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2017年9月20日水曜日

NPSLEに対するCYCの有効性



Lupus (2016) 25, 627–636 
(本文中の図やグラフは元論文より引用しております)

背景

  • NPSLEは、SLEにおいて未だ重要な予後規定因子である
  • NPSLEの病態は不明であるが、早期の動脈硬化や血栓による血管・神経障害が考えられている
  • 診断にはMRIが頻用されるが、50%はMRIで異常所見を認めない
    • NPSLEにおけるMRI所見は非特異的であり、背景にある多様な病態を反映している
    • 最も頻度が多いのは、白質の高信号所見であり、30-75%に認める
    • 脳の萎縮は15-20%で認める
  • 治療は免疫抑制剤併用、抗凝固薬・抗血小板薬、抗精神薬など
  • 今回の研究では、NPSLEに対してCYCを使用したヨーロッパの2施設患者をフォローし、長期間の有効性と安全性を評価した

方法
  • 期間:1999-2013年
  • 対象
    • 精神症状を呈し、かつACRのSLE分類基準を満たす
    • CYCを中枢神経症状(他の重要臓器病変の併発の有無は問わない)に対して寛解導入もしくはレスキューとして使用した
  • 治療反応性の定義
    • Complete response (CR, complete resolution of initial symptoms/ neurological signs)
    • Partial response (PR, improvement but without disappearance of initial symptoms/signs)
    • Stabilization (absence of clinically significant change in symptoms/signs from baseline)
    • Deterioration of symptoms/signs (including death due to NPSLE or complications of therapy). 

結果
  • 46人の患者、計50 中枢神経eventsに対してCYCを使用した
    • 4人の患者は、2つの異なる中枢神経症状に対して使用
  • characterisitcs
    • 2つの施設間では、CYCの積算量以外は大きな違いなし
    • NPSLE平均発症年齢:45歳
    • SLE発症からNPSLE発症までの平均期間:1.5年(range 0-31年)
    • 抗リン脂質抗体陽性:46%
    • NPSLE以外の病変でCYC使用歴あり:28.2%



