David J. Byun1,2, Jedd D. Wolchok1,2, Lynne M. Rosenberg2 and Monica Girotra1,2
Cancer immunotherapy —
immune checkpoint blockade and
associated endocrinopathies
immune checkpoint blockade and
associated endocrinopathies
NATURE REVIEWS | ENDOCRINOLOGY VOLUME 13 | APRIL 2017 | 195
導入
- CTLA4
- 活性化していないT細胞では、CTLA4は細胞内に潜んでいるが、一度T細胞が活性化されると細胞膜に移動する
- T細胞表面のCD28は、抗原提示細胞の共刺激リガンドであるB7に結合し、T細胞成熟のためのsecond signalをだす
- CTLA4は、CD28よりもB7に高い親和性で結合するため、T細胞活性化を阻害する
- CTLA4を標的にしたモノクローナル抗体はであるipilimumabは、悪性腫瘍の治療において有効であることがわかっている
- これらは、CTLA4がB7に結合することを阻害し、CD28がT細胞を活性化させるようになる
- CD28から始まったシグナルは、下流であるMAPKを活性化させ、AP-1複合体を形成させ、IL-2を産生し、T細胞を成熟させる
- PD-1
- 免疫細胞特異的な細胞表面受容体
- そのリガンドであるPDL1, PDL2は抗原提示細胞や腫瘍細胞に発現している
- PD1はアポトーシスの域値を下げ、T細胞受容体の機能を低下させることでanergyを起こし、T細胞除去へ誘導する
- 腫瘍細胞ではPDL1発現が増加しており、これによってT細胞活性化を阻害し、腫瘍細胞生存に関わっている
- PD-1抗体はPD-PDL1間の相互作用を阻害して、腫瘍細胞を除去する
- マウスモデルにおいても、CTLA4, PD-1経路を阻害することで腫瘍特異的T細胞が増加し、抗腫瘍効果を発揮することがわかっている
- しかしながら、これによって、場合によっては致死的な免疫関連有害事象(irAE)も起こりうる
- 腫瘍な内分泌関連irAE
- 下垂体炎
- 主にはCTLA4抗体で生じる
- 原発性甲状腺機能亢進症/低下症
- PD-1, PDL1, CTLA4で生じる
- 詳細なメカニズムは不明だが、マウスモデルではCTLA4抗体とPD1抗体の標的が異なっている
- CTLA4はT細胞の初期活性化を阻害しているが、PD-1は免疫反応のmodulatory phaseを標的にしているということである
- 興味深いことに、抗腫瘍効果とirAEには関連があることがわかっている
<CTLA4抗体>
- 下垂体炎
- CTLA4抗体による下垂体炎の頻度は報告によって異なり、0.4 - 17%である
- この違いはホルモンのモニタリング、認知度、薬剤の用量の違いなど関連しているのだろう
- 二次性の副腎不全、甲状腺機能低下症、性線機能低下症もそれぞれ6.1%, 7.6%, 7.5%で生じることが報告されている
- 用量の違いによる頻度の違いには議論がある
- 3mg/kgと10mg/kgで使用しても頻度は同等だったという報告もある
- 多くの患者では投与開始11週以内には生じないので、積算量が大事という意見もある
- しかしながら、4週で発症したり、16週まで発症しなかった例もあり、なんとも言えない
- 男性のほうが頻度が多い:15.6% vs. 3.6%
- これは、この研究では男性の方がメラノーマの有病率が高かったことが関連しているのかもしれない
- 他の報告では、高齢もリスクというのもある
- 平均 68.2 ± 2.4歳 vs. 59.9 ± 1.0歳、P<0.05
- 症状
- 頭痛、倦怠感、筋肉痛など非特異的な症状が多い(89%)
- 嘔気、食欲低下、体重減少、視野異常、精神状態変化、体温調節異常などもあるが頻度は10.5-21.1%と稀。低Na血症も報告あり。
- 二次性の内分泌異常
- 副腎不全は典型的には恒久的であり、治療しない場合には致死的になりうるため注意が必要
- 甲状腺機能低下は改善しうるが6-64%と報告によってまちまち
- 性線機能低下の改善は11-57%
- 検査
- ACTH and/or TSH低下が頻度が多く、尿崩症など後葉ホルモン異常は少ない
