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2017年10月15日日曜日

RA患者における生物学的製剤のDrug hypersensitivity reactions (HSRs)について


Arthritis Care & Research
Vol. 69, No. 10, October 2017, pp 1526–1534 
本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

背景

  • Drug hypersensitivity reactions (HSRs) は代表的な有害事象であり、軽度〜致死的なものまで幅広い
    • 生物学的製剤の種類、背景疾患によっても頻度は異なる
      • 既報では、単施設における671人の自己免疫疾患に対して使用した場合、IFXが他のTNF阻害剤よりも頻度が高く、より重症のHSRを起こした
        • IFX 13.8% vs. ETN 5.3% vs. ADA 3.5%
      • ETN, ADA, CZP, GOLを皮下投与する場合には、もっと頻度が低い
      • ABT, RTX, TCZ:0.1 - 2%の頻度だった
  • RA患者におけるbDMARDs使用の際のHRSに関しては、population-based studyがなかったため、今回はそれを目的とした

方法
  • retrospective cohort study
  • 期間:2006–2013年
  • Medicareの患者からデータを抽出
  • 対象
    • RA患者
    • ADA, CZP, ETN, GOL, IFX, ABT, RTX, TCZのいずれかを上記期間中に新規使用開始した症例
  • HSRの定義
    • アナフィラキシーショックでERを受診した入院患者
    • アナフィラキシーショックで受信し気管支痙攣、喉頭喘鳴、低血圧に対してエピネフリン、ジフェンヒドラミン、CPRを実施した外来患者
    • 原因不明のアレルギーで入院 or 救急外来を受診して気管支痙攣、喉頭喘鳴、低血圧に対してエピネフリン、ジフェンヒドラミン、CPRを実施した患者
  • 交絡因子として年齢、性別、Charlson Comorbidity Index (CCI) 、bDMARDs使用時のステロイド静注併用、MTX併用を考慮した


結果

  • 80587人の患者が上記期間において新規に生物学的製剤を使用開始した
    • baseline characteristics(table1)
      • 80%以上が女性
      • 皮下投与群:若い
      • RTX, TCZ:若い
      • IFX群:MTX併用率が高い
      • RTX群:経口ステロイド使用率が高い
      • 静注群で同日に点滴ステロイド使用率が高い
        • RTX 79.4% > IFX 11.7% > TCZ 8.8% > ABT 5.5%


  • HSR:計248 events(table2)
    • 入院を要した:17.3%
    • 救急外来を受診:78.2% 
    • 普通の外来を受診:4.4%
    • 投与後1日以内に発症したのは93 events
    • 死亡:1例のみ(TCZ症例)





  • 生物学的製剤、投与〜発症した期間によってInfusion reactionの頻度が異なっていた
    • 投与後0-1日
      • 最低:ABT 41.1/10人年
      • 最高:RTX 239.5/10人年
    • 投与後1-14日
      • 最低:ABT 2.4/10人年
      • 最高:RTX 12.1/10人年
    • 投与後15-30日
      • 最低:ABT 4.3/10人年
      • 最高:RTX 13.2/10人年
    • ABT皮下投与では1例のみ、GOL静注とTCZ皮下投与では0例
    • 交絡因子(年齢、性別、Charlson Comorbidity Index (CCI)、bDMARDs使用時のステロイド静注併用、MTX併用、以前にbDMARDs使用歴あり)で調整し 、初回投与に限定した場合の、TNF阻害剤皮下投与と比較した投与後0-1日の期間におけるHSRのリスク比
      • IFX静注:RR 26.9 [95% CI 17.4–41.5]
      • TCZ静注:RR 22.2 [95% 11.6–42.4]
      • RTX:RR 18.0 [95% CI 8.9–36.2]
      • ABT静注:RR 7.1 [95% CI 3.9–12.8]
    • MTX併用はHSRのリスクを有意に下げた
      • 0–10 mg/day:RR 0.7 [95% CI 0.5–0.9]
      • 10–15 mg/day:RR 0.5 [95% CI 0.3–0.8]
      • 15–20 mg/day:RR 0.4 [95% CI 0.2–0.7]
      • 20 mg/day:RR 0.5 [95% CI 0.2–1.3]





  • 1日以内に生じるHSRにおける、投与回数との関連について
    • ABT, RTX:大半は初回投与で起き、回数を重ねるごとにリスク低下
      • ABT:68.8%
      • RTX:43.8%
    • IFX(2回目 41.7%), TCZ(3回目 30.8%)は2回目以降のほうがHSRが起きる可能性は高い
    • 6ヶ月時点での累積HSR発症率
      • ABT:0.17%
      • IFX:0.37%
      • RTX:0.31%
      • TCZ:0.33%





  • HSRが生じた人に限って感度分析を行なった場合のリスク(table4)
    • RTXが最もリスク高い
    • 皮下投与の方がリスク低い






まとめ

  • 最初の6ヶ月間でのHSR発症率は1%以下と少なく、比較的高齢のRA患者においてはHSRの頻度は多くなかった
  • 死亡症例は1例のみ
  • HSRのリスク因子(大きい順に)
    • (皮下投与と比較して)点滴での使用
    • 若年
    • RTX
    • IFX
    • TCZ
    • ABT
  • TCZでも致死的なIRは稀で、特異的なHSRもなかった
  • main analysisではIFXが最もリスク高かったが、HSRに限った集団で感度分析を行うとRTXが最もリスク高かったのは、患者間の交絡因子が後者ではうまく調整されていたからだろう

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