- 背景
- EGPAは喘息、副鼻腔炎、肺炎、神経障害など、多臓器に好酸球性血管炎を生じる
- 好酸球は血管に浸潤してメティエーターを介して炎症を起こし、肉芽種を形成し、血管炎を生じる
- ステロイドが治療の基盤となるが、ステロイドのみでは再燃も多く、一部の患者ではステロイドの反応性も悪い
- 再燃を繰り返すと非可逆的な臓器障害を残すため、免疫抑制剤を併用して寛解・維持治療を行う。
- しかし免疫抑制剤に関するエビデンスは少ない
- IL-5は好酸球の増殖、成熟、分化に関係しており、EGPA患者において増加している
- Ann N Y Acad Sci 2005;1051:121-31.
- mepolizumab:ヒト化IgG1/k classモノクローナルIL-5抗体
- IL-5が好酸球表面の受容体に作用するのを阻害し、好酸球の数を減らし、EGPAの症状を改善させることが期待された
- 喘息に対しては有効性が報告されている(N Engl J Med 2009;360:973-84.、Lancet 2012;380:651-9.、N Engl J Med 2014;371:1189-97.、N Engl J Med 2014;371:1198-207.、N Engl J Med 2009;360:985-93.)
- 忍容性高く使用できる
- 血中・喀痰好酸球数を減らす
- 喘息発作の回数を減らす
- FEV1改善
- 喘息QOL score改善が期待できる
- EGPAに対して
- パイロット研究で、7人の10mg以下に 漸減できないEGPA患者を対象にした試験がある。それでは、750mg q4wで4ヶ月間投与した。結果、PSL sparing agentとして働き、疾患活動性と末梢血好酸球数を減らしたが、呼吸機能は変わらなかったため、EGPAの気道病変は好酸球以外の要素が関与していると考えられた。
- J Allergy Clin Immunol2010; 125:267 – 270.
- 別のパイロット研究では、8/10人でPSL sparingできた。
- Ann Intern Med 2011; 155:341 –343.
- 今回の試験のphaseⅡでは、10人のEGPA患者(BVAS > 3)でそれまで使用していたGC以外の免疫抑制剤を一度中止し、mepolizumab 750mg q4w ×9回投与した。
- characteriticsとしては、mean BVAS 9(range 4-15), GC dose 20mg(range 12.5-70mg/d), Eos count 205(range 13-4867/ml)。
- 1人はアドヒアランス不良で除外。残りの9人で解析。
- 全員GCは減量できた(week 32: 4.5mg/d[4-12.5mg/dl])
- BVASとEos countも減った(week 32:BVAS 0[0-0], Eo 18/ml[4-64.8/ml])。
- AEなし。
- mepolizumab中止後は2人はmajor relapse, 3人はminor relapseを10ヶ月間のフォロー期間中に起こした。
- randomized, placebo比較試験、二重盲検
- 31施設、9カ国
- 対象
- 18歳以上プレドニゾロンは維持量、stable(7.5mg〜50mg/day)
- 再発性or難治性で6ヶ月以上前に診断されているEGPA患者
- standard therapy(=ステロイド±免疫抑制剤)を組み入れ前4週間以上受けている
- 1:1に割付
- standard therapy+Mepolizumab 300 mg s.c.
- standard therapy+placebo
- standard careの内容は以下の通り
- フォロー期間:52週間
- Primary Outcome:Remissionを達成した割合
- BVAS = 0
- PSL ≦ 4mg
- relapseの定義
- BVAS > 0
- 活動性のある喘息
- PSL増量、免疫抑制剤開始or増量、入院を要する上気道病変や副鼻腔炎
結果
- 136人
- 68人をメポリズマブ群、68人をプラセボ群
- 平均年齢 それぞれ49, 48歳
- 罹患年数5年以上
- ANCA陽性率は10%程度
- 平均PSL使用量 それぞれ12, 11mg
- 免疫抑制剤使用率はMepolizumab群で多めの60%, placebo群46%
- 臓器病変
- 喘息100%
- 神経障害 47%, 35%
- 副鼻腔炎94%
- 心臓19%, 10%
- 再発性70%以上、reflactory 50%以上
- Mepolizumab群では、寛解状態週数がプラセボ群よりも有意に多い(≧24 週:28% vs 3%,オッズ比 5.91,95%信頼区間2.68~13.03,P<0.001)
- Mepolizumab群で36週・48週の両時点で寛解状態にあった患者の割合も高かった(32% vs 3%,オッズ比 16.74,95%信頼区間3.61~77.56,P<0.001)
- 寛解が得られなかった患者は、Mepolizumab群47%に対しplacebo群81%
- 年間再発率は、Mepolizumab群 1.14 vs. placebo群 2.27(率比0.50,95%信頼区間0.36~0.70,P<0.001)
- 48~52週のPSLの1日量平均が4.0mg 以下だった患者は、Mepolizumab群 44% vs. placebo群7%(オッズ比0.20,95%信頼区間0.09~0.41,P<0.001)
- 好酸球もメポリズマブ群で有意に低下
- FEV1, FVCなどは有意差なし?
- 患者自身による評価スコア(ACQ, SNOT)は有意に改善
- サブグループごとに分けたremissionを達成できるOdds ratio
- 以下の項目がより有効な要素かも
- 若い
- 女性
- baselineで免疫抑制剤を使用していない(する必要がない?)
- 罹患期間が4年以内
- baselineで好酸球数が多い
- baselineでVDIが高い
- 副作用もmepolizumabで増えない
- 治療中断した理由
考察
- mepolizumabで寛解が増え、再発を減らし、ステロイド使用量も減らした
- しかしながら、mepolizumabを使用しても、Primary outcomeで定義された寛解は47%で達成できなかった
- 好酸球以外の病態メカニズムの関与
- 罹患年数が長いため非可逆的な臓器障害がすでにあった
- baselineでのBVAS 0が 54%であったが、平均VDIは 4.6であったことはそれを示唆する
- 組織中の好酸球数を減らすには用量が不足していた
- 長期の PSL内服によって副腎不全が生じてPSL減量が困難となった
- BVASがそもそもEGPAの活動性評価に適していないかも
- すでにbaselineで活動性が低い患者が多かったのでmepolizumabによる効果が過小評価
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