  • CYCを使用したNPSLEの中での症状で多い順番
    1. 精神病症状(11例)
    2. 末梢神経障害(6例)
    3. 脳血管障害、痙攣性異常、脳神経障害(5例ずつ)
  • いずれも炎症病態が背景にあると考えられてCYCを使用された
  • 脳血管障害は5例とも疾患活動性がある状況で発症した
    • 精神神経症状の項目を除くSLEDAI-2Kの平均点数(IQR):6.0(3.0)
    • APS併発していた1例は抗凝固薬、残りの4例は抗血小板薬を併用した
  • 痙攣性障害も同様に、疾患活動性があって抗痙攣薬に反応しないためCYCを使用した
  • 抗対症薬も全ての症状のタイプで使用した(抗うつ薬、抗痙攣薬など)
  • CYCは経口で投与した2例を除き、monthlyで点滴投与した
    • 42/50は第一選択としてCYC使用し、他8例はAZA, MTXで治療効果不十分のため使用した
    • 両施設ともSLE腎症に準じ、初回寛解導入はmonthlyで6ヶ月間治療して寛解の判定を行い、維持治療へ移行した
      • しかしながら、用量は両施設で異なっていた
        • Heraklin cohort:NIHプロトコルに準じて 0.75-1g/m2 monthly ×6回(2例は若年のためEuro-lupus low-dose regimen=500mg×6回、計3g)
        • Cluji cohort:15mg/kg monthly 6ヶ月間
    • 平均CYC pulse回数:8.0回(range 2-26)、積算量 7.2g(range 2.0-33.8g)
      • Heraklin cohortでは、1回量も多く、CYCを維持治療でも使用(3ヶ月ごと投与)したため、積算量がCluji cohortより多い(16.2g vs. 4.8g, p=0.04)
  • 43/50例は、初回CYC pulse前に、mPSL pulseも使用している
  • CYC治療を完遂した場合、46%はCRを達成し、38%はPRを達成した。
    • CRとPR達成率は、2つの施設間で有意差なし(データなし)
    • 第一選択としてCYCを使用したほうが、初回治療失敗後に使用した場合よりも、 CR達成率は高かった(52.4% vs 12.5%, p=0.018
    • 症状のうち、特に反応性が良かったのは、精神病様症状と痙攣性障害
      • それぞれ CR/PR in 66.7/ 16.7%, and 60.0/20.0%
  • CYCを使用した6例ではStabilizationであり、 2例は増悪した
    • 第一選択としてCYCを使用したほうが、初回治療失敗後に使用した場合よりも、 Stabilization or 増悪の頻度が少なかった(それぞれ9.5% vs 25.0%, and 2.4% vs 12.5%, p=0.018
    • そのうち3例(脳血管障害、無菌性髄膜炎、精神病様症状)はRTXでレスキューした
  • 6例(12%)は、CYC治療後にNPSLEが再発した
    • 3例(無菌性髄膜炎、感覚性聴力障害、精神病様症状)は維持治療中(2例AZA, 1例MTX)に再発した。CYC治療が完遂(1人CR, 1人PR, 1人安定)してから平均8ヶ月後に再発。1例はCYCで再度治療、1人はRTXへ変更、1例は粟粒結核で死亡。
    • 残りの3例(2例は痙攣性障害、1例は脳血管障害)は寛解治療中の最初の6ヶ月間に再発した。痙攣性障害は最終的には痙攣の頻度が低下し、脳血管障害は治療失敗と考えられた
  • 再発なく初回の寛解導入を終えた患者(CR or PR or Stabilization)では、維持治療として以下を使用
    • 65.9% AZA
    • 19.1% CYC3ヶ月ごと or 2ヶ月ごと投与
    • 10.6% MMF(全例、腎症の併存あり)
    • 2例は維持治療なし
    • 最終観察時にNPSLEがStabilizationだった患者における維持治療はCYC継続が多かった
      • CYC 50% vs. AZA 33%
    • 有害事象
      • 経過観察期間中の悪性腫瘍発生なし
      • 3例は重症感染症
        • HBV再活性化、粟粒結核、重症肺炎
      • 性線毒性について
        • 23人の女性が治療開始時に45歳以下
          • Heraklin cohortではlow-dose IVCYを投与された2例以外は、GnRHアナログで性線保護治療を受けた
          • Cluji cohortでは、一例も受けず
          • 3例、続発性無月経が生じたが、それは全てCluji cohortからだった(2例は積算量5.4g, 8.0g。もう1例は経口でCYC投与)






まとめ
  • これまでNPSLEに対する治療でRCTが行われたのは1つだけであり、そのRCTではIVCYがmPSL pulseより優れていたという結果だった
    • IVCYを受けた94.7%で、baselineから2年後に、20%以上の改善(臨床的、血清学的、精神症状的)を認めた(mPSL pulseを受けた患者では、53.8%だった)。
  • 今回の結果では、CYCで治療した場合、PR以上の改善を80%で認めており、CYC治療の有効性を示した
  • CYC治療の機序は、おそらくB細胞除去によるものであり、これはRTXなどのB細胞除去療法がレスキューとして有効だったことからも支持される
  • 維持治療としてCYCを継続しても治療効果は変わらなかった
  • 治療効果の指標にスタンダードがないため評価が難しい(MRIも半数は最初から正常)
  • 若年女性のLNに対してIVCYを投与する際に、性線毒性の予防としてGnRHアゴニストを使用すると、続発性無月経の頻度を30%→5%に減らした既報もある
    • Arthritis Rheum 2005; 52: 2761–2767. 
  • limitation
    • retrospective, non-randomised研究であり、CYC投与量や症状も多様なため、CYCの有効性を比較す流には様々なバイアスがありそう
    • 長期の有害事象は評価できていない
    • 続発性無月経の有無は自己申告のみ


数少ないNPSLEの治療に関するretrospective studyです。
IVCY(NIH or 15mg/kg)で比較的responseは得られるようで、維持治療はCY2−3ヶ月おきでなくAZAが今の所無難でしょうか。

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