このブログを検索

2017年11月3日金曜日

免疫チェックポイント阻害薬による筋骨格系関連irAEのsystematic review


Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 1751–1763 


Rheumatic and Musculoskeletal Immune-Related Adverse Events Due to Immune Checkpoint Inhibitors: A Systematic Review of the Literature 
LAURA C. CAPPELLI, ANNA KRISTINA GUTIERREZ, CLIFTON O. BINGHAM III, AND AMI A. SHAH


本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

背景

  • 悪性腫瘍と自己免疫疾患の関連は、1900年代から乳がんや消化器系悪性腫瘍と筋炎の関連に関して、また、RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性の強皮症では悪性腫瘍のリスクが増加するなど、すでに指摘されていた
    • 病態としては、交差反応が関与していると考えられている
      • 筋炎に関しては、antitranscription intermediary factor 1γ(TIF1γ)抗体や、nuclear matrix protein-2 (NXP-2) 抗体が悪性腫瘍関連筋炎の自己抗体として代表的である
  • 悪性腫瘍に対する治療と自己免疫疾患の関連も増加してきた
    • 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が代表例である
      • CTLA-4とPD1は、T細胞に発現しているnegative regulatory receptors である
      • リガンドは抗原提示細胞に発現している(B7、PDL1, PDL2)
  • 悪性腫瘍自体も腫瘍細胞表面にPDL1に似た抑制系のリガンドを発現しており、T細胞の抑制する
  • ICIは、これらの抑制系のシグナルを阻害し、T細胞のcostimulationを誘導し、T細胞を活性化させる
    • これらに加え、TIM3(T cell immunoglobulin and mucin domaincontaining protein 3), CD137, VISTA(V- type immunoglobulin domaincontaining suppressor of T cell activation), LAG3(lymphocyte activation gene 3)などを標的にした多くの臨床試験が組まれている
  • そして、これら免疫チェックポイントは、リウマチ系疾患の病態にも関与している
    • 悪性腫瘍の治療ではnegative co-stimulationを阻害し、自己免疫疾患の治療ではnegative co-stimulationを促進させる
    • abataceptは、CTLA-4の細胞外ドメインとIgG1のFc領域を融合させた抗体製剤だが、RAに対して有用である
  • これらICIによる免疫関連有害事象(irAE)は、筋骨格系関連(関節炎、関節痛、筋筋炎、sicca syndrome)に関しては報告が少なく、今回の研究ではこれらをreviewしてみた


方法
  • PD1, CTLA4, PDL1抗体によるirAEに関して調べたsystematic review
  • Medlineのliterature、the Cochrane database のclinical trialで文献検索

    • 治療に関する検索語
      • ipilimumab
      • nivolumab
      • pembrolizumab
      • the targets of drugs, PD- 1, PD-L1, and CTLA-4
    • 筋骨格系関連irAEと他のirAEに関する検索語
      • arthralgia
      • arthritis
      • synovitis
      • xerostomia(ドライマウス)
      • xerophthalmia(ドライアイ)
      • sicca
      • Sjogren’s syndrome
      • systemic lupus erythematosus
      • myositis
      • vasculitis
      • colitis
      • thyroiditis
      • hypophysitis
      • endocrinopathy
      • pneumonitis
      • vitiligo(尋常性白斑)
      • hepatitis
 



結果
  • Clinical trialからの報告(計33trial)(table1)
    • 関節痛:1-43%
    • 関節炎:1-7%
    • 筋痛:2-21%
    • ドライアイ・ドライマウス:3-24%
    • 血管炎の報告も2例あった
      • 巨細胞性血管炎が1例、なんらかの血管炎が1例
    • 他には、サルコイドーシス、腰痛、骨痛、自己免疫疾患と表記されていた報告もちらほら
  • 観察研究からの報告(計3研究)
    • 1つ目の研究は、CTLA4抗体で治療した119例の画像所見に関する研究
      • CT, PETを施行し、画像的に関節炎あり:3.4%
        • これらはいずれもRF陰性、CCP抗体陰性
    • 2つ目の研究は、メラノーマと腎細胞癌に対してipilimumabとminus vaccinesを投与した198例の臨床所見を調べた研究
      • grade 3-4の関節炎:2%
        • それ以下の関節炎は報告なし
    • 3つ目の研究は、自己免疫疾患が既往にある症例でipilimumabを使用した30例の報告
      • そのうち8例で自己免疫疾患が再燃し、10例が他のirAEを発症した






  • ICI治療後にリウマチ膠原病関連の症状を呈した、もしくは自己免疫疾患の既往がある症例にICIを投与した、というcase seriesとcase reportからの報告(16 case series)(table2)
    • 関節炎
      • メラノーマに対してpembrolizumab投与後に多関節炎と腱鞘滑膜炎を呈した(2例)
        • いずれの症例もRF陰性、CCP陰性
      • nivolumab投与後にぶどう膜炎とスワンネック変形を呈した(1例)
    • 筋痛/好酸球性筋膜炎
      • 皮膚筋炎(1例、ipilimumab)、多発性筋炎(2例、nivolumabとipilimumabが1例ずつ)に類似した筋炎
        • いずれの症例もステロイドで軽快
      • 好酸球性筋膜炎(1例)
    • 血管炎
      • 網膜炎(1例)
        • しかしこれに関しては眼のメラノーマであり腫瘍随伴症候群の可能性もあり
      • 子宮(1例)
      • 巨細胞性血管炎とPMR(2例、転移性メラノーマに対してipilimumab投与後)
        • PSLで軽快
    • SLE腎症
      • SLE腎症(1例、ipilimumab)
        • 腎生検でextramembranousとmesangialにIgG, IgM, C3, C1qの沈着あり、かつds-DNA抗体陽性。ステロイド治療後にds-DNA抗体は陰性化。
    • 自己免疫疾患の既往がある症例にICIを投与した症例
      • 炎症性腸疾患(クローン病 or 潰瘍性大腸炎)の既往がある症例に、転移性メラノーマに対してipilimumabを投与した3例
        • そのうち2例は再燃なし
        • 1例は潰瘍性大腸炎の重症再燃を起こし、緊急大腸摘出術を要した
      • Sjogren症候群の既往がある症例に、ipilimumabを投与して急性間質性腎炎を呈した症例(1例)
    • その他
      • 眼窩筋炎、関節痛を伴う脳症を呈した症例が報告あり





  • 解析した研究のエビデンスレベル(table3)
    • clinical trail
      • 多くの研究は解析と有害事象に関して盲検化されておらず、バイアスは否定できない
      • ランダム化されていない試験も多い
      • サンプルサイズも少ない試験が多い
      • そして多くの試験が安全性にfocusしたearly phaseの試験である
    • 観察研究
      • いずれも後ろ向き
      • 交絡因子を考慮した研究はなし
      • 2つのみ100症例以上、そのほかは30例程度



0 件のコメント:

コメントを投稿

トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...