背景
- 強直性脊椎炎(AS)は、慢性炎症性で、主に体軸性関節を侵し、非可逆性の構造変化を起こして機能低下を起こしうる疾患である
- 長期間の治療の目標は、症状をコントロールし、構造破壊を防ぎ、機能を維持して、QOLを守ることである
- TNF阻害剤は、NSAIDsを使用しても高疾患活動性の場合に推奨される治療である
- しかし、40%はTNF阻害剤にも反応しないもしくは治療から脱落してしまう
- また、脊椎の増殖性変化を防ぐ効果に関しては、まだ明らかでない
- IL-17Aは、炎症性サイトカインであり、炎症や骨リモデリングなど、脊椎関節炎の病態に関与していることが知られている
- 完全ヒト化抗IL-17A monoclonal抗体であるsecukinumabは、プラセボ比較試験であるphaseⅢにて、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎の症状を有意に改善した
- 今回の試験は、MEASURE1試験のその後の2年間の有効性と安全性を調べたcontinution phaseである
方法
- 対象
- 18歳以上
- modified NY基準をみたし、ASと診断されている
- BASDAI ≧ 4
- NSAIDsを最大量使用しても、脊椎の痛みに関するVAS ≧ 4cm
- 以前にTNF阻害剤を使用していても、治療効果は不十分 or 安全性などにより脱落した場合は組み込んでよい
- SSZ、MTX、PSL、NSAIDsは維持量で継続使用可能
- 割付
- 1:1:1=placebo:secukinumab 75mg s.c. q4w:secukinumab 150mg q4w s.c.
- secukinumab群に割り付けられた場合には、baseline、2週目、4週目にて10mg/kg点滴投与し、上記の通りの用量で皮下投与をおこなう
- placebo群は、ACR20達成しているかいなかで、16週目(non-responder)または24週目(responder)時点で、1:1でsecukinumab 75mg s.c. q4w:secukinumab 150mg s.c. q4wに再び割り付けられた
- 104週時点まで観察
結果
- もともと、371人が3群に割り付けられた
- baseline characteritics
- 平均年齢:40歳ちょっと
- 男性:70%
- アジア人:20%弱
- 診断から 6.5 - 8.3年
- HLA-B27陽性:70-80%
- TNF-naive:70%ちょっと
- DMARDs使用率:10-30%
- 104週時点ではSSZ (35.0%), MTX (15.8%), ステロイド (19.7%) , NSAIDs (93.6%).
- 平均CRP 0.7-0.9 mg/dL
- 平均BASDAI:6.1 - 6.5
- 腰痛, PGA activityのVAS:65mm程度
- 104週時点での治療継続率
- 97/125 (77.6%):secukinumab 150 mg
- 103/124 (83.1%):secukinumab 75 mg
- 90/122 (73.8%):placebo
- 104週時点でのACR20達成率
- 73.7%:secukinumab 150 mg
- 68.0%:secukinumab 75 mg
- これらは16週時点(76% 150mg群, 74% 75mg群)、52週時点での値と同等
- TNF-naiveの場合は、さらに104週時点ACR20/40達成率が大きかった
- ACR20
- 85.5%:secukinumab 150 mg
- 72.3%:secukinumab 75 mg
- ASAS40
- 69.6%:secukinumab 150 mg
- 52.3%:secukinumab 75 mg
- TNF阻害剤抵抗性の場合も、ACR20/40達成率が大きかった
- ACR20
- 55.6%:secukinumab 150 mg
- 71.4%:secukinumab 75 mg
- ACR40
- 44.4%:secukinumab 150 mg
- 57.1%:secukinumab 75 mg
- BASDAIの改善も、16週時点と52週時点と同等に維持
- secukinumab群でX線が評価可能なのは168人
- 平均ΔmSASSS(baseline〜104週時点):0.30 ± 2.53
- 80%以上はレントゲンでの進行なし
- 以下はレントゲン進行のリスクだった
- 男性
- baselineで骨棘形成があった
- しかしそれでも70%は進行していない
- 喫煙者
- CRP上昇
- 安全性
- 重症感染症
- 12.2%:secukinumab 150 mg
- 13.4%:secukinumab 75 mg
- 頻度が比較的多かったのは、上気道感染、下痢、頭痛
- 1例死亡があったが、それはもともと高血圧と喫煙既往があり、706日目に心不全と肺線維症による呼吸不全で死亡したもの
- カンジダ
- secukinumab群で4例(=0.7/100 人年)
- 2人は口腔カンジダ、1人は皮膚カンジダ、1人は性器カンジダ
- いずれも外用薬もしくは自然に治癒
- ヘルペス感染症
- 8.3%(150 mg)
- 2.2%(75 mg)
- いずれも軽症
- Grade3の好中球減少が、それぞれ1回の測定時のみだが、75mg群で3人、150mg群で1人
- Grade4の好中球減少が、1回の測定時のみだが、75mg群で1人
- いずれも治療中断や変更はせずに軽快
- 1例は上気道感染を伴った
- クローン病
- 0.8/100 人年
- 75mg群で4人
- そのうち2人はクローンの既往あり、1人はポリープと大腸腺腫の既往あり
- 150mg群で1人
- ぶどう膜炎
- 2/100 人年
まとめ
- secukinumabは2年間を通して有効性を示した
- TNF-naive or TNF-IRにも有効性が高い
- 今回のレントゲンでの進行の抑制効果を、TNF阻害剤と比較することは、試験のデザインも異なるのでできない
- TNF阻害剤のOASIS cohortでは、2年間でX線の進行は有意に抑制しなかった
- 2年間でのΔmSASSS:0.8–0.9(TNF inhibitors)vs. 0.9–1.3(活動性をマッチしたbio-naive)
- しかしながら、初期からTNF阻害剤で積極的に治療した場合は、8年間の観察期間でレントゲンの進行を抑制した
- OASIS cohortのほうが、MEASURE1の対象群よりも重症例が多く、比較は困難
- IL-17A阻害剤のより長期的な観察が必要である
- カンジダ感染は、IL-17が粘膜防御を担っているため生じたと考えられるが、いずれも軽症だった
- ASの関節外病変であるぶどう膜炎、乾癬、炎症性腸疾患は、今回の試験中に出現した割合は少なく、通常のASが発症する頻度と同等だったため、明らかな治療による有害事象とは言えない
- クローン病に対しては、発症を誘導するもしくは保護的に働く可能性の両者がいわれているが、今回の発症率(0.8/100 人年)はASに対するTNF阻害剤を使用した時の発症率(0.2-1.3/100 人年)と同等だった
IL-17A阻害剤の2年間のextended reportです。レントゲンでの進行抑制はもう少し長期的にみてみないとわからないし、TNF阻害剤より有効なのかも試験デザインが異なるので、head-to-headで比べてみないとわからないでしょう。
現時点では、カンジダはコントロール可能なものが多くて、クローン病はIL-17A阻害剤と関連があるとははっきりはいえなそうです。
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