ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1722–1732
<Introduction>
- IgG4RDは全身の多臓器に病変を形成する
- heterogeneousな臨床症状であるが、独特のpresentationを示す
- 古典的には亜急性、腫瘍のような病変である
- 一般的には、まだ患者が重症でないうちに、唾液腺の腫脹などの身体所見、腎臓や肺や膵臓のmassなど画像所見でみつかる
- この疾患が認識されて間もないうちは、まだ疑われてすらいない時期に生検によって診断されることが多かった
- しかしながら最近は、典型的な疾患像も知られるようになり、IgG4測定もより一般的になって、臨床医師によって疑われ診断されることが増えた。しかしかながら生検が診断に重要なのは変わらない。
- 実はIgG4RDは古い疾患ではなく、1800年代から報告されていた
- Beitr.z.Chir.Fesrschr.f. Theodor Billroth; 1892. p. 610–30.
- しかしながらそれらは、まとまった疾患ではなくそれぞれの単一臓器の疾患として考えられていた
- Riedel’s thyroiditis[circa 1896]
- Ku€ttner’s tumor [dacryoadenitis involving thesubmandibular gland, circa 1896]
- Ormond’s disease[circa 1960]
- Hamamoらが、2001年に、sclerosing pancreatitis(現在はtype1 autoimmune pancreatitis)の診断において血清IgG4が増加していることが有用だと報告
- N Engl J Med 2001;344:732–8.
- Kamisawaらが、2003年に、sclerosing pancreatitisの患者が膵臓以外の臓器に同じような病理組織所見を見つけたことを報告。これを、血清IgG4、ステロイド反応性、多臓器病変、fibroinflammatory infiltrateによって特徴づけた
- Gastroenterol 2003;38:982–4.
- 現在では下図のような病変が報告されている
- 様々な臨床症状を呈するが、病理所見としては下のものを共有している
- a lymphoplas-macytic infiltrate
- storiform fibrosis (“storiform” fromstorea, the Latin word for woven mat)
- obliterative phlebitis
- enrichment with IgG4-expressing plasma cells
- 診断
<これまでの治療によって判明してきていること>
- PSLは大半の症例において反応性良好であるが、しばしば寛解には至らない
- AZA, MTX, MMFなどのDMARDsの有用性の報告も少なく
- Arthritis Rheumatol 2015;67:1688–99.
- 血清IgG4上昇は液性免疫の関与を示唆しており、RTXによって速やかな臨床症状改善や数週間以内の血清IgG4低下も認める
- Arthritis Rheum 2010;62:1755–62.
- 組織中のB細胞も、RTXによって下の通り速やかに消失する(治療前後の病変皮膚)
- myofibroblastも治療前後で消失しており、B細胞がIgG4RDにおける線維化に関与していることが示唆される
- Ann Rheum Dis2015;74:2236–43.
- これらを踏まえ、次世代シークエンサーによって、B細胞について筆者たちはより詳しく調べている。
- 具体的には、組織中と血液中すべてのB細胞受容体のmRNA分子を調べた
<形質芽細胞について>
- IgG4RDで疾患活動性がある患者では、形質芽細胞が増加しており、それらの多くはIgG4へクラススイッチしている。この増加の程度は臓器病変數とも相関している
- Ann Rheum Dis 2015;74:190–5.
- 次世代シークエンサーによって、IgG4RD患者の形質芽細胞のheavy-chainレパートリーを調べると、オリゴクローナルに増殖しており、かつsomatic hyper mutationを可変領域に生じており、これらはある抗原によってT細胞とB細胞が相互的に反応していることを示唆している。
- somatic hypermutationは、抗原を結合するところの設計図(可変領域遺伝子)に高頻度に点突然変異を蓄積する遺伝子改編で、この点突然変異の蓄積は、病原体により強く結合する抗体を作り出すために必要である。Bリンパ球は、病原体の種類や侵入経路にあわせてクラススイッチ組換えとsomatic hypermutationを巧みに操り、その病原体に最適化された抗体分子を作る事ができる。
- RTXによって2−4週間以内に形質芽細胞が減少することが臨床的改善と相関している
- J Allergy Clin Immunol 2014;134:679–87.
- 上記のことは、以下を示唆する
- 形質芽細胞がIgG4RDのbiomarkerとなる可能性があること
- しかし感染やinfusion reactionなどでも増加するので、臨床症状との比較が重要。信頼性の高いアッセイも確立していない。
- IgG4RDの病態に関与していること
- CD20を発現していないのにRTXによってすぐに除去されるということは、形質芽細胞のlife spanが短いこと、RTXによって形質芽細胞の前駆体である活性化ナイーブB細胞とメモリーB細胞が除去されるためである
- B細胞の分化は、胚中心にあるTfhによってナイーブB細胞が活性化されることから始まる。これはリンパ節もしくは末梢の抗原に感作された組織のリンパにて生じる
- これによって抗原特異的になったB細胞は以下のいずれかに分化する
- 来るべき抗原に備えるメモリーB細胞
- 短命の濾胞外の形質芽細胞。これはTfh非依存性に増加し、感作された組織中に多い
- T細胞依存性の形質芽細胞。これは半減期は長く、骨髄に帰り、long-lived形質細胞に分化する
- 上記3つは現在の技術では判別困難
- 形質芽細胞は感染症など一時的な要因で産生された場合には2週間以内に消失するが、SLEなど持続的な抗原感作がある状況では消失しない
- Nat Immunol 2015;16:755–65.
- RTXによる治療は、immunoglobulinの産生よりも上流であるB細胞の抗原提示の部分から食い止めることに意味があると言える
- 2つの前向きopen-labelケースシリーズ研究は、RTXがIgG4RDに対して有効であることを示している
- 12ヶ月時点で半数がPSLを中止できた
- IgG4は臨床症状ともに低下したが、12ヶ月で正常範囲まで改善したのはまずか42%であった。これはIGG4が病態にとってあまり重要でない可能性と、IgG4増加はshort-lived形質芽細胞だけでなくlong-lived形質細胞からも生じる可能性を示唆している
- Arthritis Rheum 2010;62:1755–62.、Ann Rheum Dis 2015;74:1171–7.
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