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2018年2月11日日曜日

自己免疫疾患における好中球の役割


ARTHRITIS & RHEUMATOLOGY
Vol. 68, No. 9, September 2016, pp 2071–2082 


導入
  • 好中球は、最終分化した自然免疫細胞であり、微生物から宿主を守る役割を担っている
    • 骨髄から産生され、多臓器においてホメオスタシスを維持しながら存在する
    • 半減期が短かいので、平常状態を保つためには骨髄から継続的に産生される必要がある
    • しかしながら、ホメオスタシスの状態と非ホメオスタシスの状態での、骨髄と末梢における好中球のturn overについてはわかっていないこともある
  • 好中球の産生は、IL-17に反応して合成されるG-CSFによって、厳密に制御されている
  • 好中球の細胞質にある顆粒(granule)は、4つのカテゴリーに分かれる(figure1)
    • primary (azurophilic) granule
      • MPO
      • defensins
      • neutrophil elastase
      • membrane-bound CD63 など
    • secondary specific granule
      • lactoferrin
      • LL-37 peptide
      • membrane-bound CD66b など
    • tertiary gelatinase granule
      • gelatinase
      • cathepsin
      • lysozome
      • various toxic proteins  など
    • secretory granule
      • membrane-bound receptorsを貯蔵している
      • alkaline phosphataseやCD35を自身の膜に発現している 



  • 循環している時には、好中球は活性化されていない状態を維持しており、細胞内の毒性物質は偶発的に放出されないようになっている
    • 好中球の機能低下や減少は感染症のリスクに繋がるが、好中球を厳密に制御することも組織障害を予防するのに重要である
  • 炎症の状態下では、組織に浸潤し、活性化物質によって半減期も延長する
  • 炎症組織における好中球の役割は、サイトカインやケモカインの合成、貪食、MHC-class Ⅱ依存性の抗原提示など、多くの機能がマクロファージと重複している
    • 様々なメカニズム(貪食、脱顆粒、NETsの放出による細胞死誘導など)で微生物を攻撃する


  • 好中球は、自然免疫や獲得免疫の機能やphenotypeに関与して、炎症に対して強い影響力を有している
    • myeloid DCsは、アポトーシスした好中球を取り込むことによって、抗原提示機能が増強する
    • B cells の発生に関わるBAFFやAPRILなどのサイトカインを合成する
    • 脾臓の好中球は、T cells-independent B cell helper 機能を有する
    • MHC class Ⅰ-dependent にCD8陽性T細胞をcross-primeして、T cell response を増強もしくは抑制する
    • γ/δ T cellsを活性化する
    • PDL-1/PD-1 相互作用を介してT cell アポトーシスを誘導する
    • proteaseによって T cell-stimulating サイトカインであるIL-6, IL-2を不活性化する
    • T cell receptor ?(表示できない文字) chain をdown regulateして cell cycleを停止させ、ROS産生とarginase合成を誘導する
    • ROS産生とNK cellsのmodulationによって液性自己免疫を制御し、IFNγ産生を抑制する
  • 好中球は、分化・可塑性・phenotypeや機能の特徴は、他の免疫細胞と比較してわかっていないことも多い
    • 最終分化した状態では遺伝子操作が難しく、半減期も短いので冷凍・解凍作業の間に死滅を防ぐのが難しい
    • そのため、正確なimmune phenotypeや機能のassayには、freshな検体を抽出することが必要である
    • 重要なことはではあるが、マウスの好中球は生物学的にはヒトの好中球と異なるため、マウスモデルの有用性が限られている
    • それにもかかわらず、最近は好中球の自己免疫・炎症性疾患における生物学的な役割について注目を集めている

