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2017年11月4日土曜日

自己免疫疾患と補体について:review


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 2102
2113

The Evolving Landscape for Complement Therapeutics in Rheumatic and Autoimmune Diseases
Joshua M. Thurman, Ashley Frazer-Abel, and V. Michael Holers


背景

  • 補体系は自然免疫系における主要な要素であり、微生物排除や外来抗原の認識、液性免疫や細胞障害性免疫の増幅、アポトーシスした細胞の除去、移植後の肝臓など一部の組織における再生などに関わっている
  • 一方で、自己抗原に対する不適切な補体活性化は、炎症性疾患や自己免疫疾患の発症にも関わっている
    • 実際に、リウマチ膠原病領域でも、補体系を標的にした治療はいくつか成功している
  • このレビューでは、リウマチ膠原病領域における補体の病態としての関与と、治療標的としての補体経路を述べていく



Initiation, amplification, regulation, and effector pathways in the complement system



  • 補体経路は3つ存在する
    • 古典的経路
      • antibody-dependent
        • IgM, IgGが古典的経路を活性化する
          • IgAは第2経路を活性化しうる
          • IgEは補体経路の活性化には関わらない
        • 抗原認識に続き、C1q 3量体, C1r, C1sが活性化し、C4, C2→C4b, C2aへ変化させる
        • C4b, C2aが古典的経路のC3転換酵素として作用する
      • antibody-independent
        • 組織障害によって生じた物質(pentraxin C- reactive protein as well as β-amyloid fibrils, and mitochondrial proteins)によって、直接C1qと作用し、C1r, C1sを活性化する
      • C1qは、アポトーシスした細胞を除去する機能も有している
    • レクチン経路
      • collectinというmannose-binding lectin (MBL), ficolins 1–3をなどを含むファミリーの1つを認識し、外来抗原を除去する
      • cytokeratin 1 やagalactosyl carbohydratesを含んでいるIgM/IgGなどを認識して組織障害にも関与している
      • MBL -associated serine protease 1 (MASP-1), MASP-2, MASP-3, C4・C2・C3を活性化させて、古典的経路と同様に、C3とC5転換酵素を産生する
    • 第2経路
      • C3が血小板表面、biomaterial、microparticleなどに結合することで、factorを結合し反応していく

  • 補体の受容体
    • CD35
      • 赤血球、B細胞、好中球、マクロファージなどで発現
      • 赤血球ではC3b and/or C4bを含む免疫複合体と結合したり、B細胞では抗原と反応させたり、好中球やマクロファージでは貪食能をあげる
    • CR2/CD21
      • iC3bとC3dgと結合
      • B細胞、血管内皮細胞、濾胞性樹状細胞(FDCs)、胸腺細胞、末梢T細胞の一部に発現
      • B細胞活性化、FDCsと免疫複合体の結合促進、B細胞の自己反応性を調節したりする
    • CR3 and CR4
      • iC3bと結合。貪食細胞とFDCsに発現
      • 免疫反応を負の方向へ制御している
    • その他
      • Kupffer細胞に発現している受容体は、循環している標的物質を捕捉する。免疫グロブリンのスーパーファミリーである。
      • アナフィラトキシックペプチドとして様々な炎症反応を惹起するC5a, C3aを認識するC5a受容体/CD88、C3a受容体もある。ロドプシンファミリーである。
        • C5aは、好中球や血小板を誘導するケモタキシスとして作用したり、肥満細胞からのメディエーターヤロイコトリエン・サイトカインの産生を促進したり、IgGのFc領域と反応する。C3aも同様に炎症において重要である。

  • 補体の負の制御因子
    • 補体活性化を抑制するメカニズムもある
      • C1 esterase inhibitor (C1-INH) 
        • 古典的経路、レクチン経路を阻害する
        • C1r/ C1sと活性化したMASP-1/MASP-2を捕捉する
        • kallikrein, factor XIa, XIIa, plasmin も不活化する
      • factor I
        • C3b, C4bを不活化する
      • factor H
        • 可溶性であり、第2経路を阻害する
        • factor Iのco-factorとしても作用し、C3bを不活化する
      • 細胞膜に存在する蛋白
        • decay-accelerating factor (DAF; CD55) 、membrane cofactor protein (MCP; CD46), membrane inhibitor of reactive lysis (CD59) も補体活性化を阻害する
        • DAF:C3b, C4bと結合し、古典的経路、第2経路を阻害する
        • MCP:C3b, C4bを分解するco-factorとして作用する
        • CD59:C8と結合してC9が孔を形成するのを阻害する

