Park JK, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:1559–1565
背景
- RA患者はインフルエンザ含め予防できる疾患のワクチンをガイドラインでも推奨されている
- (AnnRheum Dis 2011;70:414–22.)
- (Arthritis Rheum 2008;59:762–84.)
- DMARDs使用中にワクチンを接種した場合の反応に関して、健常人と比較して、同等であるという報告と多少効果が下がるという報告がそれぞれ複数報告されている
- その中でも、MTXが有意に肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンに対する効果を低くすることを示した報告も複数ある
- Ann Rheum Dis2016;75:687–95.
- Rheumatology 2007;46:608–11.
- Arthritis Res Ther 2014;16:r2.
- Ann Rheum Dis 2011;70:2144–7.
- これらより、MTX治療開始前にワクチンを接種しておくことが望ましい。
- しかし、実臨床では、ワクチンが必要なときに既にMTXを使用していることも多い
- こういった問題に対する解決策が必要であり、本研究はこのClinical questionに基づいたものである。今回の研究では、すでにMTXで治療している患者に対して、継続群と中止群に分けて介入することで、ワクチンに対する反応性を調べた。
方法
- 前向き、単施設、単盲検、ランダム化介入比較試験
- 以下のようにランダム化
- Group 1:MTX継続
- Group 2:MTXをワクチン接種前4週間に中止
- Group 3:MTXをワクチン接種前2週間〜ワクチン接種後2週間後まで中止
- Group 4:MTXをワクチン接種〜接種後4週間まで中止
- コンピュータによって、これらのGroupに1:1:1:1の比率でランダム化
- 分析者はこれらの情報を盲検化された
- Week 0(接種4週間前)に初診、week4に採血(接種前抗体価を確認)・接種、week8に採血(接種後抗体価を確認)、week20に疾患活動性(DAS28)を評価
- DMARDsの変更・追加はweek8まで禁止
- 併存症に対する薬剤は継続
- MTX中止してRAが再燃(ΔDAS28 > 1.2、しかしDAS28 baseline ≧ 3.2の場合は ΔDAS28 > 0.6)した際は、アセトアミノフェン650mg 1日3回まで or NSAIDs通常量 or PSL 10mg/日まで使用可能とした
Stastical Analysis
- 最初の解析はワクチン接種をおこない、接種前後の抗体価の情報を得られたものを対象とした(ITT解析でははなく、week8より前に脱落した場合には解析対象とはなっていない)
- The primary analysis population (per-protocol population) included all study subjects who underwent the vaccination, discontinued or continued MTX according to the allocated regimen, and whose prevaccination and postvaccination titres were available.
- Sample sizeの見積もり:これまでの既報(Ann Rheum Dis2016;75:687–95.)では、MTXで治療しているRA患者 / MTXを使用していないRA患者において、ワクチンによって十分な抗体を保有する確率は61.8%/76.7%と報告されている。αレベル0.05, 検出力は0.90、ドロップアウトは10%と設定し、146人がそれぞれのGroupに必要と計算されたため、計584人が必要であった
- 連続変数はt検定 or Mann-Whitney U testを使用、Secondary outcomeの2つはχ2乗検定 or Fisher’s検定を使用
Intervention
- インフルエンザワクチン:GC Flu, Green Cross, South Korea
- 上記のワクチンは、15 µg of A/California/72009 Reassortant virus NYMC X-181 (H1N1), 15 µg of A/Switzerland/9715293/2013 Reassortant virus NIB-88 (H3N2) 、15 µg of B/Phuket/3073/2013 (B-Yamagata)抗原を含んでいる。
- 0.5mLのプレフィルドシリンジの製剤
- 三角筋に筋注
Outcome
- Primary Outcome:接種前後でのΔhaemaglutination inhibition(=HI)抗体価 titers ≧ 4倍 の割合
- Secondary Outcome
- それぞれのインフルエンザ抗原に対して、接種前後でのhaemaglutination inhibition=HI抗体価titer上昇率
- それぞれのインフルエンザ抗原に対して、接種前に抗体を保有していない(HI titers < 1:40)のなかで、接種後に抗体を保有した人(HI titers ≧ 1:40)の割合
Inclusion Criteria
- 18歳以上
