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2017年11月1日水曜日

免疫チェックポイント阻害薬から学ぶ、リウマチ膠原病疾患への応用について


Michiel van der Vlist, Jurgen Kuball, Timothy R. D. Radstake and Linde Meyaard
Immune checkpoints and rheumatic
diseases: what can cancer
immunotherapy teach us?

NATURE REVIEWS | RHEUMATOLOGY
VOLUME 12 | OCTOBER 2016 | 593
 



導入
  • 健常人では、免疫状態のバランスはよく維持されている
    • 炎症が抑制されているとウイルス、細菌、真菌、そして悪性腫瘍が増加するリスクがある
    • 一方で、炎症が亢進していると、自己免疫疾患を発症する
    • このデリケートなバランスは、stimulatory receptorとinhibitor receptorによって制御されている
      • inhibitor receptorは、免疫チェックポイントとも呼ばれており、免疫反応の負の制御因子である
      • ここ数年、特定されたimmune-inhibitor receptorの数は増加し役割も明らかになってきている


  • immune-inhibitor receptorは、immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motifs (ITIMs) を介して抑制系のシグナルを伝達する
    • ITIMsは、細胞内に存在する受容体の末端に位置する
      • 共通するアミノ酸配列(V, L, I, S)-x-Y-x-x-(V, L, I) [x=アミノ酸]を有しており、SHP1, SHP2, CSKのような下流の脱リン酸化酵素とキナーゼを誘導し、刺激性シグナルを抑制する方向に働く
    • programmed cell death protein 1(PD-1)は、immune-inhibitor receptorであるが、ITIMではなく、immunoreceptor tyrosine-based switch motif (ITSM) を介して抑制系の機能を発揮する
      • ITSMは他の受容体では刺激性シグナルを誘導する
  • ヒトゲノムは、300以上のITIM関連分子をencodeしており、そのうち役割がわかっているのはわずかである
  • immune-inhibitor receptorやligandの発現は、組織・細胞によって異なる
    • 似たようなシグナル経路であるものの、わずかな違いによって特異的な免疫反応を起こす
    • これは、免疫のバランスが崩れているようなリウマチ膠原病疾患に対して、治療ターゲットの候補が多様であることを示している
  • リウマチ膠原病疾患は、慢性炎症生疾患である
    • 1999年、PD-1経路がSLEによる症状に対して保護的に働くことをマウスモデルで証明された
      • 他の多くのリウマチ膠原病疾患でもimmune-inhibitor receptorが変化していることがわかっており、治療のターゲットとして注目されている


Checkpoint-blocking therapy in cancer
  • FDAは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を以下のように承認している
    • 2011年:抗cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4 (CTLA4)抗体
    • 2014年:抗PD-1抗体(pembrolizumab、nivolumab)
    • 2016年:抗PD1L1抗体(atezolizumab)
  • 悪性黒色腫、肺がん、腎癌、膀胱癌、Hodgkinリンパ腫などに対して有効性を示している
    • 単剤治療よりもPD-1抗体とCTLA4抗体の併用療法のほうが有効性が高いこともわかっており、これはPD-1とCTLA4がそれぞれ異なる機序でT細胞抑制機能を有することを示している
  • CTLA4
    • T細胞が活性化されることで増加し、共刺激分子であるCD28と競合するligandである
    • これによって、CTLA4はnaive T細胞・memory T細胞を早い段階で活性化を抑制する
    • すなわち、抗CTLA4抗体は、T細胞の腫瘍組織への浸潤を増やし、regulatory T細胞の腫瘍組織への浸潤を抑制する 
  • PD-1
    • PD-1は、CD28と競合せず、直接的にT細胞受容体シグナルを阻害する
    • すなわち、抗PD-1抗体は、組織に存在するeffectorの段階でT細胞を阻害する
    • また、PD-1は、T細胞の疲労と関連して発現し、腫瘍はPD-1に対するligandを発現することでT細胞からの攻撃から免れる


