ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1741–1750
<背景>
- これまで骨吸収に注目してerosionを遅らせることはできるようになったが、erosion healingを促進することはできなかった
- RA患者にBis製剤(pamidronate)を使用し、骨密度を改善 & RA治療薬変更の頻度を減らしたRCTはあるものの、erosionの改善はなかった
- Arthritis Rheum 1996;39:396–402.
- ゾレドロン酸でもerosionの進行を遅らせたが、Sharp scoreの変化はわずかであった
- Arthritis Rheum2006;54:1410–4.
- RANKL抗体であるdenosumabを使用したRCTではプラセボと比較して有意にerosionもある関節数を減らした。しかし、その効果は、52週間治療してもベースラインと比較して1個のerosionを減らす程度であった。
- Arthritis Rheum 2008;58:1299–309.
- 第2中手骨のerosionがあるRA患者において、アレンドロン酸とdenosumabでerosionの改善を比較する試験では、部分的な改善をdenosumab群のみで認めた
- Arthritis Care Res (Hoboken) 2016. E-pub ahead of print.
- PTHは、骨同化作用があると知られているが、TNFトランスジェニックマウスにおいてTNF-I製剤と併用して PTH製剤を投与することで、有意に関節のerosionを改善した
- Am J Pathol 2004;164:543–55.
- この結果を受けて、筆者らは、今回の試験を計画した
<方法>
- RCT、Open-label
- 期間:12ヶ月間
- 介入群:teriparatide 20ug s.c. daily
- 比較群:teriparatideなし
- 全員に Ca 1000 mg/day + vitD 800 IU/day を投与
- 対象
- 45歳以上
- X線にて手関節・手指関節の3関節以上にerosionあり
- 2010 ACR/EULAR RA分類基準を満たす
- 骨量低下がある
- 腰椎、大腿骨、total hipのいずれかのDXAにて -1.0 ≦ T score ≦ -2.5
- TNF-I阻害剤にて最低3ヶ月間の治療歴が試験組み入れ前にある
- PSL ≦ 5mg/day
- Exclusion criteria
- RA activityがunstable
- 直近3ヶ月間にRA治療を変更
- 外的要因による骨折歴あり
- 試験組み入れ前12ヶ月の間に、2週間以上の骨量に影響する治療歴がある
- Bis製剤、ホルモン療法、カルシトニン、ラロキシフェン、teriparatide、甲状腺機能抑制治療、リチウム、vitD ≧ 2000IU/day
- RA以外に骨代謝に影響する原因がある
- PTH製剤への禁忌がある
- 重大な心疾患、肝疾患、腎疾患、アルコール依存症、精神疾患
- ジゴキシンによる治療中
- 放射線照射治療歴あり
- 現在活動性の悪性腫瘍あり、10年以内に悪性腫瘍と診断されたことがある(切除もしくは治癒した皮膚の基底細胞癌を除く)
- 20年以内に乳がんと診断された
- 妊婦、授乳婦
- 組み入れ時に、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症、Paget病と診断されている
- 血液検査にて下記を確認している
Primary Outcome
- Erosion volume:橈骨、尺骨、手根骨、CMC関節・MCP関節・PIP関節(DIP関節は除外)
- CTを撮影し、下のようにコンピュータでerosion部位を特定し、放射線科医が確認
- DXAで測定した腰椎・大腿骨頸部の骨密度の変化量
- 手・手指においてvander Heijde modification of the total Sharp score (SHS)を計算
- 読影医は他の情報を盲検化された状態
Results
- Baseline characteristicsはtable 1
- 26人をランダム化したが介入前に2人が脱落し、n=24(12人ずつ)で開始し、teriparatide群で途中で脱落し、それ以外の23人は12ヶ月間のprotocolを完遂
- 全体の平均年齢 62歳
- 女性 75%
- 罹患年数 20年弱
- 83% seropositive(RF or CCP-Ab)
- PSL使用者 teriparatide群に3人のみ
- 半数がremission(DAS28-CRP ≦ 2.6)
- mean HAQ 0.16
- mean SHS 67
- mean total srosion volumeはそれぞれ571,4, 369.8とcontrol群に多かったが、統計学的有意差はなし(p=0.94)
- 介入前後でteriparatide群にてerosion volumeは改善した(9.5mm^3)が、統計学的有意差なし(p=0.28)
- 骨密度はteriparatide群で増加した
- 腰椎:difference in change 0.07 ± 0.08 gm/cm^2 ; p=0.01
- 大腿骨頸部:difference in change 0.05 ± 0.06 gm/cm^2 ; p=0.01
<Discussion>
- 今回の研究ではteriparatideによってerosionの改善はなかった
- 原因は、対象者の関節がまだ炎症が残存していたからではないか?
- 既報では、臨床的に活動性がなく腫脹もないような関節にてerosionの改善を認めた
- Ann Rheum Dis 2010;69:851–5.
- 骨芽細胞がより未分化な状態でないと効果が低いのかもしれない
- 今回の研究ではMRIやエコーを活動性評価に使用していないので、DAS28-CRPのみでは残存している滑膜炎を見逃している可能性がある
- 既報で使用されていたマウスモデルの場合は、急性に炎症を起こし罹患期間が短いので結果が違ったのかもしれない
- 罹病期間が長いと、骨芽細胞に分化するmesenchymal stem cells(間葉系幹細胞?)の数が減少したりその機能を変えてしまうのかもしれない
- そもそも観察期間が12ヶ月は短すぎる
- Limitation
- 対象者は非盲検化
- しかし解析者は盲検している
- Nが少ない
- 新規の骨同化作用を有する薬剤が開発されている
- sclerostin:Wit sygnaling pathway阻害剤、骨芽細胞を活性化させる
- しかしanti-sclerostin抗体がTNF signalを促進し炎症を増強することがマウスで分かっている
- Sci Transl Med 2016;8:330ra35.
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