- 一般人口の3-5%が生じる
- 手指、足趾、鼻に生じる
- 15 - 20分程度続くことが多い
<メカニズム>
- レイノーがある人はもともと指尖の動静脈吻合に流れ込む血流が少ない+動静脈吻合部のsmooth-muscle α2アドレナリン受容体(AR)が多い。
- そこで寒冷刺激が来ると交感神経優位になってARが刺激されてさらに動静脈吻合の血流が少なくなり、レイノーを起こす
- Nat. Rev. Rheumatol. 11,–158 (2015) 146
- 二次性レイノーでは血管内皮の異常も加わってより起きやすくなる。
※レイノー現象の聞き方
- 寒さに敏感ですか?
- 冷えると指の色は変わりますか?
- それは白?青?両方?(基本は白→紫→赤)
- 次に出た時は写真に取ってきてください。
※レイノー現象のみの人をどこまで検査する?
→ルーチンとしてNail-fold capillary、 抗核抗体を確認!
- いずれか陽性であれば将来、強皮症になる可能性があるため、ルーチンとして心臓(ECG, TTE)・肺(CT, 呼吸機能検査)・消化管病変(GF)を行い、なにもなくても要フォロー
- いずれもなければ将来的になにもない可能性が高い(2%以下)=原発性
- 原発性であれば指尖潰瘍はきたさないことが多い
※二次性レイノーの原因疾患
- 膠原病:強皮症、SLE、皮膚筋炎、SjS、MCTD
- 血液疾患:クリオグロブリン血管炎、クリオフィブリノゲン、寒冷凝集素、悪性腫瘍、多血症、過粘稠症候群
- 内分泌疾患:甲状腺機能低下
- 血管病変:ASO, Burger、動脈塞栓
- 神経:手根管症候群、末梢神経炎
- 環境:振動、凍傷
- 薬剤:交感神経作動薬、片頭痛治療薬(エルゴタミン製剤)、ADHD治療薬、β遮断薬、ニコチンなど
- 重金属中毒:砒素、鉛など
※二次性レイノー現象の診断基準
- 発症時年齢 > 30歳
- 非対称性および一側性のこともある
- 痛みを伴う重度の発作
- 虚血性病変部
- 随伴疾患を示唆する病歴および所見
- 爪郭部毛細血管のscleroderma pattern
- 血液検査において強皮症特異抗体が検出
<Primary Raynaud's Phenomenon>
- secondaryより若年発症(15 - 30 歳)
- 母指はspareされる
- secondaryの要素が除外
- 抗核抗体:陰性 or low titer( ≦1:40)
- 赤沈が正常であることは以前は必要であったが、現在の国際的基準では不要
- 第一親等に30-50%おり、遺伝的要素が示唆されている
- Primaryと考えられている37.2%の人たちは実際にはconnective tissue diseaseが隠れておりNail-fold capillaryによってそれらを鑑別できるかもしれない
- [Pavlov-Dolijanovic SR, et al. Rheumatol Int 2013;33:2967-73.]
※原発性レイノー現象の診断基準
- 発症時年齢 < 40歳
- 両手に出現する軽度の対称性の発作
- 組織の壊死・壊疽がない
- 他の原因を示唆する病歴・身体所見がない
- 爪郭の毛細血管、血液検査結果が正常
<治療>
- 寒冷刺激を避けさせることが一番大事
- 厚着、手袋、帽子などで体温の急激な変化を避ける。
- レイノーが出た人は直近の自販機でホットドリンクを買ってもらい両手で持ちながら飲んでもらう(=内と外から温める)
- 禁煙
- 交感刺激作用のある薬剤の中止(ADHD、偏頭痛)
- ストレスによる交感神経刺激を避ける
- エストロゲン、カフェイン、非選択的β遮断薬は避けるべきというエビデンスに乏しい
- 薬剤
- 上記の生活指導にて治療に難渋する場合に薬剤を使用(下、Table1, Fig3)。
- イベントの多様性、スタンダードな評価基準もないため、十分なエビデンスを持った薬剤がないのが実情。
- 経験的にCCB→PDE5i or topical nitrate or SSRI or ARB ± CCB、PGI2などが使われる。
- CCB
- 2005年に361例のprimary Raynaud’s Phenomennonに関するmeta-analysis解析がなされ、CCB使用にて発作回数を2.8 - 5 回/週 に減らすことができたと報告された
- [Thompson AE,et al. Rheuma-tology (Oxford) 2005;44:145-50.]
