Lupus (2016) 25, 627–636
背景
- NPSLEは、SLEにおいて未だ重要な予後規定因子である
- NPSLEの病態は不明であるが、早期の動脈硬化や血栓による血管・神経障害が考えられている
- 診断にはMRIが頻用されるが、50%はMRIで異常所見を認めない
- NPSLEにおけるMRI所見は非特異的であり、背景にある多様な病態を反映している
- 最も頻度が多いのは、白質の高信号所見であり、30-75%に認める
- 脳の萎縮は15-20%で認める
- 治療は免疫抑制剤併用、抗凝固薬・抗血小板薬、抗精神薬など
- 今回の研究では、NPSLEに対してCYCを使用したヨーロッパの2施設患者をフォローし、長期間の有効性と安全性を評価した
方法
- 期間:1999-2013年
- 対象
- 精神症状を呈し、かつACRのSLE分類基準を満たす
- CYCを中枢神経症状(他の重要臓器病変の併発の有無は問わない)に対して寛解導入もしくはレスキューとして使用した
- 治療反応性の定義
- Complete response (CR, complete resolution of initial symptoms/ neurological signs)
- Partial response (PR, improvement but without disappearance of initial symptoms/signs)
- Stabilization (absence of clinically significant change in symptoms/signs from baseline)
- Deterioration of symptoms/signs (including death due to NPSLE or complications of therapy).
結果
- 46人の患者、計50 中枢神経eventsに対してCYCを使用した
- 4人の患者は、2つの異なる中枢神経症状に対して使用
- characterisitcs
- 2つの施設間では、CYCの積算量以外は大きな違いなし
- NPSLE平均発症年齢:45歳
- SLE発症からNPSLE発症までの平均期間:1.5年(range 0-31年)
- 抗リン脂質抗体陽性:46%
- NPSLE以外の病変でCYC使用歴あり:28.2%
- CYCを使用したNPSLEの中での症状で多い順番
- 精神病症状(11例)
- 末梢神経障害(6例)
- 脳血管障害、痙攣性異常、脳神経障害(5例ずつ)
- いずれも炎症病態が背景にあると考えられてCYCを使用された
- 脳血管障害は5例とも疾患活動性がある状況で発症した
- 精神神経症状の項目を除くSLEDAI-2Kの平均点数(IQR):6.0(3.0)
- APS併発していた1例は抗凝固薬、残りの4例は抗血小板薬を併用した
- 痙攣性障害も同様に、疾患活動性があって抗痙攣薬に反応しないためCYCを使用した
- 抗対症薬も全ての症状のタイプで使用した(抗うつ薬、抗痙攣薬など)
- CYCは経口で投与した2例を除き、monthlyで点滴投与した
- 42/50は第一選択としてCYC使用し、他8例はAZA, MTXで治療効果不十分のため使用した
- 両施設ともSLE腎症に準じ、初回寛解導入はmonthlyで6ヶ月間治療して寛解の判定を行い、維持治療へ移行した
- しかしながら、用量は両施設で異なっていた
- Heraklin cohort:NIHプロトコルに準じて 0.75-1g/m2 monthly ×6回(2例は若年のためEuro-lupus low-dose regimen=500mg×6回、計3g)
- Cluji cohort:15mg/kg monthly 6ヶ月間
- 平均CYC pulse回数:8.0回(range 2-26)、積算量 7.2g(range 2.0-33.8g)
- Heraklin cohortでは、1回量も多く、CYCを維持治療でも使用(3ヶ月ごと投与)したため、積算量がCluji cohortより多い(16.2g vs. 4.8g, p=0.04)
- 43/50例は、初回CYC pulse前に、mPSL pulseも使用している
- CYC治療を完遂した場合、46%はCRを達成し、38%はPRを達成した。
