Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:831–839.
- IL-12はTh1細胞を活性化させ、IFN-γの主要な産生因子である
- RA患者の血清・関節液中のIL-12が疾患活動性に相関して増加していることは知られている
- IFNγもまた、RA患者の滑膜で増加している
- IL-23は、IL-12サイトカインfamilyであり、Th17を活性化させてIL-17やTNFを増加させる
- IL-23-Th17 pathwayは、RAを含む自己免疫疾患の発症に関与しているといわれている
- IL-23は、RA患者の血清・関節液中に増加している、TNF阻害剤による治療によって低下することが知られている
- また、RA患者において、滑膜におけるIL-17と同様に、Th17の数も増えていると報告されている
- しかしながら、Th1 or Th17がどの程度RAに関与しているのかは不明である
- Th1をターゲットにしたRA治療はまだ評価されておらず、IL-17をターゲットにしたRA治療の有効性は様々である
- ustekinumab(ステラーラ®︎)
- 完全ヒト化モノクローナル抗体
- 標的:IL-12/23 p40 subunit
- 中等度以上の活動性を有する乾癬と乾癬性関節炎には、2年間の観察期間で関節破壊の進行抑制も含めた有効性を示した
- guselkumab
- IL-23特異的に阻害するモノクローナル抗体
- 乾癬性関節炎に対するphase2では有効性を示し、現在phase3に入っている
- 今回は、MTX併用下で、活動性のRAに対する有効性を評価するphase2試験である
方法
- 対象
- 18−80歳
- 1987ACR分類基準を満たすRA
- MTXを使用していても6ヶ月以上活動性が持続している
- 腫脹関節数 ≧ 6/66、圧痛関節数 ≧ 6/68、CRP ≧ 0.8mg/dL
- CCP抗体 or RF陽性
- これまで、生物学的製剤を治験も含めて投与されたことがない
- phase2、ランダム化、二重盲検、プラセボ比較試験
- 6ヶ月間以上、MTXを 15-25mg/wで治療されており、組み入れ前12週間以内は用量の変更なし
- ステロイドは少量(<10mg/day)であれば併用可
- NSAIDs、他の鎮痛薬も併用可
- 割付
- 1:1:1:1:1=placebo:ustekinumab 90 mg 8週毎 :ustekinumab 90 mg 12週毎:guselkumab 50 mg 8週毎:guselkumab 200 mg 8週毎
- usutekinumab群もguselkumab群もloadingとして、初日、4週目にそれぞれの用量を投与し、その後の間隔は割付通り
- 観察期間:28週間 (副作用に関しては48週目まで)
- レスキューとして、16週目時点で、プラセボ群で腫脹・圧痛関節数の改善がbaselineより10%未満であれば、usutekinumab 90mgを16週目、20週目、28週目に投与した
- 最初からusutekinumab or guselkumabであればレスキューなし
- primary outcome
- 28週目時点でのACR20達成率
- 薬物動態も測定した
- guselkumabの有効血中濃度 ≧0.04 μg/mL
- usutekinumabの有効血中濃度 ≧0.17μg/mL
結果
- 2012/7-2014/5
- 59施設
- 501人がスクリーニングされ、274人が割付
- 22人が脱落したが、最も多い理由は治療効果不十分(10人)、副作用(8人)
- baseline characteritics
- いずれの群も同等
- 女性8割
- 平均年齢 50-55歳
- 罹患年数 5-9年
- 平均MTX用量 15mg
- ステロイド使用率 50-70%
- 平均DAS28-CRP 6.0-6.1
- CDAI 40-43
- SDAI 43-45
- Primary outcome
- 28週時点でのACR20達成率
- いずれの群でも有意差なし
- combined ustekinumab group (53.6%)
- combined guselkumab group (41.3%)
- placebo (40.0%)
- それぞれ、p=0.101 and p=0.877
- ヨーロッパの施設では、ustekinumab群において、ACR20達成率が58.3%と多かった
- secondary outcome
- 腫脹関節数、圧痛関節数、patient global assessment of disease activity
- stekinumab群で改善が大きかったが、CRPはplacebo群と同等だった
- guselkumab群では、200mgにおいてわずかに改善した傾向
- DAS28-CRP
- usutekinumab群では、12週時点、28週時点でplacebo群よりも有意に改善(p<0.05)
- guselkumab群では有意差なし
- CDAIとSDAI
- usutekinumab群では、12週時点、28週時点でplacebo群よりも有意に改善
- guselkumab群では、28週時点で有意に改善
- HAQ-DI
- いずれの群も有意差なし
*p<0.05; **p<0.01.
