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2017年9月8日金曜日

短期間での呼吸機能検査の傾向がSSc-ILDの予後を予想する


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 8, August 2017, pp 1670–1678 

背景

  • SSc-ILDとIPFは予後評価の方法が似ている
    • いずれも、呼吸機能検査と胸部CTで定量化されたベースラインの重症度が予後と関連している
    • しかしながら、IPFの予後評価は少しSSc-ILDと異なる点もある
      • それは、IPFにおいては、6−12ヶ月間の連続したFVC低下が、予後に最も関連していることである
      • 短期間のFVC変化がIPFの主要評価項目としてよく使われている
    • SSc-ILDにおいては、FVCと中〜長期間の予後の関連性についてはデータが限られており、臨床試験におけるFVCの使用方法もIPFに準じている
    • しかしながら、IPFよりもSSc-ILDは進行が遅く、SSc-ILDは肺血管障害も生じるため、FVCの変化量の解釈には注意が必要である
  • 今回の調査は、コホートを使用して、SSc-ILDにおける呼吸機能検査の1年後と2年後の変化が15年間の生存率とどのような関係があるかみるものである

方法
  • 215人のSSc-ILD患者を以前に論文化されたコホートから抽出
  • exclusion criteria
    • フォロー開始9ヶ月間以内に死亡(15人)
    • 最初の12ヶ月間で呼吸機能検査がフォローされていない(38人)
  • 215人から上記のexclusion criteriaに当てはまった人を除いた162人で解析
  • 選択バイアスを検討するために、exclusion criteriaに当てはまり除外された38人と9ヶ月以降のデータを比較した

結果
  • baseline characteristics
    • 女性が多い
    • 限局性の肺線維化が70%
    • 平均155ヶ月間フォローし、その間に52%が死亡
    • 除外された38人と試験に組み込まれた162人でbaselineの性別、喫煙歴、呼吸機能検査、DLco、Kco、生存率に有意差なかったが、年齢はやや高かった(mean 53 y/o vs. 48 y/o; p=0.03)
    • baselineの因子で独立した死亡リスク因子
      • FVC (HR 0.98, 95%CI 0.97–1.00; P=0.01)
      • DLco  (HR 0.96, 95% CI 0.94–0.97; P=0.0005)
      • Kco  (HR 0.97, 95% CI 0.96–0.99; P=0.0005)
      • FVC:DLco比 (HR 2.73, 95% CI 1.79–4.18; P=0.0005)
      • disease stage (HR 3.01, 95% CI 1.90–4.74; P=0.0005)
      • 年齢 (HR 1.04, 95% CI 1.02–1.05; p=0.0005) 
    • 性別、喫煙歴、抗トポイソメラーゼ抗体、皮膚硬化の範囲(びまん性or限局性)、全身症状出現からの期間は予後不良因子とはならなかった

※KCO= DLCO / VA(肺胞換気量)
※extensive:胸部HRCTにおける病変の広がり > 20% or FVC < 70%



  • 12ヶ月間のFVCとDLcoのデータにおいて、予後不良因子となったのは下記
    • 持続的なFVC低下:広範囲の肺線維化がある場合に限る 



    • 全体コホートでも、以下があれば予後不良
      • FVC低下量 ≧ 10% or DLco低下量 ≧ 15%
      • composite categorical decline =CCD(FVC低下量 ≧ 10% or FVC低下量 5–9% かつ DLco低下量 ≧ 15%)

 (A):全体、(B):広範囲に肺の線維化あり、(C):限局した肺の線維化のみ

(A):全体、(B):広範囲に肺の線維化あり、(C):限局した肺の線維化のみ

  •  12ヶ月時点で、呼吸機能検査以外で予後不良因子となったのは下記
    • 年齢(HR 1.03, 95% CI 1.01–1.05; P=0.005), 
    • baseline stage of disease (HR 2.30, 95% CI 1.43–3.70; P=0.001)
    • baseline KCO (HR 0.98, 95% CI 0.96–0.99; P=0.005) 
    • CCD (HR 2.25, 95% CI 1.39–3.63; P=0.001)
    • PHあり (HR 2.05, 95% CI 1.07–3.91; P=0.03) 

  • 24ヶ月間での呼吸機能検査における予後因子は下表
    • FVCとCCDよりも 、DLcoに関する指標が予後不良因子となる


(A)-(C):全体


考察
  • 最初の1年間においては、FVCが最も正確に予後に関する情報を示す
  • FVCの変化量がmarginalな場合(5-9%)の場合はDLcoも考慮するとよさそう
  • 1年間ではなく2年間とすると、FVCよりもDLcoがより正確に予後に関する情報を示す
    • DLcoがFVCよりも予後不良因子となるのは、時間が経過すると、vasculopathyの関与が大きくなるからかもしれない
  • baselineの重症度(ここでは肺の線維化の程度)と呼吸機能検査のtrendが重要
  • もともと肺の線維化が限局している場合には進行してもself-limitedな場合もあり、それゆえ今回は短期間の進行が予後不良因子とならなかったのかもしれない


評価項目の分類が細かくてうまく読みきれていない気もしますが・・・

ひとまず、
分類SSc-ILDの早期はFVC低下、時間を経るとvasculopathyの要素でDLco低下が予後不良因子となるとのこと。
baselineの肺の線維化の程度にもそれらの変化量の解釈が変わってきそう。
もともと限局した肺の線維化の場合はFVC低下が進行してもself-limitedなこともあり、それが予後をよくした可能性もあると本文では述べられていますが、治療したいのはむしろこういう早期の進行例であり、DLcoが低下≒血管障害?が進行する前に介入したい。本文中では読みきれなかったですがこれらの群はCYCなり治療介入されていて予後がよくなったんでしょうか。

にしても、やはり強皮症は生存率が低いですね・・・。先日の講演会でも、某先生が「強皮症における肺高血圧は血管を拡張させるだけでなく、寛解を目指せるような抗線維化を目指さないといかん」というのがよく心にしみるデータです。

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