Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1297–1303
Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1297–1303
背景
- 妊娠では、40-70%のRA患者がは疾患活動性の低下を経験する
- 16-27%では寛解するものの、50%では第三期ににおいて疾患活動性が高いままである
- 妊娠中の母体RA活動性と妊娠予後は負の相関があり、低疾患活動性を維持することが重要である
- 多くのDMARDsは妊娠中は使用できず、主にはPSL, SASP, HCQであり、最近ではTNF阻害薬も増えてきた
- 副作用の観点からも、可能な限り妊娠中の薬剤は使用を控えたい
- TNF阻害薬は、第1半期の安全性が懸念され、多くは妊娠が判明したら中止される
- 胎児のFc受容体への親和性が高いTNF阻害薬は、第2・3半期に胎児へ移行し、母体より血中濃度が高くなるため、一部の専門家は妊娠20週以前に中止した方がいいという
- PSLは早産、妊娠高血圧、妊娠糖尿病、前期破水に関連があると言われている
- しかしながら、これら薬剤の使用を控えることが、活動性再燃のリスクにも繋がるため、慎重な漸減が必要である
- 今回の研究では、妊娠初期におけるどういった要素が第3半期におけるRA低疾患活動性に関連があるか調べた
- 単変量解析を行った既報では、自己抗体の有無、DAS28-CRP、PSLの使用が挙げられていた。しかしながら、これらを多変量解析を行った研究はまだなく、SASPの使用、出産回数、過去のMTX使用歴、erosionの有無、RA罹患期間などを含めて多変量解析を行った
方法
- the Pregnancy-Induced Amelioration of Rheumatoid Arthritis(PARA)studyという、妊娠中におけるRAの疾患活動性のデータを集めたオランダの前向きコホートを解析した
- 対象
- 1987分類基準を満たすRA患者
- 2002年〜2008年にかけて、妊娠希望もしくはすでに妊娠中(第1半期)の475人のRA患者がスクリーニングされ、369人がRAPA studyに組み込まれた
- そのうち205人が1回以上妊娠した
- 12週以内に流産した、DAS28-CRPが欠損している患者は除外
- 168人(190妊娠)が解析された
- そのうち110人が妊娠前DAS28-CRPのデータあり
結果
- 解析された168人(190妊娠)のcharacteristics(table1)
- 第1半期における平均年齢:32.2歳
- 平均罹患期間:4.8年
- RF or ACPA陽性:75.3%
- RF陽性:70%
- ACPA陽性:61.1%
- seronegative(RF, ACPA陰性)
- 24.7%
- erosionあり:62.1%
- 平均DAS28-CRP
- 第1半期:3.6 ± 1.2
- 低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2):40.5%
- 寛解(DAS28-CRP < 2.6):22.6%
- 第3半期:3.3 ± 1.2
- 低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2):50%
- 寛解(DAS28-CRP < 2.6):30.5%
- 産後12週目:3.5 ± 1.1
- 治療
- PSL使用:42.1%
- 第1半期:36.8%
- 第3半期:30.5%
- 平均使用量:7.5mg/day
- SASP:32.6%
- 第1半期:30.0%
- 第3半期:26.8%
- 平均使用量:2000mg/day
- HCQ:3.2%
- 第1半期:2.6%
- 第3半期:2.1%
- 平均使用量:200mg/day
- drug-free
- 第1半期:44.7%(85人)
- 全妊娠期間:39.0%(74人)
- 第1半期の後から治療を開始した11人は、6人PSL、5人SASP
- PSLを使用していた患者の平均DAS28-CRP
- 第1半期:4.8
- 第3半期:4.6
- 低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)を達成していた患者は皆無
- 過去にMTX使用歴あり:61.1%
- 全例、妊娠が判明した時点で中止
- 過去にbDMARDs使用歴あり:17.4%
- 全例、妊娠が判明した時点で中止
- 第3半期において低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)と関連していた因子(table2)
- 単変量解析で以下は有意に負の関連あり
- 第1半期においてDAS28-CRP ≧ 3.2
- 自己抗体陽性
- 第1半期においてPSL使用
- 多変量解析で以下は有意に負の関連あり
