ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 69, No. 7, July 2017, pp 1440–1450
Vol. 69, No. 7, July 2017, pp 1440–1450
背景
- SjSはRAについで頻度の高い自己免疫疾患である
- primary SjSに関して
- 9:1で女性が多い
- 有病率1-6/1000人女性
- ドライアイ、ドライマウス、倦怠感、痛みが典型的な症状である
- 5%ほどで線維筋痛症を併発する。SLEでも同様。
- 皮膚、末梢神経障害、非びらん性関節炎、間質性膀胱炎、肺、腎臓など腺外症状が生じるのは5-20%
- B細胞の活性亢進があり、SS-A/B抗体陽性 & 高γグロブリン血症を伴う
- 現在では、疾患を治すというよりも対症療法が主流である
- しかしながら、点眼はそれなりに有効だが、ドライアイに対するスプレーなどは大抵効果は限定的である
- 倦怠感にはどうしようもない
- ヒドロキシクロロキン±少量ステロイドが軽症SjSに経験的に使用されることが多い
- しかしながら、ある研究ではこの効果は限定的であると報告されている
- JAMA 2014;312:249–58.
- 進行性の神経障害など重症の状況では、mPSL点滴、CYC、AZA、CyA、MMF、chlorambucil などが使われる
- B細胞リンパ腫の場合には、RTXを含む化学療法を行う
- primary SjSに対するRTXに関して
- 比較的少数のオープンラベル試験で、患者の自覚的な乾燥症状、痛み、倦怠感、Patient' Global Assessment、刺激下での唾液分泌、physician’s global assessment of disease activity は改善したと報告あり
- New England Medical Center; 1993.
- Arthritis Care Res (Hoboken) 2007;57:310–7.
- Arthritis Rheum 2005;52:2740–50.
- Arthritis Rheum 2013;65:1097–106.
- RTXとDMARDsを比較した120週間の前向き比較試験でRTXのほうが症状改善が大きかった
- Arthritis Res Ther 2013;15:R172.
- 少数ではあるが、二重盲検化プラセボランダム化比較試験でも、倦怠感やドライアイを改善した
- Ann Rheum Dis 2008;67:1541–4.
- Arthritis Rheum 2010;62:960–8.
- しかし、最近報告されたTEARS studyでは、24週間のフォローにおいて、primary endpointである倦怠感、乾燥症状、痛み、Patient' Global AssessmentのVASに関して効果なしという報告であった
- Ann Intern Med 2014;160:233–42
- これまで報告されたSjSに対するRTXの試験では、RTXの投与が単発であったため、今回は期間を開けて2回投与し、それによる効果をみるために二重盲検プラセボランダム化比較試験をおこなった
方法
- 多施設ランダム化二重盲検プラセボ比較試験
- 期間:2011/8-2014/1
- 対象
- 18−80歳
- SS-A抗体陽性
- 無刺激唾液分泌量低下あり
- 倦怠感あり
- ステロイド、NSAIDs、DMARDs、ピロカルピン、抗うつ薬は組み入れ4週間前より用量を変更しない
- exclusion criteria
- secondary SjS
- B/C型肝炎
- 結核感染者
- HIV感染者
- 何らかの免疫不全症
- 以前にRTXもしくは抗体製剤の使用あり
- 5年以内に悪性腫瘍と診断されている
- 最近、移植術を受けた、大きな手術を受けた
- 妊婦・授乳婦
- 試験中に避妊する気がない
- RTXの投与方法
- 1000mg div day0, 2, 24, 26
- IRを予防するために、前投与してmPSL, acetoaminophen, chlorpheniramine を投与し、RTX投与後にPSLで経口投与した(60mg→15mg/dayと7日間以上かけてtapering)
- Primary endpoint
- 48週時点における、VASにて30%以上、倦怠感 or ドライマウス症状の改善を認めた割合
結果
- 期間:2011/8-2914/1
- 133人
- RTX:placebo=1:1
- baseline characteritics
- 平均年齢 54歳
- 22.6%は ≧65歳
- 平均罹患年数 5.7年
- 18%は 10年以上
- 女性 93.2%
- HCQ使用率 55.6%
- ESSPRI 6.6
- ESSDAI 5.7
- Primary endpoint達成率
- RTX群 vs. placebo群で有意差なし
- 36.8% vs. 39.8% (adjusted OR 1.13 [95% CI 0.50-2.55]
- 無刺激唾液腺分泌量以外に統計学的に有意に改善した項目なし
A:倦怠感、B:ドライマウス症状、C:無刺激唾液腺量、D:涙腺分泌量
- 副作用
- 全体ではRTX群で多かった
- 重度の副作用は有意差なし
IR予防に後投薬としてPSL60mgから開始するのはよくわかりませんが。。。
やっぱりSjSの乾燥症状に困っている患者さんも多いですし、外来主治医もSjSの患者さんは不定愁訴が多いとぶった切ってしまうことも多々あるので、やはり対症療法以外の治療ができればみんな幸せになれるはずです。
SjSみたいに知らないうちにゆっくりと不可逆的なダメージが進んでしまう疾患の試験は、対象患者の抽出が非常に難しいので、どうしてもnegative studyが出てしまう可能性が高くなってしまいます。
今回もそれなりに罹患年数のたった患者さんが含まれており、baselineでの唾液分泌量が低く、すでに結構なダメージが進んでしまっていた可能性もあります。また、当初1253人からスクリーニングされて1081人外れているので、今回の患者層が本当のSjS患者のcharacteriticsを示しているか微妙です。対象患者、試験のデザイン、primary endpointの項目などいろいろ工夫する必要がありそうです。
実際positive dateの出ている試験もあるので、SScもそうですが、今後もSjSを治すことや、発症当初にRTXやったらリンパ腫とか腺外症状の発症が減った!とかいうことを目的とした試験には注目したいです。
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