このブログを検索

2017年11月20日月曜日

早期RAに対するMTX使用方法が、その後2年間の疾患活動性、機能維持、関節破壊抑制に与える影響について


Gaujoux-Viala C, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:2054–2060.
  
背景

  • 近年、bDMARDsやtsDMARDsの時代にはなってきたものの、MTXは有効性、忍容性、コスト面で優れており、いまだにRAに対してfirst-lineとして推奨されるDMARDsである
    • しかしながら、20年以上使用されているにも関わらず、その使用法は用量、投与経路の点で臨床医によって様々である
  • RAに対してMTXを使用した症例の1/3はMTXによって寛解を達成できるが、他の1/3は全く反応しない
    • この反応しない原因は、そもそもMTXの有効性がないか、使用方法が不適切であることが考えられる
    • ランダム化比較試験での使用法は実臨床の使用法と異なり、その結果の解釈には注意が必要である
  • MTXを最低でも10mg/wから開始し、5mg/月のスピードで増量し、25-30mg/w or 忍容性のある用量を目標にする
    • それで反応しない場合には皮下投与に変更することも検討される
    • しかしながら、症状改善や関節破壊を抑制するのに適切なMTX用量はいまだにわかっていない
  • 今回の試験では、早期RA患者の大規模コホートを使用して、2年間の観察期間をおき、症状を改善させ関節破壊を抑制するための適切なMTX使用方法について検討した

方法
  • 2002年12月-2005年3月
  • ESPOIR cohort(フランスの14施設を受診した早期RA患者を対象)を使用
  • 対象
    • 18-70才
    • 2つ以上のSJCがあり、それが6週間〜6ヶ月持続しておりRAが疑われる or 診断されている
    • DMARDs naive, ステロイド naive
    • ACR-EULAR RA分類基準を満たす
    • 他の臨床試験に組み込まれていない
    • 最初の1年以内にMTXをfirst-lineとして使用している


  • 適切なMTX使用方法の定義(以下を全て満たす)
    • (ESPOIR cohortに組み込まれて)最初の3ヶ月間にてMTXが開始されている
    • 開始用量 ≧ 10mg/w
    • 6ヶ月時点でDAS28 > 2.6であれば、20mg/w or 0.3mg/w まで到達している or 6ヶ月時点でDAS28 < 2.6を達成している(用量は問わない)
  • 適切なMTX使用方法の利点として、1年・2年時点で以下の割合を評価
    • ACR-EULAR Boolean、SDAI、DAS28にて寛解達成
    • 機能低下なし(例:HAQ ≦ 0.5)
    • 急速な関節破壊進行がない(ΔSHS < 5/year)

結果
  • フローチャート(figure1)
    • 813人から上記条件で除外され、593人がinclusion criteriaを満たし、そのうちfirst-lineとしてMTXを使用したのは314人
    • 288人が適切なMTX使用方法(optimal MTX dose)だった

  • characteristics(table1)
    • 上記で定義した適切なMTX使用方法を行なっていたのは76/288人のみ
    • 適切なMTX使用方法を行なっていた群に有意に多かった項目
      • 若年
      • CRP高値
      • csDMARDs併用(併用薬は多様[下table参照])



Synthetic DMARD
Optimal MTX dose&
(n=76)
Non-optimal MTX dose (n=212)
Hydroxychloroquine
6
12
Hydroxychloroquine + Gold
6
3
Leflunomide
4
1
Gold
1
1
Salazopyrine
1
5
Salazopyrine + Hydroxychloroquine
1
0
Total
19
22


  • 開始時点での平均MTX用量
    • 12.2 ± 3.8 mg/w
    • figure2A:分布
  • 6ヶ月時点での平均MTX用量
    • 12.6 ± 3.8 mg/w
    • figure2B:分布
  • 主に経口投与(96.8%)
  • 最初の6ヶ月間に増量した患者の割合:17.2% のみ
  • 最初の1年間で葉酸を併用した割合:65% のみ(13.0 ± 4.8mg/ w)


  • 毒性について(table2)
    • 開始時点
      • 両群とも併存疾患(Cr値、肝酵素、重症消化管イベント、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患)に関しては同等だった
    • 6ヶ月時点
      • 肝酵素、重症消化管イベント、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患はいずれの群もあまり差はなく、適切なMTX使用方法群において軽度の肝酵素増加が多い傾向だった



  • 疾患活動性と機能に与える影響について(table3)
    • 適切にMTXを使用した群のほうが、寛解達成率が高く、正常な機能を有している割合も高かった
    • CRP、年齢、施設、SJC、seropositivity、骨びらん、喫煙、HAQ、1987ACR基準を満たすか否か)で調整しても、有意だった
  • 関節破壊抑制に与える影響について(table3)
    • baseline SHS:5.6 ± 7.6 units
    • 1年後の平均ΔSHS:4.0 ± 5.1 units 
    • 1年後に∆mSHS > 1  だった割合:66.9%
      • 1年後にΔSHS > 5:29.9%
    • 1-2年の期間での平均ΔSHS:3.01 ± 7.50 units
      • 1-2年の期間で関節破壊進行なし:64.3%
      • 1-2年の期間でΔSHS > 5:20.7%
    • MTX使用方法に関する2群の間で、ΔSHS > 5となった患者の割合は有意差なし


  • 感度解析
    • 以下に項目変更して結果は同様だった
      • 骨びらん→baselineでのSHS score
      • baseline DAS28→SJC

まとめ
  • 早期RA患者において、適切なMTX使用方法が疾患活動性や機能維持、関節破壊抑制に対して与える2年間での影響を検討した大規模コホートは今回が初めて
  • 適切なMTX使用方法を行なっているのは26.4%のみだった
  • 葉酸を使用していた割合は、適切にMTXを使用していた群のほうが多かったので、毒性に関する結果はこれを考慮する必要がある
  • 若年患者のほうが適切にMTXを使用していた割合が多かったのは、併存疾患や併用薬によってMTXのリスクが高いと考えたbiasの影響があるだろう
  • 適切にMTXを使用したほうが、疾患活動性や機能維持には有効だった。
    • しかしながら、関節破壊抑制には2年間の観察では、MTXの使用方法によって有意差は出なかった

0 件のコメント:

コメントを投稿

トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...