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2017年9月17日日曜日

established RAに対するusutekinumab, guselkumabの有効性は示せず:phase2 trialより


Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:831–839.

  
背景

  • IL-12はTh1細胞を活性化させ、IFN-γの主要な産生因子である
    • RA患者の血清・関節液中のIL-12が疾患活動性に相関して増加していることは知られている
    • IFNγもまた、RA患者の滑膜で増加している
  • IL-23は、IL-12サイトカインfamilyであり、Th17を活性化させてIL-17やTNFを増加させる
    • IL-23-Th17 pathwayは、RAを含む自己免疫疾患の発症に関与しているといわれている
    • IL-23は、RA患者の血清・関節液中に増加している、TNF阻害剤による治療によって低下することが知られている
    • また、RA患者において、滑膜におけるIL-17と同様に、Th17の数も増えていると報告されている
  • しかしながら、Th1 or Th17がどの程度RAに関与しているのかは不明である
    • Th1をターゲットにしたRA治療はまだ評価されておらず、IL-17をターゲットにしたRA治療の有効性は様々である
  • ustekinumab(ステラーラ®︎)
    • 完全ヒト化モノクローナル抗体
    • 標的:IL-12/23 p40 subunit
    • 中等度以上の活動性を有する乾癬と乾癬性関節炎には、2年間の観察期間で関節破壊の進行抑制も含めた有効性を示した
  • guselkumab
    • IL-23特異的に阻害するモノクローナル抗体
    • 乾癬性関節炎に対するphase2では有効性を示し、現在phase3に入っている
  • 今回は、MTX併用下で、活動性のRAに対する有効性を評価するphase2試験である

方法
  • 対象
    • 18−80歳
    • 1987ACR分類基準を満たすRA
    • MTXを使用していても6ヶ月以上活動性が持続している
      • 腫脹関節数 ≧ 6/66、圧痛関節数 ≧ 6/68、CRP ≧ 0.8mg/dL
    • CCP抗体 or RF陽性
    • これまで、生物学的製剤を治験も含めて投与されたことがない
  • phase2、ランダム化、二重盲検、プラセボ比較試験
  • 6ヶ月間以上、MTXを 15-25mg/wで治療されており、組み入れ前12週間以内は用量の変更なし
  • ステロイドは少量(<10mg/day)であれば併用可
  • NSAIDs、他の鎮痛薬も併用可
  • 割付
    • 1:1:1:1:1=placebo:ustekinumab 90 mg 8週毎 :ustekinumab 90 mg 12週毎:guselkumab 50 mg 8週毎:guselkumab 200 mg 8週毎
    • usutekinumab群もguselkumab群もloadingとして、初日、4週目にそれぞれの用量を投与し、その後の間隔は割付通り
  • 観察期間:28週間 (副作用に関しては48週目まで)
  • レスキューとして、16週目時点で、プラセボ群で腫脹・圧痛関節数の改善がbaselineより10%未満であれば、usutekinumab 90mgを16週目、20週目、28週目に投与した
    • 最初からusutekinumab or guselkumabであればレスキューなし
  • primary outcome
    • 28週目時点でのACR20達成率
  • 薬物動態も測定した
    • guselkumabの有効血中濃度 ≧0.04 μg/mL
    • usutekinumabの有効血中濃度 ≧0.17μg/mL



結果
  • 2012/7-2014/5
  • 59施設
  • 501人がスクリーニングされ、274人が割付
  • 22人が脱落したが、最も多い理由は治療効果不十分(10人)、副作用(8人)




    • baseline characteritics
      • いずれの群も同等
      • 女性8割
      • 平均年齢 50-55歳
      • 罹患年数 5-9年
      • 平均MTX用量 15mg
      • ステロイド使用率 50-70%
      • 平均DAS28-CRP 6.0-6.1
      • CDAI 40-43
      • SDAI 43-45



    • Primary outcome
      • 28週時点でのACR20達成率
        • いずれの群でも有意差なし
          • combined ustekinumab group (53.6%) 
          • combined guselkumab group (41.3%) 
          • placebo (40.0%)
            • それぞれ、p=0.101 and p=0.877
        • ヨーロッパの施設では、ustekinumab群において、ACR20達成率が58.3%と多かった






    • secondary outcome
      • 腫脹関節数、圧痛関節数、patient global assessment of disease activity
        • stekinumab群で改善が大きかったが、CRPはplacebo群と同等だった
        • guselkumab群では、200mgにおいてわずかに改善した傾向
      • DAS28-CRP
        • usutekinumab群では、12週時点、28週時点でplacebo群よりも有意に改善(p<0.05)
        •  guselkumab群では有意差なし
      • CDAIとSDAI
        • usutekinumab群では、12週時点、28週時点でplacebo群よりも有意に改善
        •  guselkumab群では、28週時点で有意に改善
      • HAQ-DI
        • いずれの群も有意差なし


    *p<0.05; **p<0.01.





