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2017年9月13日水曜日

axSpAの疾患経過に関するコホート:フランスより

Molto ATezenas du Montcel SWendling D, et al
Disease activity trajectories in early axial spondyloarthritis: results from the DESIR cohort



背景

  • axSpAの臨床症状は多様である
  • そのため、疾患活動性の経過も多様であり、これまでそれに関するデータも少なく、今回はそれに関して調べた

方法
  • DESIR cohort
    • 早期の炎症性腰痛を調べるための、フランスの前向き多施設コホート
  • 今回はDESIR cohortより、708人の患者を抽出し、以下に照らし合わせた
    • 18歳以上、50歳未満
    • 3ヶ月以上、3年未満の炎症性腰痛を有する
    • SpA score ≧ 5
      • NRS 0-10, 0=not suggestive, 10=very suggestive of SpA
    • baselineでTNFα阻害剤の使用なし
    • ASAS criteria のaxSpA分類基準を満たす
    • フォロー期間中に、活動性が一度は ASDAS ≧ 3 となった

結果
  • 708人のうち、ASAS criteria for axSpAを満たしたのは62%, 3年間のフォロー期間中でASDAS ≧ 3となったのは52.3%だった
    • 最終的には370人を解析
    • 疾患の経過によってtrajectory1-5(t1-5)に分類
      • t1 (n=134 (36.2%)):中等度以上の活動性が持続
      • t2 (n=66 (17.8%)) :低疾患活動性を維持
      • t3 (n=29 (7.8%)) :baselineでは超高疾患活動性だったが、その後12ヶ月で低疾患活動性となり、その後36ヶ月まで維持
      • t4 (n=126 (34.1%)) :高疾患活動性が持続
      • t5 (n=15 (4.1%)):超高疾患活動性が持続
        • 141/370人=38%が上記のうち、いずれかのグループに当てはまった



    •  trajectory毎の疾患経過をわかりやすく説明するため図にしたのがFigure1



  • t2(低疾患活動性を維持)は、t1(中等度以上の活動性が持続)よりも、white-collarの仕事が多かった
    • OR=2.6 (95% CI 1.0 to 6.7)
  • t3(超高疾患活動性→低疾患活動性)は、t1(中等度以上の活動性が持続)よりも、男性、高学歴、末梢関節炎病変ありが多かった
    • 男性:OR=7.1 (1.6 to 32.2)
    • 高学歴:OR=9.4 (1.4 to 63.4)
    • 末梢関節炎:OR=6.2 (1.2 to 31.1)


  • t3(超高疾患活動性→低疾患活動性)とt5(超高疾患活動性が持続)はbaseline のASDAS valuesが同等だった
    •  4.0 (±0.8) and 4.1 (±0.5) for (t3) and (t5), respectively
      • この2群におけるbaselineの違いで有意にt3に多かったのは、男性、高学歴だった
        • 男性:OR=17.59 (2.2 to 424.5) 
        • 高学歴:OR=12.0 (1.5 to 279.2))





  • TNF阻害剤を、フォロー期間中にそれぞれの群において使用していた人数は下記
    • t1(中等度以上の活動性が持続):25人(18.7%)
    • t2(低疾患活動性を維持):4 (6.1%)
    • t3(超高疾患活動性→低疾患活動性):21 (72.4%)
    • t4(高疾患活動性が持続):42 (33.3%) 
    • t5(超高疾患活動性が持続):8 (53.3%) 
      • t3は、t1よりもTNF阻害剤を使用している人が全期間で多かった
        • HR=4.5 (95% CI 3.5 to 5.9)
      • t4, t5は、t1よりもより多くTNF阻害剤を使用していた
        • t4:HR=1.8 (1.4 to 2.2) 
        • t5:HR=2.63 (1.8 to 3.9)
  • それぞれの群において、疾患によって仕事を休んだ日数は下の通り
    • t1(中等度以上の活動性が持続):43 (±127)
    • t2(低疾患活動性を維持):15 (±41)
    • t3(超高疾患活動性→低疾患活動性):22 (±36)
    • t4(高疾患活動性が持続):75 (±116)
    • t5(超高疾患活動性が持続):300 (±312)




まとめ
  • この時代においても、1/3以上のaxSpA患者が高疾患活動性のままであることがわかった
  • 男性、教養があること、white-collar jobが疾患活動性を低下させる因子だった
    • これは、以前にRAにおいてCOMORA cross-sectional studyで報告されたものと同様である
      • Ann Rheum Dis 2016;75:5406.
    • SpAの領域では、女性が低い急性期炎症反応蛋白に関わらずBASDAIが高いこと、上級の仕事に付いていることが低疾患活動性と関係があることが報告されている
      • Ann Rheum Dis 2013;72:12214.
      • Ann Rheum Dis 2006;65:15727.
      • Arthritis Rheum 2011;63:154351.
    • なぜこれらの項目が疾患活動性と関係があるかはわかっていない
      • アドヒアランス、あまり主張しないため?(ASDASの評価項目は客観的、主観的項目が両方含まれている)
  • 今回の研究では、構造的変化(仙腸関節など)は評価していない


axSpAでは、疾患活動性の評価が難しいですが、高疾患活動性の人が1/3以上もいるのは思った以上に多いですね。女性で、比較的教養レベルが低い人は、RAと同様に特にリスクとなるようです。


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