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2017年9月27日水曜日

RAに対するTNF阻害薬の漸減・中止に関して:DRESS studyのextension report


Bouman CAM, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1716–1722.
  
本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

背景

  • RAにおける最初の抗サイトカイン治療は、TNF阻害薬から始まった
  • しかしながら、TNF阻害薬は、感染、皮膚ガン、皮膚硬化・lupus・心不全など特異的な副作用、自己注射の負担、コストの面など様々なデメリットもある
  • DREE study(Dose REduction Strategy of Subcutaneous TNF inhibitors) は、TNF阻害薬を疾患活動性を指標にしながら漸減していけるか調べている研究であり、再燃に関しては通常治療と同等であるとの結果を示してきた
    • しかしながら、minor flareや微小なレントゲンでの骨破壊の進行は減量群で起こりやすく、副作用の面では利点は示されていない。コストの面では効果は絶大だった。
  • 今回の報告は、DRESS studyにおける長期報告の結果である

方法
  • DRESS studyについて
    • 18ヶ月間の介入期間、open-label、ランダム化、非劣勢証明試験
    • 疾患活動性を指標にADA, ETNを漸減する群(DR群)と通常治療群(UC群)に2:1の比率で割付
      • UC群
        • DAS28-CRP < 3.2を指標に通常のコントロールを継続する
      • DR群
        • 再燃 or 薬剤中止できるまで、3ヶ月毎に投与間隔を伸ばしていく
        • flareしたらNSAIDsやステロイド筋注 or 関注を使用し、それでも4週間改善しない場合にはTNF阻害薬を増量する
        • flareした症例は、その後漸減はしない
    • flareの定義
      • short-lived flare
        • ΔDAS28-CRP >1.2
        • ΔDAS28-CRP >0.6 かつ その時点でDAS28-CRP ≥3.2 
      • major flare
        • 上記flareが12週間持続
  • extension phase
    • 18-36ヶ月
    • この期間では、両群とも同等の治療プロトコルへ変更(漸減に関してもそれぞれの施設に一任しており、UC群でも積極的に漸減するよう推奨しているわけではない)
  • bDMARDs開始する場合の順序


  • primary outcome
    • major flareの累積頻度


結果
  • フローチャート(figure1)
    • DRESS studyに組み込まれた180人のうち、172人(DR群115人、UC群57人)がextension phaseへ移行
    • extension phase開始時点でのcharacteristicsも、csDMARDs使用率がUC群で多い以外には両群で同等(table1)



  • extension phase(18-36ヶ月)における累積major flareの割合
    • 有意差なし
      • DR群:UC群=12/115 (10%)  vs. 7/57 (12%) 
        • difference −2%, 95%CI −8% to 15%
        • 95%CI上限 < 20%のため、DR群はUC群に対して非劣勢
  • 全期間(0-36ヶ月)における累積major flareの割合
    • 有意差なし
      • DR群:UC群=20/115 (17%) vs. 8/57 (14%) 
        • difference 3%, −10 to 15
  • extension phaseにおける累積short-lived flareの割合
    • 有意差なし
      • DR群:UC群=49/115 (43%, 33% to 52%) vs. 20/57 (35%, 23% to 49%)
  • 全期間における累積flare全体の割合
    • DR群に有意に多い
      • 96/115 (83%, 75% to 90%) vs. 25/57 (44%, 31% to 58%) 
  • 上記の結果はADA or ETNで違いなし

  • extension phaseにおける平均DAS28-CRP
    • 有意差なし
      • DR群:UC群=2.2 (SD 0.7) vs. 2.1 (SD 0.7)
        • (difference 0.08, –0.15 to 0.30)


  • 全期間における平均DAS28-CRP
    • 有意差なし
      •  DR群:UC群=2.3 (SD 0.6) vs. 2.1 (SD 0.7)
        • difference 0.16, –0.03 to 0.35
  • DAS28-CRP, HAQ-DI, EQ5D-5L  はextension phaseでも安定しており、観察期間内においてどの時点でも両群で有意差なし(figure2)