  • complement factor H–related (CFHR) family
    • 多くの疾患と関連している
      • age- related macular degeneration (AMD), atypical hemolytic uremic syndrome (HUS), IgA nephropathy,  systemic lupus erythematosus (SLE) など
      • factor Hが標的物質の表面に結合するのを阻害し、局所での補体活性化を促進する


Overview of complement therapeutic approaches
  •  現在承認されているのは2つの薬剤のみ
    • eculizumab
      • C5に対する、ヒト化モノクローナル抗体
      • PNH、aHUSに承認されている
    • C1-INH関連薬剤
      • hereditary angioedema (HAE) に承認されている
    • 他に開発されているのは下(table1)

    • 病変局所へのdrug deliveryも研究されている
      • AMD(眼)
      • 第2経路が活性化されている疾患
      • C3腎症
    • 補体阻害治療開発において難しい点
      • 循環している蛋白の量が多く、それはサイトカインを上回る
      • turn-overが早い
      • 局所で合成され生物学的活性を高めている
      • 長期間の阻害によるriskは、補体を欠失している患者で明らかなように、免疫複合体が除去できない、Neisseriaを含む感染のリスクがある、組織再生が障害される


Use of complement therapeutics in genetically defined and related diseases that are in the differential diagnosis with rheumatic diseases
  • Paroxysmal nocturnal hemoglobiuria(PNH)
    • PIGA遺伝子異常でDAF/CD55、CD59が欠失していることで、溶血、血小板・内皮細胞の活性化と凝固亢進を起こす疾患
    • 第2経路が活性化している
    • eculizumabが有効
  • Antibody-mediated hemolytic syndromes
    • 特に寒冷凝集素病では補体が重要
    • 補体自体が溶血させるというよりも、IgM, C3フラグメントに覆われた赤血球が肝臓で血管外溶血を起こす
    • 古典的経路を阻害する、C1sに対するモノクローナル抗体が期待されている
  • Hereditary angioedema(HAE)
    • C1-INHをコードする遺伝子のヘテロ接合体異常 
    • C1-INH関連薬剤が発作を減らす
  • aHUS
    • 補体による炎症が多臓器に生じ、微小血栓が生じる
    • 血小板減少、溶血性貧血、腎不全など
    • HUSは90%がShiga-like toxinを産生する感染性腸炎によるものであるが、atypicalはこの細菌の関与がないものに使われる
    • 遺伝的・後天的に第2経路活性化を調節する機能が失われると発症する
    • factor H, MCP, factor I, C3, factor B, thrombomodulin の遺伝子異常が特定されている
      • C3, factor B遺伝子異常に関してはgain-of-function mutationだが、そのほかの遺伝子異常は負の制御因子の欠失によるもの
      • 一部の患者では、facotr Hに対する阻害自己抗体が見つかっている
    • eculizumabがphase2試験において良好な結果を示した
  • ぶどう膜炎、AMDなどの眼疾患
    • 自己免疫性ぶどう膜炎では補体の関与が指摘されている
    • AMDでは補体関連遺伝子の多型がリスク遺伝子として見つかっている

Rheumatic diseases that are likely to be partly complement-dependent
  • 関節リウマチ
    • 自然免疫、補体は、発症・持続・慢性炎症のいずれのphaseにも関与している
    • 軟骨へのIgG、活性化したC3を含む免疫複合体沈着、滑膜への補体沈着が見つかっている
    • RA患者の軟骨由来の蛋白は、補体活性化と補体経路抑制の両方の機能を示した
    • 第2経路とレクチン経路の開始と増幅メカニズム、走化を誘導するペプチドとその受容体、局所の補体合成の関与もモデルマウスでは証明されている
    • CR1-C3dg相互作用が関与しており、それを阻害することで疾患活動性が低下したことも報告されている
    • しかしながら、C5a受容体阻害はRA患者の滑膜炎を改善させなかった


  • SLE
    • SLEにおける補体の関与はparadoxicalである
      • C1, C2, C4欠損はSLE発症のリスクであり、補体は細胞が壊れて出てきた自己抗原をすぐに除去することで自己免疫疾患の発症を防ぐ
      • しかしながら、一度自己免疫が誘導されると、循環している免疫複合体が組織に沈着もしくは局所の自己抗原に自己抗体が結合し、補体活性化を誘導して炎症を起こす。また、type 1 IFNの産生も促す。
      • 理想的には、SLE患者への治療は、組織での免疫複合体の炎症性作用を阻害し、自己抗体を産生している獲得免疫の反応を調節することである
      • 実際に、eculizumabがoff-labelで使用されて重症のSLEに対して有効な成績を残している。
      • 細胞が壊れて出てきた自己抗原をすぐに除去するなど自己免疫に対して保護的に作用している面を阻害せずに、SLEの病態として関与している補体を制御するには、組織障害を標的にした薬剤を使用することで第2経路を選択的に阻害することが重要である