- Cochrane reviewでもmoderate-quality evidenceで経口CCBがprimary Raynaud’s Phenomennonにて1.72回/週の頻度だけ発作を減らす[95%Cl, 0.6 - 2.84]と記載されている
- [Ennis H, et al. CochraneDatabase Syst Rev 2014;1:CD002069.]
- SScによるSecondary Raynaud’s Phenomennonでも同様にCCBが発作の回数を8.3回/2週[95%Cl: 0.9 - 15.7回/2週]減らすことを2001年のmeta-analysisで示された
- [Thompson AE, et al. Arthritis Rheum 2001;44:1841-7.]
- SSRI
- オープンラベルのクロスオーバー試験で、6週間、fluoxetine 20mg/day使用した群とnifedipine 40mg/day使用した群を比較し、fluoxetineがprimary & secondary Raynaud’s Phenomenonに有効なことが示された
- [Coleiro B,et al. Rheumatology (Ox-ford) 2001;40:1038-43.]
- ARB
- losartan 50mg/dayをnifedipine 40mg/dayの比較して15週間使用し、発作の回数を減らすことが確認された
- [Dziadzio M, et al.Arthritis Rheum 1999;42:2646-55.]
- ACEIに関しては有効性がないことが確認されている
- [Wigley FM, et al. New York:Springer, 2015.])
- prazosin(α1-adrenoreceptor antagonist), pentoxifylline(xanthine derivative), cilostazol(PDE-3 inhibitor), N-acetylcysteine (an anti-oxidant)も使用されている。
- PDE-5阻害薬
- 244例のsecondary Raynaud’s Phenomenon を含む6つのRCTのmeta-analysisでは、発作の回数・時間を減らすことが示され、CCB無効例の場合にPDE-5阻害薬を追加 or 変更することが有効かもしれない
- [Roustit M, et al. Ann Rheum Dis2013;72:1696-9.]
- プロスタサイクリン誘導体
- 重症secondary Raynaud’s Phenomenonに対して点滴投与すると、発作の回数を減らし、虚血性の末梢潰瘍が改善する
- [Pope J, et al. Cochrane Database Syst Rev 2000;2:CD000953.]
- 内服に関しては、肺高血圧症のエビデンスはあるが、 secondary Raynaud’s Phenomenonに関してはエビデンスに乏しい
- [Shah AA, et al. AnnRheum Dis 2013;72:1136-40.]
- [Wigley FM, et al. ArthritisRheum 1998;41:670-7.]
- endothelin-1 ETA and ETB receptor antagonist
- 血管拡張薬は上流の血管を広げて発作の回数は減らすものの、大切な栄養血管の血流は増やさない。これは、血管内皮機能が障害され、下流にある栄養血管の血流が減っている状況である進行した強皮症では、血管拡張薬では虚血による潰瘍を治せないことを意味している。これらでは末梢血管のautoregulationは低下しているため、むしろ血管拡張薬の使用が栄養血管の血圧を下げてしまい、虚血性潰瘍には逆効果となってしまう可能性もある。そのため、進行した強皮症患者には、血管内皮細胞の障害をきたす大元である血管収縮をなるべく避けることが一番大事となる。
- endothelin-1は血管の収縮・炎症・繊維化のmediatorであり、これを阻害する ETA and ETB receptor antagonistは、進行した強皮症患者において、レイノーの発作は減らさないものの、新規虚血性潰瘍の発症を減らすことができる
- [Korn JH, et al.Arthritis Rheum 2004;50:3985-93.]
- [Matucci-Cerinic M, et al. Ann RheumDis 2011;70:32-8.]。
- スタチン
- low-density リポ蛋白を下げることによる血管保護作用により、血管内皮細胞の機能を改善させる。
- また、nitric oxide増加、ET1減少作用もあることがわかっている。実際に、発作の回数減少・潰瘍の改善も報告されている
- [Furukawa S, et al. Ann Rheum Dis 2006;65:1118-20.]
- [Kuwana M, et al. Arthritis Rheum 2006;54:1946-51.][Abou-Raya A, et al. J Rheumatol2008;35:1801-8.]。
- Rho & Rho kinaseシグナル阻害作用を介した血管内皮細胞機能改善もあり。
- 可溶性グアニルシクラーぜ刺激薬(riociguat)
- cyclic GMPとnitric oxideを増やす。研究が進行している途中?。
- 抗血小板薬
- あくまでも経験的に使用されているのみで、エビデンスに乏しい。
- 抗凝固薬
- 少数のプラセボ比較試験で、低分子ヘパリンが4週間と20週間の使用で重症レイノーの重症度を減らした報告あり
- [Denton CP, et al. Clin Exp Rheu-matol 2000;18:499-502.]