Adverse effects of checkpoint blockade

  • ICI関連治療は、CTLA4やPD1のシグナルを阻害するため、正常組織においてT細胞の活性が増加する
  • これらの副作用は、immune-related adverse effects (irAEs) とも呼ばれ、自己免疫疾患に類似する
    • 自己免疫疾患でも病変となるような部位が侵されやすい
      • 皮膚、小腸、肝臓、内分泌臓器など
    • 一般的には、PD-1抗体よりCTLA4抗体のほうがirAEは多い
      • これは、CTLA4阻害が、上記のように、PD-1阻害よりも、より早い段階のT細胞を活性化するので、自己反応性T細胞が増加する頻度が高いからだろう
      • 頻度だけではなく、重症度もCTLA4抗体のほうが高い
        • CTCAE grade 3–4 に含まれるirAEの頻度は、PD-1抗体が16%に対して、CTLA4抗体は27%である。併用治療であれば、さらに55%まで増加する。
  • 最初の数週間で、CTLA4抗体を投与した場合は40%(grade 3-5:2%)、PD-1抗体の場合は20%(grade 3-5:1%)の頻度で皮疹を呈する
  • 消化器関連irAEも頻度が多く、典型的には最初の4-6週間以内に生じる
    • 下痢:CTLA4抗体で40%(grade 3-5:11%)、PD-1抗体で15%(grade 3-5:2%)
    • 肝臓:CTLA4抗体で5%(grade 3-5:2%)、PD-1抗体で5%(grade 3-5:2%)
  • 内分泌関連irAEとしては、CTLA4抗体では下垂体炎、PD-1抗体では甲状腺炎が最も多く、それぞれ10%程度で生じる
  • より頻度は低いが、肺炎、眼、腎臓、膵臓、脳も報告がある
  • 器質化肺炎や重症筋無力症で致死的なirAEとなった例も複数報告されている
    • しかしながら、大半のirAEは中等度以下であり、ICIを一時的に中断 or mildな免疫抑制薬を使用するなどで容易にコントロールできることが多い
  • 皮疹は3-22週間、消化器関連irAEは1-12週間で改善することが大半である
    • grade 3-4の重症irAEも、80%の症例は改善する
  • しかしながら、内分泌関連irAEは改善しないことが多い
  • 一般的なマネジメントとして、grade 2であればICI中断後1週間で大半が改善する
    • それで改善しない場合には、PSL 0.5mg/kg(重症であれば1-2mg/kg)投与し、grade1となるまで漸減する
    • 次の手としてはTNF阻害薬(IFX)がある
      • irAEとしての大腸炎と関節炎に対して有効だった症例がある
  • 免疫抑制薬は短期間の使用で住むことが多いので、ICIの有効性自体をそれほど低下させない
    • PD-1抗体とCTLA4抗体を有害事象で中断した場合でも、継続した場合と比較してそれぞれ68%, 61%は有効性を維持する
    • 細胞障害性抗がん剤と異なり、ipilimumabは、転移性メラノーマの場合で、たった4回の投与(12週間)でも、10年間という長期間を20%程度の症例でコントロールできた報告もある
      • これに関しては、その機序をもっと調べる必要がある
  • これまで、性別によってICIによるirAEが異なるという報告はない
    • 女性のほうが自己免疫疾患の頻度が多く免疫反応が強いことを考えると、不思議である
    • irAEの認知度の低さや、原病に対して有効だったことばかり注目してしまうこと、いずれの研究もサンプルサイズが小さくて性別による違いを検出できなかったこと、自己免疫疾患ほどICIの作用メカニズムが複雑ではないこと、などが理由として考えられる
    • 筆者らは、cell surface glycoprotein CD200 receptor 1 (CD200R1) のinhibitory receptor を欠失したマウスを用いて、性別による免疫反応が異なることを報告した
  • さらなるICIのターゲットとして、V-type immunoglobulin domain-containing suppressor of T cell activation (VISTA)  を阻害することがあり、現在臨床試験が進行している



