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2017年9月13日水曜日

RAに対するGM-CSF受容体阻害薬:mavrilimumabのphase Ⅱb試験

Burmester GRMcInnes IBKremer J on behalf of the EARTH EXPLORER 1 study investigators, et al
A randomised phase IIb study of mavrilimumab, a novel GM–CSF receptor alpha monoclonal antibody, in the treatment of rheumatoid arthritis


背景

  • RAに対する生物学的製剤の投与はよくおこなわれるが、生物学的製剤を使用しても、約50%の人は低疾患活動性を達成できない。DAS28-ESR < 2.6の達成率に関しては20%程度である
  • 最近、granulocyte-macrophage colony-stimulating factor(GM-CSF)をターゲットにした治療が注目されている
    • RAにおいて、GM-CSFは、マクロファージ・樹状細胞・好中球の活性化・分化・生存に関わっている
    • そして、effector T helper 1/17 cellのサイトカインとしても知られている
    • GM-CSFとGM-CSF受容体がRA患者のそそき・関節液内において増加しており、recombinant GM-CSFを投与することでRA活動性が増すことも報告されている
    • GM-CSF受容体αサブユニットを介したシグナルは、マウスの関節炎モデルで重要な役割を担っており、痛みの経路にも関わっている
    • GM-CSF経路を阻害することで、炎症組織におけるマクロファージと好中球の数を減らすことも報告されている
    • これらの知見は、マクロファージ・単球の活性化が特徴であるRAにおいては、有望な治療ターゲットである
  • Mavrilimumab
    • GM-CSF受容体を阻害する完全ヒト化モノクローナル抗体
    • 安全性に関しては、GM-CSFを阻害するポリクローナル抗体を使用して完全にGM-CSFを阻害した場合、肺胞蛋白症を発症した
      • Curr Opin Immunol 2009;21:51421.
  • 今回は、中等度以上の活動性をもつRA患者に対して、Mavrilimumabの有効性を評価するために行った24週間のphaseⅡb試験である

方法
  • ランダム化二重盲検(患者、解析者)プラセボ比較試験
    • EARTH EXPLORER 1; NCT01706926
  • 14カ国の施設で実施
  • 対象
    • 18−80歳
    • 中等症以上の活動性がある、成人発症のRA患者
      • DAS28-CRP ≧ 3.2 & DAS28-ESR ≧ 3.2
      • 4個以上の腫脹関節あり
      • MTX用量はstable(7.5-25mg/w)
    • 以前に1種類以上のDMARDsを使用している
    • 以下は除外
      • bDMARDsを治療効果不十分のため中断している
      • 最近、治験薬・アルキル化薬、点滴でのステロイド使用歴あり
      • 現在MTX以外のDMARDsを使用している
      • 12週間以内に、安全性以外の問題でRAの治療を変更している
      • コントロール不良の呼吸器疾患
      • 活動性結核 or 未治療のLTBI
  • 割付
    • 1:1:1:1=Mavrilimumab 150mg s.c. 隔週投与:100mg:30mg:placebo
    • 治療開始して12週間で、治療反応性が不良であれば(腫脹・圧痛関節数の改善が20%未満)であれば、レスキューとしてopen-labelへスイッチ
  • 24週間フォロー
  • 少量ステロイド(≦ 7.5mg/day)、鎮痛薬、NSAIDsはstable doseで継続
  • Coprimary outcome
    • baselineから12週時点でのΔDAS28-CRP
    • 24週時点でのACR20 response
  • ITT解析
  • 80%の検出力、両側検定でα=0.05とすると、必要なサンプルサイズは70人

結果
  • 期間:2012/9-2013/6
  • 326人が割付られ、305人が治療を完遂した


  • 12週時点で、mavrilimumab 150, 100, 30 mg, placebo群のうち、それぞれ3 (3.8%), 8 (9.4%), 12 (14.8%) , 37 (45.7%)人が治療反応性が不良のためレスキューとしてopen-labelへスイッチ 





  • baseline characteristicsは同等
    • 平均年齢 約51歳
    • 女性 約85%
    • 白人 > 90%
    • BMI 27程度
    • RA罹患年数 平均8年程度
    • seropositive 80%程度
    • DAS28-ESR 平均6.6程度
    • 腫脹関節、圧痛関節共に平均15以上
    • MTX 平均15mg/w
    • 少量ステロイド使用率 50%程度
    • 以前にbDMARDs使用歴あり 15%程度
      • bDMARDs中断理由は経済面、治験終了に伴ってが多い



