- dcSScは非常に稀である
- SScは10-20/100万人、dcSScはそのうち25%程度
- 早期に全身臓器病変を生じ、進行が早く痛みを伴う皮膚の浮腫を認め、疾患予後は非常に悪い
- しかしながら、5年生存率・10年生存率はそれぞれ68%・50%と改善はしてきている
- これまで、経過を改善する薬剤はみつかっていない
- RCTは疾患の希少性により組みにくい
- それでも組まれた過去のRCTでは、有望と思われた治療が失敗している
- MTX(Arthritis Rheum 2001;44:1351–8. ), 抗TGFβ1抗体(Arthritis Rheum 2007;56:323–3.)など
- 今回は観察研究を用いて早期のdcSScに対するマネジメントを調べた
方法
- The European Scleroderma Observational Study (ESOS) は前向き観察研究コホート
- inclusion criteria
- 早期のdcSSc
- 18歳以上
- exclusion criteria
- 以前に造血幹細胞移植あり
- 4ヶ月間以上の免疫抑制治療あり
- 直近1ヶ月間にMTX・CYC・MMF以外の免疫抑制剤の使用あり
- 以下の治療を医師が選択する
- MTX:20-25mg/w 経口 or 皮下投与
- MMF:500 mg 1日2回 2週間投与し、その後1g 1日2回へ増量
- CYC
- 静注:最低 500mg/m2/月 、6-12ヶ月間
- 経口:1-2mg/kg/day 12ヶ月間
- CYCで治療された患者は維持治療(MTX, AZA, MMF)へ移行する
- 免疫抑制治療なし
- ベースラインと、その後3ヶ月おきに24ヶ月まで評価
- 2010/7-2014/9の期間の患者を抽出
- Primary outcome:ΔmRSS
結果
- 326人、19カ国、50施設よりリクルート
- 160人はヨーロッパより
- RCTではないので治療プロトコールによって人数に偏りあり
- 65 (19.9%) MTX
- 118 (36.2%) MMF
- 87 (26.7%) CYC
- 56 (17.2%) 免疫抑制治療なし
- 治療プロトコールの変更を1回、2回、3回行ったのはそれぞれ60 (18.4%), 12 (3.7%) 、 1 (0.3%)
- 24ヶ月間で最初の治療プロトコールを継続したのは下記
- 76.2% (MTX)
- 79.7% (MMF)
- 79.2% (CYC)
- 73.3% (no immunosuppressant)
- 35人(10.7%)が死亡
- そのうち31人はSSc関連病変によって死亡
- 42人(12.9%)がフォローから脱落
- baseline characteritics
- 平均mRSS 21
- 治療プロトコールによる違いはなさそう(p=0.306)
- 統計学的に有意に差がある項目
- 性別:CYCには女性少ない
- 皮膚浮腫発症からの期間:免疫抑制治療なし群が最も長い
- ステロイドを含む以前の免疫抑制治療歴あり:CYC群が最も多い
- 肺線維症あり、心臓病変あり:CYC群が最も多い
- 腎症:免疫抑制治療なし群が多い
- 筋病変:MTX群が最も多い
- the cochin hand function scale (CHFS):CYC群で最も機能が悪い
- 94(28.8%)でPSL内服しており、平均用量は10mg/day
※肺線維症:以下のいずれかで定義
- HRCTにて認められる肺病変
- HRCT施行されていない場合にはFVC or DLcoが55%以下でX線にて両側下肺野に陰影を認める
- Table2:それぞれのcharacteriticsにおいて、baseline mRSSとΔmRSSに関する交絡因子か否かを調べたもの
- 交絡因子となったもの
- 年齢
- 皮膚浮腫発症からの期間
- ステロイド使用歴
- トポイソメラーゼ抗体
- RNA polymeraseⅢ抗体陽性
- 肺線維症
- 肺高血圧症
- 心臓病変
- 腎病変
- 筋病変
- HAQ-DI
- Cochin hand function
- FACIT
- 12ヶ月間、24ヶ月間のmean ΔmRSSはそれぞれ -2.9, -6.7
- 4つの治療プロトコール間でΔmRSSは有意差なし
- secodary outcomeであるFVC, DLcoも4つの治療プロトコール間で有意差なし
- しかしながら、肺線維症がある場合に限ると、初期治療がCYCであった群にてFVC7.4%増加し、MTX群 2.0%, MMF群3.2%, 免疫抑制治療なし群4.0%増加と有意差を認める(p=0.035)
- HAQ-DI, CHFSは4つの治療プロトコール間で有意差なし
- 生存率は免疫抑制治療なし群が最も低かったが、4つの治療プロトコール間で有意差なし
- 24ヶ月時点でno immunosuppressant group(84.0%)、 94.1%(MTX) 88.8%(MMF)、 90.1%(CYC)
- ベースラインに肺線維症 or 肺高血圧がある患者は生存率が有意に低い(24ヶ月時点 74.6% vs. 91.7%; p<0.0005)
- ベースラインに心臓病変がある場合も生存率が低い(71.6% vs. 90.7% ; p<0.0005)
- 副作用発現率
- MTX(38.7%)、 MMF(22.0%)、CYC(22.8%)
- 副作用によって薬剤を中止したのはそれぞれ 12.0%, 7.7%, 4.5%
考察
- 4つの治療プロトコール間に効果の差は認めなかった
- 全ての治療プロトコール群でmRSSは改善したが、no immunosuppressant groupが最も改善度が低かった。また、no immunosuppressant groupが最も生存率が低かった。
- CYCが肺線維症に対して効果を示した
- 今回の研究で念頭においておく必要があるのは重要なのは、no immunosuppressant groupがコントロール群ではないということである
- no immunosuppressant groupは罹病期間が長く、腎病変をより多く有していた
- 今回の結果は、治療によるメリット(mRSSを含む)があると報告された最近の2つの研究(ASTIS trial of autologous stem cell transplantation、the Scleroderma Lung Study (SLS) II)を支持するものである
- TCZによるRCTでもmRSSは24週間時点で26から3.9units改善した(placebo:26から 1.2units改善)
- Lancet 2016;387:2630–40.
- limitation:患者の治療によるoutcomeが、どの程度baseline characteriticsによる影響を受けているのかわからない
観察研究のため本当の意味でのコントロール群の設定ができませんでしたが、早期に免疫抑制剤を使用すればに皮膚病変は改善度が大きくなり、それは現時点では免疫抑制剤による違いはなさそうです。
治療なし群で生存率が低かったということは、どうやらreal-worldで僕らが治療しなそうな患者群は、肺病変もあるし治療したほうがいいだろう!と思って治療する患者群よりも生存率が低くなってしまうのでしょうか(どこまで2-3%程度腎症が多い影響、数ヶ月間の罹病期間の違い影響があるのかよくわかりませんが)。
持続的なFVC低下やDLco低下がある場合以外に、早期であれば呼吸機能検査の推移を確認する前に治療介入をおこなうことも検討すべき?
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