Inhibitory receptors and autoimmunity
  • ipilimumab(CTLA4抗体)によって、もともと自己免疫疾患を有する人のうち1/4が活動性増加する
    • CTLA4が自己免疫疾患において重要な役割を担っていることを示している
  • 関節リウマチ患者において、血清PD-1とDAS28 scoreが相関しており、さらに関節リウマチ患者の滑液中PD-1が高いことから、inhibitory immune receptors が関節リウマチにおいても重要であることがわかる
    • 可溶性inhibitory immune receptors は、細胞上のinhibitory receptor がligandと結合することを阻害することで、pro-inflammatory effectを有する
    • 実際に、PD-1とFc領域の融合蛋白を利用してPD-1経路を阻害すると膠原病関連関節炎scoreは増加する
    • 様々なinhibitory receptorをノックアウトしたマウスも、SLEやRAのような症状を呈することがわかっている
  • しかしながら、genome-wide association studies (GWAS) の結果からは、inhibitory receptorがヒトの自己免疫疾患に関連していることは示せなかった
    • 自己免疫疾患に関するGWASでは、inhibitory receptorに関連するsingle-nucleotide polymorphisms (SNPs) は少数しか特定できなかった
      • 特定できたのは、PD1、FcγRIIB、CTLA4である
    • inhibitory receptorの下流にあるtyrosine-protein phosphatase non-receptor type 22 (PTPN22、いわゆるLYP)とCSKのSNPsは、多くの自己免疫疾患で特定された
  • これらからは、 inhibitory receptorが自己免疫疾患に関与していることが示され、PD1・FcγRIIB・CTLA4以外の比較的稀なinhibitory receptorもいくつかの症例では原因となりうるといことがわかる
  • 実際のヒトのリウマチ膠原病疾患におけるinhibitory receptorの発現に関しても研究されており、多くの報告で、自己免疫疾患ではinhibitory receptorが異常な発現や異常な機能を有していることが示されている
  • しかしながら、inhibitory receptorの発現レベルは免疫細胞の活性化の程度に依存し、異常な発現自体が異常な機能に直結するため、異常なinhibitory receptorは単なる慢性炎症の結果としかいえないかもしれない


The multi-hit model of autoimmunity



  • 上記に示したとおり、ICIにより一時的に免疫反応が阻害されても、自己免疫を完全に誘発することもあるが、既存の自己免疫疾患に対しては1/4しか活動性を増加させない
  • さらに、併用治療の方が有害事象は重篤である
  • これら2つのことは、以前から提唱されていたように、自己免疫疾患の発症は‘multi-hit’ models であることを支持する
  • GWASでは、リウマチ膠原病疾患を発症する人としない人の違いを見つけることができなかったが、それは遺伝子の多様性はいくつかあるhit(環境因子、微生物など)のうちの一つである可能性を示している
  • そして、1つ1つのhitは、あるリウマチ膠原病疾患に対して必ずしも必要なhitになるわけでもないかもしれない(同じ症例でも患者によってそのhitは必要ないかもしれない)
  • このmulti hit modelは実臨床でも支持されている
    • RAにおいてACPAs陽性が先行することもそれである
    • SScにおいてはRaynaud症状が先行し、その後自己抗体が陽性となり、そしてdigital ulcerや皮膚線維化、内臓病変を生じてくることが一致する



Checkpoint blockade and the multi-hit model

  • ICIによるirAEからは、免疫チェックポイントだけが自己寛容を破綻させ自己免疫疾患を発症することに関わっているわけではないことがわかる
    • あくまでもこれは1つのhitであり、T細胞以外の細胞が自己免疫疾患の持続や完全な発症に関与していると推測される
  • irAEがそれぞれの症例で異なることは、自己免疫疾患の病態に新しい知見をもたらすかもしれない
  • CTLA4抗体で誘発された大腸炎患者において、血清IL-17が増加していることがわかっている
    • これは、IL-17が自己免疫疾患の病態に関与していることと一致する
    • そして、ICIで治療している患者において、irAEを予測する適切なバイオマーカー(IL-6, IL-17, CRPなど)の発見に繋がるかもしれない
  • そして、ICIで治療している症例は、自己免疫疾患発症の早期‘human in vivo model’ であり、自己免疫疾患の病態研究において重要であり、長期的にフォローしていく必要がある


