このブログを検索

2017年9月8日金曜日

EGPAに対するMepolizumab(ヌーカラ®︎)


  • 背景
    • EGPAは喘息、副鼻腔炎、肺炎、神経障害など、多臓器に好酸球性血管炎を生じる
    • 好酸球は血管に浸潤してメティエーターを介して炎症を起こし、肉芽種を形成し、血管炎を生じる


    • ステロイドが治療の基盤となるが、ステロイドのみでは再燃も多く、一部の患者ではステロイドの反応性も悪い
    • 再燃を繰り返すと非可逆的な臓器障害を残すため、免疫抑制剤を併用して寛解・維持治療を行う。
    • しかし免疫抑制剤に関するエビデンスは少ない
    • IL-5は好酸球の増殖、成熟、分化に関係しており、EGPA患者において増加している
      • Ann N Y Acad Sci 2005;1051:121-31. 
    • mepolizumab:ヒト化IgG1/k classモノクローナルIL-5抗体
      • IL-5が好酸球表面の受容体に作用するのを阻害し、好酸球の数を減らし、EGPAの症状を改善させることが期待された
      • 喘息に対しては有効性が報告されている(N Engl J Med 2009;360:973-84.、Lancet 2012;380:651-9.、N Engl J Med 2014;371:1189-97.、N Engl J Med 2014;371:1198-207.、N Engl J Med 2009;360:985-93.
        • 忍容性高く使用できる
        • 血中・喀痰好酸球数を減らす
        • 喘息発作の回数を減らす
        • FEV1改善
        • 喘息QOL score改善が期待できる
    • EGPAに対して
      • パイロット研究で、7人の10mg以下に 漸減できないEGPA患者を対象にした試験がある。それでは、750mg q4wで4ヶ月間投与した。結果、PSL  sparing agentとして働き、疾患活動性と末梢血好酸球数を減らしたが、呼吸機能は変わらなかったため、EGPAの気道病変は好酸球以外の要素が関与していると考えられた。
        •  J Allergy Clin Immunol2010; 125:267 – 270.
      • 別のパイロット研究では、8/10でPSL sparingできた。
        • Ann Intern Med 2011; 155:341 –343.


      • 今回の試験のphaseⅡでは、10人のEGPA患者(BVAS > 3)それまで使用していたGC以外の免疫抑制剤を一度中止し、mepolizumab 750mg q4w ×9回投与した。
        • characteriticsとしては、mean BVAS 9(range 4-15), GC dose 20mg(range 12.5-70mg/d), Eos count 205(range 13-4867/ml)。
        • 1人はアドヒアランス不良で除外。残りの9人で解析。
        • 全員GCは減量できた(week 32: 4.5mg/d[4-12.5mg/dl])
        • BVASとEos countも減った(week 32:BVAS 0[0-0], Eo 18/ml[4-64.8/ml])。
        • AEなし。
        • mepolizumab中止後は2人はmajor relapse, 3人はminor relapseを10ヶ月間のフォロー期間中に起こした。


メポリズマブのEGPAに対するphaseIIIの結果(N Engl J Med 2017; 376:1921-1932)
  • randomized, placebo比較試験、二重盲検
  • 31施設、9カ国
  • 対象
    • 18歳以上プレドニゾロンは維持量、stable(7.5mg〜50mg/day)
    • 再発性or難治性で6ヶ月以上前に診断されているEGPA患者
    • standard therapy(=ステロイド±免疫抑制剤)を組み入れ前4週間以上受けている
  • 1:1に割付
    • standard therapy+Mepolizumab 300 mg s.c. 
    • standard therapy+placebo
    • standard careの内容は以下の通り


  • フォロー期間:52週間
  • Primary Outcome:Remissionを達成した割合
    • BVAS = 0
    • PSL ≦ 4mg
  • relapseの定義
    • BVAS > 0
    • 活動性のある喘息
    • PSL増量、免疫抑制剤開始or増量、入院を要する上気道病変や副鼻腔炎
結果
  • 136人
    • 68人をメポリズマブ群、68人をプラセボ群
    • 平均年齢 それぞれ49, 48歳
    • 罹患年数5年以上
    • ANCA陽性率は10%程度
    • 平均PSL使用量 それぞれ12, 11mg
    • 免疫抑制剤使用率はMepolizumab群で多めの60%, placebo群46%
    • 臓器病変
      • 喘息100%
      • 神経障害 47%, 35%
      • 副鼻腔炎94%
      • 心臓19%, 10%
    • 再発性70%以上、reflactory 50%以上


  • Mepolizumab群では、寛解状態週数がプラセボ群よりも有意に多い(≧24 週:28% vs 3%,オッズ比 5.91,95%信頼区間2.68~13.03,P<0.001)
  • Mepolizumab群で36週・48週の両時点で寛解状態にあった患者の割合も高かった(32% vs 3%,オッズ比 16.74,95%信頼区間3.61~77.56,P<0.001)
  • 寛解が得られなかった患者は、Mepolizumab群47%に対しplacebo群81%
  • 年間再発率は、Mepolizumab群 1.14  vs. placebo群 2.27(率比0.50,95%信頼区間0.36~0.70,P<0.001)


  • 48~52週のPSLの1日量平均が4.0mg 以下だった患者は、Mepolizumab群 44% vs. placebo群7%(オッズ比0.20,95%信頼区間0.09~0.41,P<0.001)
  • 好酸球もメポリズマブ群で有意に低下


  • FEV1, FVCなどは有意差なし?
  • 患者自身による評価スコア(ACQ, SNOT)は有意に改善


  • サブグループごとに分けたremissionを達成できるOdds ratio
  • 以下の項目がより有効な要素かも
    • 若い
    • 女性
    • baselineで免疫抑制剤を使用していない(する必要がない?)
    • 罹患期間が4年以内
    • baselineで好酸球数が多い
    • baselineでVDIが高い



  • 副作用もmepolizumabで増えない

  • 治療中断した理由



考察
  • mepolizumabで寛解が増え、再発を減らし、ステロイド使用量も減らした
  • しかしながら、mepolizumabを使用しても、Primary outcomeで定義された寛解は47%で達成できなかった
    • 好酸球以外の病態メカニズムの関与
    • 罹患年数が長いため非可逆的な臓器障害がすでにあった
      • baselineでのBVAS 0が 54%であったが、平均VDIは 4.6であったことはそれを示唆する
    • 組織中の好酸球数を減らすには用量が不足していた
    • 長期の PSL内服によって副腎不全が生じてPSL減量が困難となった
    • BVASがそもそもEGPAの活動性評価に適していないかも
    • すでにbaselineで活動性が低い患者が多かったのでmepolizumabによる効果が過小評価




0 件のコメント:

コメントを投稿

トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...