  • Primary outcome
    • 12週時点において、Mavrilimumab群はいずれもplacebo群よりも有意にDAS28-CRPが改善
      •  baselineからの変化量 (SE)
        • 150 mg: −1.90 (0.14)
        • 100 mg: 1.64 (0.13)
        • 30 mg: 1.37 (0.14)
        • placebo: 0.68 (0.14)
          •  p<0.001; all dosages compared with placebo
    • 24週時点でのACR20達成率も有意にplaceboより多い
      • 150mg:73.4%
      • 100mg:61.2%
      • 30mg:50.6% 
      • placebo:24.7%
        • p<0.001
      • 150mg群においては、1週目の時点で、ACR20 responseにおいてplaceboと比較して有意だった
    • サブグループ解析で、この効果は、CRP値・seropositive or -negative、以前のbDMARDs使用歴・喫煙歴とは独立したものであった
      • seronegative(RF陰性・ACPA陰性)においてより有効であった


  • 1週時点で、すでにplaceboと有意差がついており、効果出現が早い
    • 患者の自覚的な痛みに対しても、1週目から効果が出現した
  • 12週目まで有効性は持続的に増加した



  • secondary outcome
    • 24週時点でのACR50達成率も、全用量において、mavrilimumab群で有意だった
      • 150mg:40.5%
      • 100mg:25.9%
      • 30mg:28.4% 
      • placebo:12.3%
        • p<0.05
    • 150mg群ではACR70達成率もplaceboと比較して12週、24週時点で有意だった
      • week 12: 10.1% vs 1.2% ( p=0.017)
      • week 24: 13.9% vs 3.7% ( p=0.026)
    • DAS28-CRP remission(< 2.6)
      • 12週時点では、150mg群のみplaceboより有意に達成
      • 24週時点では、全ての用量でplacebo群より有意に達成
      • DAS28-ESRも同様の傾向





  • CRP, ESR低下も、1週目の時点で認めており、24週まで持続している。効果は用量依存性だった。



  • 副作用の頻度
    • 150mg:54.4%
    • 100mg:42.4%
    • 30mg:50.6%
    • placebo:46.9%
  • 重症の副作用で治療中断したうち、治療関連と解析者によって結論づけられたのは、肺炎(mavrilimumab 30 mg) 、血管性浮腫 (mavrilimumab 150 mg) の2つ
  • 以前、肺胞蛋白症も報告されていたが、今回の試験では、肺への副作用はplaceboと同等の頻度であった
    • 150, 100, 30 mg, placebo =6.3%, 3.5%, 6.2% vs 9.9%
  • 死亡なし、アナフィラキシーなし
  • 好中球数、生化学含め血液学的異常は統計学的に有意ではなかった
  • 投与部位反応は150mgで1例のみ
  • 呼吸機能検査、酸素化、呼吸困難スコアはplaceboと同等であり、用量依存性の変化もなかった。呼吸機能検査の変化はいずれも一過性だった。




まとめ
  • mavrilimumabの効果は用量依存性であり、効果出現も早く、患者の自覚的な痛みに対しても有効であり、24週まで有効性は持続的に増加した
  • 関節破壊に関しては、観察期間が短くサンプルサイズが不足しており評価できていない
  • 懸念された肺胞蛋白症などの呼吸器副作用は有意に増えなかった


血清反応陽性で、疾患活動性も高く生物学的製剤の適応といえるような患者群において、ある程度発症から時間がたっている患者でも、使用開始1週目という早期から、痛み、客観的指標においてもこれだけ有効性が出たのは、今後期待度高めの新規治療と思われます。しかし、これだけ最初の活動性が高いと、治療開始後の改善度合いも実臨床の患者群よりも過大に評価されそうな気がしますけど、どうなんでしょう?
あとは、骨破壊の抑制、他のbDMARDs使用してもダメだった人にどれだけ聞くか、さらなる副作用profile、アジア人の有効性、MTXの有無での効果の違いとかは今後のデータを見てチェックしたいところです。

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