Lancet Respir Med 2016;
4: 708–19
- SSc-ILDはSScにおいて死因の主なものである
- SLSⅠでは、経口CYCで1年間治療し、肺機能、呼吸困難、皮膚効果、健康関連QOLはplaceboより改善しており、HRCTでの病変の範囲も縮小していた。
- N Engl J Med 2006; 354: 2655–66.
- Chest 2009; 136: 1333–40.
- Eur Radiol 2011; 21: 2455–65.
- しかし、その治療効果は徐々になくなり、24ヶ月時点ではplacebo群と有意差がなくなった
- また、二次発癌など毒性の問題もあり、長期投与が困難である
- MMFは、その安全性と治療効果から、固形臓器移植後や自己免疫疾患によく使用される薬剤である
- 複数のopen-label試験では、SSc-ILDに対しても有効性が報告されている
- そこで、今回はSSc-ILDに対して、MMFとCYCの有効性を比較することとした
方法
- ランダム化、二重盲検、多施設
- inclusion criteria
- 18−75歳
- FVC 45-80%
- the Magnitude of Task component of the Mahler Baseline Dyspnea Index; にて労作性呼吸困難 grade2以上
- HRCTにてなんらかのGGO病変あり(線維化と関係なし)
- 罹患年数(最初のRaynaud症候群以外の症状を認めた時から) ≦ 7年
- exclusion criteria
- FVC ≦ 45%
- FEV1/FVC ≦ 65%
- なんらかの原因で明らかな気道・気管狭窄あり
- UCG or CAGにて介入が必要な程度のPHあり
- DLco ≦ 40% or 臨床的に明らかなPHなしのDLco 30-39%
- SSc以外に起因するHRCTで明らかな肺病変あり
- 6ヶ月以内に喫煙歴あり
- 持続性で原因不明の血尿
- 持続性の白血球減少(<4000) or 血小板減少(<15万)or 貧血(<10)
- baselineの肝酵素・ビリルビンが正常上限の1.5倍以上
- カプトプリルを使用している(←腎クリーゼとの兼ね合い?)
- 血清Cr ≧ 2mg/dL
- 不安的なうっ血性心不全
- 妊婦 or 授乳婦
- 過去に8週間以上のMMF or CYCの投与を受けた
- 過去に2回以上のIVCY投与を受けた
- 組み入れ30日以内にMMF or CYCの投与を受けた
- 活動性感染症あり
- 他の重篤な併存疾患(悪性腫瘍など)、慢性の衰弱性疾患、薬物中毒の既往
- 妊娠可能だが避妊できない女性
- D-ペニシラミンやMTX, AZAなど、疾患活動性を修飾しうるなんらかの薬物を組み入れ30日以内に使用している
- PSL ≦ 10mg/day
- 患者がカプセルに入った薬剤を内服し、MMF、CYC、placeboのどれかはわからないようになっている
- 薬剤の用量
- MMF
- 500mg 1日2回 から開始
- 最大 1.5g 1日2回 まで増量
- 24ヶ月間投与
- CYC
- (体重に応じて)50-150mg 1日1回から開始
- 最大 1.8-2.3mg/kgまで増量
- 12ヶ月間投与、その後の12ヶ月間はplacebo
- Primary outcome
- FVC
- 統計
- 30%の脱落、80%の検出力、αエラー5%、両側検定、24ヶ月時点でFVC改善が4%異なると仮定し、必要なサンプルサイズは150と計算した
- それなりに脱落や死亡、治療失敗などがあると想定し、primary outcome, secondary outcome共にjoint modelで解析
- 安全性と耐用性に関してはKaplan-Meier曲線を作成し、有意性の評価に関してはlog-rank testで解析した
- 副作用の発生率に関してはχ2乗検定 or Fisher's exact testを使用した
結果
- 期間:2009/9-2013/1
- 198人がスクリーニング
- そのうち142人が組み込まれランダム化された
- そのうち126人がbaseline HRCTがあり、1つ以上のoutcome measureがあるため解析に組み込まれた
- CYC群(73人)
- 36人が治療完遂できなかった
- 2人死亡
- その後、なんらかの理由で脱落した中から9人死亡し、計11人が死亡
- 2人治療失敗
- 32人は他の理由で脱落
- MMF群(69人)
- 20人が治療完遂できなかった
- 1人死亡
- その後、なんらかの理由で脱落した中から4人死亡し、計5人が死亡
- 治療失敗なし
- 19人は他の理由で脱落
- 全体のbaseline
- 平均年齢52歳
- 74%女性
- Raynaud以外の最初の症状から2.6年
- 58%がびまん性の皮膚病変あり
- 平均FVC 66.5%, TLC 65.8%, DLco 54.0%
- MMF群とCYC群で大きな違いはなさそう
- 24ヶ月間におけるΔFVC
- MMF群とCYC群で有意差なし(p=0.24)
- 両群ともFVCは改善していた
- primary outcome
- 24ヶ月時点でのΔFVC
- MMF群 2.19 (95% CI 0.53–3.84) vs. CYC群 2.88 (1.19–4.58).
- 両群とも改善しているが有意差なし
- difference in change –0.70(95% CI –3.1 to 1.7; p=0.56)
- mRSS(皮膚病変)、DLco, HRCTでの肺病変の面積なども両群で同等
- mRSSは両群とも改善
- DLcoは両群とも悪化
- HRCTでの肺病変の面積は治療によって改善も悪化もしなかった
- Figure3:それぞれ個人における、呼吸機能検査の改善の程度とその人数を表したグラフ
- (A):全体、(B):治療完遂グループ、(C):脱落したグループ
- 両群とも、試験期間全体で、FVCが改善した患者の割合は多かった
- MMF 71.7% vs. CYC 64.7% ; p=0.55
- それぞれの群のFVCが改善した人において、平均のΔFVC改善度
- MMF(34人)7.5 vs. CYC(34人)7.1
- 治療から脱落した人は呼吸機能検査の悪化している人が多かった
- 副作用
- CYC群のほうが白血球減少、血小板減少が多かった
まとめ
- SSc-ILDに対する24ヶ月間のMMF vs. 12ヶ月間CYC+12ヶ月間placebo は有意差が出なかった
- 両群ともFVCは改善した
- PHがある場合は除外されているので、実地臨床では有効性についてそこを加味する必要がある
とりあえず、現状で期待されるSSc-ILDの治療の選択肢としては、MMF, CYC, TCZ, RTX、移植でしょうか。MMFが日本でも強皮症に対して使用できるようになれば、副作用もCYCよりも少ないかもしれないし、患者さんに合わせて選択できていいですね。
疾患が疾患なだけに、これらのデータと新規治療薬の開発が望まれます。
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