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2017年9月11日月曜日

SSc-ILDに対するMMF vs. CYC:SLSⅡ


Lancet Respir Med 2016; 4: 708–19

背景

  • SSc-ILDはSScにおいて死因の主なものである
  • SLSⅠでは、経口CYCで1年間治療し、肺機能、呼吸困難、皮膚効果、健康関連QOLはplaceboより改善しており、HRCTでの病変の範囲も縮小していた。
    • N Engl J Med 2006; 354: 2655–66. 
    • Chest 2009; 136: 1333–40. 
    • Eur Radiol 2011; 21: 2455–65. 

    • しかし、その治療効果は徐々になくなり、24ヶ月時点ではplacebo群と有意差がなくなった
    • また、二次発癌など毒性の問題もあり、長期投与が困難である
  • MMFは、その安全性と治療効果から、固形臓器移植後や自己免疫疾患によく使用される薬剤である
    • 複数のopen-label試験では、SSc-ILDに対しても有効性が報告されている
  • そこで、今回はSSc-ILDに対して、MMFとCYCの有効性を比較することとした

方法
  • ランダム化、二重盲検、多施設
  • inclusion criteria
    • 18−75歳
    • FVC 45-80%
    • the Magnitude of Task component of the Mahler Baseline Dyspnea Index; にて労作性呼吸困難 grade2以上
    • HRCTにてなんらかのGGO病変あり(線維化と関係なし)
    • 罹患年数(最初のRaynaud症候群以外の症状を認めた時から) ≦ 7年
  • exclusion criteria
    • FVC ≦ 45%
    • FEV1/FVC ≦ 65%
    • なんらかの原因で明らかな気道・気管狭窄あり
    • UCG or CAGにて介入が必要な程度のPHあり
    • DLco ≦ 40% or 臨床的に明らかなPHなしのDLco 30-39%
    • SSc以外に起因するHRCTで明らかな肺病変あり
    • 6ヶ月以内に喫煙歴あり
    • 持続性で原因不明の血尿
    • 持続性の白血球減少(<4000) or 血小板減少(<15万)or 貧血(<10)
    • baselineの肝酵素・ビリルビンが正常上限の1.5倍以上
    • カプトプリルを使用している(←腎クリーゼとの兼ね合い?)
    • 血清Cr ≧ 2mg/dL
    • 不安的なうっ血性心不全
    • 妊婦 or 授乳婦
    • 過去に8週間以上のMMF or CYCの投与を受けた
    • 過去に2回以上のIVCY投与を受けた
    • 組み入れ30日以内にMMF or CYCの投与を受けた
    • 活動性感染症あり
    • 他の重篤な併存疾患(悪性腫瘍など)、慢性の衰弱性疾患、薬物中毒の既往
    • 妊娠可能だが避妊できない女性
    • D-ペニシラミンやMTX, AZAなど、疾患活動性を修飾しうるなんらかの薬物を組み入れ30日以内に使用している
    • PSL ≦ 10mg/day
  • 患者がカプセルに入った薬剤を内服し、MMF、CYC、placeboのどれかはわからないようになっている
  • 薬剤の用量
    • MMF
      • 500mg 1日2回 から開始
      • 最大 1.5g 1日2回 まで増量
      • 24ヶ月間投与
    • CYC
      • (体重に応じて)50-150mg 1日1回から開始
      • 最大 1.8-2.3mg/kgまで増量
      • 12ヶ月間投与、その後の12ヶ月間はplacebo
  • Primary outcome
    • FVC
  • 統計
    • 30%の脱落、80%の検出力、αエラー5%、両側検定、24ヶ月時点でFVC改善が4%異なると仮定し、必要なサンプルサイズは150と計算した
    • それなりに脱落や死亡、治療失敗などがあると想定し、primary outcome, secondary outcome共にjoint modelで解析
    • 安全性と耐用性に関してはKaplan-Meier曲線を作成し、有意性の評価に関してはlog-rank testで解析した
    • 副作用の発生率に関してはχ2乗検定 or Fisher's exact testを使用した

結果
  • 期間:2009/9-2013/1
  • 198人がスクリーニング
    • そのうち142人が組み込まれランダム化された
    • そのうち126人がbaseline HRCTがあり、1つ以上のoutcome measureがあるため解析に組み込まれた
  • CYC群(73人)
    • 36人が治療完遂できなかった
      • 2人死亡
        • その後、なんらかの理由で脱落した中から9人死亡し、計11人が死亡
      • 2人治療失敗
      • 32人は他の理由で脱落
  • MMF群(69人)
    • 20人が治療完遂できなかった
      • 1人死亡
        • その後、なんらかの理由で脱落した中から4人死亡し、計5人が死亡
      • 治療失敗なし
      • 19人は他の理由で脱落

  • 全体のbaseline
    • 平均年齢52歳
    • 74%女性
    • Raynaud以外の最初の症状から2.6年
    • 58%がびまん性の皮膚病変あり
    • 平均FVC 66.5%, TLC 65.8%, DLco 54.0%
  • MMF群とCYC群で大きな違いはなさそう


  • 24ヶ月間におけるΔFVC
    • MMF群とCYC群で有意差なし(p=0.24)
  • 両群ともFVCは改善していた


  • primary outcome
    • 24ヶ月時点でのΔFVC
      • MMF群 2.19 (95% CI 0.53–3.84) vs.  CYC群 2.88 (1.19–4.58).
        • 両群とも改善しているが有意差なし
        • difference in change –0.70(95% CI –3.1 to 1.7; p=0.56)
  • mRSS(皮膚病変)、DLco, HRCTでの肺病変の面積なども両群で同等
    • mRSSは両群とも改善
    • DLcoは両群とも悪化
    • HRCTでの肺病変の面積は治療によって改善も悪化もしなかった



  • Figure3:それぞれ個人における、呼吸機能検査の改善の程度とその人数を表したグラフ
    • (A):全体、(B):治療完遂グループ、(C):脱落したグループ
    • 両群とも、試験期間全体で、FVCが改善した患者の割合は多かった
      • MMF 71.7% vs. CYC 64.7% ; p=0.55 
    • それぞれの群のFVCが改善した人において、平均のΔFVC改善度
      • MMF(34人)7.5 vs.  CYC(34人)7.1 
    • 治療から脱落した人は呼吸機能検査の悪化している人が多かった




  • 副作用
    • CYC群のほうが白血球減少、血小板減少が多かった


まとめ
  • SSc-ILDに対する24ヶ月間のMMF vs. 12ヶ月間CYC+12ヶ月間placebo は有意差が出なかった
  • 両群ともFVCは改善した
  • PHがある場合は除外されているので、実地臨床では有効性についてそこを加味する必要がある

CYCは毒性の問題で1年間しか使えないのはしょうがないとしても、その後AZAなども使われず放っておかれるのはちょっとMMFに有利な気もしますが。。。CYCの二次発癌の関係で訴訟的にも使いにくいアメリカがなんとかMMFのエビデンスを出したくてデザインした、という感じみたいです(1人で読んでたら維持治療なしに関してスルーして単純にすげーなMMF!ってなるところでしたが、指導医に教えていただいて気づきました、危ない危ない)
とりあえず、現状で期待されるSSc-ILDの治療の選択肢としては、MMF, CYC, TCZ, RTX、移植でしょうか。MMFが日本でも強皮症に対して使用できるようになれば、副作用もCYCよりも少ないかもしれないし、患者さんに合わせて選択できていいですね。
疾患が疾患なだけに、これらのデータと新規治療薬の開発が望まれます。

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