ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 2175–2186
Vol. 69, No. 11, November 2017, pp 2175–2186
Adding Azathioprine to Remission-Induction Glucocorticoids for
Eosinophilic Granulomatosis With Polyangiitis (Churg-Strauss),
Microscopic Polyangiitis, or Polyarteritis Nodosa
Without Poor Prognosis Factors
Xavier Pu echal, et al.
背景
- EGPA, MPA, PANは全身性の血管炎である
- これらで、特に予後不良因子がない場合における適切な治療に関して調べた大規模な研究はない
- The French Vasculitis Study Group (FVSG) は、5つの項目でFive-Factors Score (FFS) を1996年に定め、これらがあると予後不良であることを示した[Medicine (Baltimore) 1996;75:17–28.]
- 1日蛋白尿 > 1g
- 血清Cr > 1.58mg/dL
- 心筋症
- 重症消化器病変(出血、穿孔、梗塞、膵炎)
- 中枢神経病変
- 5年死亡率
- FFS=0:12%
- FFS=1:26%
- FFS≧2:46%
※なお、1996年のFFSでは、当初の患者集団にあまりEGPAの症例が含まれておらず、その後、EGPAを考慮したFFSを2009年にGuillevinらが報告しております
- FFS=0の場合にはステロイド単剤で寛解導入ができるが、長期間で見ると再燃が多く、他の免疫抑制剤を使用したほうがいいのかもしれない
- 今回の研究では、予後不良因子のない新規発症EGPA, MPA, PANに対して、PSLにAZAを併用することで寛解維持率が高くなるか調べた
方法
- CHUSPAN 2 trial
- 前向き二重盲検ランダム化試験
- FVSGの43施設で2008-2012年に実施
- 対象
- 18歳以上
- 新規発症EGPA, MPA, PAN
- 1994 Chapel Hill Nomenclature definitions 、ACR分類基準を満たす
- FFSに当てはまらない
- 肺胞出血、呼吸不全がない
- ステロイド開始後3週間以内
- EGPAに対して、以前から喘息・副鼻腔炎コントロール目的でPSL < 10mg/dayを使用していた期間は除く
- 除外
- 悪性腫瘍診断から5年以内
- HIV, HBV, HCV患者
- 割付
- 全例、最初はPSL 1mg/kg/day(最大80mg/day) を3週間継続
- その後、12ヶ月間ほどかけて漸減
- 〜0.25mg/kg/day:2週間おきに7.5mgずつ漸減
- 0.25mg/kg/day 〜10mg/day:2週間おきに5mgずつ漸減
- 10mg/day〜中止:3週間おきに1mgずつ漸減
- EGPA患者に対して喘息コントロールのため必要であれば中止しなくても可
- 最初の3日間にmPSL mulse(15mg/kg)併用しても可
- このregimenに従うと、40kgの患者→42週間、80kgの患者→52週間でステロイド終了となる
- 上記に加えて、ステロイド開始後4週間以内に下のいずれかに無作為に割付
- AZA 2mg/kg(最大200mg/day) x12ヶ月間(その後は終了)
- 3ヶ月後に治療反応性不良(下のいずれか)であれば3mg/kg(最大200mg/day)まで増量可
- BVAS > 6
- 急性炎症反応蛋白陽性
- 好酸球数 > 1x10^9/L
- FFSに含まれない、なんらかの血管炎による症状
- placebo x12ヶ月間(その後は終了)
- CD4陽性T細胞 < 300/mm3であればST合剤 or ペンタミジン吸入によるPCP予防導入
- 骨粗鬆症予防もガイドライン通り導入
- primary endpoint
- 24ヶ月時点でのremission induction failureとminor/major relapseを合わせた割合
- remission:BVAS=0
- relapse:再発もしくは新規の血管炎による症状が出現
- major relapse:再発もしくは新規の血管炎による症状で、ステロイド増量のみでは治療できない致死的なもの
- minor relapse:relapseのうち、majorではないもの
結果
- 101人が割り付けられた(figure1)
- baseline characteristics(table1)
- EGPA:半数(51人)
- 41人がステロイド吸入、38人がβ刺激薬吸入、5人が少量経口ステロイド、12例がロイコトリエン受容体拮抗薬を使用していた
- 生検をしたのは74例で、そのうち血管炎所見があったのは52人
- mPSL pulse施行:50.5%
- 両群間で同等
- 初期治療量
- 平均AZA用量:122.3 ± 30.2mg(平均体重67kg)
- PSL:64.5 ± 10.8mg
- primary endpoint
- 24ヶ月時点でのremission induction failureとminor/major relapseを合わせた割合
- 両群で有意差なし
- AZA 12ヶ月間併用群 vs. placebo群:47.8% vs. 49%
- p=0.86
- 上記は24ヶ月までフォローできた患者を含めての解析だが、割り付けられた全症例を含めての解析でも同様の結果(52% vs. 50%)
- secondary endpoint
- 寛解導入率