- 性線機能低下やIGF1低下は原病や他の抗がん剤による影響もあり評価が難しい
- MRI:均質 or 不均質な造影効果を伴う、下垂体のびまん性腫大
- 下垂体の腫大は、ホルモン異常が見られる1週間ほど前より認め、その後4-12週かけて縮小し、最終的には萎縮することもある
- MRIでの異常所見がないことで下垂体炎の否定はできない
- 下垂体への自己抗体は陽性とならないが、TSHへの抗体や、内分泌細胞に対する抗体(FSH分泌細胞、ACTH分泌細胞)に対する抗体が陽性となることが多い
- 病態
- 下垂体に異所性に発現しているCTLA4にCTLA4抗体が結合し、古典的経路で補体が活性化されるtype2が原因と考えられている
- PD-1 and/or PDL1-IgG4抗体で治療する場合には下垂体炎は稀である
- ipilimumabはIgG1である
- tremelimumab(IgG2b抗体)よりもipilimumab(IgG1抗体)の方が下垂体炎の頻度は高い:9.1% vs. 1.3%
- しかしながら、tremelimumabの毒性は詳細には調べられていないのも事実
- 対応
- 患者にきちんと下垂体炎についてICする
- baselineの甲状腺ホルモンを測定し、その後も定期的に(無症状であれば最初の6ヶ月間は1ヶ月ごとに、6-12ヶ月では3ヶ月おきに、その後2年までは6ヶ月おきに)フォローする
- 実臨床ではあまり行われていないが、二次性副腎不全が致死的になりうることも考慮すると、baselineのACTHとコルチゾルを測定し、治療中はモニターする方がいいかもしれない
- 下垂体炎急性期であればACTH刺激は残存しているので、cosytropin試験は有用性が低い
- 治療はホルモン補充(ステロイド、甲状腺ホルモンなど)
- 症状に応じてステロイドの用量は考える
- CTLA4抗体による抗腫瘍効果はグルココルチコイドによって低下しないことがわかっている
- 原発性甲状腺異常
- 甲状腺機能低下症に甲状腺機能亢進症が先行することがある
- 症状は非特異的
- ipilimumab治療中において、原発性甲状腺機能低下症の頻度は5.2 - 5.9%(二次性は4.3 - 11%)
- ipilimumabによってGraves病が誘発された症例も報告あり(TPO抗体、TSH受容体抗体陽性化)
- 病態
- CTLA4の遺伝子多型が発症に関与しているという報告もあるが不明な点が多い
- 副腎炎
- 稀
- 原発性副腎機能低下はipilimabで治療していた症例で報告あり
- いずれも一過性の副腎腫大で、その後正常化した
<PD1抗体>
- pembrolizumab、nivolumab
- irAE全体
- 頻度:39 - 54.2%
- 下垂体炎
- 1%未満と稀
- 原発性甲状腺異常
- 甲状腺機能低下症:~5.9%
- 甲状腺機能亢進症:1.0-4.7%
- 投与開始3-8週間が多い
- 検査
- 甲状腺機能亢進症が低下症に先行することもある
- その後の甲状腺ホルモンの推移や、自己抗体の結果も参考にする
- 一部では自己抗体が陽性となる
- エコー:橋本病などと同様の所見が見られることも
- 病態
- 不明な点が多いが、PD1遺伝子の多型がリスク増加に関与していることも考えられている
- 組織学的な検討も必要だろう
- 治療
- 支持療法(β遮断薬やホルモン補充など)
- 重症であればステロイド
- 血糖異常
- 稀ではあるが、PD1阻害によってtype1糖尿病が誘発されることもある
- GAD抗体が陽性になりうる
- 病態は不明な点が多いが、T細胞のmodulatory phaseの異常が関与しているものと考えられている
<PDL1抗体>
- PDL1 or PD1遺伝子の多型がリスクと言われている
- PD1抗体と比較して、irAEは同等の頻度と報告されている
- 有害事象全体:41% PD1 vs. 30% PDL1
- 内分泌関連irAE:4% PD1 vs. 4% PDL1
- phase1試験にて
- 甲状腺機能低下症:3%
- 副腎不全:1%
- PDL1は、活性化したT細胞のPD1のみではなく、CD80にも結合する
- PD1阻害はPDL1とPDL2との相互作用を阻害する
- これがPD1阻害とPDL1阻害の違いの原因かもしれない
<PD1とCTLA4抗体の併用療法>
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