背景
- 悪性リンパ腫は、多様な集団を含んでおり、etiologyもそれぞれで異なる
- 全悪性リンパ腫で、5年生存率はおよそ60%である
- これもサブタイプによって異なり、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫では一般集団と同等の生存率であるが、T細胞性リンパ腫は5年生存率 < 40%である
- さらに、臨床所見や治療方法もサブタイプによって異なる
- ヨーロッパでの年齢調整罹患率は25/100,000であり、悪性腫瘍の中でも頻度が高い
- 性別や年齢によっても異なる
- RA患者では、悪性腫瘍全体の罹患率は、一般人口の2倍といわれている
- 疾患活動性と悪性リンパ腫罹患リスクが関連している
- 慢性炎症による刺激がリンパ腫発生を誘導することが既報で報告されている
- この報告では、疾患活動性の積算がさらなる強力なリスクとなる。これは、特にDLBCLでは顕著である。
- さらに、MTXとEBV陽性リンパ腫との関連も示されている
- また、稀ではあるが致死的な肝脾T細胞リンパ腫が、TNFα阻害薬と関連している可能性も指摘されている
- TNFα阻害薬に関しては、ヨーロッパをはじめとした多くの施設が検討しているが、RAに対してTNFα阻害薬で治療することで、悪性リンパ腫全体の発症率増加に関係しているという明らかなデータはない
- しかしながら、アジアとフランスのクローン病に関する最近のデータでは、TNFα阻害薬によって悪性リンパ腫のリスクが増加することが示された
- RA疾患活動性が強いことが悪性リンパ腫発症のリスクとなるならば、TNFα阻害薬でRAを治療すると、悪性リンパ腫のリスクは、疾患活動性の低下に伴い低下する可能性もあるが、TNFα阻害薬そのものによって増加する可能性もあることを示している
- しかしながら、RA治療によって、悪性リンパ腫のどのサブタイプが増加するのかはわかっていない
- そこで、今回の試験では、それぞれのRA治療によって、通常のRA患者における悪性リンパ腫サブタイプの分布が、どう変化するのか調べた
方法
- ヨーロッパの9カ国にある12施設が、今回のthe EULAR Registers and Observational Drug Studies (RODS) Study Group に参加した
- the French biologics register ‘autoimmunity and rituximab’ (AIR)
- the Swedish ARTIS linkage of the Swedish Rheumatology Quality Register (SRQ) to other nationwide registers
- the Czech biologics register ATTRA
- the Registro Español de Acontecimientos Adversos de Terapias Biológicas en Enfermedades Reumáticas (BIOBADASER)
- the British Society for Rheumatology Biologics Register for Rheu- matoid Arthritis (BSRBR-RA)
- the Danish Rheumatologic database (DANBIO)
- the Italian biologics register (GISEA)
- the French biologics register ‘Orencia and RA’ (ORA)
- the German biologics register ‘Rheumatoid arthritis observation of biologic therapy’ (RABBIT)
- the French Research Axed on Tolerance of bIOtherapies (RATIO)
- the French Register Tocilizumab and RA (REGATE)
- the Portuguese rheumatic diseases register (Reuma.pt)
- 上記レジストリーに含まれる、RAと診断された症例を前向きに検討
- 悪性リンパ腫診断時に、RAに対して生物学的製剤を使用していたか、使用していた場合にはその薬剤の種類によって以下に分類
- bio-naive群
- TNFi群
- RTX群
- TCZ群
- ABT群
- 対象群