- 安全性
- 治療群内では同等だった
- 最も頻度の多かったのは感染症
- 4例は重症感染症(placebo群で虫垂炎、usutekinumab 90mg8週毎群で尿路感染症1人、guselkumab群 200mg群で大葉性肺炎と胃腸炎1人ずつ)
- 結核なし
- 消化器症状は、usutekinumab群で、placebo群より多かった
- 5 (9.1%) vs 2 (3.6%)
- 血液やリンパ球の異常は、guselkumab群で、placebo群より多かった
- 5 (9.3%) vs 1 (1.8%)
- 2例で悪性腫瘍が観察期間内に発見
- usutekinumab 90mg 12週間毎
- 肺扁平上皮癌(男性、59歳、非喫煙者)
- guselkumab 200mg
- 乳がん(女性、62歳)
- 1人死亡
- 61歳女性、usutekinumab 90mg 8週毎、3回目の投与から16日後、失神で入院しおそらく肺塞栓 or 肺炎と考えられたが正確な死因は不明
- 薬物動態
- usutekinumab群トラフの平均値
- 8週毎投与群では、12週目で達成(1.59 μg/mL)
- 12週毎に投与群では、16週目で達成(0.61 μg/mL)
- いずれの群も、28週目まで維持できた(それぞれ1.77 μg/mL、0.54 μg/mL).
- guselkumab群トラフの平均値
- 8週毎投与群では、20週目で達成し、28週目まで維持できた
- 免疫原生
- usutekinumab
- 48週目時点で、7例(5.7%)にて抗体ができており、そのうち4例は中和抗体だった
- 抗体陽性例では、陰性例に比較して血中ustekinumab濃度が低かった
- guselkumab
- 48週目時点で、12例(11.3%)にて抗体ができており、そのうち中和抗体はいなかった
- 抗体陽性例でも、抗体陰性例と血中guselkumab濃度は同等だった
まとめ
- primary outcomeは達成できなかった
- 今回のlimitation
- placebo群でもACR20達成率が高い(12週時点 29.1%, 28週時点 40%)
- しかしこれに関しては、他の試験でも同様のことがある
- phase2でありサンプルサイズが小さい
- しかしCRPも改善していなかったので、真にRAに対して有効性がないことを示しているのかもしれない
- PsAではこれらの薬剤が有効性を示したのにもかかわらずRAでは失敗に終わったのは、両疾患の病態の違いを示している
- Th17は、established RAでは、病態への関与が小さいのだろう
- usutekinumabが失敗に終わったことは、Th1のestablished RAに対する関与も限定的なのだろう
- または、今回のusutekinumab群の用量では、Th1を抑制するには不十分だったのだろう
- しかしながら、乾癬に関する既報では、usutekinumab単回投与でPASI改善を75%認めた群では、IFNγ抑制効果を示していた
- アバタセプト(オレンシア®️)は、T細胞活性化を抑制する薬剤であり、RAに対する有効性は十分示されているが、PsAに対するphase2試験では皮膚症状への有効性は認めなかった
- そして、アバタセプトを除いて、T細胞を直接的に阻害する薬剤で、RAに対して有効性を示した薬剤は現時点では存在しない
- さらに、アバタセプトがRAにおいて、どのような機序で有効性を示すのかは明らかでない
- usutekinumab、guselkumab、アバタセプトの有効性の違いは、IL-23/17を介したTh17 pathwayは、RAの関節炎ではあまり重要でない可能性を示している
乾癬や乾癬性関節炎では有効性を示したIL-12/23 blockは、established RAでは有効性を示せませんでした。
establishではなく発症早期に開始、もしくはBMIが高い人やいわゆる脂質異常症などが多い乾癬likeな集団では有効性を示したりしたら面白いなぁ・・・
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