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2018年2月7日水曜日

血管炎の分類:CHCC2012に皮膚所見を加えたもの(A&R reviewより)


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 70, No. 2, February 2018, pp 171
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背景
  • 血管炎では、皮膚が最も病変となりやすい臓器である
    • しかし、CHCC 2012 では、皮膚血管炎の特徴を詳しく扱っていない
    • そのため、今回、consensus group(日本を含む、血管炎が専門の皮膚科医+CHCC2012作成メンバーから数人ずつ)が、血管炎の皮膚病変についてCHCC2012に補足した(table1)


  • 定義
    • 全身性血管炎
      • 皮膚以外の臓器を少なくとも1つ以上病変とするもの
      • 白血球増加、CRP増加、関節痛は非特異的なので、全身性血管炎の症状とはしない
    • 粘膜、皮下脂肪の血管炎も、皮膚血管炎に含むとした
  • 皮膚の血管は、以下を含む
    • small arteries(小動脈)
    • arterioles(細動脈)
    • capillaries(毛細血管)
    • venules(細静脈)
    • small veins (小静脈)
  • CHCC2012では、小型血管〜中型血管の区別は、直径ではなく、構造機能に基づくものとした
    • 小型血管
      • 実質内の動脈〜細動脈〜毛細血管〜細静脈〜小静脈
    • 中型血管
      • 主な内臓を走行する動静脈+その第一分枝
      • 脂肪隔壁の最も大きい動静脈は中型血管である
    • 大血管
      • 大動脈+その主な分枝


大血管炎(table2):Large vessel vasculitis (LVV)
  • Figure1の通り、どのサイズの動脈も病変となりうる
  • TA, GCAの2つが主である
    • TAでは皮膚血管炎は報告されていないが、血管炎ではない皮膚症状は起こりうる
    • GCAでも、皮膚血管は病変とならないが、皮膚ではないところにある血管が閉塞して皮膚や粘膜が壊死を起こすことはある


中型血管炎(table3):Medium vessel vasculitis (MVV) 
  • Figure1の通り、どのサイズの動脈も病変となりうる
    • 小型血管炎も中型血管炎も、いずれも皮膚の小動脈を病変としうるので、皮膚血管炎のみでは、どちらの血管炎か区別はできない
  • KD, PANの2つが主である
    • PANは皮膚血管炎を起こしうる
      • 中型血管:皮膚梗塞、リベド、皮膚潰瘍、真皮内結節など
        • しかしながら、小型血管炎の症状である紫斑、出血斑、紅斑、出血性水泡なども報告されている
      • cutaneous PAN 
        • 慢性・再発性の血管炎であり、主に皮下脂肪や真皮-皮下組織の小動脈・細動脈を病変とする。静脈は直接的には病変とならない。
        • 全身性の血管炎に発展することは稀

    • KDでは血管炎ではない皮膚症状(いわゆる mucocutaneous lymph node syndrome)が特徴的である


小型血管炎(table4):Small vessel vasculitis (SVV)
  • 主には AAV と immune complex vasculitis  
    • いずれも皮膚血管炎を起こす
  • AAVの皮膚血管炎には、以下の4つがある
    1. 細静脈(時に細動脈と小静脈にまで波及する)における白血球破砕性血管炎として、出血性紫斑(時に結節)を形成する
    2. 小動脈〜細動脈における血管炎として、網状皮斑、リベド、結節、指尖梗塞を形成する
    3. 血管外の非血管炎性の肉芽種性炎症(GPA, EGPA)
    4. その他の非血管炎性病変(GPAにおける増殖性歯肉炎)
  • immune complex vasculitis  
    • 下肢に優位(急性期に血管拡張因子を誘導するため)の触知性紫斑があるのが、IgA血管炎 or IgM/IgG血管炎の特徴である
      • cutaneous IgM/IgG vasculitisとは、IgM/IgGが沈着している白血球破砕性血管炎であり、他のimmune complex vasculitis の定義に当てはまらないものである
        • 白血球破砕性血管炎とは、血管炎のタイプを表す言葉ではなく、あくまでも血管炎の障害パターンを描写した言葉であるので、IgA血管炎やIgM/IgG immune complex vasculitisなどと同じように使用してはいけない
      • なお、IgA型のクリオグロブリンはCVに分類され、IgA血管炎ではない

      • 下肢の優位性がなく、細静脈以外の血管にも炎症が波及している場合には、CV, RV, lupus血管炎が疑われる
      • HUV(anti-C1q vasculitis)は、半数にてC1qに対する抗体が陽性である
        • 下肢に優位ではなく、慢性の蕁麻疹が特徴的であり、点状出血や色素沈着を認めうる



    その他の血管炎

    • Behcet病(BD)
      • (毛包性膿疱以外の)早期皮膚病変では、白血球破砕と内皮細胞の浮腫を伴う血管における好中球性炎症を認める
      • 血栓を伴う大血管では、しばしばvasa vasorumの血管炎を認める
      • 結節性紅斑様の病変は、慢性的でマクロファージが豊富であり、初期であれば脂肪隔壁内に白血球破砕性血管炎を認める
        • 白血球破砕性血管炎があること、小葉への浸潤があること、Mieschers granulomas の欠損が古典的な結節性紅斑との鑑別点である
      • 動脈病変は稀であり、下肢においては細動脈と細静脈の区別が困難なので見過ごされやすい
      • 古い病変 or 治療後の病変であれば、血管壁内とその周囲にリンパ球浸潤を認める
      • MAGIC syndrome (mouth and genital ulcers with inflamed cartilage) 
        • BDの皮膚病変、再発性多発軟骨炎、血管炎を有する



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