ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 68, No. 3, March 2016, pp 690–701
Vol. 68, No. 3, March 2016, pp 690–701
Long-Term Outcomes Among Participants in the WEGENT
Trial of Remission-Maintenance Therapy for Granulomatosis
With Polyangiitis (Wegener’s) or Microscopic Polyangiitis
Xavier Pu echal et al.
N Engl J Med 2008;359:2790-803.
for ANCA-Associated Vasculitis
Azathioprine or Methotrexate Maintenance
Christian Pagnoux, M.D., M.P.H. et al.
- CYCとステロイドによる寛解導入治療は、1950年代に、ANCA関連血管炎の予後を大きく改善した
- GPAは、未治療では1年生存率が70%以下であったが、5年生存率 74-80%まで改善した
- 同様に、MPAは、予後不良因子によるが、5年生存率 65-95%まで改善した
- しかし、これらは治療に伴う有害事象のリスクもはらんでおり、CYCの積算量を安全に減らすことが重要である
- 寛解導入では、RTX単剤 or CYCとRTXを併用することでCYCの毒性を減らすことも検討されている
- 維持治療に関しては、様々な全身性血管炎患者を含む30症例のランダム化試験では、維持治療としてAZAと経口CYCを比較して、再発率が同等だった
- Adu D, Pall A, Luqmani RA, et al. Controlled trial of pulse versus continu- ous prednisolone and cyclophosphamide in the treatment of systemic vasculitis. QJM 1997;90:401-9.
- また、非重症GPA or MPA症例において、CYCを18ヶ月まで延長した群とAZAへ切り替えた群を比較した大規模ランダム化多施設試験でも、両群で同等の有効性と安全性を示した
-
Jayne D, Rasmussen N, Andrassy K, et al. A randomized trial of maintenance therapy for vasculitis associated with antineutrophil cytoplasmic autoantibodies. N Engl J Med 2003;349:36-44.
- uncontrolled studyではあるが、いくつかの試験が、GPAの維持治療として、MTXとAZAが維持治療として有効性・安全性が同等の結果も示しており、最近では、CYCで寛解導入を行なったのちに、維持治療としてAZA or MTXが低用量ステロイドと併用されることが多い
-
de Groot K, Reinhold-Keller E, Tatsis E, et al. Therapy for the maintenance of remission in sixty-five patients with gen- eralized Wegener’s granulomatosis: meth- otrexate versus trimethoprim/sulfameth- oxazole. Arthritis Rheum 1996;39:2052-61.
-
Langford CA, Talar-Williams C, Barron
KS, Sneller MC. A staged approach to the treatment of Wegener’s granulomatosis:
induction of remission with glucocorti-
coids and daily cyclophosphamide switch-
ing to methotrexate for remission main-
tenance. Arthritis Rheum 1999;42:2666
- Langford CA, Talar-Williams C, Bar- ron KS, Sneller MC. Use of a cyclophospha- mide-induction methotrexate-maintenance regimen for the treatment of Wegener’s granulomatosis: extended follow-up and rate of relapse. Am J Med 2003;114:463-9.
