Incidence of hepatitis B virus reactivation in patients with resolved infection on immunosuppressive therapy for rheumatic disease: a multicentre, prospective, observational study in Japan
背景
- 全世界において、3億5000万人がHBVに感染している
- HBVによる末期肝不全は 50-100万人/年 以上
- 免疫抑制剤によるHBV再活性化による肝炎は、日本における劇症肝炎のうち6.8%
- 日本のガイドラインでは、HBsAg陰性であればHBsAb, HBcAbを測定し、いずれか陽性であればHBV-DNAを1-3ヶ月毎にモニタリングするよう推奨されている
- しかしながら、このガイドラインを支持するエビデンスは少ない
- 今回の研究は、HBV再活性化の頻度とリスク因子を明らかにすることである
方法
- 多施設、観察、前向き研究
- 日本赤十字病院のリウマチ科医によって実施
- 対象
- RAを含むリウマチ系疾患
- 18歳以上
- 以下のいずれかで治療されている
- PSL換算 ≧ 5mg
- synthetic DMARDs(MTX, LEF, TAC, MZB)
- bDMARDs
- スクリーニングにおいて、HBsAg, HBsAb, HBcAbを測定されており、以下の結果であること
- HBsAg陰性で、HBsAb or/and HBcAbが陽性となり、HBV-DNAを測定して陰性であること
- (HBsAb陽性でHBcAb陰性であればワクチン接種歴があれば除外した)
- Primary outcome
- HBV再活性化(=HBV-DNAの陽転化、陽性であれば<2.1log copies/mLも含む)
結果
- 割付は下の通り
- baseline characteristics
- PSL平均用量は、RA以外の疾患で内服している人はRA患者の2倍(9.03mg vs. 4.02mg)
- RAにおけるbDMARDs使用割合 28.8%
- 多くはHBsAb, HBcAbの両者が陽性
- HBV再活性化の割合
- RA患者 32人
- そのうち >2.1 log/copies/ml の人数:8人
- 他のリウマチ系疾患 3人
- そのうち >2.1 log/copies/ml の人数:2人
- 人年になおすと、HBV再活性化は1.93/100人年
- そのうち ≥2.1 log copies/mL の割合: 0.55/100人年
- ≥2.1 log copies/mLとなった患者のうち、7人は抗ウイルス薬開始したが、フォロー中に再活性化による肝炎発症はなかった
- HBsA陰性の場合は, 4.32/100人年であり、HBcAb陰性(1.36/100 人年) or 両者陽性(1.42/100人年)の場合よりも頻度が多かった
- HBV再活性化のリスク
- HBsAb抗体価が平均以下:2.8 (95% CI 1.3 to 6.8)
- HBsAb抗体価がcut-off以下 (titre <10.0) :3.1 (95% CI 1.4 to 6.4)
- 年齢>69 歳:3.3 (95% CI 1.5 to 8.4)
- MTX+PSLで治療:2.2 (95% CI 1.0 to 4.6)
- MTXで治療はむしろリスク低い:0.4 (95% CI 0.2 to 0.7)
- 免疫抑制剤開始してからHBV再活性化するまでは、3-182ヶ月と幅がある
- 平均 66.2 ヶ月;中央値 66 ヶ月
- 21例は1年後に認めた
- 抗ウイルス薬は7例で開始し前例直後にウイルス量低下、6例で自然に低下
まとめ
- 今回の研究では、1-2年のフォローにて、HBV再活性化は1.93/100人年の頻度でおこり、>2.1 log copies/mlの頻度は0.55/100人年だった
- 7例は抗ウイルス薬で治療したが、いずれも肝炎は残さず、経過は良好だった
- HBsAb抗体価が低いことは再活性化のリスクとなったが、再活性化した8例はHBsAb titres >100 mIU/mLで、3例はHBcAb陰性だった
- HBsAbはHBsAgに対する中和抗体ではあるものの、リウマチ系疾患の患者の場合は、再活性化を完全に抑制するほどの効果はないと思われ、HBcAb陰性でも再活性化の可能性は念頭においておく必要がある(今回はワクチン接種の既往ありHBs抗体のみ陽性である場合は除外されている)
- 免疫抑制剤の種類によって、再活性化のリスクを区別することは重要である
- FDA registerからの報告では、RA患者において、ステロイドのORは2.3だった。TNF阻害剤はMTXやステロイドよりORが有意に低かった。
- Mod Rheumatol 2013;23:694–704.
- studyごとのMTXのリスクの違いは用量の違いの影響もあるだろう
- 今回の研究のみでは薬剤ごとの正確なリスクの判断は困難である
- 今回の研究では、抗ウイルス薬の使用の有無にかかわらず、再活性化の経過は良好であり、とくに<2.1 log copies/mlの症例では、自然経過での改善も期待できるも多いことがわかった。
- この結果をみると、cut-offの値は2.1よりももう少し高めに設定できるかもしれない
- これまでの報告では免疫抑制剤開始6ヶ月以内の再活性化が多かったが、今回はそれよりも長いものであった
- これは抗がん剤などの治療よりも、リウマチ系疾患では免疫抑制の程度が低く、より長い期間治療していることが影響しているかもしれない
日本からのHBV再活性化に関するstudyです。
HBVをガイドライン通りに沿って毎回DNAを測定することの意義やコストに関しては疑問に思っていた先生も多かった、ということで今回のこの研究が行われました。
結果としては、HBcAb陰性でも、HBsAb抗体価高くても、再活性化はおこりうるのでフォローは必要だけど、頻度も低く、劇症肝炎みたいなmiserableな経過をたどることはほぼないということで、cut-offはもう少しあげてもいいんじゃない?という結果でした。
また、再活性化の時期も、僕たちがみるようなリウマチ系疾患では、治療が抗がん剤とかと異なるので、思ったより長い間ケアしとく必要がありそうです。
薬ごとのリスクに関しては、より大規模な研究を待ちましょう。
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