- 免疫抑制剤がレイノーにどのように作用しているかは不明
- 外科的治療
- 薬物治療に抵抗性のprimary Raynaud’s Phenomennonには交感神経ブロックは有効であるが、primary Raynaud’s Phenomennonにおいて外科的治療まで必要になることは稀。
- 重症secondary Raynaud’s Phenomenonに対する交感神経ブロックはエビデンスに乏しく、閉塞したmacro-vascularの再還流治療も一般的ではなく適応症例は限られる。
<2017 Update of EULAR recommendations for the treatment of systemic sclerosis>
Ann Rheum Dis 2017;76:1327–1339.
- 2009年EULAR recommendationsよりupdate
- Task force:29人のrheumatologist, 1人のdermatologist, 2人のpediatric rheumatologist(juvenile SScの専門家), 2人のpatient, 1人のepidemiologist
Raynaud’s phenomenon(RP)
- ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬
- ニフェジピンがSSc-RPの第1選択薬である
- 8個のRCTのmeta-analysis(7個がニフェジピン、そのうち1個がニカルジピンに関するもの)では、計109人のSSc患者が含まれており、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬がプラセボと比較して、2週間におけるRPの頻度を平均で -8.31減らした(95% Cl -15.71 to -0.91)
- ニフェジピンに限って限っていえば、10-20mg 1日3回 の用量にて、-10.21減らした(95% Cl -20.09 to -0.34)
- PDE-5阻害薬
- PDE-5阻害薬もSSc-RPの治療の選択肢として考慮されるべきである
- 6個のRCT(2個がシルデナフィル、3個がタダラフィル、1個がvardenafil)では、計236人のCTD-related RP患者(95%はSSc)が含まれており、PDE-5阻害薬がプラセボと比較して、1日におけるRPの頻度を平均で -0.49減らし(95% Cl —0.71 to -0.28)、重症度を平均で -0.46減らし(95% Cl -0.74 to -0.17)、持続時間を -14.62減らした(95% Cl -20.25 to -9.00)
- prostanoid
- iloprost静注(0.5 – 3 ng/kg/min for 3–5日間連続)もしくは経口(50 – 150 mg 1日2回)
- 2つのRCTがiloprost静注(0.5 – 2 ng/kg/min for 3–5日間連続 6−8週間ごと)とニフェジピン(30-60mg/day)を比較し、わずかにiloprost静注がSSc-RPの症状を改善した
- fluoxertine経口(20mg/day)
- ニフェジピンLA(40mg/day)と比較した27人のサブグループ解析で、fluoxertine経口(20mg/day)のほうが重症度と頻度を改善した。副作用による離脱もニフェジピンのほうが多かった。fluoxertine経口の離脱は無気力、集中力低下であった。
- 上記の結果を受けて、expert opinionとして、血管拡張薬に副作用で耐えられない人は、SSRIであるfluoxertine経口は良い選択肢になると考えられている
Digital Ulcers
- iloprost静注(0.5 – 3 ng/kg/min for 3–5日間連続)
- Meta-analysisの結果より静注>経口を推奨するが、点滴のために入院する必要性や副作用の観点から、経口に反応しない場合に静注を変更すべき
- PDE-5阻害薬
- Meta-analysisで、シルデナフィル 50mg 1日2回、反応を見て200 mg/day まで増加 or タダラフィルtadalafil 20 mg 隔日内でDUsの改善を認めた
- Sildenafil Effect onDigital Ulcer Healing in sClerodErma (SEDUCE)でシルデナフィル(20 mg three times daily for 12 weeks)がプラセボと比較して有意差がでなかったのは、プラセボが予想外にDU healing rateが高かったからである
- ET受容体拮抗薬
- ボセンタン
- カルシウム拮抗薬、PDE-5阻害薬、iloprostで効果がなければ考慮されるべきである(第1選択薬ではないのでは肝障害など副作用のため)
- RAPIDS-1 and RAPIDS-2でプラセボと比較し効果が示された
- 経口で62.5 mg 1日2回 4週間、その後 125 mg 1日2回 12週間
- 肝障害と催奇形性がネックである。ピルはcytochrome p450で競合して効果を減少させるため注意が必要である。
- macitentanなど他のET受容体拮抗薬ではプラセボと比較して有効性を示せていない(DUAL-1 and DUAL-2)
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