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2017年9月16日土曜日

脊椎関節炎の診断について:分類基準、画像、HLA-B27の精度

Ez-Zaitouni Z, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1086–1092.

axSpA 2016 recommendationもご参照ください。

背景

  • axSpAはheterogeneousな臨床症状を呈し、他の似たような症状を呈する疾患と区別できるような特徴もない
  • そのため、慢性腰痛の患者群からaxSpAを診断するのは難しい
    • それは、病歴、身体診察、検体検査、画像検査などから総合的に行なわれる
  • 2009年、ASASはaxSpA分類基準を作成した
    • その中には、病歴、身体診察、検体検査、画像検査が含まれる
    • ASAS分類基準を満たすグループが、そうでないグループよりもaxSpAの可能性は高まるが、個々の症例ではそうとはいえない
    • そのため、すでにaxSpAの診断がついている人に、それを当てはめて確かめるというように使うのが正しいだろう
  • 診断には、慢性腰痛をもつ45歳以下の場合、下図のアルゴリズム(modified Berlinアルゴリズム)が有用である
    • まずは、全例にX線で仙腸関節炎の所見がないか確認する
      • 慢性腰痛があって、X線で仙腸関節炎が明らかな場合には、難なくaxSpAと診断できるだろう
    • X線で仙腸関節炎が明らかでない場合には、黄色box内の特徴がないか確認する
      • このアルゴリズムで重要なのは、4つ以上特徴的な所見があれば、HLA-B27やMRIを撮らなくても、診断できることである
    • このアルゴリズムに沿っても、リウマチ専門医が診断した場合と必ずしも一致せず、盲目的にアルゴリズムを使用すると偽陽性もしくは偽陰性が生じうる

  • ASASのaxSpA分類基準や、上記のmodified Berlinアルゴリズムを使用して、脊椎関節炎と誤診をし、炎症要素のない患者に対して抗炎症薬を投与することもあるため注意する必要がある
  • The multicentre SPondyloArthritis Caught Early(SPACE)cohortは、診断がついていない慢性腰痛を有する患者を集積しているため、axSpAの患者とそうでない患者が混じっている
  • 今回の研究の目的は、どの所見が診断に有用か、複数のSpAに特徴的な所見があれば自動的に診断できるのか、ASAS criteriaをどのように使用すれば診断に結びつくのか、調べることである

方法
  • SPACE cohort
    • 2009年1月に始まった前向き多施設研究である
    • 45歳未満から始まった原因不明の慢性腰痛(3ヶ月以上、2年未満)の患者が含まれる
    • オランダ、ノルウェー、イタリアのリウマチ専門外来クリニックから集められる
  • リウマチ専門医は、集められた全ての情報(画像やHLA-B27含む)を考慮して、SpAか、それ以外の疾患か診断した
    • 診断の自信度について、0-10で段階的に表してもらった=a level of confidence about the diagnosis 

結果
  • 500人の慢性腰痛患者を解析した
  • characteritics
    • 男性 37%
    • 平均年齢 29.3歳
    • 平均腰痛持続期間 13.4ヶ月
    • SpA症状の数の割合(そのうち、SpAと診断されている患者の割合)
      • 1個以下 32%(24%)
      • 2個   29%(43%)
      • 3個   16%(62%)
      • 4個以上 24%(85%)
      • 症状の数によって、腰痛発症の年齢、男女比、腰痛罹患期間は同等
      • 症状の数が多いと、SpAと診断されている割合も増える
 IBP=inflammatory back pain, IBD=inflammatory bowel disease


  • SpA症状が1個以下(159人)で、
    • axSpAと診断された:24%
    • レントゲンで仙腸関節炎あり:6%
      • レントゲンで仙腸関節炎があってもSpAと診断されなかったのは1例のみ
    • MRIで仙腸関節炎(MRI-SI)あり:16%
    • レントゲンで仙腸関節炎なし & MRI-SIもHLA-B27も陰性で、SpAと診断されたのは2/99(2%)のみ
      • その2例は、それぞれ1つずつ慢性腰痛以外の所見があった(炎症性腰痛の所見、家族歴)
    • 5人は、リウマチ専門医はSpAと診断しなかったが、ASAS axSpA分類基準を満たした(偽陽性)

