Ann Intern Med. 2014;160:233-242.
ちょっと前の論文ですが、SjSに対するRTXに関して重要な論文なので読んでみました
背景
- SjSはドライマウス、ドライアイを呈する慢性自己免疫疾患であり、時に〜50%の頻度で腺外症状も伴う
- 組織学的には涙腺や唾液腺にリンパ球浸潤と腺構造の破壊を認める
- HCQを関節症状、倦怠感に対して使用し、ステロイド、MTXの免疫抑制剤を腺外症状に使用することはあるが、現時点では、SjSの経過を有意に改善させる治療は確立していない
- B細胞はSjSにおける中心的な病態を担っており、pre-B細胞とmature-B細胞に発現する膜貫通タンパクであるCD20をターゲットにした治療が注目されている
- いくつかのopen-label試験では、RTXは、比較的安全に、血液と唾液腺にあるB細胞を急速に除去することができ、早期の活動性SjSに対して有効だと報告している
- Arthritis Rheum. 2007;57:310-7.
- Arthritis Rheum. 2005;52:2740-50.
- Ann Rheum Dis. 2012;71: 84-7.
- 小規模ではあるが、2つの二重盲検RCTも報告されている
- 1つは18人を対象にしており、6ヶ月後の倦怠感に関するVASに対して有効性を示したが、主要評価項目である20%以上のVASの改善は満たさなかった
- Ann Rheum Dis. 2008; 67:1541-4
- 2つ目は30人を対象にしており、早期の活動性SjSを対象にしており、6ヶ月後の乾燥症状に関するVASと刺激下での唾液分泌量に関して改善を認めた
- Arthritis Rheum. 2010;62:960-8.
- 今回の研究では、さらなるエビデンス蓄積のためにプラセボと比較してSjSに対するRTXの効果をRCTで調べてみた
方法
- 多施設二重盲検(患者、解析者)プラセボRCT
- フランス
- 2008/3-2011/1の期間でリウマチ医、内科医が患者をピックアップ
- 対象
- 18−80歳
- the American–European Consensus Group criteria for pSS を満たす
- 全般活動性、痛み、倦怠感、乾燥症状に関するVAS(0-100mm)スコアにおいて、少なくとも2つ以上の項目で ≧50mmと、活動性のあるSjS
- 発症から10年以内(何らかの症状が発現したために最初に受診した日をonsetとしている)
- 以下のいずれかを満たす
- 血清学的に活動性あり
- SS-A抗体陽性 or RF陽性
- クリオグロブリン陽性
- 高γグロブリン血症
- β2MG上昇
- 低補体血症
- 1つ以上の腺外症状あり
- NSAIDs使用量が安定している
- 4週間以内に免疫抑制剤を使用していない
- 妊娠可能年齢の場合は避妊をすることを同意している
- exclusion criteria
- secondary SjS
- 細胞障害性の薬剤を4ヶ月以内に使用している
- 重症の腎病変 or 血液病変
- 悪性腫瘍、B/C型肝炎、HIV、結核、重度の糖尿病、何らかの慢性疾患(?)の既往
- 活動性感染症
- ヒト化 or マウス由来のmono-clonal抗体製剤に対する重症アレルギーの既往
- 1:1=RTX:placebo
- RTXの投与方法
- 1g div day0, day14 の1コースのみ
- 前投薬としてmPSL 100mg + acetoaminophen 500mg 使用
- primary outcome
- 24週時点で、baselineよりも、全般活動性、痛み、倦怠感、乾燥症状に関するVAS(0-100mm)スコアにおいて、少なくとも2つ以上の項目で30mm以上の改善
結果
- 122人
- RTXは2週間の間隔で2回投与するが、1回でも投与されたら解析対象
- RTXのうち5人、placebo群のうち1人は、副作用のため2回目は投与されていない
- baseline characteritics
- 両群とも同等
- 平均年齢:52 vs. 55 歳
- 平均罹患年数:7.4 vs. 8.4 年
- 各VAS scoreは50-70mm程度
- primary outcome
- 24週時点で、baselineよりも、全般活動性、痛み、倦怠感、乾燥症状に関するVAS(0-100mm)スコアにおいて、少なくとも2つ以上の項目で30mm以上改善した割合はRTX vs. placebo群で有意差なし
- difference, 1.0% [95% CI, -16.7% to 18.7%])
- しかし、6週時点では、RTX群において有意に達成者が多かった
- 22.4% vs. 9.1%; p=0.036
- 特に倦怠感に関して有効であった
- ESSDAI scoreはどの時点でも有意差なし
- 耳下腺腫大や関節症状の改善に関しても有意差なし
- 24週時点におけるESSDAIで腺症状を0とした割合
- 40 of 54 patients [74.1%] in the placebo group and 47 of 61 patients [77%] in the RTX
- 痛みに関しては、どの時点においても有意に改善しなかった
- 副作用
- 両者であまり違いなし
- RTX群においてIRや紫斑などがみられたが、紫斑に関しては投与15日間以内であったのでRTXによるものと考えられた
まとめ
- 今回は6週間時点でVASは改善したが24週になると有意差がなくなった
- 今回は、倦怠感がRTXによって最も反応良好であった
- 乾燥症状も改善傾向ではあったものの、VAS30mmには及ばなかった
- 以前のRCTではprimary outcomeとして刺激唾液分泌量も改善傾向であったが、inclusion criteriaがbaselineの分泌量≧0.15ml/minと低めに設定されていた
- Arthritis Rheum. 2010;62:960-8
- ESSDAIも有意差なかった
- 以前の28人の前向きコホートではRTXによってESSDAIは改善していた
- BAFF, IFNなどのサイトカインで RTXの有効性が予測できればおもしろそう
- 今回のstudyではBAFFも測定していたが24週時点でRTX vs. placeboで有意差なし
- RTXの有効性が低い理由の候補
- 試験デザインの問題
- 患者群の抽出
- 適切な評価項目の設定、など
- plasmablastの関与
- ターゲットにしている唾液腺組織中のB細胞にはRTXの効果が限定的である可能性
- B細胞とregulatory B細胞のバランスの問題
項目が項目なので、プラセボ群も投与直後にVASが改善していますね。
今回の試験の結果を受けて、RTXをさらに追加したらどうなんだというのがTRACTISS studyみたいです。
いつも思うんですけど、これまでの試験でいくらRTXが比較的安全だったと言われても、placebo or RTXの投与を受けるとかこわいですね・・・試験に協力してくれるSjS患者さんに感謝です。特にインフルエンザワクチンの時期はちょっと(^^;;
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