ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 7, July 2017, pp 1451–1460
Vol. 69, No. 7, July 2017, pp 1451–1460
背景
- ILDはSScにおける主な死因の1つである
- 既報では、SSc-ILDに対してCYCが有効であると報告されている
- N Engl J Med 2006;354:2655–66.
- Arthritis Rheum 2006;54:3962–70.
- しかしながら、CYCの毒性を考慮すると、MMFが代替治療として検討される
- open-label試験などでは有効性が報告されている
- より詳しくMMFの有効性を調べるために、Tashkinらは、MMF vs. CYCで比較した(Scleroderma Lung Study(SLS)Ⅱ )
- MMF群の多くがFVCの改善を示した
- しかし、placeboが設定されていなかったため、SSc-ILDは進行せず治療の必要もない場合もあるので、そういった自然経過においてMMFがどれだけ有効なのかは不明であった
- Lancet Respir Med 2016;4:708–19.
- 今回は、SLSⅡにおけるMMF群と、SLSⅠにおけるplacebo群を比較することが目的である
方法
- inclusion criteriaはSLSⅡもSLSⅠも似ている
- 共通criteria
- 18歳以上
- 罹患年数(最初のRaynaud症候群以外の症状を認めた時から) ≦ 7年
- FVC 40-85%(SLSⅠ)or FVC 40-80%(SLSⅡ)
- DLco ≧ 40% or 臨床的に明らかなPHなしのDLco 30-39%
- HRCTにてGGOあり(網状変化や気管支拡張など構造的変化の有無を問わない)
- SLSⅠでは、HRCTにて所見がなければスクリーニングとして積極的に気管支鏡を行い、BALにて3%以上の好中球 and/or 2%以上の好酸球であれば組み込まれ、16/162人(9.9%)はこのcriteriaで組み込まれた
- SLSⅡは気管支鏡は施行されておらず、HRCTにおける所見ありが絶対的なinclusion criteriaだった
- exclusion criteriaはSLSⅠ、Ⅱとも同様
- study design
- SLSⅠ
- 2000/9-2004/1
- 162人
- CYC(目標 2mg/kg/day)or placebo
- 1年間の治療期間と、さらに治療しないもう1年間の期間をフォロー
- SLSⅡ
- 2009/9-2012/12
- 142人
- MMF(目標 3g/day)2年間 or CYC(目標 2mg/kg/day)1年間+placebo1年間
- Primary outcome
- FVC
結果
- baseline characteristics
- 全体的にplacebo群に不利なbaseline
- BDI(=baseline dyspnea index, 低いほど呼吸困難強い)はplaceboのほうが悪い
- DLcoも46%, 54%とplaceboのほうが低い
- QILD(=quantitative interstitial lung disease, HRCTでの線維化病変の面積)もplacebo群で大きい
- 以下は同等
- 50歳前後
- 罹患年数 2 - 3 年
- ややdiffuseが両者で多め
- FVC 66-68%
- mRSSによる皮膚病変の程度は同様
- SLSⅡでは、MMF群において、20人(29%)が24ヶ月間の治療を完遂できなかった
- 1人死亡、19人は他の理由で脱落
- SLSⅠでは、placebo群において、24人(30.4%)が最初の12ヶ月間で、治療を中断した
- 3人死亡、5人は治療失敗、16人は他の理由で脱落
- 24ヶ月目まで継続できたのは56人
- placebo群の14/56人が、後半の経過観察の期間に免疫抑制剤を使用した
- 12人はPSL(平均11.6mg/day)、2人がCY(平均72.5mg/day)
- baselineのFVCとQILD scoreで調整したあとの、MMFの有効性を示したのがTable2, Figure1
- FVC改善は有意であった
- 3-12ヶ月がplacebo群よりも有意であり、その後も治療効果は持続した
- ITT解析を行うと、12ヶ月と24ヶ月の時点で、MMF群によってFVC改善した人たちの割合はそれぞれ64.4%, 71.7%だった
- 改善した人たちの多くは、24ヶ月時点で、FVC絶対値における改善は5%以上だった
- placebo群でも最初はFVC低下したが、12-21ヶ月の間に改善を認めている
- 12ヶ月時点と24ヶ月時点でそれぞれFVC改善していた人の割合は、それぞれ28.8%, 37.5%だった
- DLcoにおいても、baselineのDLcoとQILD scoreで調整すると、MMF群において、24ヶ月時点でDLco改善は有意だった
- しかしながら、placebo群との比較は有意ではなかった
- MMF群において、mRSSの改善も有意であった
- MMF開始後に特に有意であった
- これはdiffuseの皮膚硬化において顕著であり、limitedにおいてはplacebo群と有意差を認めなかった
- TDI(Transition Dyspnea Index)も、MMF群において、placebo群と比較して有意ではなかったが改善していた
- 副作用
- MMF群において
- 白血球減少4人
- 好中球減少3人
- 貧血8人
- 肺炎5人
まとめ
- MMF群とplacebo群の比較は今回の研究が初めて
- MMF群において、FVC、DLco、TDI、mRSS、の改善を認めた
- placeboと比較してMMFによる治療効果は最初の12ヶ月間に大きかった
- これはplacebo群において後からPSL, CYを追加した影響もあるだろう
- 重症のSSc-ILDは最初の1年に最もFVCが低下しやすいといわれているので、両者とも後半にstableとなったのは自然経過の影響もありそう
- SLSⅠにおけるCYとは対照的に、MMFは24ヶ月まで治療効果が持続した
- SLSⅠにおけるCY群では最初の12ヶ月時点で半数以上がFVCの改善を認めず、24ヶ月時点でplacebo群と有意差なかった
- これによれば、もしかしたらCYよりもMMFがSSc-ILDに有効かもしれない
- MMFによる副作用は許容できるもので、placebo群では24ヶ月間で8人治療失敗例がいて、MMF群では治療失敗例がいなかった
- limitation
- それぞれ異なる試験のグループを比較した
- 調整はしたものの、baselineはplacebo群のほうが悪い
- ランダム化していないので、何らかのバイアスが存在する可能性がある
- しかし、試験の人数もSLSⅠ, Ⅱと比較して多く、今回の研究は示唆に富むものである
0 件のコメント:
コメントを投稿