  • intervention phase(0-18ヶ月)において、DR群は、bDMARDsを
    • 中止できた:23/115 (20%, 13% to 28%)
    • 漸減できた:52/115 (45%, 36% to 55%) 
    • 漸減できなかった:40/115 (35%, 26% to 44%) 
  • 36ヶ月時点で、上記DR群のうち、bDMARDsを
    • 中止したまま低疾患活動性を維持:9/115(17%, 10% to 25%)
    • 漸減したまま低疾患活動性を維持:33/115 (29%, 21% to 38%)
  • UC群では、49/57人 (86%, 74% to 94%)はintervention phaseにおいてbDMARDs漸減をtryしなかった
    • extension phaseにおいて、上記のうち32/49人(65%, 50% to 78%)が漸減をtry
      • 36ヶ月時点で、bDMARDs中止できた:19/49 (39%, 25% to 54%) 
      • 36ヶ月時点で、bDMARDs漸減できた:7/49 (14%, 1% to 27%)
      • 漸減をtryしたなかで、
        • short-lived flareを経験:12/32人 (38%, 21% to 56%)
        • major flareを経験:4/32人
          • 2人はTNF阻害薬再増量で低疾患活動性を再び達成





  • TNF阻害薬の使用量について
    • 1日あたりの通常量に対する比率で計算
      • intervention phaseでは、DR群で有意に少ない
        • DR群:UC群=0.50 (IQR 0.48 to 0.51) vs. 0.92 (0.90 to 0.94) 
          • difference −0.42, –0.45 to −0.39
      • extension phaseになるとその差は減少した
        • DR群:UC群=0.54 (0.51 to 0.58) vs. 0.67 (0.64 to 0.71) 
          • difference −0.13, –0.18 to 0.08
      • 全期間
        • DR群:UC群=0.53 (0.51 to 0.54) vs. 0.80 (0.78 to 0.82) 
          • difference −0.27, –0.30 to −0.25
  • csDMARDs使用率
    • extension phaseでは、両群で有意差なかった
  • 経口ステロイド
    • 両群とも36ヶ月時点で10%未満で有意差なかった
      • difference −1%, −10% to 8%
  • ステロイド筋注 or 関注の使用率
    • extension phaseにおいて、両群で有意差なし
      • DR群:UC群=48/115 (42%, 33% to 51%) vs. 21/57 (37%, 24% to 51%) 
        • difference 5%, −11% to 21%

  • 156人(DR群101人、UC群55人)のレントゲンをextension phaseで評価(table2)
    • 統計学的に両群で有意差なし
      • joint space narrowing:DC群で2例、UC群でなし
      • smallest detectable change:両群で有意差なし





  • 安全性
    • extension phaseにおける有害事象の頻度は同等
      • DR群:UC群=39/115 (34%, 25% to 43%) vs. 22/57 (39%, 26% to 52%)
        • difference −5%, −11 to 21
      • 重度有害事象に絞っても両群で有意差なし


まとめ
  • 36ヶ月まで延長しても、major flare, 疾患活動性、機能、QOL、レントゲンでの関節破壊進行における、DRによる非劣勢は維持した
  • 有害事象に関しては、DRによるメリットは得られなかった
  • 18ヶ月時点でプロトコルを同じに認め、両群での違いが小さくなった可能性も十分ある
  • DRに関する研究結果同士を比較するのは、患者背景や漸減方法も異なるので、容易ではない。しかしながら、既報でも今回の結果と同様に、安全に漸減できると報告しいているのもいくつかある

flareとか平均DAS28とかはあまり変わりないようですけど、やはり漸減中止を試みた群の一部で関節破壊が進行してしまう人(今回の例でも関節裂隙狭小化は漸減群でのみ2例)がいて、36ヶ月時点で漸減中止継続できているのは半分以下と、やはりなんとなくtaperingって難しいんですね。。。
感染とか副作用のメリットも漸減中止群で特によかったということもないですし。
しかしながら、注射を続けることの患者さんの負担や社会経済的な面を考えると、当然、漸減中止できる人はそうした方がいいわけで、それが安全にできる人とできない人の見極めが大事。

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