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2017年9月11日月曜日

SSc-ILDに対するMMF vs. placebo

ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 7, July 2017, pp 1451–1460



背景
  • ILDはSScにおける主な死因の1つである
  • 既報では、SSc-ILDに対してCYCが有効であると報告されている
    • N Engl J Med 2006;354:265566.
    • Arthritis Rheum 2006;54:396270.
  • しかしながら、CYCの毒性を考慮すると、MMFが代替治療として検討される
    • open-label試験などでは有効性が報告されている
  • より詳しくMMFの有効性を調べるために、Tashkinらは、MMF vs. CYCで比較した(Scleroderma Lung Study(SLS)Ⅱ )
    • MMF群の多くがFVCの改善を示した
    • しかし、placeboが設定されていなかったため、SSc-ILDは進行せず治療の必要もない場合もあるので、そういった自然経過においてMMFがどれだけ有効なのかは不明であった
    • Lancet Respir Med 2016;4:70819.
  • 今回は、SLSⅡにおけるMMF群と、SLSⅠにおけるplacebo群を比較することが目的である

方法
  • inclusion criteriaはSLSⅡもSLSⅠも似ている
    • 共通criteria
      • 18歳以上
      • 罹患年数(最初のRaynaud症候群以外の症状を認めた時から) ≦ 7年
      • FVC 40-85%(SLSⅠ)or FVC 40-80%(SLSⅡ)
      • DLco ≧ 40% or 臨床的に明らかなPHなしのDLco 30-39%
      • HRCTにてGGOあり(網状変化や気管支拡張など構造的変化の有無を問わない)
    • SLSⅠでは、HRCTにて所見がなければスクリーニングとして積極的に気管支鏡を行い、BALにて3%以上の好中球 and/or 2%以上の好酸球であれば組み込まれ、16/162人(9.9%)はこのcriteriaで組み込まれた
    • SLSⅡは気管支鏡は施行されておらず、HRCTにおける所見ありが絶対的なinclusion criteriaだった
  • exclusion criteriaはSLSⅠ、Ⅱとも同様
  • study design
    • SLSⅠ
      • 2000/9-2004/1
      • 162人
      • CYC(目標 2mg/kg/day)or placebo
      • 1年間の治療期間と、さらに治療しないもう1年間の期間をフォロー
    • SLSⅡ
      • 2009/9-2012/12
      • 142人
      • MMF(目標 3g/day)2年間 or CYC(目標 2mg/kg/day)1年間+placebo1年間
  • Primary outcome
    • FVC

結果
  • baseline characteristics
    • 全体的にplacebo群に不利なbaseline
      • BDI(=baseline dyspnea index, 低いほど呼吸困難強い)はplaceboのほうが悪い
      • DLcoも46%, 54%とplaceboのほうが低い
      • QILD(=quantitative interstitial lung disease, HRCTでの線維化病変の面積)もplacebo群で大きい
    • 以下は同等
      • 50歳前後
      • 罹患年数 2 - 3 年
      • ややdiffuseが両者で多め
      • FVC 66-68%
      • mRSSによる皮膚病変の程度は同様



  • SLSⅡでは、MMF群において、20人(29%)が24ヶ月間の治療を完遂できなかった
    • 1人死亡、19人は他の理由で脱落
  • SLSⅠでは、placebo群において、24人(30.4%)が最初の12ヶ月間で、治療を中断した
    • 3人死亡、5人は治療失敗、16人は他の理由で脱落
    • 24ヶ月目まで継続できたのは56人
  • placebo群の14/56人が、後半の経過観察の期間に免疫抑制剤を使用した
    • 12人はPSL(平均11.6mg/day)、2人がCY(平均72.5mg/day)



  • baselineのFVCとQILD scoreで調整したあとの、MMFの有効性を示したのがTable2, Figure1
    • FVC改善は有意であった
      • 3-12ヶ月がplacebo群よりも有意であり、その後も治療効果は持続した
      • ITT解析を行うと、12ヶ月と24ヶ月の時点で、MMF群によってFVC改善した人たちの割合はそれぞれ64.4%, 71.7%だった
        • 改善した人たちの多くは、24ヶ月時点で、FVC絶対値における改善は5%以上だった
  • placebo群でも最初はFVC低下したが、12-21ヶ月の間に改善を認めている
    • 12ヶ月時点と24ヶ月時点でそれぞれFVC改善していた人の割合は、それぞれ28.8%, 37.5%だった




  • DLcoにおいても、baselineのDLcoとQILD scoreで調整すると、MMF群において、24ヶ月時点でDLco改善は有意だった
    • しかしながら、placebo群との比較は有意ではなかった


  • MMF群において、mRSSの改善も有意であった
    • MMF開始後に特に有意であった
    • これはdiffuseの皮膚硬化において顕著であり、limitedにおいてはplacebo群と有意差を認めなかった 


  •  TDI(Transition Dyspnea Index)も、MMF群において、placebo群と比較して有意ではなかったが改善していた



  • 副作用
    • MMF群において
      • 白血球減少4人
      • 好中球減少3人
      • 貧血8人
      • 肺炎5人



まとめ
  • MMF群とplacebo群の比較は今回の研究が初めて
  • MMF群において、FVC、DLco、TDI、mRSS、の改善を認めた
  • placeboと比較してMMFによる治療効果は最初の12ヶ月間に大きかった
    • これはplacebo群において後からPSL, CYを追加した影響もあるだろう
    • 重症のSSc-ILDは最初の1年に最もFVCが低下しやすいといわれているので、両者とも後半にstableとなったのは自然経過の影響もありそう
  • SLSⅠにおけるCYとは対照的に、MMFは24ヶ月まで治療効果が持続した
    • SLSⅠにおけるCY群では最初の12ヶ月時点で半数以上がFVCの改善を認めず、24ヶ月時点でplacebo群と有意差なかった
    • これによれば、もしかしたらCYよりもMMFがSSc-ILDに有効かもしれない
  • MMFによる副作用は許容できるもので、placebo群では24ヶ月間で8人治療失敗例がいて、MMF群では治療失敗例がいなかった
  • limitation
    • それぞれ異なる試験のグループを比較した
    • 調整はしたものの、baselineはplacebo群のほうが悪い
    • ランダム化していないので、何らかのバイアスが存在する可能性がある
  • しかし、試験の人数もSLSⅠ, Ⅱと比較して多く、今回の研究は示唆に富むものである


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