好中球サブセット
  • 好中球には、phenotypeやfunctionに基づいて、いくつかのサブセットがある(table1)
    • 好中球のphenotypeの違いが、遺伝子によるものなのか、microbiomeによるものなのか、老化によるものなのか、解明する必要がある
    • 一部の専門家は、マクロファージのように、N1 (inflammatory neutrophil)N2 (antiinflammatory neutrophil)  に分類することを提唱している
      • しかし、好中球をどちらかに誘導する因子がまだわかっていない
    • olfactomedin 4 (OLFM4) 
      • ~25%の好中球に認める、特異的な顆粒蛋白
      • OLFM4陽性の好中球の役割はわかっていない
    • CD177
      • glycoprotein I–anchored neutrophil antigen 
      • platelet endothelial cell adhesion molecule 1に結合する
      • 多くの好中球に発現しており、おそらく内皮細胞間を遊走する機能が高まると考えられている
    • CD16dim  
      • 細菌へのオプソニン化、ROS産生の機能が低下している
    • CD16bright 
      • CD16dim  と逆
    • 敗血症では、好中球におけるCD62Lの発現レベルと好中球機能低下が相関している
    • low-density granulocytes (LDGs)  
      • 自己免疫疾患との関連が指摘されている





ROS
  • ROSは、炎症が進行する際に重要な役割を担う分子である
    • 抗菌作用、NF-κB転写因子活性のシグナル制御、NET産生など
    • ROSには以下が含まれる
      • superoxide anion
      • hydrogen peroxide
      • hydroxyl radical
      • hypochlorous acid 
  • ROSを主に産生するのは、ミトコンドリアNADPH oxidase(NOX)である
    • NOXには、7種類のhomologが存在する
      • NOXs 1–5 
      • NOX/dual oxidases 1, 2 
        • 好中球では、NOX-2 が抗菌とNETosisに重要と考えられている
  • NOXによるROS産生が欠損すると、細菌や真菌に対する防御力が低下し、慢性肉芽種性疾患、免疫不全を発症する
    • そして、炎症が増強し、自己免疫疾患を発症する前段階へと繋がる
    • これは、ROSは炎症や組織障害を誘導する一方で、炎症を制御して自己免疫に対して抑制的に作用していることを示している
      • 実際に、ROS産生が低下し重症慢性炎症が持続している動物モデルでは、関節炎や多発性硬化症を発症する
      • また、NOX-2を欠損したlupus-prone マウスでは自己免疫が増悪し、NOX活性を低下させるとSLE発症を促進する


phagosytosis
  • 自然免疫反応では重要であり、侵入してきた微生物に対して好中球とマクロファージが攻撃する
  • phagocytosisは、pattern- recognition receptors(Fcγ受容体やC-type lectinsなど)が、pathogen-associated molecular patterns(PAMPs)として知られる微生物のlipopolysaccharideや真菌のβ-glucansを認識しておこなわれる
  • 好中球のphagocytosisは、迅速であり、phagocytic vacuole とgranuleが融合してphagolysosomeを形成する
    • これらのgranuleは、NOX subunitsとhydrolytic enzymes を含んでいる
    • IgGによってオプソニン化されたparticleを20秒以内に貪食する
      • マクロファージの場合はもっと遅い
    • マクロファージと異なり、phagosomeの成熟は、細胞質のカルシウムに依存している

NETosis
  • NET形成は、好中球が微生物を捉え、動けなくし、殺すメカニズムである
    • この過程の中で、活性化した好中球は、granular enzymeを含む自身の核の成分を放出し、細胞外に蜘蛛の巣のような構造を形成する(上のfigure2)
    • NETsを誘導するのは、微生物による刺激のみではなく、無菌である血小板、免疫複合体、サイトカイン、コレステロール、尿酸結晶、自己抗体などもNETsを誘導する
  • NETosisには、NOXなどによるROS産生が必要である
    • 最近の研究結果では、NOXの機能が欠損していても、ミトコンドリアによるROS産生があればNETsを誘導できることがわかった
    • ROS合成によってpeptidylarginine deiminase 4 (PAD4) の活性化が生じ、ヒストンのアルギニン残基をシトルリン化し、核のヒストンの脱凝縮(decondensation)と遺伝子転写を促進する
  • NETosisの間には、好中球のelastaseは、核へ局在化し、ヒストン修飾とクロマチンを展開し、核を大きくする
  • NETの晩期には、好中球の核膜の崩壊は、核と細胞質の構造物が混ざり、細胞膜の分裂と溶解を介してNETの放出が生じる
  • NETosisによる自己抗原の放出が、宿主の免疫活性化を起こす
    • 悪性腫瘍、線維化、血栓、動脈硬化、創傷治癒など多くの疾患でNETが関係していることが報告されている


