RAにおける骨破壊と免疫の関わり
- 自己抗原に対するimmune toleranceが破綻し、APCがMHCを介してCD4陽性T細胞へ抗原提示を行うことにより、獲得免疫(CD8陽性T細胞やB細胞)を誘導する
- T細胞はRAの病態に重要だが、骨破壊に関しては、osteoclastの活性化による
- osteoclastは、RANKL-RANK結合によってmonocyteから分化する
- RANKLは多くの細胞に発現しており、当初はT細胞から誘導されたosteoclastが主なRAの骨破壊の原因と考えられていたが、Th細胞のサブセットの中でも、それを活性化するものと抑制するものに分かれていることがわかった(下図)
- Th17はIL-17を産生し、RAの病態において、osteoclast形成にも重要な役割を果たしている
- また、CIAマウスの関節内のTregが、Th17にコンバートしうることもわかっている
- Th1(IFN-γ)、Th2(IL-4)、Treg(IL-10, CTLA4)はosteoclast形成に抑制的に作用する
microbiotaとbone homeostasis
- 炎症の存在下では、microbiotaは骨吸収に影響する(下図)
- microbiotaの撹乱によってある種の菌が過剰に増殖し、炎症が引き起こされる
- 粘膜内のTh17など局所の獲得免疫が活性化し、他の部位に移動して作用する
- 歯におけるmicrobiotaは、その部位の歯肉炎や歯周炎から歯槽骨の炎症を起こし、最終的にRANKLを増加させる炎症性サイトカイン・ケモカインを増加させてosteoclastを介した骨吸収を生じる。そして、RAのように、他の部位に移動して炎症を引き起こすこともする
-
P. gingivalis, Treponema denticola, Tannerella forsythiaは特に、炎症性疾患発症に強く関連していると考えられている
- germ-freeマウスでは、SPFマウス(specific-pathogen-free mice)と比較して、歯周組織のRANKL+、IL-17+細胞が少なく、歯槽骨のerosionも少なかった
- Th17以外に、PAMPsやMAMPsも炎症シグナルを惹起し、自然免疫細胞を活性化して、サイトカインやケモカインを誘導する
- これらによってRANKLの発現が増加し、osteoclastへの分化・活性化が増加する
- しかしながら、SPFマウスの新生児では、Germ-freeマウスの新生児と比較して骨形成が亢進していることから、microbiotaが骨形成を促進していることも示唆されている
- おそらく骨形成と骨吸収のどちらに傾くかは、microbiotaに曝露されている期間が関与しているのだろう
- 肝臓と脂肪組織からmicrobiotaによって刺激されて産生されるIGF1が、骨形成に関与していることがこれらのマウスでわかっている
性ホルモン、microbiota、骨の関係
- 閉経後の女性の骨量が減少することは明らかである
- しかしながら、性ホルモンとT細胞、マクロファージなどとの関連はわかっていない
- 2016年の研究では、germ-freeマウスを去勢して、性ホルモンの低下が骨量低下とmicrobiotaに関連した炎症反応を生じたことが報告された
- SPFマウスでは、性ホルモン低下はTNF、IL-1-β、RANKL、CCL2の増加などの炎症反応を誘導し、osteoclast活性化を誘導したが、germ-freeマウスでは、性ホルモン低下によって同様の反応は生じなかった
- さらに、エストロゲンは、gap junctionを通過することによるmicrobiotaに関連した炎症反応を抑制していることがわかっている
- プロバイオティクスは、エストロゲンと同様に、Tregを活性化させることでTGFβを産生し、骨形成を促進する
innate immunityとbone loss
- microbiotaは炎症を惹起する多くの分子の産生を誘導する
- PAMPsやMAMPsなど
- そして、最終的に、cell-mediated もしくは cytokine-mediated なシグナルを誘導する
- TLRリガンドには、多くのmicrobiota由来のものが存在する
- lipoprotein (TLR1, TLR2, TLR6)
- lipopolysaccharide (TLR4)
- flagella (TLR5)
- bacterial cytosine–phosphate–guanine DNA (TLR9)
- これらによって、多様な細胞におけるRANKL発現、TNFやIL-1β産生を誘導し、骨-免疫相互作用を起こす
- また、inflammasomeによるIL-1β産生が、主にosteoclastやosteoblastも含む骨髄系細胞で認められる
- inflammasome活性化の上流にあるものは多様であり、tissue damageの際に細胞外から発生 or microbiotaが成長する際に発生するATPのような、外因性のものも含まれる
- ホメオスタシスの機序を介して、ATPはosteoblastからも産生される
- "プリン=purine"シグナルは、神経生物学における主要な細胞間シグナルとして知られているが、近年、炎症や免疫反応においても重要であることがわかってきた
- ATP, ADP, AMPなどのプリンは、2つのプリン受容体ファミリーに結合する
- P2X受容体
- 7つのファミリーメンバーが知られている
- リガンド依存性イオンチャネル (ligand-gated ion channels )
- P2Y受容体
- 8つのファミリーメンバーが知られている
