%
- p=0.16
- 24ヶ月時点での平均アロプリノール用量(figure1D)
- control/DE群:391 mg/dL
- DE/DE群:410 mg/dL
- 痛風再燃率(figure1E)
- baselineと24ヶ月時点を比較すると、両群とも有意に低下
- p<0.001
- 両群間での有意差なし
- 痛風に対する予防薬使用率(figure1F)
- baselineと24ヶ月時点を比較すると、両群とも有意に低下
- p<0.001
- 両群間での有意差なし
- baselineで痛風結節を有していた症例のうち、12-24ヶ月の間に完全に全ての痛風結節が消失した症例の割合
- control/DE群:6/37(16.2%)
- DE/DE群:4/31(12.9%)
- 両群間での有意差なし
- baselineに存在していた痛風結節のうち、24ヶ月時点で消失した個数
- control/DE群:13/45(28.9%)
- DE/DE群:11/38(28.9%)
- 両群間での有意差なし
- 全体における痛風結節の平均サイズの変化(figure1G)
- 13.1 ± 1.0mm(baseline)→ 6.6 ± 1.2 mm(24ヶ月時点)
- p<0.001)
- 両群間での有意差なし(figure1G)
- HAQ, pain-VAS, SJC, TJC
- 有意な変化なし
HAQ
mean (SE) change (Scale 0-3)
|
|||
Baseline to month 12
|
-0.05 (0.07)
|
0.02 (0.08)
|
0.47
|
Baseline to month 24
|
-0.19 (0.60)
|
-0.13 (0.08)
|
0.47
|
Month 12 to
month 24
|
-0.15 (0.07)
|
-0.11 (0.08)
|
0.76
|
Pain
VAS mean (SE) change (scale 0-10)
|
|||
Baseline to month 12
|
0.30 (0.30)
|
-0.04 (0.30)
|
0.42
|
Baseline to month 24
|
-0.66 (0.32)
|
-0.89 (0.31)
|
0.60
|
Month 12 to
month 24
|
-0.83 (0.35)
|
-0.71 (0.29)
|
0.78
|
44 SJC
mean (SE) change
|
|||
Baseline to month 12
|
-0.37 (0.57)
|
-0.43 (0.52)
|
0.93
|
Baseline to month 24
|
-1.87 (0.69)
|
-1.06 (0.48)
|
0.34
|
Month 12 to
month 24
|
-1.56 (0.92)
|
-0.42 (0.32)
|
0.25
|
44 TJC
mean (SE) change
|
|||
Baseline to month 12
|
-1.34 (0.85)
|
-0.37 (0.74)
|
0.39
|
Baseline to month 24
|
-2.02 (0.88)
|
-0.66 (0.77)
|
0.25
|
Month 12 to
month 24
|
-1.0 (0.77)
|
-0.23 (0.89)
|
0.51
|
- 12-24ヶ月で発生した重度有害事象(table1)
- control/DE群:38 events(14症例)
- DE/DE群:33 events(22症例)
- アロプリノール関連の事象はなし
- 死亡症例はそれぞれ4例、3例だったが、いずれもアロプリノールとは関係なし(感染症、心不全、急性冠動脈症候群)
- 12-24ヶ月で発生したnon-laboratory 有害事象(table1)
- control/DE群:279 events(65症例)
- DE/DE群:208 events(62症例)
- laboratory 有害事象(figure2)
- 12-24ヶ月におけるLFT増加は、多くはCTCAE grade1(figure2A-D)
- CTCAE grade2以上のγGTP増加
- control/DE群:1 case
- DE/DE群:3 case
- 12-24ヶ月におけるCr増加は、多くはCTCAE grade1(figure2E)
- 一部の症例ではむしろCrCLが改善した(figure2F)
- 血液系の有害事象は下の表
まとめ
- アロプリノールのDEは安全に行え、痛風を有している症例において有効性も高かった
- 24ヶ月間の観察期間にて、DEした後にその用量を維持することも比較的安全に行なえた
- CrCLが20%以上改善した症例も全体において10-20%いた
- 今回の症例では、AHSを発症した症例はいなかった
- これは、アロプリノールを使用開始した最初の8週間に多く、初期開始用量がリスク因子であるため、ACRが推奨しているように、最初にアロプリノールをCrCL based dosesで開始して問題ない症例には、その後目標SUを達成するために漸増していくことは、比較的安全に行え、かつ有効であることを示唆している
- 痛風発作の再燃率低下は、baseline〜12ヶ月では有意ではなく、baseline〜24ヶ月で有意だった
- この遅発性の効果は、血清SU値が目標に達してから痛風再燃が抑制されることを示している
- これまで、SU値の低下はあくまでもbiomarkerであり、アロプリノールで目標SU値を達成することで、臨床的に重要である痛風発作の抑制に寄与するかはこれまでわかっていなかったが、今回の試験の結果を考慮すると、今後の臨床試験においてもSU値の低下をendpointとすることは、その後の痛風発作の再燃を抑制することを予測することが示唆された
- フェブキソスタットに関しては、the Febuxostat Compared with Allopurinolin Patients with Hyperuricemia and Gout (FACT) study において、治療後のSUが、SU < 6 mg/dLであると、SU ≧ 6 mg/dL群と比較して、その後の痛風発作の再燃率が低いことは報告されていた
- しかしながら、どちらの尿酸降下薬が、痛風発作再燃の抑制の点で優れているかに関しては、まだ検証されていないことに注意が必要である
- limitation
- open-labelによるバイアスを除外できていない
- しかしながら、endpointをSU低下としているので、あまり関係ないだろう
0 件のコメント:
コメントを投稿