  • 2つのSpA症状がある人(143人)で、
    • axSpAと診断された:43%
    • レントゲンで仙腸関節炎あり:11%
      • 全員axSpAと診断された
    • MRIで仙腸関節炎(MRI-SI)あり:24.5%
    • レントゲンで仙腸関節炎なしの人で、
      • MRI-SIもHLA-B27も陰性の人:55%
      • axSpAと診断された:9%
    • 22人は、リウマチ専門医はSpAと診断しなかったが、ASAS axSpA分類基準を満たした(偽陽性)
    • 11人は、リウマチ専門医はSpAと診断したが、ASAS axSpA分類基準を満たさなかった(偽陰性)

  • 3つのSpA症状がある人(79人)で、
    • axSpAと診断された:62%
    • レントゲンで仙腸関節炎あり:6%
      • 全員axSpAと診断された
    • MRIで仙腸関節炎(MRI-SI)あり:38%
    • レントゲンで仙腸関節炎なしの人で、
      • MRI-SIもHLA-B27も陰性の人:39%
      • axSpAと診断された:11%
    • 9人は、リウマチ専門医はSpAと診断しなかったが、ASAS axSpA分類基準を満たした(偽陽性)
    • 8人は、リウマチ専門医はSpAと診断したが、ASAS axSpA分類基準を満たさなかった(偽陰性)

  • 4つのSpA症状がある人(119人)で、
    • axSpAと診断された:85%
    • レントゲンで仙腸関節炎あり:24%
      • 全員axSpAと診断された
    • MRIで仙腸関節炎(MRI-SI)あり:40%
    • レントゲンで仙腸関節炎なしの人で、
      • MRI-SIもHLA-B27も陰性の人:46%
      • axSpAと診断された:31%
    • 画像所見陰性の15%は、axSpAと診断されず、それらの大半は非特異的腰痛と診断されていた
      • これらのグループで、SpA初見のうち陽性が多かった項目は、
        • SpA家族歴 67%
        • NSAIDs反応性良好 82%
        • 炎症性腰痛 94%
    • 4人は、リウマチ専門医はSpAと診断しなかったが、ASAS axSpA分類基準を満たした(偽陽性)
    • 28人は、リウマチ専門医はSpAと診断したが、ASAS axSpA分類基準を満たさなかった(偽陰性)


  • リウマチ専門医の診断をgold standardとすると、ASAS分類基準の精度は、
    • 感度 76% 
    • 特異度 84% 

  • axSpA診断に対するOR
    • HLA-B27陽性
      • OR 5.6; 95% CI 3.7 - 8.3 
    • なんらかの画像所見で仙腸関節炎あり
      • OR 34.3; 95% CI 17.3 - 67.7,




まとめ
  • SpA所見が多いほどSpAの診断に近づくが、必ずしも所見が多ければSpAとは限らないかもしれないので、分類基準やmodified Berlinアルゴリズムは診断の手助けにはなるが盲目的な使用には注意する
  • HLA-B27と画像所見陽性(特に画像所見)は診断ORが高かったが、今回のコホートは検査前確率が通常の集団よりも高い集団と思われるので、適切な患者集団に行えば重要な検査所見となりうると考えられる  →MRIとsacroiliac jointの病変について
  • limitation
    • SpAの診断を1人の医師で行なっている

リウマチ膠原病領域の疾患全てにいえることですが、あくまでも分類基準は分類基準であり、診断は個々の症例をみてその医師が診断することが重要なのでしょう。これは、前の病院の部長にもよく言われました。初心は大事ですね。。。
それと、これは診断学全体と共通しますが、HLA-B27と画像所見も、検査前確率を考えて正しく使いましょう、っていうのが筆者の言いたかったことな気がします。

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