- 有意差なし
- AZA 12ヶ月間併用群vs. placebo群:95.7% vs. 87.8%
- 初期寛解を達成できなかった8例(2例AZA群、6例placebo群)ではPSL増量、mPSL併用して7例が最終的に寛解を達成し、1例は死亡
- relapse
- 有意差なし
- AZA 12ヶ月間併用群vs. placebo群:44.2% vs. 40.5%
- major relapseはいずれの群も5例(計10例)
- 治療開始〜major relapseまでの期間
- 平均12.3ヶ月(range 5.1-19.2ヶ月)
- relapse時の平均BVAS
- 13.5(range 4-24)
- 3例は腎病変(そのうち1例は肺胞出血も併発し、c-ANCAも陽性で、最終的にGPAと診断)
- baselineの臨床所見・検査所見で、relapseのリスク因子は特定できなかった
- 有害事象
- 重度有害事象が1つ以上、治療関連有害事象が1つ以上であった割合
- 両群で同等
- AZA群にて有害事象で薬剤中止となったのは10例
- 無顆粒球症 or 汎血球減少、皮疹、肝障害など
- AZA群で死亡症例なし
- placebo群で2例死亡
- 2例ともEGPA、割付後11ヶ月時点で死亡。そのうち一例は59歳男性で寛解維持中に突然死、もう一例は86歳男性でCYC投与でも血管炎活動性がコントロールできず死亡
- 24ヶ月時点でのVDI
- 両群で有意差無し
- relapse-free期間
- 両群で有意差なし
- AZAで再燃した19例のうち、12例はAZA中止後にrelapse
- placebo群で再燃した17例のうち、8例はplacebo中止後に再燃
- いずれも有意差なし
- ステロイド積算量(AUCで評価)
- 両群で有意差なし
- 24ヶ月時点までのoutcome(figure3)
- 両群で同等
- 血管炎の種類別の解析
- EGPA(51例)
- primary endpoint、喘息・副鼻腔炎増悪率
- 両群で有意差なし
- PAN(19例)or MPA(25症例)
- primary endpoint
- 両群で有意差なし
- PSL積算量(AUCで評価)
- それぞれの血管炎の間で有意差無し
まとめ
- FFSがない新規発症EGPA, PAN, MPA患者において、ステロイドに加えて初期からAZAを併用することのメリット(寛解導入成功、再燃率低下、ステロイドsparing、喘息・副鼻腔炎コントロール)はなかった
- ステロイド単剤による寛解達成率に関しては既報と同等だった
- 既報では、ステロイド単剤では、EGPAにおいて治療開始1年間での再燃率が高く(39%)、PAN or MPA症例でもステロイド単剤で寛解を維持できるのは40%のみだった
- また、最終的にはステロイドに加えて2剤目を必要とする割合は45%であり、これはEGPA, PAN, MPAの間で違いはなかった
- 今回の結果でも、寛解を維持できたのは半数程度であり、40%以上で再燃した
- しかしながら、AZAを併用してもこの結果は改善しなかった
- EGPA症例では、75%が24ヶ月時点でもステロイド(平均PSL用量 < 9mg/day)を必要としているのは既報と同等だった
- AZAは通常量で使用し、12ヶ月間継続しており、12ヶ月時点での寛解達成率・再燃率がplacebo群で同等なため、AZAの用量が少ないとか使用期間が短いのが原因ではないと考えられる
- 有害事象は同等だった
- 薬剤による骨髄毒性を予測するのに有用なthiopurine methyltransferase (TPMT) activityは今回測定していないが、実臨床でもコストも高く実際に行なっていない
- 予後不良因子のない血管炎に対して併用するAZA以外の免疫抑制剤として、CYCも考えられるが、これは既報(サンプルサイズは少ないが)ですでに多くの有害事象を起こしたため、第一選択としては選択しえない
- EULAR recommendationでも、中〜小型血管炎において致死的臓器障害がない場合には、寛解導入において、PSLに加えてMTXを併用することが推奨されている
- また、最近のEULAR/European Renal Association–European Dialysis and Transplant Association recommendations for the management of ANCA-associated vasculitis (AAV) では、致死的臓器障害がないANCA関連血管炎の寛解導入において、MTX or MMFが推奨されている
- しかしながら、上記2つの推奨は、主にエビデンスレベルの低いexpert opinionや、中等度の腎病変を有するMPA患者や臓器限局型GPAを対象にした少数のRCTに基づいていた
- EGPAにおいて、ステロイドに加えて免疫抑制剤を併用することの有効性を調べたopen-label試験では、致死的臓器病変のない11例の新規発症EGPA患者を対象にしてMTXをPSLに併用したものがあった
- その試験では寛解達成率は72.7%だったが、心臓病変や肺病変の再燃率が高かった
- 新規の代替薬としては、mepolizumabやRTXやABTが検討されている
- mepolizumab:EGPAに対するMepolizumab(ヌーカラ®︎)
- RTX:EGPAに対するリツキシマブ
※ちなみに、EGPAに対するIVIgに関してはこちら
- limitation
- 各EGPA, PAN, MPA毎にAZAの有効性を評価するにはサンプルサイズが小さい
- 同様に、臓器病変毎の解析をするにはサンプルサイズが小さい
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