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2017年10月9日月曜日

未治療早期RAに対して、治療開始時点からMTXを高用量で開始すべきか?低用量で開始してT2Tに沿って増量していくべきか?:メタ回帰分析では、高用量MTX開始の臨床的有効性なし


Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 10, October 2017, pp 1473–1483 

本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

背景

  • MTXは、新規発症RAにおける第一選択薬である
    • MTXの使用方法としては、最初は副作用に注意して少量から開始する
      • EULAR2013ガイドラインでは、15mg/wから開始して、5mg/Mのペースで増量し、目標量は25-30mg/wを目標にすると推奨されている(※しかしながらこれは体格の小さい日本人にとっては多いです)
    • MTXの安全性が確立されてからは、初期から20-30mg/wで開始されている試験もある
      • いくつかの試験では、初期用量を多くすることで、わずかに副作用が増えるものの、効果も増えることが報告されている
  • しかしながら、未治療RA患者において、3-6カ月 or MTX単剤(20-25mg/w)で開始して12カ月までに、75%は低疾患活動性を達成できない
    • そのため、MTXを他のcsDMARDs or PSL or bDMARDsと併用し、それによってMTX単剤よりも治療有効性が高いことを多くの試験で示してきた。
    • しかしながら、併用薬の種類によっては副作用もMTX単剤よりも多くなる。
    • また、併用治療におけるMTXの至適用量はこれまで確立されていない
      • 多くの試験・実地臨床では、MTX単剤治療のときと同じように、併用でもMTXを可能な限り早く増量することが多い
      • CONCERTO study では、ADA 40mg/2w+MTX 2.5mg or 5mg or 10mg or 20mg/wというように、MTX用量の違いを調べたところ、26週間後において有意にMTX用量依存性に低疾患活動性 or 寛解達成率が増加したと報告している
        • しかしながら、この試験においてもMTX10mg と 20mgの間では効果は同等であった。また、他の既報でも、初期治療開始後最初の6カ月間において、併用治療におけるMTXの高用量と低用量で有効性は変わらなかったという報告がある
  • 今回は、未治療の早期RAにおいて、MTX単剤治療とMTX併用治療の、MTX開始時点で用量依存性の有効性があるか、システマティックレビューで調べた

方法
  • 対象
    • 早期RA or RA疑いの未分類関節炎
    • 未治療
    • MTXが単剤もしくは併用治療として初期治療のレジメンに含まれており、用量も記載されている
  • 2015年2月時点で、PubMed, Embase (OVID- version), Web of Science, Cochrane, CENTRAL, CINAHL, Academic Search Premier, Science Direct を使用して解析対象文献抽出

結果
  • 対象研究の選別はfigure1, 2の通り



  • table1:各研究における、項目ごとの効果量(effect size)に関するoverview
    • 治療法によって分けている




  • 治療期間(month of assessment)、baselineのHAQ, ESR/CRP, DAS28によって調整した、MTXの治療開始時点での用量による有効性の違いを治療法別に示した、メタ回帰分析の結果(table2)
    • csDMARDsとMTXの併用に関しては、データが少なく解析できなかった
    • HAQ
      • MTX単剤群:MTX開始時点で用量依存性の有効性なし
      • ステロイド or bDMARDs+MTX群:MTX開始時点で用量依存性の有効性が、”わずかに”、統計学的に有意
    • DAS/DAS28
      • bDMARDs+MTX群:MTX開始時点で用量依存性の有効性が、”わずかに”、統計学的に有意
      • ステロイド+MTX群:MTX開始時点で用量依存性の有効性なし
    • ESR/CRP
      • いずれの治療群もMTX開始時点で用量依存性の有効性なし



まとめ
  • 今回の結果では、未治療早期RAにおいて、MTXにおける治療開始時の用量依存性の有効性は、単剤治療・併用治療ともに、統計学的に一部において有意差はあったものの、臨床的には有意であるといえない結果だった
    • おそらく、未治療早期RAにおいては、進行したRAよりも、比較的、低い用量でMTXの反応性があるということだろう
    • ベースラインの疾患活動性で補正したものの、高用量MTXを使用した症例の中に、疾患活動性が高くHAQ, DAS/DAS28も高い症例が含まれている可能性もあるので、それが今回の結果に影響していることも考慮せねばならない
  • 3−6カ月以内に寛解 or 低疾患活動性を達成することは、関節破壊や非可逆的な機能低下を防ぐために必要だとされている
  • 3−6カ月の治療反応性に関して、MTXの高用量での使用開始が有効性であることは今回の結果では示せなかった
    • しかしながら、高用量でMTXを開始することで、MTX低用量で開始した場合よりも、MTX不応だった場合に他の治療薬に早く変更できる可能性がある
    • また、いくつかの既報では、早期に疾患活動性をコントロールすることができた症例では、再発や関節破壊の進行なく治療をtaperできるかもしれないと報告されている。これが真実であれば、MTXを高用量で開始することで、早期にPSLやbDMARDsを中止できることに繋がるかもしれない。
    • しかし、MTXを高用量で開始することは、副作用も増え、それによってMTXを減量 or 中止せざるを得なくなる可能性もある
  • 今回の結果を考慮すると、未治療早期RAにおいては、MTX開始時は低用量で開始し、T2Tに乗っ取ってその後増量していくことがいいかもしれない、といえる

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