  • 血管炎
    • ANCA関連血管炎では、好中球から産生された物質がC5aを合成し、C5aが好中球のANCA抗原発現を誘導し、ANCAとの反応を促進し、ループが形成されている
      • 実際に、C5a受容体を欠失したマウスでは疾患活動性が低下する
    • また、C3の糸球体への沈着は、免疫複合体疾患よりも少ないが40%以上の症例で認めており、予後不良と関連している
    • さらに、補体活性化fragment(Bb, C3a, C5a, and soluble C5b9 )はAAV患者の血清や尿で増加しており、第2経路の活性化が示唆される
    • CCX168(Avacopan)はphase2試験においてステロイドsparing、腎病変寛解達成率増加、BVAS低下を示した
      • 現在は、寛解導入時にCYC or RTXとの併用薬として、ステロイドと比較する試験が進行中である

  • 抗リン脂質抗体症候群、劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)
    • 古典的経路、レクチン経路、C5aが病態として関わっている
    • C5aは血管内皮細胞活性化、接着分子の発現、サイトカイン産生、凝固因子産生、PAI-1産生、好中球からの組織因子産生、単球からの可溶性VEGF1産生に関わっている
    • トロンビンとフィブリノゲンは補体活性化し、微小血管と補体・凝固カスケードの反応を触媒する
    • 健常人よりC3, C4が低く、C3a, C4aが高いことは既報でも報告されている
    • 治療抵抗性患者に対して、eculizumabが有効だったcase reportもあり
    • 特にCAPSの場合、腎移植後にAPSが再燃することがあるので、予防的にeculizumabを投与し成功した例も報告されている



  • Neuromyelitis optica
    • 補体とIgGがアクアポリン4に作用することが関連している
    • 補体の異常が報告されており、アクアポリン4抗体陽性の患者においてeculizumabが有効だったことが報告されている


Complement system diagnostic approaches
  • 補体に関する検査は4つに分類される
    • 補体蛋白の濃度や数など定量的評価
    • pathway function assay 
    • 循環中もしくは局所組織における補体活性化マーカー
    • 補体関連遺伝子の解析

  • table2は疑われる疾患ごとに有用な補体の検査を示しており、これを参考に治療のターゲットを検討することができる


  • 定量的評価としてはC4, C3がメイン
    • 欠点としてはそれがC3なのかC3aなのかわからず、補体自体が急性炎症反応蛋白の要素もあるので、原病による消費と炎症による産生亢進のバランスを念頭に置かねばならないことである
  • functional pathwayとしては、CH50がある
    • 補体阻害治療の出現によって新しい有用性を示している
    • 活性化〜最終的な複合体形成まで、全ての機能を反映する
    • しかしながら、通常のassayでは患者血清を希釈して測定するため、それに伴い薬剤も希釈されるので、in vivoでの阻害作用をそのまま反映していないかもしれないことは注意する必要がある
      • これに関しては、AH50というassayではより低い希釈倍率で可能なため、補体阻害薬で治療中の場合はこちらを利用したほうがいいかもしれない
  • 補体活性化マーカーの測定について
    • 補体活性化マーカーは、転換酵素や複合体に加え、補体活性化に伴い分裂した補体も測定できるので、現在まさに進行中の炎症を捉えることができるかもしれない
    • フローサイトメトリーやimmunorogic testを利用して測定する
    • これによって、病態として関わっている特定の経路を明らかにすることができるだろう
    • また、C5阻害薬使用中に、最終的な補体複合体であるC5b-9を測定することでモニタリングが可能になる
      • しかしながら、ex vivoですぐに活性化するため、検体採取〜測定までの時間を短くしたり、適切に -80℃まで凍結しないと、測定エラーを起こすことなる
  • 補体関連遺伝子の検査も重要性が増してきている
    • aHUSやC3腎症、AMDなど
    • factor Hは特に、病態に関与しており、遺伝子検査が診断、予後に寄与しうる



1 件のコメント:

  1. 腎臓移植は、生命を繋ぐ奇跡の手術です。ドナーの大きな愛と受け手の勇気が重なり合い、新たな可能性を切り拓きます。この手術によって、腎臓病と戦っている人々が再び健康な日々を取り戻し、家族や友人との絆を深めることができます。日本の医療界は、腎臓移植を通じて多くの人々の命を救っています。生体腎移植

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