Eur Respir J 2016; 47: 588–596
背景
- RAは、アメリカにおいて1%の人が発症する
- 肺病変は頻度の高い関節外病変であり、呼吸器の全ての部位(気道、肺など)を病変としうる
- RA-ILDは、RAにおいて〜60%の人にその所見を認め、臨床的に有意なものに限定すると10%程度である
- RA患者の全死亡の7%はILDに関連したものである
- 頻度の高いのはUIP, NSIP
- HRCT or 病理学的に同定されたUIPの場合は、IPFと同等の予後である
- NSIPはUIPよりは予後がいいといわれている
- しかしながら、RA-ILDの予後因子に関しては現時点でもデータが不足しているため、今回はそれを調べてみた
方法
- 多施設専門病院からなるNational Jewish Health (NJH) Research Databaseからデータを抽出
- 対象
- 1995年〜2013年の期間にリウマチ専門医にRAと診断されて、ILDの所見をHRCTで認める患者
- UIP, NSIP pattern以外のILDや、非定型抗酸菌症感染症の場合は除外
- NJH初診の日を診断した日とした
- 最終的に137人の症例を解析
- UIP → UIP or possible UIPに分類
結果
- baseline characteristics(table1)
- 平均年齢
- UIP>NSIP=66.0 歳 vs. 60.1歳
- 男性
- UIP>NSIP=52% vs. 45%
- 喫煙歴
- pack-years
- UIP>NSIP=33.6 vs. 20
- 治療
- MTX使用歴
- NSIP>UIP=71% vs. 63%
- bDMARDs使用歴
- NSIP>UIP=74% vs. 60%
- 肺機能
- FVC, FEV1, DLco, CPIでは全体的にUIPのほうがやや良いかも
- CCP抗体陽性率, titer
- ともに同等
- RF陽性率、titer
- UIP>NSIP
- 観察期間中に死亡した割合
- UIP>NSIP=44% vs. 24%
- p=0.05
- コホート全体での平均生存期間
- 10.35年
- UIP<NSIP=10.18年 vs. 13.62年
- p=0.02
- 死亡リスク因子
- 単変量解析で有意だったもの(table2)
- 年齢
- 喫煙歴
- baseline HRCT pattern
- 予測FVC%
- 予測DLco%
- CPI
- RF陽性
- 多変量解析 (table3)
- 年齢、性別、喫煙歴で調整
- baseline HRCT patternは死亡リスク因子として有意でなかった(model2)
- baselineからのΔ予測FVC%で調整
- baseline HRCT patternは死亡リスク因子として有意でなかった(model4)
- 年齢、性別、喫煙歴、baseline予測FVC%、baselineからのΔ予測FVC%で調整
- baseline HRCT patternは死亡リスク因子として有意でなかった(model5)
- baseline予測FVC%から10%低下した時点での、低下していない人と比較した死亡リスク
- HR 2.57
- p<0.0001
- 上記全てのの結果は、FVCをDLcoに置換しても同様だった
- baseline予測DLco%から10%低下した時点での、低下していない人と比較した死亡リスク
- HR 1.34
- p=0.02
- 予測FVC%の低下速度(figure2a-c)
- UIP>NSIP
- 傾きの差(UIP-NSIP):負
- -2.11%/年 [95% CI -4.16 to -0.07; p=0.04)
- UIPの予測FVC%の傾き:負
- -0.83%/年 [95% CI -1.79 to -0.13; p=0.09]
- 予測DLco%の低下速度(figure2d-f)
- UIP>NSIP
- 傾きの差(UIP-NSIP):負
- -3.10%/年 [95% CI -5.44 to -0.75; p=0.01)
- UIPの予測DLco%の傾き
- −0.53%/年 [95% CI -1.65 to 0.59; p=0.60]
まとめ
- 特発性間質性肺炎と同様に、UIPとNSIPではUIPのほうが予後不良であった
- しかしながら、多変量解析をおこなうと、喫煙歴などで補正するとUIPとNSIPの違いはなくなった
- 一方で、生理学的な肺機能検査(予測FVC%, 予測DLco%, CPI)のbaselineの値と変化量は、多変量解析でも独立した死亡リスクとなった
- この結果は、強皮症ILDと同様である
- 既報では、病理検体でUIP patternと診断することをゴールドスタンダードとすると、HRCTでのUIP patternの感度・特異度はそれぞれ45%, 96%だった
- これは、NSIP patternと診断する中にも、組織ではUIPが混じっていることを示唆する
- HRCTでそれぞれのpatternに典型的かどうか判断することでそれなりに予後の情報を得られるが、それとは独立して生理学的肺機能検査の結果が予後に関わっていることを念頭に置く必要がある
多変量解析ではUIPとNSIPで予後に有意差なかったよ、という論文。
サンプルサイズが比較的少ないため、多変量解析するとUIP patternとNSIP patternの違いがつかなかっただけか、HRCTでは病理的なUIPとNSIPを完全には区別できないからか、など様々なバイアスが考えられる気がします。
しかしながら、やっぱり生理学的な項目である肺機能検査がよりダイレクトに予後予測因子であることは覚えておかねば。これはIPFでもSSc(強皮症における呼吸機能検査の推移について)でも同様ですね。
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