<好中球の全身性自己免疫疾患への関与>


SLE
  • lupusと好中球の関係は、だいぶ前から示唆されていたが、臓器障害の誘導や免疫破綻における好中球の関与が注目されてきたのはここ10年の出来事である
  • SLE患者の骨髄では、好中球がtype 1 IFN の主な産生源であるあり、好中球が BAFF産生を介してB cellの異常を誘導していると言われている
    • 好中球のphenotype・functionの異常(好中球減少、貪食能の異常、oxidative activity)がその考えを支持している
  • SLEは、末梢血から分離されるLDGsの存在が特徴的である
    • LDGsをnormal density granulocytesから区別する細胞表面 or epigenetic マーカーが存在しないが、いくつかのトランスクリプトームと機能の違いがLDGsの病態への関与を示唆している
    • LDGsは、SLE患者において末梢血や皮膚病変で多く認められる
      • これを時系列を追って解析し、outcomeに影響するか調べる必要がある
    • 顆粒蛋白をコードするmRNAsの発現増加が、LDGsにおいて認められている
  • 機能的には、LDGsは、炎症性サイトカインやtype 1 IFN の合成能力が高く、SLEへの病態に関与していると考えられている
    • Ex vivo解析では、LDGsは、他の刺激がなくともNET形成を促進することが示されている
    • NETosisの促進・MMP-9の細胞外への放出を介して、LDGsは内皮細胞のアポトーシスを誘導し、血管機能を破綻させる
    • NETsは、P2X7受容体依存性にマクロファージにおけるNLRP3 inflammasome を活性化し、活性化IL-1βとIL-18合成を促進する
    • NETsの外側にあるCathelicidin LL-37 は、獲得免疫の反応を誘導し、LL-37/anti-LL-37 immune complexはplasmacytoid DCsがIFNαを合成するのを活性化する
    • NETosisの促進は、循環しているLDGsのみではなく、皮膚や腎臓などSLEの様々な罹患臓器で認められる
  • 最近の報告によれば、SLEのLDGsにおけるNETosisは、ミトコンドリアのROSに依存していた
    • 実際に、LDGsにおいて、ミトコンドリアでのROS産生は増加しており、ミトコンドリアのROSを除去するとNETosisが阻害される
    • ミトコンドリアのROSによって誘導されたNETsは、他の物質により誘導されたNETsよりも、monocyteを標的にしたtype 1 IFN や炎症性サイトカインの産生が強い
      • それはおそらく、LDG NETsにおける核酸の酸化が強いためである
      • genetic or ミトコンドリアのDNAは、酸化されると、崩壊が抑制され、stimulator of IFN genes (STING)などの細胞内センサーに認識されやすくなり、type 1 IFN産生反応が増強する
    • lupus-prone マウスで、ミトコンドリアのROSを阻害すると、lupusの症状は改善し、type 1 IFNは低下する
    • また、他の NETosisを抑制する方法としては、PAD4活性がNET形成に関与しているため、PAD4を阻害することがマウスモデルで試されており、実際に臓器障害が軽減されている
  • SLE患者の結成では、NETsを分解する能力が低下している
    • これには、以下の機序が考えられている
      • DNase Ⅰ活性が低下している 
      • DNase Ⅰ阻害物質の存在  
      • NETsが分解されることに対して保護的に作用する自己抗体の存在
    • NETの分解が阻害されると、疾患活動性の増加・補体活性化・ds-DNA抗体増加・腎炎の増加が認められることが報告されている

