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2019年5月8日水曜日

発症早期RAにおけるMTXの有効性を予測する遺伝子:治療前、治療開始4週間後の遺伝子発現量データでおこなったWGCNAにて



Profiling of Gene Expression Biomarkers as a Classifier of Methotrexate Nonresponse in Patients With Rheumatoid Arthritis 

Darren Plant,1 Mateusz Maciejewski,2 Samantha Smith,3 Nisha Nair,3 the Maximising Therapeutic Utility in Rheumatoid Arthritis Consortium, the RAMS Study Group, Kimme Hyrich,1 Daniel Ziemek,2 Anne Barton,1 and Suzanne Verstappen
Arthritis & Rheumatology
Vol. 71, No. 5, May 2019, pp 678–684
DOI 10.1002/art.40810

<背景&目的>

  • MTXはRAのkey drugである
  • ガイドラインでは、MTXの有効性を確認するのに6ヶ月投与することを推奨している
    • しかし、発症早期に有効な治療をすることで関節破壊の進行を抑制することがわかっており、もっと早く効果判定したい
  • MTXの有効性を予測するデータは限られている
    • 年齢、seropositivity(RF, ACPA)と、有効性の関連ははっきりしない
    • 男性の方が女性より有効な傾向がある
    • 疾患活動性が低い人の方が有効な傾向がある
    • NSAIDsを併用している人の方が有効な傾向がある
    • DMARD使用歴は、MTX不応と関連する
    • 遺伝的な要因も報告されているが、いずれもサンプルサイズが少なく、検討された遺伝子の種類が少ない
  • 今回は、発症早期RAにおけるMTX開始6ヶ月後の有効性に関連するbiomarkerを探索するため、MTX開始前と開始4w後の遺伝子発現量データを解析した

<方法>
  • 対象
    • the Rheumatoid Arthritis Medication Study (RAMS)のRA患者
  • 治療前、MTX開始4週間後の全血からRNAを抽出して遺伝子発現量を測定
  • European League Against Rheumatism (EULAR) response criteriaにて、治療開始6ヶ月後にgood responderとnonresponderに分類
  • 有効性予測のモデルは、以下の3つの方法で作成
    • a linear method (regularized logistic regression)
    • a nonlinear method (random forest)
    • a pathway-supported approach(遺伝子発言量データを使用したモデル)
  • モデル作成に使用した臨床項目は、治療前と3ヶ月後の、以下の項目を使用
    • sex
    • age at disease onset
    • HAQ score
    • smoking habits
    • ACPA positivity (titer >10 units/ml)
    • number of swollen joints
    • number of tender joints
    • CRP levels
    • patient’s assessment of overall well-being
  • いずれのモデル作成の際にも、10-fold nested cross-validation をおこなった
  • hub geneやkey coexpression networkの探索のため、Weighted genetic coexpression network analysis (WGCNA)もおこなった
    • hub geneの機能解析のため、パスウェイ解析も追加した

<結果>
  • データキュレーション
    • 82人のRA患者の全血から採取したRNAのうち、QC後に残った22,271 probeを解析対象とした
  • MTX開始6ヶ月後のRA患者の転帰は下記
    • good responder:42人
    • non-responder:43人
  • 遺伝子発現量データに基づいた有効性予測モデル
    • 治療前〜治療開始4週間後の差を使用したロジスティック回帰モデル(linear model、Figure 1の一番右側の列の青色)が最もよかった


    • そのモデルの性能が下記グラフ


  • 臨床情報のみのモデルだとあまりよくない

  • どの遺伝子が最も影響を与えたかは、以下の図
    • 縦軸がGene symbol(Gene symbolがないものはillumina probe IDで表示)、横軸が回帰係数で、正の値、負の値ともに絶対値がトップ20のものを表示

  • WGCNA
    • MTX non-responderのRA患者の、治療前の遺伝子データに含まれる遺伝子について
      • 9個の遺伝子module(クラスター=モジュール)(midnight blue, light green, royal blue, magenta, grey60, black, salmon, green-yellow, and light-yellow)が、good responderとnon-responderのデータを一緒に解析して形成されたmoduleにはない、non-responderに特異的なmoduleとして特定された
        • 行名がnon-responder(NR)のmodule名、列名がgood responderとnon-responderを一緒に解析したデータ(consensus)のmodule名
        • セルの赤色は、log(p-value)と一致し、赤いほど有意にNRとconsensusのmoduleがoverlapしている(=NR特異的ではない)
        • セルの中の数字は、遺伝子の数

    • 同様に、治療開始4週間後のデータの場合は下記
      • 4つのmodule(salmon, light cyan, grey60, and yellow colors)がNR特異的な遺伝子クラスター

  • Pathway analysis
    • 上記で特定されたmoduleの意義を推定するために、各moduleに含まれる遺伝子のパスウェイ解析をおこなった
      • type1 IFN pathwayに関わる遺伝子、type1 IFN signaling pathwayは、治療前のMTX non-responderに特異的なmodule(light green)、治療開始4週間後のMTX non-responderに特異的なmodule(light cyan)のいずれにも含まれていた



  • light green(上), light cyan(下)の遺伝子ネットワーク


  • IFN pathwayに関わるtranscriptがMTXの有効性を予測できるかについて検討した
    • 全遺伝子を組み込んだモデルより精度はよくなかった

<考察>
  • type 1 IFNは、JAK/STAT pathwayを活性化し、innateとadaptive immune responseを活性化させる
  • RAでもtype 1 IFN responseが増加しており、自己抗体産生量と相関することは知られている
    • TNFa阻害薬の反応性ともpotentiallyだが関連するかもしれないと言われている
  • 今回もそうだったが、coexpressed genesは必ずしも遺伝子発現量が増加もしくは低下しているわけではない(具体的なデータは示さず)
  • この研究の強みはサンプルサイズ、治療前後のデータで検討していること、genome-wideの遺伝子で検討していること
  • limitationとしては、MTXの有効性を2元的に決めていること

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