本文中の図やグラフは元論文より引用しております。
背景
- 乾癬性関節炎(PsA)は、関節炎、付着部炎、指尖炎、体軸関節病変、皮膚・爪病変など多様な症状を呈する疾患である
- PsAでは特異的な治療効果判定方法が存在せず、末梢関節炎ではRAのために開発されたACR20を臨床研究での主要評価項目として用いていることが多かった
- しかしながら、最近、PASDAS, GRACE, CPDAIのような、様々な症状を項目として含む新しい評価基準が開発された
- TICOPA studyは、疾患活動性を指標にして厳密なコントロールを行うこと(T2T)の有効性を示した最初の研究である
- TICORA studyでは、T2Tをおこなった群では、48週時点でのACR20達成率が2倍ほど高かった
- 今回の研究では、TICOPA studyにおける治療反応性をPASDAS, GRACE, CPDAIで再解析し、これらの評価項目の有用性を調べた
方法
- TICOPA studyについて
- ランダム化、open-label、多施設研究
- 早期(発症2年以内)未治療PsA患者を対象
- tight control(TC)群とstandard care(SC)群に割付
- Minimal Disease Activity(MDA)を指標に48週間治療し、上記2群を比較
※MDA Criteria
– GRAPPA [Ann Rheum Dis. 2010 Jan;69(1):48-53.
次の基準の7(臨床試験で検証)のうち5つを満たす場合は、MDAを有すると分類
- 圧痛関節数 ≤ 1
- 腫脹関節数 ≤ 1
- PASI ≤ 1 または BSA ≤ 3 %
- 患者疼痛 VAS ≤ 15 mm
- 患者全般疾患活動性 VAS ≤ 20 mm
- HAQスコア ≤ 0.5
- 腱付着部炎箇所 ≤ 1
- このMDA基準は、ランダム化比較試験と観察コホートで検証され、12ヶ月以上のMDAを達成した患者では、関節破壊の進行の有意な減少を示した
- Arthritis Care Res (Hoboken). 2010 Jul;62(7):970-6.
- TC群(101人)
- 平均年齢:46歳
- 男性:53%
- 罹患年数:0.9年
- 89.1%(90人)が48週間の治療を完遂
- SC群(105人)
- 平均年齢:45歳
- 男性:52%
- 罹患年数:0.7年
- 87.6%(92人)が48週間の治療を完遂
- baselineのPASDAS, GRACE, CPDAIはTC群で高い(table1)
- 共分散解析で、48週時点で、全ての評価項目において、TC群とSC群に有意差を認めた(p<0.0001)
- AUC分析では、PASDASのみ、TC群とSC群の間に有意差あり
- いずれの評価項目のscoreも、最初の評価時期でTC群<SC群となり、その後継時的に差は広がった
- 他関節炎がある患者に限定(table2)
- 共分散解析で、48週時点で、全ての評価項目において、TC群とSC群に有意差を認めたが、p値は上記より小さくなった(PASDAS, p=0.04; GRACE p=0.01; CPDAI p=0.04)
- AUCにおける、PASDASのTC群とSC群の間の有意差は消失した(table2)
- 48週時点でのgood, moderate, poor responseの割合(table3)
- いずれの評価項目でも、TC群とSC群の違いは有意だった
考察
- 最初の12週間でTC群においてscoreがSC群より低くなったのは、積極的なMTX増量の影響だろう
- 12週間〜24週間においてさらにTC群のほうがscoreが低下したのはSASPとの併用療法の効果だろう
- 24週以降はbDMARDs使用の影響だろう
- 多関節炎に限った解析をして最初の12週間の急速な改善がなかったのは、これらの複合評価項目が関節病変が少ない人に適していることを反映しているか、もしくはMTXの多関節炎への有効性の低さを反映しているのだろう
- しかしながら、PsA多関節炎に対するMTXの有効性は既報で報告されており、これら多関節炎病変に対するより適した治療は今後も検討する必要がある
- Rheumatology 2012;51:1368–77.
- TICOPA studyが実施された時点では、上記3つの複合評価項目はまだ使用されていなかったため、データの欠損はある
- 複合評価項目の種類によって項目の種類やそれぞれに重み付けがしてあるかに違いがあるので、研究に組み込まれた患者の病変部位によって、異なる複合評価項目を用いると、その研究結果が変わってしまうだろう
ひとまず、PASDAS, GRACE, CPDAIでもTICOPA studyのTC群の有意性は示せたものの、多関節炎の患者に限ると群間の違いは減少したため、あまり関節炎が強い人の場合はこれらの複合評価項目は適していないのかもしれないですね。
PsAはRAよりも評価項目部位が皮膚とか関節とか多いので、今後もより適格な複合評価項目の開発とvalidationが必要です。
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