- WEGENT trailは、the French Vasculitis Study Group による、重症GPA or MPA症例において、ステロイドとIVCYで寛解導入達成後に、ステロイドの併用薬としての、AZAとMTXの有効性・安全性を比較した、前向き・多施設・ランダム化・open label試験である
- 29ヶ月時点では、MTXとAZAは安全性・有効性において、同等だった
- 今回の試験は、このWEGENT trialにおいて、MTXとAZAをそれぞれ中止した後や、さらに長い期間フォローした場合の、再発率や有害事象を比較したものである
方法
- WEGENT trial
- 1998-2005年において、フランスとベルギーで実施
- 対象
- CHCC分類を満たす新規発症GPA or MPA
- 組織診断 or ANCA陽性
- GPAの場合、以下のいずれかが該当し重症に分類される
- 腎病変あり
- 2臓器以上の病変あり
- 1臓器+全身症状あり(38度以上の発熱、最近1ヶ月間に3kg以上の体重減少、全身関節痛 or 筋痛)
- MPAの場合、以下のいずれかが該当し重症に分類される
- Five-Factor Scoreのうち、1つ以上満たす
※Five-Factor Score
- 1日蛋白尿 > 1g
- 血清Cr > 1.58mg/dL
- 心筋症
- 重症消化器病変(出血、穿孔、梗塞、膵炎)
- 中枢神経病変
- 5年死亡率
- FFS=0:12%
- FFS=1:26%
- FFS≧2:46%
- 治療プロトコル
- 全例
- 前もって決められたスケジュールでステロイドを漸減する
- mPSL pulse(15mg/kg) 3日間 → PSL(1mg/kg/day)3週間 → 6ヶ月時点で 12.5mg/day → 18ヶ月時点で 5mg/day → 27ヶ月間で漸減終了
- IVCY 0.6g/m2 2週間ごと ×3回 → 0.7g/m2 3週間ごと 寛解達成まで
- 追加で3回まで 0.7g/m2 投与可能(3週間間隔)
- 65歳以上 and/or eGFR < 30 ならば0.5g/m2 に減量
- PCP予防としてST合剤
- ST合剤不耐ならばペンタミジン吸入
- Ca, vitD, Bis製剤内服
- 最初の6ヶ月間で寛解に至らない場合には除外
- 割り付け
- 最後のIVCYから2−3週間後に以下に割り付け
- AZA群(1mg/kg/day)
- MTX群(0.3mg/kg/w → 25mg/w:2.5mg/wずつ増量)
- 上記維持治療を12ヶ月間継続したあとは、主治医判断で中止も可
結果
- 割り付けまでのフローチャート
- 126人がAZA or MTXに割り付けられた
- このうち、10年後の今回の解析まで行われたのは112人(88.8%)
- ロストした14人の観察期間は、平均7.0年(IQR 5.1 - 9.1年)
- 平均フォロー期間:11.9年(IQR 11.3 - 12.5年)
- baseline characteristics(originalのWEGENT trialより抜粋)
- 診断
- GPA:77%
- MPA:23%
- ANCAの種類
- PR3-ANCA陽性:60%
- MPO-ANCA陽性:31%
- 生存率
- 死亡人数
- AZA群:15人
- 悪性腫瘍(6人)、心疾患(3人)、肺胞出血(1人)、ESRD(1人)、肺塞栓症(1人)、外傷(1人)、不明(2人)
- MTX群:12人
- 悪性腫瘍(1人)、心疾患(4人)、感染症(4人)、ESRD(1人)、肺塞栓症(1人)、アルツハイマー病(1人)
- 10年生存率(figure2A, B)
- AZA群:75.1%
- MTX群:79.9%
- 有意差なし
- 多変量解析
- 死亡リスク因子(figure2C)
- 年齢(HR 1.09, 95% CI 1.05–1.14, p<0.001)
- 1歳増加するごとに、死亡率9%増加
- 以下は有意差なし
- 肺病変
- 神経病変
- 心病変
- 消化管病変
- 腎病変
- type of AAV(GPA or MPA)[figure2D]
- ANCA status(MPO or PR3 or 陰性)
- baselineのBVAS
- 再燃
- 観察期間において、1回以上再燃した割合
- AZA群:60%
- MTX群:54%
- そのうち、維持治療終了後に初回再燃があった割合
- AZA群:81.6%
- MTX群:88.2%
- 総再燃数・割合、major relapse数・割合
- AZA群とMTX群で、有意差なし
- 10年間のfree-relapse期間(figure3A, table1)
- AZA群とMTX群で、有意差なし
- しかしながら、ANCA statusでは有意差あり(PR3-ANCAだと再発しやすい)(figure3B)
- type of AAVでは有意差なし(GPA or MPA)
- 他の再燃のリスク因子(table2)
- 発症時の血清Crが低い
- 10μmol/L(≒0.11mg/dL)下がるごとに再燃リスク1%↑
- 維持治療終了以降のPSL用量が多い
- 以下はリスクとならず
- type of AAV
- baseline BVAS値
- CYC pulse投与回数、積算量
