背景
- ANCA関連血管炎(AAV)のmaintenance治療の期間は、ガイドラインでも少なくとも24ヶ月としており、適切な期間はわかっていない
- CYCで寛解導入し、AZA/PSLで維持治療をおこなっても5年で38%の頻度で再発するとEUVAS trialの結果で報告されている
- Arthritis Rheum 2012;64:542–8.
- RTXを使用しても18ヶ月での32%再発するリスクがある
- N Engl J Med 2013;369:417–27.
- 再発リスク
- GPA
- PR3-ANCA陽性
- ENT病変あり
- 寛解治療後もANCAが持続的に陽性
- 診断時に血清Cr値が低い
- ステロイドや免疫抑制剤の中断
- 再発の結果、疾患活動性とそれに伴う治療によって不可逆的な組織障害が蓄積し、腎病変の再発はESRDのリスクともなる
- 今回の研究では、AZAとステロイドのmaintenance治療を24ヶ月以上継続することで再発予防となるか調べた
方法
- このtrialの名前はREMAIN(prolonged REmission-MAINtenance therapy in systemic vasculitis) trialという
- EUVASがtrialを実施
- 33施設、11カ国
- 対象
- 1984CHCCに基づいて、MPA, GPA 腎限局型血管炎の診断がついている
- 腎病変 ± 他の致命的な臓器障害(肺、脳、眼、運動神経、消化管)があり、ANCA陽性 or 組織学的にpauci-immune血管炎の所見がある
- CYC+ステロイドで、少なくとも3ヶ月間、寛解治療をおこなっている(血漿交換の有無は問わない)
- AZA/PSLで寛解を維持している(寛解治療後18-24ヶ月で試験に組み入れ)
- exclusion criteria
- 18歳以下
- 妊婦
- 悪性腫瘍の既往
- HIV感染の既往
- 以前に致命的な再発の既往あり
- 試験開始時にESRD
- 寛解治療後18ヶ月だが、寛解を維持している期間が6ヶ月未満
- AZA and/or PSLをすでに中断している
- 寛解:BVAS=0
- major relapse:BVASの24項目のうち、1項目以上で新規症状 or 以前と同様の症状が出現
- minor relapse:BVAS以外の症状で、3つ以上の新規症状 or 以前と同様の症状が出現
- drug regimenは下のtable1の通り
- primary outcome
- major relapse, minor relapseを含む血管炎が再発した割合
結果
- 期間:1998/9-2010/3
- 121人の患者がスクリーニングされ、3人は早期の再発、1人は悪性腫瘍のため除外され、117人がランダムに割り付けられた
- 61人がmaintenance治療継続群、56人が中止群
- 割り付け後は7人脱落(2人は患者の希望で中断、1人は医師の判断で中断、4人はlost follow-up)したため、解析は110人でおこなった
- 平均フォロー期間:925日間(IQR 878 - 970日間)
- baseline characteritics
- 平気年齢:57歳
- 寛解治療開始後からの平均期間:18.8 ± 1.8ヶ月
- 血管炎の種類
- 47% GPA
- 53% MPA
- ANCAの型
- 52% PR3-ANCA陽性
- 44% MPO-ANCA陽性
- 4% ANCA陰性
- 96%は初回寛解導入後の患者
- 平均PSL用量:5.9 ± 2.2mg/day
- 平均AZA用量:99 ± 37mg
- 平均血清Cr:1.32mg/dL
- 平均VDI:1.8
- Primary outcome(figure2a)
- 再発の割合は中断群で高かった
- 63% vs 22%, p<0.0001
- OR 2.84, 95% CI 1.72 - 4.9
- 中断群で再発したうち、78%はAZA中断後だった
- 再発した時点でのAZA用量
- 継続群 75mg vs. 中断群 0mg
- secondary outcome
- major relapse(figure2b)
- 有意差あり
- 継続群 13.5% vs. 中断群 35.3%, p=0.007
- 最終診察時のeGFR
- 有意差なし
- 継続群 54.1± 24.7 mL/min/1.73 m2 vs. 中断群 52.5 ± 26.7mL/min/1.73 m2 , p=0.78
- ΔeGFR
- 有意差あり
- 継続群 +2.5± 9.8 mL/min/1.73 m2 vs. 中断群 -3.3 ± 14.9mL/min/1.73 m, p=0.01
- 割り付け時にはANCA陽性率が同等だったが、6ヶ月後には中断群で陽性率が高かった
- 72% vs. 52%, p=0.04
- VDI scoreは有意差なし
- 再発のリスク
- 割り付け時にANCA陽性であること(figure2c & table3)
- 51% vs 29%, p=0.017
- OR 2.57, 95% CI 1.16 to 5.68
- 腎機能、ANCAの型(PR3 or MPO)、血管炎の種類(GPA or MPA)、年齢は統計学的有意差なし
- major relapseに限って分析しても上記はリスクとならず
- 再発時のBVAS, 臓器病変数は継続群と中断群で有意差なし
- 有害事象
- 治療継続群のほうが多い
- events:9 vs. 3
- 特に悪性腫瘍、感染症
- しかし、継続群のほうが腎予後は良好
- ESRDに至った症例数:0 vs. 4, p=0.012
- 生存率は有意差なし
- 中断群で2人死亡、継続群で5人死亡(p=0.32)
- 死因は3例が悪性腫瘍、2人が心血管系疾患、2人が不明
まとめ
- AZA, PSL継続群のほうが再発が少ない
- 今回の試験のデザインでは腎病変が多いので、維持治療にはMTXではなくAZAが選択された
- リツキサン複数投与がAZAよりも再発に関しては優れているという報告もあるが、今回の試験期間中に使用されていなかったので評価していない
- N Engl J Med 2014;371:1771–80.
- 今回の継続群の再発率は既報(IMPROVE trial, WEGENT trial, MAINRITSAN trial)と同等である。中断群は既報より再発率が高いが、それは既報よりも観察期間が長いからかもしれない
- 有害事象は継続群のほうが多かったが統計学的には有意でなかった。これはサイプルサイズが少ないためβエラーかもしれない。
- 蓄積臓器障害を示すVDIは両群で有意差はでなかったが(全体で2.2)、EUVAS trialでの長期観察期間でのVDI 2.66と同等だった
- 全例で長期の維持治療が必要とは今回の試験の結果ではいえないが、ANCA持続陽性は再発リスクとなるので、維持治療は継続したほうが良いのかもしれない。
- しかしながら、割り付け時にANCA陰性だった群で29%再発しているため、早期に中断することはやはりリスクとなるのだろう
- これまでいわれていたGPAやPR3-ANCAなどのリスク因子は今回の研究ではサンプルサイズが小さく評価できない。
維持治療を長期にしたほうが、やっぱり再発率は低いです。
しかしながら、実際の臨床ではやはり様々な背景を持った患者さんがいるので、全例そのまま継続するのも感染やステロイドの副作用などのリスクもあるのでちょっと・・・
今回の既報では有意差は出なかったですが、これまでの報告でもいわれていた
GPA, PR3-ANCA陽性
に加えて、
寛解治療後もANCAが持続陽性
の場合は再発リスクとなりそうなので、これらが当てはまって感染を繰り返してなければAZA継続しておいて(しかし切りどきは難しい)、日本人はステロイドによる骨の副作用などが怖いし今回の試験ではAZA中止後に再発が多かったのでステロイドは可能な限り減らす or 中止って感じですかね。。。
これらのリスクがなければ、先にステロイド中止して、24ヶ月はAZA継続して終了してもいいかもしれない?けれどそういった人たちでももちろん再発するので、中止するなら慎重に。
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