ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1751–1761
Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1751–1761
- IL-6は、肝臓由来の急性炎症蛋白の産生を刺激するものとして発見された
- FEBS Lett 1988;232:347–50.
- IL-6は転写因子レベルでCRP合成を制御し、動物実験レベルでは肝細胞の増殖や線維化に関与していると報告されている
- Hepatology 2000;31:149–59.
- Hepatology 2003;38:218–29.
- 内因性IL-6をノックアウトしたマウスは、組織障害に対する血清アミロイドAなど急性炎症蛋白の産生が低く、肝不全や肝細胞の再生が障害されていた
- Hepatology 2000;31:149–59.
- Science 1996;274:1379–83.
- TCZは、可溶性で膜結合型のIL-6受容体に結合するrecombinantヒト化monoclonal抗体であり、IL-6 pathwayを阻害する
- 時折、肝酵素の上昇と関連することがある
- これらは、MTXによるものと混同されたりして、データに乏しいため、今回はTCZに関連する肝障害に関して調べてみた
方法
- 対象
- 主要なphaseⅢ tiralの5つと、臨床薬物調査1つと、phaseⅣ1つにおいて、1回でもTCZの投与を受けた患者全例
- 4mg/kg, 8mg/kg, 10mg/kgなど用量を問わない
- DMARDsを併用されているグループもあり
- 対象trial
- Lancet 2008;371:987–97.
- Ann Rheum Dis2008;67:1516–23.
- Arthritis Rheum 2008;58:2968–80.
- Ann Rheum Dis 2010;69:88–96.
- Arthritis Rheum 2011;63:609–21.
- Clin Pharmacol Ther 2011;89:735–40.
- Int J Clin Pharmacol Ther 2012;50:218–23.
- Lancet 2013;381:1541–50.
- exclusion criteria
- 各試験で、baselineにおいてALT or AST > 正常上限の1.5倍
- 現在活動性もしくは再活性化の既往のあるB/C型肝炎
- スクリーニングより前6ヶ月以内にアルコール or 薬物中毒の既往あり
- コントロール不可能で重症な併存肝疾患あり
- 同一患者に同じ副作用が起きた場合もそれぞれカウントする
- AST正常範囲上限=40U/L, ALT正常範囲上限=55U/L
結果
- 計4171人が解析対象
- 平均TCZ投与期間 3.9 ± 2.0 年(中央値 5.1年)
- 全員、中等度以上のRA活動性に対してTCZを導入
- MTX naiveやcsDMARDsに反応不良など導入する背景は様々
- MTX併用していたのは76%
- 平均用量 15.2mg/w
- TCZ皮下投与は含まれていない
All tocilizumab
N=4171
|
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Female, n (%)
|
3415
(82)
|
Age, years, mean (SD)
|
52.1
(12.6)
|
Disease duration, years, mean
(SD)
|
9.2
(8.5)
|
DAS28, mean (SD)
|
6.4
(1.3)
|
Background MTX dose, mg/week,
mean (SD)
|
15.2
(5.96)a
|
Number of previous DMARDs/TNF
inhibitors in addition to MTX, mean (SD)
|
1.9
(1.6)
|
Oral corticosteroid use, n
(%)
|
2407
(58)
|
- baselineから最も高いレベルまで上昇した症例の分布が下
- 正常範囲を維持したのはAST, ALTそれぞれ40.6%, 29.4%のみ
- 12ヶ月間ごとにALT(A、上), AST(B、下)の上昇程度を表した棒グラフ
- 割合の分母は、それぞれ解析した時点での全体の人数を利用
- 開始してからの時期が短いほうが肝障害の頻度も多い
- 最初の12ヶ月間に肝酵素が正常範囲であった場合で、その次の12ヶ月間に肝酵素が上昇した割合
- 正常上限以上:24.0%
- 3倍以上:0.6%
- ASTのみ or ALTのみ、3倍以上に上昇した割合はそれぞれ3.6%, 7.7%
- 2回目の血液検査でも肝酵素上昇が持続しているのはそれぞれ5%以下
- 正常範囲より3倍以上に限ると2%以下
- 解析期間内に全く上がらなかったのはALT, ASTそれぞれ27.7%, 39.1%
- AST, ALTが3倍以上上昇 かつ total Bilも2倍以上上昇したのは8人
- Hy's lawの基準を用いると、TCZの影響と断定できるケースはなかった
- 肝酵素の上昇が3倍以上(A, 上)、1-3倍(B、下)に分けて、それぞれ正常化した群と持続した群でBMI、年齢、レフルノミド・MTX併用の有無、糖尿病、以前にTNFα使用していたか、上昇に対する対応について、解析した図
- 肝酵素が上昇したあとに、43%はTCZを中止もしくは減量したが、57%はTCZの用量を変更しなかった
- 正常化するまでの中央値 5.6週間(平均 14.6週間)
- 正常化した群と改善しなかった群で、BMI≧30の割合が改善しなかった群で多かった(A)
- 年齢、糖尿病の有無、以前のTNFα阻害薬使用の有無、DMARDs併用の有無は違いがなかった(A)
- 全体の中で、TCZ monotherapy群とDMARDs併用群の違いに関しては、DMARDsの変更や中止など厳密な情報が得られず、解析できなかった
- しかしながら、Lancet 2013;381:1541–50.の試験は、早期R Aに対してDMARDsの併用に関して詳細な情報があり、TCZ monotherapyとそれ以外の群で違いを調べることができた
- MTX/DMARDs monotherapyとTCZ monotherapyで大きな差なし
- ALTが正常上限より3倍以上上昇した割合
- MTX monotherapy vs. TCZ monotherapy=13 of 255 patients (5.1%) vs. 4 of 274 patients (5.1%)
- MTX/DMARDs monotherapyとTCZ+MTX/DMARDs では、TCZ併用したほうがわずかに肝酵素上昇の頻度上がる
- 重症肝障害の一覧
- 7例で認めた(0.04/100人年、95% CI 0.02-0.09)
まとめ
- 肝酵素が上昇するのは最初の12ヶ月以内が多い
- しかし、TCZを継続しても、肝酵素が上昇している人の割合は増加しなかった
- 3倍以上の上昇は大半が一過性
- MTX monotherapyとTCZ monotherapyの肝酵素上昇の頻度は同じ
- MTX monotherapyよりはTCZ併用するほうが肝酵素が上昇しやすい
- 今回の解析対象は、全て現状のガイドラインに従って、肝酵素上昇に合わせてDMARDsの用量調整(減量 or 中止)をおこなっているので、現在のガイドラインを遵守することが重要である
- 84ヶ月以降のデータは不明
大規模な試験におけるデータなので、きちんとB/C型肝炎などは除外されている理想的な状況です。
やっぱりガイドライン通りTCZを使用することが重要ですね。
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