Progress in targeting T cell checkpoints


  • アバタセプトは、CTLA4-Fc領域融合抗体であり、チェックポイントをターゲットにしたリウマチ領域における最初の薬剤である
  • 他のinhibitory receptors を標的にした、T細胞の機能を調節する新規治療薬剤が開発されているところである
    • TIGIT は、T細胞とNK細胞に発現しており、共刺激分子であるCD226、ポリオウイルス受容体(PVR)、CD112とligandを共有する
      • TIGITがT細胞を阻害する機序は2つある
        • 1つ目は、T細胞に発現しているTIGITが樹状細胞(DCs)のPVRと結合し、DCsからのIL-10産生を増加させ、T細胞増加を抑制する
        • 2つ目は、T細胞のTIGIT自体がTIGITのアゴニストとして作用し、T細胞増加を抑制することがin vitroで示されている
      • 活動性RA患者の滑液では、CD4陽性T細胞のTIGIT発現が低下している。また、活動性RA患者の滑液由来CD4陽性T細胞から異所性に発現したTIGITはIFNγとIL-17産生を減らし、IL-10産生を増加させる
        • これらは、RA患者におけるT細胞昨日にTIGITシグナルが影響していることを示している
      • 関節炎モデルマウスでは、TIGITの過剰発現は疾患活動性を低下させることもわかっている
      • マウスモデルによるin vivoで、TIGIT-Fc融合抗体 or TIGIT4量体の投与によって刺激性ligandであるCD226と競合し、疾患活動性を低下させたことから、TIGITを標的にした治療が今後期待されることを示している
    • VISTAもまた、T細胞を阻害することで注目されている
      • T細胞に発現しているまだ特定されていないinhibitory receptors のligandである
      • in vitroでは、マウスのT細胞に固定化したVISTA-Fc融合抗体を暴露させることで、T細胞の増殖とサイトカイン分泌を抑制した。また、その逆で、マウスの抗原提示細胞のVISTAを阻害することでT細胞活性化することがわかっている。
      • VISTAノックアウトマウスは、自己免疫疾患としての脳脊髄炎を誘発しやすく、多発性硬化症モデルマウスでもある
      • SLEモデルマウスでは、VISTA-Fc融合抗体を投与すると蛋白尿が改善することがわかっている
  • これらのように、免疫チェックポイントを標的にした治療がリウマチ領域において新規治療薬として有望である。



Progress in targeting other immune cell subsets



  • T細胞以外のinhibitory receptorsを標的にした治療候補は上記表の通りである
  • FcγRIIB は興味深い標的の1つである
    • これはGWASにおいてもリウマチ疾患と関連があった
    • FcγRIIBをencodeした遺伝子を欠失したマウスでは、自己免疫疾患を発症しやすいことがわかっている
    • FcγRIIBが治療標的として有望であることは、FcγRIIBとB細胞受容体の両者を標的にした抗体による研究で示されている
      • CD79BとFcγRIIBに対するbi-specific抗体で、関節炎モデルマウスの活動性を低下させた
      • また、Fc領域の末端がFcγRIIBに結合するように作られた抗CD19抗体は、severe combined immunodeficiency (SCID) マウスにヒトSLE患者のperipheral blood mononuclear cells (PBMCs) を投与することで作成したSLE様症状を呈したマウスの疾患活動性を低下させた
  • 他には、B細胞に発現している、CD31としても知られるplatelet endothelial cell adhesion molecule (PECAM1)も候補となるinhibitory receptorsである
    • PECAM1を欠失したマウスは関節炎を発症し、RAモデルとしても知られている
    • PECAM1は分離することができ、細胞に結合している残ったPECAM1は本来のligandと結合できなくなるが、細胞に結合している残ったPECAM1はPECAM1由来の合成ペプチドと共にシグナル伝達に関わることができる
      • そして、このPECAM1由来の合成ペプチドが関節炎モデルマウスの活動性を低下させることがわかっている
  • CD22はSiglec-2としても知られており、B細胞のinhibitory co-receptorsである
    • 中等症以上のSLE患者を対象とした、CD22を標的にしたepratuzumab は、当初の臨床試験では有望な成績だったが、2つのphase3試験ではprimary endpointを達成的なかった
      • epratuzumabはtrogocytosisによってB細胞を除去するが、trogocytosisであることが失敗の原因かもしれない
  • B細胞以外にも標的を見つける必要がある
    • SLE、SSc、SjSはtype1 IFN signatureの疾患であるため、type 1 IFNを阻害する抗体製剤がSLEにおいて試されてきた
      • しかしながら、当初は有望な成績を納めていたものの、その後の試験では失敗している
    • そのため、type 1 IFNの産生を阻害することが次の選択肢である
      • Plasmacytoid DCs (pDCs)  は、SLEや原発性SjS患者において、type1 IFN signatureに関わっている主要な細胞であり、SScにおいても増加していることが知られている
      • CLEC4CやCD303としても知られているBlood-derived DC antigen 2 (BDCA2)は、pDCsに発現しているinhibitory receptorである
        • BDCA2はpDCsからのtype 1 IFNの産生を低下させ、SLE患者においてはこのBDCA2発現が低下している
        • サルモデルでは、TLR9刺激後のtype 1 IFNの産生を阻害することが示されている
  • 好中球も、SLEやRAにおいて重要な要素である
    • 好中球は、neutrophil extracellular traps (NETs) として核酸を放出する
      • NETsは抗菌作用を有し、さらにTLR9のligandとして作用してtype 1 IFNの産生を促す
      • type 1 IFNは好中球からNETs放出を誘導するため、これによって自己のDNAがTLR9に結合してpDCsを活性化しtype 1 IFNを放出するというループが形成される
      • さらに、NETsはシトルリン化蛋白を含んでおり、ACPA産生を促進する
        • SLEマウスモデルでは、peptidylarganine deiminase を阻害することでNETosisを阻害すると、皮膚・腎臓・血管病変に対して保護的な作用を示した
          • すなわち、SLEにおいてNETsは病態に関与しているということである。
          • さらに、このことから、inhibitory receptorによってNET形成を制御することができるのかという疑問につながる
    • Paired immunoglobulin-like type 2 receptor-α(PILRα)とV-set and transmembrane domain- containing protein 1 (VSTM1; also known as SIRL1) は、好中球に発現している inhibitory receptorである(figure2D)
      • VSTM1は、in vitroでは、SLEにおいてNETosisを阻害する作用を有している
      • PILRαは、炎症状態において好中球の浸潤を制御するので、好中球による組織障害を軽減する治療標的となるかもしれない
        • マウスではPILRαアゴニスト抗体によって関節炎は軽快した
  • CD200R1 も有望な治療標的である
    • CD200R1と、そのligandであるCD200は、マクロファージ、好中球、単球、T細胞・B細胞のサブセットなど多くの免疫細胞に発現している(figure2)
    • しかしながら、多くの研究結果は、CD200R1シグナルは抗原提示細胞の機能を阻害することを示している
    • マウスモデルでは、CD200R1アゴニスト抗体は、自己免疫疾患誘発性ぶどう膜炎の症状を改善させた
    • さらに、CD200-Fc融合抗体は、自己免疫疾患関連脳脊髄炎モデルマウスと関節炎モデルマウスの疾患活動性を低下させた
    • さらに、CD200R1は、破骨細胞形成にも関与している(骨芽細胞形成には関与していない)
      • そのため、骨破壊に対する治療効果も期待される



