本文中の図やグラフは元論文より引用しております。
背景
- ACPA陽性RAとACPA陰性RAは、遺伝的要因、喫煙などの環境因子といったリスク因子がACPA陽性患者に限定されるため、異なる疾患サブセットと考えられている
- しかしながら、診断されるときの臨床症状は両者とも似ているのは興味深い
- 自己免疫の異常は、RAと診断される数ヶ月〜数年前より始まっている
- ACPA陽性RAでは臨床的に関節炎を認める前からACPA陽性となることもある
- ACPA陰性RAでも発症前に無症候性炎症状態があることが報告されている
- 現在、ACPA陽性とACPA陰性RAにおける、臨床的に関節炎を発症する前に先行する症状のphenotypeの違いは明らかになっておらず、今回はそれがあるものと仮定して開始したcohortのデータを利用し、本当のところを調べてみた
方法
- 2012/4から開始したthe Leiden University Medical Center の外来患者のコホートを使用
- 対象
- リウマチ専門医がRAに進行する疑いがあると判断した、発症してから1年以内の小関節痛を有する患者
- 上記患者を、コホートに組み込まれた時点でACPA, IgM-RF、急性炎症反応蛋白を測定
- 臨床的関節炎を発症するまでの最大2年間フォロー
- 解析した時点(2016/11)で、441人が組み込まれ、そのうち74人が臨床的関節炎へ進行した。
- このうち7人が治験に参加しMTX or placeboを開始された。
- DMARDsは関節痛を認めた時点では開始されていない。
- すなわち、その後の経過で臨床的関節炎へ進行した、DMARDs naive-関節痛の67人が今回解析対象となった
結果
- 67人のうち、37人(55%)がACPA陰性、30人(45%)がACPA陽性だった
- clinical characteristics(table1)
- ACPA陽性群
- 初発病変は下肢が多い
- 50% vs. 22%
- p=0.014
- 平均圧痛関節数が少ない
- 5 vs. 9
- p=0.017
- 痛みで手を握れない人の割合が少ない
- 11% vs 43%
- p=0.004
- CRPは両群とも同等
- 0.9mg/dL vs. 0.8mg/dL
- 関節痛を認めるまでの症状持続期間はACPA陽性群のほうが長い(figure1)
- 22週 vs. 14週
- p=0.005
- しかしながら、一度関節痛を認めると、関節炎発症まではACPA陽性群で早い
- 6週 vs. 18週
- p=0.015
- 関節炎に進行、ということを、2010RA分類基準を満足 or DMARDsを開始、とした感度分析でも同様の結果だった
- RAに分類され、その後関節炎が自然に改善した人はいなかった
- ACPA陽性 or ACPA陰性 → RF陽性 or RF陰性 に変更しても、サンプルサイズが小さくなったが、結果が同様だった
まとめ
- 今回の研究結果は、ACPA陽性群と陰性群における、関節炎へ進展する前の臨床症状の違いを示すものだった
- ACPA陰性だと、下肢が初発となるのは少ない
- ACPA陽性だと、圧痛関節数が少なくて、手の把握もできる人が多い
- しかしながら、一度関節痛を発症すると、関節炎に進展するまで期間はACPA陽性の方が短い
- これまでの既報では、ACPA陽性群とACPA陰性群の初発症状の違いは後ろ向きで調査しており、想起バイアスがあった可能性があるが、今回の研究では前向きに調べたので、初発症状に関してはより正確な情報を得られた
これまでの既報では関節破壊に関する予後はACPA陽性群の方が悪いかもしれないけども、診察してわかるような臨床症状は、一度関節炎を発症してしまうとACPA陽性だろうがACPA陰性だろうが区別は難しい。
しかしながら、ACPA陽性群と陰性群で初発症状の違いを前向きにきちんと調べたのは、今回が初めて。
seronegative RAの場合は、
・初発症状はより上肢のみのことが多く、圧痛関節などは多いかもしれないけども、関節痛を発症してから関節炎に至るまではややseronpositive RAよりも時間がかかるかもしれない、ってことを念頭において朝のこわばりや関節痛で受診した人を診察してみようと思います。
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