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2017年9月7日木曜日

SLE researchの展望

ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 8, August 2017, pp 1552–1559



SLE研究に阻む壁
  • SLEの病態に迫る治療の研究はこれまで期待させては失敗することを繰り返してきた
    • 最近では、phaseⅡでは有望な結果を残したepratuzumab(CD22に対するモノクローナル抗体)がphaseⅢで失敗したこと
  • TNF阻害薬の試験で失敗し、その次にB細胞をターゲットにした治療が注目された
    • belimumab, atacicept, tabalumabなど
  • 2000年代になってもなお、classⅣの15年以上の経過でESRDに至る割合が40%以上で、3年間寛解を維持しているのは15%、10年間の経過であれば4%未満あることから、B細胞をターゲットにした治療以外にもよりよい治療をみつける必要がある。
Table1:SLEの病態における新規ターゲット


IFNを標的にした治療
  • 最近は、IFNをブロックする治療が、遺伝要因に関する研究や自然免疫系の理解によって重要視されるようになってきた
  • 最初の抗IFNα抗体(rontalizumab)の治療は失敗に終わったが、大半のIFNαサブタイプをブロックできるsifalimumabに関する試験のプライマリーエンドポイントは満足できるものであった
    • これらの薬剤はIFNβはブロックしないため、他のtype1-IFNが注目されるようになった
  • 全てのtype1-IFNを阻害できる抗IFN受容体抗体は、有望な成績を残している
    • anifrolmab(type1-IFN受容体サブユニット1を阻害するヒトIgG1κモノクローナル受容体)は、moderate以上の重症度で既存の治療に抵抗性のSLE患者を対象にしたphase2においてプライマリーエンドポイントを満足した(MUSE study)
    • 2016EULARのanual congressでは、全てのtype1-IFNをブロックすれば多臓器病変を改善できる可能性を提唱した
    • しかしながら、ベースのIFNの程度によって、効果に違いが出ることは予想される
      • 実際に、anifrolumabはsifalimumabよりも強くIFNを抑制し、MUSE studyではベースラインでよりIFNが亢進している患者のほうが効果がよかった

SLEのheterogenesityに関して
  • SLEは臨床的にheteroであるため、多様な臨床症状を示す場合のバイオマーカーや治療効果について、まだあまり解明されていない
  • これらのheterogenecityを解明するには、それぞれ個人の多様な遺伝子を疾患に対してpathogenicなのかprotectiveなのかゲノムを全解析しなくてはならない
  • そのために、"-omics"と呼ばれる一連の技術を使用することが必要である



  • 最近では、whole blood transcriptomics によって、予想以上にSLEがheterogenecityであることが認識された

    • plasmablast signatureが疾患活動性とよく相関する
    • 一方で、好中球signatureは腎炎と関連がある
    • さらには、5つの免疫系signatures(erythropoiesis, IFN response, myeloid lineage/neutrophils, plasmablasts, and lymphoid lineage)によって7つのグループによって層別化される

    B細胞をターゲットにした治療への反応性
    • SLEに関する自己抗体は、患者の人種によっても傾向が異なるが、この多様性を考慮した研究は少ない
    • B細胞の異常や形質細胞のサブセットも、個人によって異なる
    • しかしながら、制御性B細胞の特性がある程度一定していることは、B細胞を標的にした治療の根拠となる

    試験的なチャレンジ
    • CD8 T細胞が現在の疾患活動性に関係なくSLEやAAVの予後と関係することが報告されている
    • IL-7受容体経路も疾患の予後不良と関連している
    • これらより、IL-7受容体とCD8 T細胞をターゲットにした治療が検討されている
    • B細胞を排除することで活性化CD8 T細胞を減少させるということも、RTXがSLEなどの自己免疫疾患に有効であるメカニズムとして想定される

    heterogenesityからよりspecificな治療へ
    • 現在ある情報の妥当性と、疾患のサブタイプと予後とbiologic pathwayの関係を、コホートなどを使用してより明らかにしていくことが必要である
    • また、試験によってresponderであった患者群とnon-responderであった患者群をより詳しく解析することも必要である
    • そうでもしないと、私たちはいつまでも、ステロイドのような多面的に効果のあるものに頼らなくてはいけなくなる

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