- CRとPR達成率は、2つの施設間で有意差なし(データなし)
- 第一選択としてCYCを使用したほうが、初回治療失敗後に使用した場合よりも、 CR達成率は高かった(52.4% vs 12.5%, p=0.018)
- 症状のうち、特に反応性が良かったのは、精神病様症状と痙攣性障害
- それぞれ CR/PR in 66.7/ 16.7%, and 60.0/20.0%
- CYCを使用した6例ではStabilizationであり、 2例は増悪した
- 第一選択としてCYCを使用したほうが、初回治療失敗後に使用した場合よりも、 Stabilization or 増悪の頻度が少なかった(それぞれ9.5% vs 25.0%, and 2.4% vs 12.5%, p=0.018)
- そのうち3例(脳血管障害、無菌性髄膜炎、精神病様症状)はRTXでレスキューした
- 6例(12%)は、CYC治療後にNPSLEが再発した
- 3例(無菌性髄膜炎、感覚性聴力障害、精神病様症状)は維持治療中(2例AZA, 1例MTX)に再発した。CYC治療が完遂(1人CR, 1人PR, 1人安定)してから平均8ヶ月後に再発。1例はCYCで再度治療、1人はRTXへ変更、1例は粟粒結核で死亡。
- 残りの3例(2例は痙攣性障害、1例は脳血管障害)は寛解治療中の最初の6ヶ月間に再発した。痙攣性障害は最終的には痙攣の頻度が低下し、脳血管障害は治療失敗と考えられた
- 再発なく初回の寛解導入を終えた患者(CR or PR or Stabilization)では、維持治療として以下を使用
- 65.9% AZA
- 19.1% CYC3ヶ月ごと or 2ヶ月ごと投与
- 10.6% MMF(全例、腎症の併存あり)
- 2例は維持治療なし
- 最終観察時にNPSLEがStabilizationだった患者における維持治療はCYC継続が多かった
- CYC 50% vs. AZA 33%
- 有害事象
- 経過観察期間中の悪性腫瘍発生なし
- 3例は重症感染症
- HBV再活性化、粟粒結核、重症肺炎
- 性線毒性について
- 23人の女性が治療開始時に45歳以下
- Heraklin cohortではlow-dose IVCYを投与された2例以外は、GnRHアナログで性線保護治療を受けた
- Cluji cohortでは、一例も受けず
- 3例、続発性無月経が生じたが、それは全てCluji cohortからだった(2例は積算量5.4g, 8.0g。もう1例は経口でCYC投与)
まとめ
- これまでNPSLEに対する治療でRCTが行われたのは1つだけであり、そのRCTではIVCYがmPSL pulseより優れていたという結果だった
- IVCYを受けた94.7%で、baselineから2年後に、20%以上の改善(臨床的、血清学的、精神症状的)を認めた(mPSL pulseを受けた患者では、53.8%だった)。
- 今回の結果では、CYCで治療した場合、PR以上の改善を80%で認めており、CYC治療の有効性を示した
- CYC治療の機序は、おそらくB細胞除去によるものであり、これはRTXなどのB細胞除去療法がレスキューとして有効だったことからも支持される
- 維持治療としてCYCを継続しても治療効果は変わらなかった
- 治療効果の指標にスタンダードがないため評価が難しい(MRIも半数は最初から正常)
- 若年女性のLNに対してIVCYを投与する際に、性線毒性の予防としてGnRHアゴニストを使用すると、続発性無月経の頻度を30%→5%に減らした既報もある
- Arthritis Rheum 2005; 52: 2761–2767.
- limitation
- retrospective, non-randomised研究であり、CYC投与量や症状も多様なため、CYCの有効性を比較す流には様々なバイアスがありそう
- 長期の有害事象は評価できていない
- 続発性無月経の有無は自己申告のみ
数少ないNPSLEの治療に関するretrospective studyです。
IVCY(NIH or 15mg/kg)で比較的responseは得られるようで、維持治療はCY2−3ヶ月おきでなくAZAが今の所無難でしょうか。
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