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2017年10月11日水曜日

axSpAにおける仙腸関節炎の評価:MRIがその後のX線での変化を予測


Dougados M, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1823–1828.  

本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

こちらも参考に(MRIとsacroiliac jointの病変について

背景

  • 体軸性脊椎関節炎(axSpA)は、仙腸関節病変の有無によって、radiographic (r)-axSpAとnon-radiographic (nr)-axSpA に分けられる
  • 仙腸関節炎の自然経過や増悪させる因子などのデータは不足している
    • 前向きコホートで、発症早期のSpAを長期間観察することが必要
  • DESIR (acronym in French for outcome of recent onset spondyloarthritis) は、発症早期axSpA患者を、前向きに観察しているコホートであり、今回はこのコホートを使用して以下を調べた
    • 5年間のうちに、どの程度の割合でnr-axSpAからr-axSpAに移行するのか
    • どういった要素が画像的仙腸関節炎の変化を予測することができるのか
    • MRIでの仙腸関節炎が、5年後にレントゲンでの仙腸関節の構造変化を予測するか

方法
  • DESIRコホートについて
    • 18-50歳の炎症性背部痛が3ヶ月以上3年未満続いており、リウマチ専門医がaxSpAの疑いがあると考えている患者
      • axSpAが疑れる程度を0-10として、そのスコアが5以上
    • フランス、多施設
    • 2007年12月〜2010年4月に708人を抽出
  • カルテ、質問票などから情報採取
  • 骨盤レントゲン・仙腸関節MRIはbaseline, 2年後、5年後にフォロー
    • 読影する人は臨床情報・撮影したタイミングをblindされている
    • レントゲンはmNY基準に沿って以下の通り分類
      • 0: normal
      • 1: suspicious changes
      • 2: minimal abnormalities
      • 3: unequivocal abnormalities
      • 4: severe abnormalities (complete ankylosis) 
    • MRIでの仙腸関節炎陽性は、3人の評価者のうち2人が、bone marrow edema (BMO) が、2連続スライス以上に1つ or 1スライスに複数あると判断した場合とした
    • レントゲンとMRIの評価者は別々
  • サンプルサイズは、5年後のレントゲンで変化がある割合が70-90%・baselineでのMRI仙腸関節炎を認める割合が30-50%で、baselineでのMRI仙腸関節炎がある場合に5年後のレントゲンの変化に関する相対的リスクが2-3倍と見積もり、α5%, β90%として、685-768人が必要と計算された
  • 感度分析として、データ欠損している症例を last observation carried forward (LOCF) とlinear extrapolation (LE)を用いてデータ補完を行い解析した(‘intention-to-follow’ population )
  • 仙腸関節病変スコア
    • mNY基準のgradeを、右側と左側で合計して計0-8とし、それぞれ3人の評価者の平均を使用した



結果
  • 708人のうち、評価可能なbaselineのレントゲンがあるのが685人
    • 685人のうち2年後、5年後にもレントゲンを評価できたのはそれぞれ519人、416人。
    • 2年後もしくは5年後のいずれかでフォローのレントゲンが評価できたのは557人:intention-to-follow’ population
  • 708人のうち、評価可能なbaselineのMRIがあるのは679人
  • baseline characteristics(table1)
    • 416人にて、baselineにてmNY基準を満たすレントゲン-仙腸関節病変があった割合:14.9%
      • 416人の解析
        • 5年後には、レントゲン-仙腸関節病変を有する割合は20%まで増加
          • 仙腸関節病変スコアも有意に増加:1.41 to 1.60 , p<0.001 

        • intention-to-follow’ population(557人)で解析
          • 5年後にはLOCF法で18%, LE法で17.7%まで増加
            • 仙腸関節病変スコアも有意に増加:それぞれ1.32 to 1.49 (1.81) (p<0.001) (LOCF) 、1.33 to 1.50 (p<0.001) (LE)




    • baseline MRI仙腸関節炎の、5年後にmNY基準を満たす仙腸関節病変があることに対する影響(figure2)
      • HLA-B27陽性の場合
        • OR 5.39 (95% CI 3.25 to 8.94)
      • HLA-B27陰性の場合
        • OR 2.16 (95% CI 1.04 to 4.51)
      • 統計解析手法を変えても有意に影響あり(table2)





    • HLA-B27で層別化した、MRI仙腸関節炎、CRPが 、nr-axSpA→r-axSpAに与える影響


    まとめ
    • 5年間でr-axSpAへ増加する進展する割合は、有意ではあるがわずかだった
      • MRIでの仙腸関節炎、HLA-B27、CRP陽性はリスクとなった
      • 既報では、2年間で10%、10年間で24%増加すると報告されていた
    • レントゲンでの進行を特定するには、mNY基準を満たすか満たさないかの2元ではなく、今回のように0-8とスコア化した方がより感度がよい
      • しかしながら、仙腸関節の両側がそれぞれ独立に進行している場合はただの合計となってしまう。また、0→1と7→8では同じ1の変化でもステージが異なるので、意味が変わってしまう可能性がある。
    • また、レントゲンでの仙腸関節炎の評価は、熟練を要し、評価者によっても異なる可能性があり、それが解析に影響を与えることも考慮せねばならない
    • さらに、レントゲンでの仙腸関節炎が、どれほど患者の機能障害に影響を与えるかデータが不足している

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