- Gタンパク質共役受容体(G-protein coupled receptors)
- 骨でも、上記の受容体を介してプリンシグナルが作用している
- 最も研究されているのはP2X7であり、状況もしくは外因性の刺激によって、骨吸収 or 骨形成のいずれに作用するか変化することが考えられているが、まだ完全には解明されていない
- synoviocyteからのIL-6産生にも関与している
- しかしながら、RAに対してP2X7阻害薬を投与した臨床試験は失敗に終わっており、TNFiなど既存の治療と併用して使用してくことが検討されている
- P2X5は、in vitroでは、多核の巨大なosteoclastの形成とLPS誘導性の炎症性骨吸収に必要であることが報告された
- 特にosteoclastの成熟段階で発現が増加するので、骨形成の影響することなく骨吸収を阻害する治療ターゲットになると考えられている
- ATPシグナル経路は、IL-1βやIL-18の促進にも重要である
- ex vivoにおいて、ヒト血液にATP投与すると、IL-1βとIL-18が増加した(TNFは増えていない)
maintenance of hematopoietic cells
- osteolineage細胞は、多能性間葉系前駆細胞から発生し、最終的にosteoblastsとosteocytesへ分化する
- osteoblastsはマトリックスを分泌し骨密度を維持する方向に作用することが知られていたが、骨髄における造血機能にも作用することがわかった
- osteoblastは、G-CSF, IL-1, IL-6, IL-7, thrombopoietin, angiopoietin 1などのサイトカインや、CXCL12といったケモカインを産生し、造血幹細胞に作用している
- また、osteoblastは接着分子(VCAM1, intercellular adhesion molecule 1, annexin II, N-cadherin, CD44, CD164 )も発現し、造血幹細胞のnicheを補助的に支えている
- しかしながら、osteoblastと造血幹細胞の数は相関しないことた、CXCL12欠損でも造血幹細胞には影響がないことから、造血幹細胞への作用は限定的であることもわかっている
- むしろ、未熟なosteolineage細胞がKit ligandとCXCL12を高く発現しており、造血幹細胞のmaintenanceには未熟なosteolineage細胞が必要であることを示唆している
- osteoblasticは、B細胞とT細胞などのlymphoidのmaintenanceにも重要であるがわかってきている
- osteoblastは、IL-7、CXCL12, Delta-like protein 4の分泌を介してリンパ球の分化に関与している
- osteocyteは、G-CSFによって造血幹細胞を骨髄から血中に動員させる。また、osteocyteを欠損したマウスでは、G-CSFを投与しても反応しないことから、osteocyteが造血幹細胞に特異的なnicheを形成しているものと考えられている
- osteoclastは、osteoblastやosteocyteと異なり、造血幹細胞由来である
- osteoclastは、造血幹細胞のmicroenvironmentの維持に関与しているが、造血幹細胞に対して必要不可欠ではないと報告されている
- 敗血症もモデルマウスによると、急激に免疫の恒常性が破綻した時には、骨に存在するosteoblastが減少して、急激な骨吸収が起きる
- この際、B細胞やT細胞とリンパ球前駆細胞は減少する。一方で、long-term & short-term造血幹細胞と骨髄系前駆細胞は増加する
- このリンパ球減少は、osteoblastからのIL-7産生がなくなるためであり、この結果はリンパ球の成熟にosteoblast由来IL-7産生が必要であることを支持している
- 敗血症によるosteoblast減少は、TLR非依存性であり、感染症の際に多く産生されるG-CSFを介したものである
- そして、PTHによるosteoblast刺激によって、敗血症によるosteoblast減少は緩和される
組織特異的なRANKL
- RANKLは、多くの刺激によって、様々な細胞に発現する
- マウスモデルでの結果から、RANKLは、どの細胞に発現しているかによって、状況によって異なる作用を有する
- 例:エストロゲンが低下すると、RANKL発現リンパ球が増加する
- しかしながらリンパ球に発現したRANKLの機能と骨吸収に関しては、議論の余地がある
- T細胞は、TNFとRANKLを産生し骨吸収に作用する
- しかし、マウスにおいてB細胞もしくはT細胞特異的にRANKLを欠損させると、T細胞ではなくB細胞から産生されたRANKLが骨吸収に関与していたことが報告されている
- そして、B細胞の成熟を阻害しても骨吸収が阻害されなかったため、未熟なB細胞が、エストロゲンが低下している状況ではosteoclast増加に関与していると思われる
- また、osteocyte由来RANKLも間接的にB細胞分化に関与して骨吸収に作用している
- そして、増加したosteoclastはosteoblastを活性化し、osteoblastはB細胞分化を促進するIL-7, CXCL12を産生する
- RAでは、RANKL陽性T細胞が炎症性滑膜組織に多く浸潤しており、骨破壊の病態に関与していると考えられているが、直接的なものではないという報告もいくつかある
- 滑膜線維芽細胞も、関節内においてRANKLを産生し、これがosteoclast形成に主に関与していると考えられている
0 件のコメント:
コメントを投稿