- 第1半期においてDAS28-CRP ≧ 3.2
- 第3半期において寛解(DAS28-CRP < 2.6)と関連していた因子(table2)
- 多変量解析で以下は有意に負の関連あり
- 第1半期においてDAS28-CRP ≧ 3.2
- 自己抗体陽性
- 第1半期における疾患活動性で、低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)である群とそうでない群(DAS28-CRP ≧ 3.2)に分けた層別化解析(table3)
- 第1半期において低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)だった患者群
- 第1半期におけるPSL使用、自己抗体陽性:いずれも第3半期における低疾患活動性達成とは関連なし
- 第1半期において低疾患活動性でなかった(DAS28-CRP ≧ 3.2)だった患者群
- 第1半期におけるPSL使用:第3半期における低疾患活動性達成と負の関連あり
- seronegative:第3半期における低疾患活動性達成と正の関連あり
- 第1半期において低疾患活動性でなかった(DAS28-CRP ≧ 3.2)だった患者群を、さらに第3半期における疾患活動性で低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)の群と寛解(DAS28-CRP < 2.6)の群に分けて層別化解析(table4)
- 第1半期におけるPSL使用:低疾患活動性の群のみで関連あり
- seronegativeであること:寛解の群のみで関連あり
- 第3半期において低疾患活動性を達成したのは95人
- 第1半期において低疾患活動性だった77人のうち、74%が第3半期においても低疾患活動性を維持
- 第1半期において低疾患活動性じゃなかった人のうち、第3半期において低疾患活動性を達成した割合が最も高かった患者群は、第1半期ににおいてPSLを使用していなかった患者
- 第3半期において寛解達成したのは58人
- 第1半期において低疾患活動性だった77人のうち、第3半期において寛解に達したのは45人(58.4%)
- 第1半期において低疾患活動性じゃなかった人のうち、第3半期において寛解に達したのは5人のみ(5.5%)
- 第1半期において低疾患活動性じゃなかったがseronegativeだった22人のうち8人(36.4%)が第3半期において寛解に達した
まとめ
- 以下の項目が、第3半期において低疾患活動性を達成することと関連していた
- PSLを使用していない
- 血清反応陰性
- 以下のことは関連しなかった
- 第1半期におけるSASPの使用
- 出産回数
- 過去のMTX使用
- erosionの有無
- RA罹患期間は有意に関連しなかった
- 胎児の性別(データなし)
- 母と胎児の遺伝因子が妊娠期間中のRA改善に影響を与えることが既報で報告されているが、実臨床で遺伝子を調べていないのであまり有用ではない
- 妊娠経過におけるDAS28-CRPの低下は、もともと疾患活動性が高いほうが低下の程度が大きいことが既報で示されていたが、そういった患者群で実際に低疾患活動性もしくは寛解を達成できる割合は少なかった
- PSLを使用している患者は、第1半期における疾患活動性が高かった(3.9 vs. 3.4)
- しかしながら、第1半期において高疾患活動性(DAS28-CRP > 5.1)だった18人のうち、10人はPSL使用し、8人は使用しなかった
- PSLを使用した10人のうち、8人は第3半期においても高疾患活動性だった
- PSLを使用しなかった8人のうち、第3半期においても高疾患活動性だったのは4人
- これらの結果を見ると、PSLそのものが妊娠経過におけるRA改善を妨げている可能性も否定できない
- 今回の結果では、妊娠中に治療の漸減・中止を考慮するのは、すでに寛解もしくは低疾患活動性にある患者のみではなく、高疾患活動性でも血清反応陰性でありPSLを使用していない患者でも考慮されるかもしれない
- 自己抗体陽性でPSLを内服している高疾患活動性の患者は、妊娠経過中は治療を弱めないほうがいいだろう
- しかしながら、RCTで比較したわけではないので、推奨はできない
- limitation
- 妊娠経過中にbDMARDsを使用している患者はいない
- 第1半期においてPSLを使用していた人がPSLを中断して第3半期の疾患活動性を高くし、PSLの使用が負の関連として検出された可能性は否定できない
- 第1半期においてPSLを使用しており第3半期では中止していたのは12人であり、このうち1例のみ、第1半期で低疾患活動性で第3半期で疾患活動性が増加している
- また、第3半期において第1半期よりPSL使用量が減っていた14例においては、第3半期において疾患活動性が増加していたのは2人のみだったので、上記limitationは当てはまらないだろう
0 件のコメント:
コメントを投稿