- ヨーロッパの造血器悪性腫瘍に関する一般人口のデータベースであるthe HAEMACARE project に登録されている症例を利用
- RA群よりも若い症例が多かったので、(the HAEMACARE project では45才以下が55%なのに対し、RA群では16%のみ)、ホジキンリンパ腫はRA群のほうが少ないことが開始前より見込まれたので、そこは調整した
- primary outcome
- 悪性リンパ腫のサブタイプ(WHO 2008分類に従う)
結果
- 120,000人以上のRA症例が解析された(table1)
- 悪性リンパ腫を発症:計533人
- そのうち、人年のデータが欠損していた症例は除き、計494人の悪性リンパ腫を解析
- 罹患率:85/100,000人年(95%CI 77 - 92)
- bio-naive vs. TNFi群:有意差なし
- RTX群:罹患率が低い
- 悪性リンパ腫全体のサブタイプ
- ホジキンリンパ腫:B細胞性非ホジキンリンパ腫:T細胞性非ホジキンリンパ腫
- bio-naive vs. TNFi群:分布に有意差なし(table2)
- B細胞性非ホジキンリンパ腫をさらにサブタイプごとに層別化して解析
- RA全体:DLBCL > 濾胞性リンパ腫 > CLL
- bio-naive vs. TNFi群:分布に有意差なし(table3)
- ホジキンリンパ腫、T細胞性非ホジキンリンパ腫は数が少なくさらなるサブタイプに分けて解析することができなかった
- 肝脾T細胞リンパ腫の症例はなし
- 一般人口のレジストリーであるthe HAEMACARE project に登録されている症例と、今回のRA症例のデータを、年齢に関して調整して比較した
- 一般人口集団とRA集団で悪性リンパ腫全体のサブタイプの分布は同等だった
- ホジキンリンパ腫:B細胞性非ホジキンリンパ腫:T細胞性非ホジキンリンパ
- RA群=9.5% : 83.8% : 6.8%
- 一般人口=10.1%:82.6%:7.3%
- しかしながら、B細胞性ホジキンリンパ腫のサブタイプを層別化すると、DLBCLはRA集団で多く、CLLは一般人口集団で多かった
- DLBCL:RA 56% vs. 一般人口 30%
- CLL:RA 16% vs. 一般人口 38%
まとめ
- bio-naive群とTNFi群で、悪性リンパ腫のサブタイプに差はなかった
- ホジキンリンパ腫 vs. B細胞性非ホジキンリンパ腫 vs. T細胞性非ホジキンリンパ腫:同等
- B細胞性非ホジキンリンパ腫の中でのサブタイプ:同等
- しかしながら、これは既報でも示されていたが、今回のより大きなコホートによって、RA集団と一般人口集団の間では差があることが示された
- 今回の、TNFiにて治療されているRA患者 240,000人年+ bio-naive RA患者 320,000人年 + RTX, ABT, TCZで治療されているRA患者 36,000人年 のフォロー期間を含むコホートでは、肝脾T細胞リンパ腫の症例はいなかった
- FDAの2003-2010年のT細胞性リンパ腫に関する調査では、thiopurinesとTNFiを併用した場合にT細胞性リンパ腫の発症リスクが増加することが示されたが、TNFi単剤では増加しなかった
- 既報では、慢性炎症がホジキンリンパ腫発症のリスクとなり、RAではホジキンリンパ腫が一般人口と比較して増加すると報告されていたが、今回のコホートでは有意に増加しなかった
- 悪性リンパ腫を発症した症例では、再度の病理学的検討をおこなえればよかったが、今回はそれが現実的にできず、病理学的診断はWHO2008分類のテンプレートにしたがった
- limitation
- TCZ, RTX, ABTを使用していて悪性リンパ腫を発症したのは、それぞれ6人、6人、3人と少数であったため、サブタイプの検討ができなかった
- 悪性リンパ腫発症に年齢が与える影響は大きいが、今回のコホートでは、bio-naive群はbDMARDs使用群と比較して平均年齢がやや高齢だった(61才 vs. 55才)ため、その影響は除外できていない
- bDMARDsによる分類に関しては、悪性リンパ腫発症直前に使用していたもので分類したため、最後に使用したものより前に使用していたbDMARDsの影響は不明である(それがどの程度どの用量で使用されていたのかわからない)
- MTXなど他のDMARDsを含む治療方法による影響を検討していない
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