- 有害事象
- 重度有害事象
- AZA群とMTX群で有意差なし
- 治療関連有害事象
- AZA群とMTX群で有意差なし
- 免疫抑制治療を要した期間
- AZA群とMTX群の間で、それぞれのAZA投与期間とMTX投与期間、ステロイド投与期間は有意差なし
- 他の免疫抑制治療(CYC積算量、再燃で使用したRTXの積算量)も両群で同等(table3)
- 腎機能
- AZA群とMTX群で有意差なし
- ESRDに至った割合
- AZA群:11.1%
- MTX群:12.7%
- ESRDに至った患者は、全例、当初より腎病変あり
- VDI(table2)
- AZA群とMTX群で有意差なし
- 観察期間、年齢、baseline PR3-ANCAの有無、baseline 血清Cr値、維持治療終了時のステロイド投与量で補正しても、有意差なし
- AAVのtypeごとにて
- GPA(97症例)のみ
- AZA群とMTX群で、生存期間・free-relapse期間について有意差なし
- 10年間、再燃がなかった割合
- GPA:23.3% [95% CI 16.2–33.7%]
- MPA:51.7% [95% CI 36.4–73.5%]
- HR 2.20 (95% CI 1.24–3.91, p=0.007)
- しかしながら、上記の有意差は多変量解析では消失した
考察
- WEGENT trialでは、GPA or MPAに対する維持治療として、MTXとAZAの有効性・安全性は、当初の29ヶ月間の観察期間と同様に、長期間観察しても同等だった
- 重症GPAの10年生存率は、今回の試験も既報と同等だった
- ちなみに、MPAの10年生存率を報告したのは今回が初めて
- MPAの5年生存率は、217症例のMPA患者を含む既報では、45 - 76%だった
- 今回の試験では、FFSを満たす重症MPAだったにも関わらず、10年生存率が既報の5年生存率よりも良好だったのは、FFSが高い場合には維持治療をしっかり行うことの有用性を示している
- GPAとMPAの生存率も同等だった
- これらの間で生存率が異なる既報もあったが、これは年齢による影響を考慮しなかったためだろう
- 今回の試験では、年齢が独立した死亡リスクとなった
- 既報では、GPAにおける死亡リスクとして、年齢以外に、腎病変、肺病変も報告されている
- 既報では、MPAにおける死亡リスクとして、年齢以外に、腎病変、重症消化管病変が報告されている
- これらのリスク因子は、reviseされたFFSには全て含まれている
- やはり今回の試験でも再燃は全体として多かった
- 10年間のfree-relapse率
- AZA群:26.3%
- MTX群:33.5%
- PR3-ANCA陽性が今回の試験でも再燃リスクとして示された
- GPAがMPAより再発が多かったという既報もあったが、PR3-ANCA陽性が交絡しているものと思われる
- 血清Cr値が再発率と逆相関したのは、既報と同じだった
- 腎機能が悪い患者は、おそらく治療関連副作用による死亡が増えるので、よりmildな免疫抑制治療をする方が望ましいかもしれない。この仮説についてはさらなる検討が必要だろう。
- 今回の試験では、2年間でステロイドを中止するようプロトコルが組まれていた
- ステロイド投与量・投与期間が再燃リスクと関連していたのは、主治医が再燃リスクが高いと判断した症例はステロイドを継続していたのと関係しているのだろう
- しかし、主治医が血管炎が残存していて再燃のリスクが高いと判断したCRP増加などは、感染などの影響だった可能性もある
- Meta-analysisの結果では、ステロイド漸減を事前にスケジュールされていない or 18ヶ月以上投与されている場合は、6-12ヶ月以内に漸減終了されている場合よりも再燃率が低かった
- 今回の試験では、維持治療終了時のステロイド投与量が累積ダメージと関連しており、これは既報と一致していた
- そのため、適切なステロイド投与期間に関しては、再燃率と累積ダメージの両者を解析したRCTが必要である
- 今回の試験では、初回の再燃の80%以上が、維持治療としてのAZA or MTX終了後だった
- PR3-ANCA陽性の場合は、再燃リスクが高いので、維持治療を長めに行なったほうがいいかもしれない
- 適切な維持治療のregimenに関しては、より研究が必要である
- the Maintenance of Remission using Rituximab in Systemic ANCA- associated Vasculitis (MAINRITSAN) trialでは、RTX 0.5g 6ヶ月ごとに投与(18ヶ月時点まで)のほうが、AZAよりも再燃率が低かった
- 有害事象に関しては、長期間の観察にて、25%が重症の感染症を起こした
- 感染症によって死亡したのは全体の3%だった
- limitation
- もともとWEGENT trialは長期間の観察のためにデザインされたわけではないので、安全性・有効性に関する検出力が不足している可能性はある
- 長期間の観察に関する結果は後ろ向きにデータを集めているため、バイアスは除外できていない
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