- 組み入れられる6週間以上から、MTXの用量を変更していない
- ACR1987のRA分類基準を満たす
Exclusuion Criteria
- 妊婦もしくは授乳婦
- 卵もしくはワクチンに対するアレルギー歴がある
- ワクチン接種時に38度以上の発熱と感染兆候がある
- ギランバレー症候群もしくは脱髄性疾患の既往がある
- 組み入れ時期より4週間以内に生ワクチン接種もしくは2週間以内に不活化ワクチンの接種している
- 治療変更の必要性がある高い疾患活動性がある
- シェーグレン症候群以外のリウマチ膠原病疾患を併発している
Results
- 2015年9月〜2015年11月
- 目標数である584人には組み入れ期間が3ヶ月と短い(インフルエンザワクチン接種を12月より前に行うべきという医学的判断のため)ため届かず、組み入れ人数は277人であった
- baselineはtable1の通りで、DAS28, CRP, 組み入れ時の治療内容に有意差はなかった
- MTXは平均13mg前後、バイオは10-20%
- 接種前のH1N1, H3N2, B抗原に対するHI抗体価もそれぞれのグループで有意差なし(Supplementary Table 1)
Primary Outcome(接種前後でのΔhaemaglutination inhibition(=HI)抗体価 titers ≧ 4倍 の割合)
- 下グラフA-C:3つのインフルエンザ抗原(H1N1, H3N2, B抗原)うち、A=少なくとも1種類のインフルエンザ抗原に対するΔHI抗体価 titers ≧ 4倍 の割合、B=2種類以上のインフルエンザ抗原に対するΔHI抗体価 titers ≧ 4倍 の割合、C=3種類全てのインフルエンザ抗原に対するΔHI抗体価 titers ≧ 4倍 の割合
- A:有意差なし。
- しかしながら、CではGroup 3(MTXをワクチン接種前2週間〜ワクチン接種後2週間後まで中止)がGroup1(MTX継続)に対して有意差をもってHI抗体価がより増加した
- B抗原に限っていえば、Group3, 4はGroup1に対して有意に良好なワクチンに対する反応性を示した(Supplementary Table 2)
- group 3 vs group 1: difference, 20.3%; 95% CI, 1.0% to 39.6%; p=0.040
- group 4 vs group 1: difference, 22.6%; 95% CI, 3.6% to 41.7%; p=0.0197
Secondary Outcome
- A:それぞれのインフルエンザ抗原に対して、接種前後でのhaemaglutination inhibition=HI抗体価titer上昇率
- B:それぞれのインフルエンザ抗原に対して、接種前に抗体を保有していない(HI titers < 1:40)のなかで、接種後に抗体を保有した人(HI titers ≧ 1:40)の割合
- A:Group3, 4は、Group1に対して、H3N2抗原とB抗原に関して、有意にHI抗体価上昇率が大きかった
- しかしH3N2抗原に関してはいずれのGroupも接種前にすでに抗体保有率が高く、Group1でも接種前にH3N2抗原を保有していない人も全員ΔHI抗体価 titers ≧ 4倍 となっている
- B:上記の違いは、接種前に抗体を保有していない(HI titers < 1:40)場合にはより顕著であり、Group3に関しては3種類の抗原全てでGroup1より有意に上昇していた
- ワクチンによる重度の副作用はなし
- 全体において29.1%のRA再燃をがあり、Group2, 3でより多かったが、統計学的には有意とはいえなかった。
- groups 2 (n=15; 34.1%) and 3 (n=19; 38.8%), while groups 1 and 4 had lower flare rates (n=13; 24.1% and n=11; 21.2%, respectively. (p=0.224)
- 再燃した症例では、Group4の1例を除き、MTXを再開することで再びコントロール可能であった
Discussion
- 今回の研究によって、MTX中止期間の中間時点にてインフルエンザワクチンを接種することで、より効果的に抗体価上昇が期待できることを示した
- また、維持量であれば、4週間の中止期間が適正であることも示唆された
- さらに、中止するタイミングも重要であることがわかった
- 接種後4週間でほぼ同等の抗体保有率を示したことは、MTXに関しては、臨床的に効果を示すよりも、免疫細胞に対する効果がより早いことを示唆されている
- 抗原の種類によっても違いがある(免疫原性が大きい順にH3N2 > H1N1 > B-Yamagata)
- 事前に抗体を保有していない場合にはMTX中止による効果がより大きかったため、新型インフルエンザのパンデミックの際に応用できるかもしれない
- limitation:1つは、単施設研究であり当初の予定の症例数を得られなかったため、少なくとも2種類の抗原に対するワクチンの反応性の違いに関する検出力が0.46、3種類全ての抗原に対しては0.52となってしまった。2つ目は、韓国の低疾患活動性で安定したRA患者と対象が限られていること。3つ目は、抗体価の上昇と実際の予防率がどのくらい相関があるのかが不明なので、MTX中断のリスクとフレアのリスクの兼ね合いが難しい
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