Gaujoux-Viala C, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:2054–2060.
- 近年、bDMARDsやtsDMARDsの時代にはなってきたものの、MTXは有効性、忍容性、コスト面で優れており、いまだにRAに対してfirst-lineとして推奨されるDMARDsである
- しかしながら、20年以上使用されているにも関わらず、その使用法は用量、投与経路の点で臨床医によって様々である
- RAに対してMTXを使用した症例の1/3はMTXによって寛解を達成できるが、他の1/3は全く反応しない
- この反応しない原因は、そもそもMTXの有効性がないか、使用方法が不適切であることが考えられる
- ランダム化比較試験での使用法は実臨床の使用法と異なり、その結果の解釈には注意が必要である
- MTXを最低でも10mg/wから開始し、5mg/月のスピードで増量し、25-30mg/w or 忍容性のある用量を目標にする
- それで反応しない場合には皮下投与に変更することも検討される
- しかしながら、症状改善や関節破壊を抑制するのに適切なMTX用量はいまだにわかっていない
- 今回の試験では、早期RA患者の大規模コホートを使用して、2年間の観察期間をおき、症状を改善させ関節破壊を抑制するための適切なMTX使用方法について検討した
方法
- 2002年12月-2005年3月
- ESPOIR cohort(フランスの14施設を受診した早期RA患者を対象)を使用
- 対象
- 18-70才
- 2つ以上のSJCがあり、それが6週間〜6ヶ月持続しておりRAが疑われる or 診断されている
- DMARDs naive, ステロイド naive
- ACR-EULAR RA分類基準を満たす
- 他の臨床試験に組み込まれていない
- 最初の1年以内にMTXをfirst-lineとして使用している
- 適切なMTX使用方法の定義(以下を全て満たす)
- (ESPOIR cohortに組み込まれて)最初の3ヶ月間にてMTXが開始されている
- 開始用量 ≧ 10mg/w
- 6ヶ月時点でDAS28 > 2.6であれば、20mg/w or 0.3mg/w まで到達している or 6ヶ月時点でDAS28 < 2.6を達成している(用量は問わない)
- 適切なMTX使用方法の利点として、1年・2年時点で以下の割合を評価
- ACR-EULAR Boolean、SDAI、DAS28にて寛解達成
- 機能低下なし(例:HAQ ≦ 0.5)
- 急速な関節破壊進行がない(ΔSHS < 5/year)
結果
- フローチャート(figure1)
- 813人から上記条件で除外され、593人がinclusion criteriaを満たし、そのうちfirst-lineとしてMTXを使用したのは314人
- 288人が適切なMTX使用方法(optimal MTX dose)だった
- characteristics(table1)
- 上記で定義した適切なMTX使用方法を行なっていたのは76/288人のみ
- 適切なMTX使用方法を行なっていた群に有意に多かった項目
- 若年
- CRP高値
- csDMARDs併用(併用薬は多様[下table参照])
Synthetic DMARD
|
Optimal MTX dose&
(n=76)
|
Non-optimal MTX dose
(n=212)
|
Hydroxychloroquine
|
6
|
12
|
Hydroxychloroquine + Gold
|
6
|
3
|
Leflunomide
|
4
|
1
|
Gold
|
1
|
1
|
Salazopyrine
|
1
|
5
|
Salazopyrine + Hydroxychloroquine
|
1
|
0
|
Total
|
19
|
22
|
- 開始時点での平均MTX用量
- 12.2 ± 3.8 mg/w
- figure2A:分布
- 6ヶ月時点での平均MTX用量
- 12.6 ± 3.8 mg/w
- figure2B:分布
- 主に経口投与(96.8%)
- 最初の6ヶ月間に増量した患者の割合:17.2% のみ
- 最初の1年間で葉酸を併用した割合:65% のみ(13.0 ± 4.8mg/ w)
- 毒性について(table2)
- 開始時点
- 両群とも併存疾患(Cr値、肝酵素、重症消化管イベント、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患)に関しては同等だった
- 6ヶ月時点
- 肝酵素、重症消化管イベント、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患はいずれの群もあまり差はなく、適切なMTX使用方法群において軽度の肝酵素増加が多い傾向だった
- 疾患活動性と機能に与える影響について(table3)
- 適切にMTXを使用した群のほうが、寛解達成率が高く、正常な機能を有している割合も高かった
- CRP、年齢、施設、SJC、seropositivity、骨びらん、喫煙、HAQ、1987ACR基準を満たすか否か)で調整しても、有意だった
- 関節破壊抑制に与える影響について(table3)
- baseline SHS:5.6 ± 7.6 units
- 1年後の平均ΔSHS:4.0 ± 5.1 units
- 1年後に∆mSHS > 1 だった割合:66.9%
- 1年後にΔSHS > 5:29.9%
- 1-2年の期間での平均ΔSHS:3.01 ± 7.50 units
- 1-2年の期間で関節破壊進行なし:64.3%
- 1-2年の期間でΔSHS > 5:20.7%
- MTX使用方法に関する2群の間で、ΔSHS > 5となった患者の割合は有意差なし
- 感度解析
- 以下に項目変更して結果は同様だった
- 骨びらん→baselineでのSHS score
- baseline DAS28→SJC
まとめ
- 早期RA患者において、適切なMTX使用方法が疾患活動性や機能維持、関節破壊抑制に対して与える2年間での影響を検討した大規模コホートは今回が初めて
- 適切なMTX使用方法を行なっているのは26.4%のみだった
- 葉酸を使用していた割合は、適切にMTXを使用していた群のほうが多かったので、毒性に関する結果はこれを考慮する必要がある
- 若年患者のほうが適切にMTXを使用していた割合が多かったのは、併存疾患や併用薬によってMTXのリスクが高いと考えたbiasの影響があるだろう
- 適切にMTXを使用したほうが、疾患活動性や機能維持には有効だった。
- しかしながら、関節破壊抑制には2年間の観察では、MTXの使用方法によって有意差は出なかった
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