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2017年9月15日金曜日

RAに対するFilgotinib(JAK1選択的阻害剤)の有効性:DARWIN2


Kavanaugh A, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1009–1019.  

背景

  • MTXはRAにおいてキードラッグであるものの、適正量使用しても治療に反応するのは50%程度のみである
  • JAK阻害剤は、経口で投与可能な低分子化合物であり、成長因子やホルモン、 IL-6を含む炎症性サイトカインなど、様々なシグナルに影響を与える
  • FilgotinibはJAK1選択的阻害剤であり、RAや炎症性腸疾患などに対する有効性を期待している
  • DARWIN 2は、MTXによる治療が不応だった中等度以上の活動性を有するRAに対して、Filgotinib monotherapyでの有効性を調べたものである


方法
  • 多施設(59施設、18カ国)、ランダム化、二重盲検、phaseⅡb試験である
  • 観察期間:24週間
  • 割付
    • 1:1:1:1=placebo:Filgotinib 50mg:Filgotinib 100mg:Filgotinib 200mg
    • Filgotinib群はいずれも朝1回投与
  • レスキューとして、12週時点で、全てのplacebo患者と、Filgotinib 50mg群のうち治療効果不十分(腫脹関節痛、圧痛関節数の改善が20%以下)だった場合に、Filgotinib 100mgへ再度割り付けて、24週目まで継続した
  • 対象
    • 18歳以上
    • 6ヶ月以上前に
    • RAと6ヶ月以上前に診断されている
    • 2010 ACR/EULARのRA分類基準を満たす
    • ACR機能分類 1-3
    • 腫脹関節数 ≧ 6/66、圧痛関節数 ≧ 6/68
    • CRP ≧ 正常上限の0.7倍(2014/3より、正常上限の1.5倍以上へと変更)
    • MTXの効果が不十分と主治医が判断し、4週間以上のwash out期間を設けることに同意あり
    • PSL使用していれば10mg以下で、用量が組み入れ前4週間以内はstable
    • NSAIDs使用していれば、用量が組み入れ前2週間以内はstable
    • 妊娠可能な女性は避妊している
  • exclusion criteria
    • HCQなんらかのDMARDを使用中
    • 6ヶ月以上、組み入れ時点から前に治験としてbDMARDsを使用していて、それが有効だった場合はOK
    • 以前にJAK阻害薬、MTX以外の細胞障害性薬剤の使用歴あり
    • 組み入れ前4週間以内に点滴 or 筋注でステロイド使用歴あり
    • 妊婦
  • Primary outcome
    • 12週時点でのACR20達成率
  • 解析
    • 治験薬を1回でも使用した患者を全例解析

結果
  • 2013/10-2015/5
  • 625人のうち、287人が割り付けられ、283人が一度は治験薬を内服し解析に組み込まれた
  • 脱落率 9.2%
    • placebo群とFilgotinib群で有意差なし
    • Filgotinib群内で用量別の間にも有意差なし


  • baseline characteritics
    • placebo群で平均CRPが高い(統計学的には有意差なし、p=0.0865)以外に同等
    • ステロイドあり 59%
    • HCQあり 4.2%



  • Primary outcome
    • 12週時点でのACR20達成率(figure2A)
      • 有意に全てのFilgotinib群で多かった
        • Filgotinib 50 mg, 67% (48/72)
        • Filgotinib 100 mg, 66% (46/ 70)
        • Filgotinib 200 mg, 73% (50/69)) 
        • placebo (29% (21/72)) 
          • p<0.0001 
  • secondary outcome
    • 12週時点でのACR50達成率(figure2B)
      • 有意に全ての Filgotinib群で多かった
    • 12週時点でのACR70達成率(figure2C)
      • Filgotinib 100mg, 200mgでplacebo群より有意に多かった
    • ACR20達成率は、8週目でプラトーとなり、24週まで持続した(figure2A)
    • 効果出現の早さ
      • ACR20 
        • 1週目時点で、filgotinib 200mg群が有意
      • ACR50 
        • 2週目時点で、filgotinib 200mg群が有意
      • ACR70 
        • 4週目時点で、filgotinib 200mg群が有意

    • DAS28-CRP(figure2D)
      • 12週目時点で、全てのFilgotinib群がplacebo群より有意に低下
      • CDAIも同様の傾向(figure2E)
    • 健康関連QOL(figure2F)
      • 2週目時点からFilgotinib 200mg群で有意に改善
      • 12週目時点では全てのFilgotinib群で有意に改善



  • Filgotinibの用量が多いほうが、疾患活動性の低下の程度や寛解達成率が高かった




  • 副作用(Table3)
    • 24週までで、9例、重度の治療介入が必要な有害事象が起きた
      • 4例は重症感染症
      • 3例はFilgotinib 200mg群(腰痛、変形性関節症、肺炎)、2例はFilgotinib 100mg群(蜂窩織炎、めまい)、2例はFilgotinib 100mg群(胃腸炎、大腿骨骨折)、2例がplacebo群(RA再燃、慢性腎盂腎炎)
      • Filgotinib群のほうがplacebo群よりも有害事象は多かった
      • 脱落率は全てのFilgotinib群で同等
      • 帯状疱疹は1例のみ、10日間で治癒
      • 結核なし、リンパ腫なし、悪性腫瘍なし




  • 血液
    • Filgotinib 100mg, 200mg群で12週目までHb増加したが、その後安定
    • 好中球数は4週目まで低下したがその時点でプラトーとなり24周目まで安定
      • Filgotinib 50→100mgスイッチした1例のみ低下し続けた
      • 2例がCTCAE grade 3 程度の好中球数減少あり
    • 平均リンパ球数(NK細胞含む)低下なし
      • 3例のみCTCAE grade 3 程度のリンパ球数低下あり
      • 5例はリンパ球数低下のため脱落
    • 血小板数は4週目まで低下したが、その後24週目まで安定した
    • Crは用量依存性に4週目までわずかに増加したがプラトーとなり24週目まで安定
    • 1例のみCTCAE grade 3 程度のAST, ALTの上昇あったが、AST, ALT上昇による脱落なし
    • HDL, LDLはFilgotinibで増加したが4週目以降は安定





まとめ

  • Filgotinib 単剤治療にて、MTX不応性の中等度以上の活動性を有するRA患者において、用量依存性に有効だった
  • 治療脱落率も比較的低い
    • 血球系副作用(血球減少)は許容範囲だった
    • Cr増加もわずか
    • 肝障害もわずか
    • コレステロールは増えたがLDL/HDL比は低下
    • CTCAE grade 3 or 4  の検査異常は全部で11例と少なく、ほとんどは治療中断とはならなかった
  • limitation
    • placeboとの比較期間は12週間のみと短い(全例placeboはfilgotinibにスイッチしたため)
    • 観察期間が短いため副作用のモニタリングが不十分


monotherapyでも有効性を認めたという結果。
multi-target DMARDsは副作用もこれまでのbDMARDsとも異なるので、extension studyにも注目したいです(萩野先生に教えていただいたFINCH studyはextensionもおこなう予定なので楽しみです)

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