    • 安全性
      • 治療群内では同等だった
      • 最も頻度の多かったのは感染症
        • 4例は重症感染症(placebo群で虫垂炎、usutekinumab 90mg8週毎群で尿路感染症1人、guselkumab群 200mg群で大葉性肺炎と胃腸炎1人ずつ)
        • 結核なし
      • 消化器症状は、usutekinumab群で、placebo群より多かった
        • 5 (9.1%) vs 2 (3.6%)


    • 血液やリンパ球の異常は、guselkumab群で、placebo群より多かった
      • 5 (9.3%) vs 1 (1.8%)
    • 2例で悪性腫瘍が観察期間内に発見
      • usutekinumab 90mg 12週間毎
        • 肺扁平上皮癌(男性、59歳、非喫煙者)
      • guselkumab 200mg
        • 乳がん(女性、62歳)
    • 1人死亡
      • 61歳女性、usutekinumab 90mg 8週毎、3回目の投与から16日後、失神で入院しおそらく肺塞栓 or 肺炎と考えられたが正確な死因は不明





    • 薬物動態
      • usutekinumab群トラフの平均値
        • 8週毎投与群では、12週目で達成(1.59 μg/mL) 
        • 12週毎に投与群では、16週目で達成(0.61 μg/mL) 
        • いずれの群も、28週目まで維持できた(それぞれ1.77 μg/mL、0.54 μg/mL).  
      • guselkumab群トラフの平均値
        • 8週毎投与群では、20週目で達成し、28週目まで維持できた
    • 免疫原生
      • usutekinumab
        • 48週目時点で、7例(5.7%)にて抗体ができており、そのうち4例は中和抗体だった
        • 抗体陽性例では、陰性例に比較して血中ustekinumab濃度が低かった
      • guselkumab
        • 48週目時点で、12例(11.3%)にて抗体ができており、そのうち中和抗体はいなかった
          • 抗体陽性例でも、抗体陰性例と血中guselkumab濃度は同等だった

    まとめ
    • primary outcomeは達成できなかった
    • 今回のlimitation
      • placebo群でもACR20達成率が高い(12週時点 29.1%, 28週時点 40%)
        • しかしこれに関しては、他の試験でも同様のことがある
      • phase2でありサンプルサイズが小さい
        • しかしCRPも改善していなかったので、真にRAに対して有効性がないことを示しているのかもしれない
    • PsAではこれらの薬剤が有効性を示したのにもかかわらずRAでは失敗に終わったのは、両疾患の病態の違いを示している
      • Th17は、established RAでは、病態への関与が小さいのだろう
      • usutekinumabが失敗に終わったことは、Th1のestablished RAに対する関与も限定的なのだろう
        • または、今回のusutekinumab群の用量では、Th1を抑制するには不十分だったのだろう
          • しかしながら、乾癬に関する既報では、usutekinumab単回投与でPASI改善を75%認めた群では、IFNγ抑制効果を示していた
    • アバタセプト(オレンシア®️)は、T細胞活性化を抑制する薬剤であり、RAに対する有効性は十分示されているが、PsAに対するphase2試験では皮膚症状への有効性は認めなかった
      • そして、アバタセプトを除いて、T細胞を直接的に阻害する薬剤で、RAに対して有効性を示した薬剤は現時点では存在しない
      • さらに、アバタセプトがRAにおいて、どのような機序で有効性を示すのかは明らかでない
      • usutekinumab、guselkumab、アバタセプトの有効性の違いは、IL-23/17を介したTh17 pathwayは、RAの関節炎ではあまり重要でない可能性を示している

    乾癬や乾癬性関節炎では有効性を示したIL-12/23 blockは、established RAでは有効性を示せませんでした。
    establishではなく発症早期に開始、もしくはBMIが高い人やいわゆる脂質異常症などが多い乾癬likeな集団では有効性を示したりしたら面白いなぁ・・・




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