Targeting checkpoints: approaches and challenges



  • inhibitory receptorを標的にする方法は上記の図の通り、いくつかある
  • そして、その方法はinhibitory receptorによって異なる
    • アバタセプト(CTLA4-Fc抗体)のように、可溶性の形態であれば、activating receptors とligandを競合するタイプが抑制機能を発揮するのに有効だろう
    • 逆に、inhibitory receptorの本来のligandが可溶性なのであれば、VISTA-FcやCD200-Fcのように、agonistタイプが有効だろう
    • CD200R1やPILRαに対する抗体は、特に修飾しなくても有効である
  • inhibitory receptorシグナル経路を適切に利用するために、inhibitory receptorとstimulatory Fc receptorsを共結合させるさせることも有効である
    • これは、特異的なFc受容体に結合するよう変化させた、抗体 or Fc融合蛋白を用いることで可能である
    • 抗体 or Fc融合蛋白がinhibitory receptorとstimulatory Fc receptorsの両者に結合し、inhibitory receptorのシグナル伝達を促すのである(Kurlander effectとして知られる)
    • また、bi-specific antibodyが同様にinhibitory receptorとstimulatory Fc receptorsの両者に結合するためにデザインされている(figure4e)
      • しかしながら、stimulatory Fc receptorsにも結合するので、実際に健常者においてサイトカインストームを起こしたことも報告されている
  • また、一度に複数のinhibitory receptorをターゲットにする治療も選択肢である
    • これは、PD-1抗体とCTLA4抗体の併用療法がより重度のirAEを起こしていることからも、有用性が期待される
  • さらに、本来のinhibitory receptorに対するligandよりもより特異性の高い人工的な抗体(TIGIT4量体のような)を投与することで、治療効果を期待することもできる。また、本来のligandが局所の炎症部位に必ずしも存在するとは限らないので、その部位に直接投与することも有用かもしれない


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