RA

  • シトルリン化自己抗原に反応することが、RAの病態と考えられている
  • 好中球は、RAの関節破壊における主要なeffector cellsと考えられている
    • しかし、自己抗原の発生と、局所・全身における自然免疫・獲得免疫の反応を活性化する際に、好中球がどのような役割を担っているかはわかっていない
  • 最近、NETosisがシトルリン化自己抗原の主な産生源であり、疾患発症に関わっていることがわかってきた
    • 血液・滑膜などの組織において、好中球におけるNETosisが亢進している
  • PAD活性化を介して、NETosisは、細胞内抗原(ヒストン、ビメンチン、エノラーゼ)のシトルリン化のみではなく、細胞外自己抗原をシトルリン化できる活性化PAD isoformを放出している
  • RAにおけるmicroenvironment(シトルリン化抗原に対する自己抗体、RF、TNFやIL-17などの炎症性サイトカイン)は、NETosisを促進し、自己抗体産生→炎症反応増加→さらなるNET形成へと繋がるサイクルを形成する
    • NETsは、RAの滑膜線維芽細胞における、炎症反応を惹起する強い因子であり、関節破壊へ繋がっていく
  • NETosisにて産生されたシトルリン化ヒストンは、RAとFelty's syndromeにおける重要な自己抗原である
    • Protein tyrosine phosphatase N22 (PTPN22) は、PAD4を阻害するため、蛋白のシトルリン化も阻害する
      • このことから、PTPN22の多型がRA発症リスクとなる機序として、蛋白のシトルリン化促進を介してNETosisを起こすということが推測される
    • 補体とパーフォリンが活性化する際に、好中球のPAD活性化が起きることが、RAにおける自己抗原産生において重要であると考えられる
    • 一方で、好中球由来のmicrovesiclesが、軟骨に入り、関節の破壊を防ぐことも報告されている


APS

  • 血栓と妊娠への影響は、APSの特徴である
  • 抗リン脂質抗体によって好中球が活性化することが知られている
  • APS患者の好中球において、ミトコンドリアの機能が低下していることが報告されている
  • 組織因子/Ⅶa因子/protease-activated receptor 2  のカスケードは、好中球の活性化を促進し、胎児死亡の原因となることがAPSモデルで示されている
  • 補体と好中球の相互作用も、胎児死亡の原因となることがAPSモデルで示されている
  • LDG populationが、APS患者において認められたことが報告されている
  • APS関連自己抗体は、ROS- & TLR4-dependentな機序で、NETosisを促進する
  • NETの分解が低下していることがAPS患者において報告されている


AAV

  • 好中球の特異的な顆粒蛋白に対するANCAの発見と、これらが臨床的にもAAV関与していることがわかり、小血管炎の病態において好中球が重要な役割を担っていることがわかってきた
  • in vitroでは、炎症物質によってprimeされた好中球が、p38 MAPK pathwayの活性化と、細胞膜表面へのMPO/PR3の発現増加を起こし、ANCAがそこに直接結合する
    • Fc受容体への刺激 or 抗原との交差反応によって、ANCAが好中球表面に結合できるようになる
    • この結合によって、好中球が活性化され、炎症性サイトカインの合成、NET放出、脱顆粒、そして臓器障害へと繋がる
  • NETosisがAAVの病態に関与していることが最近わかってきた
    • 腎臓の血管病変やAAV患者の血栓にはNETを認める
    • NETsは、ANCA形成のために必要な免疫原性として作用する自己抗原の、主な産生源と考えられている
      • AAV患者では、NETosisの亢進とNET clearanceの低下が報告されており、NETの中にはPR3やMPOが含まれている
    • ANCAは、NETosisを誘導し、DCsがNETを抗原として認識してANCA産生がさらに促進されることがマウスの血管炎モデルで示されている
    • 補体のalternative pathwayが、AAVにて活性化している
    • 薬剤誘発性血管炎のモデルマウスでは、プロピオチオウラシルによって誘導されたNETsは、異常な構造を有しておりclearanceも低下し、MPO-ANCA形成とpauci-immune glomerulonephritisと関連している
  • AAV患者の一部はANCA陰性であり、再発のマーカーとしても疑問を持たれており、発症していない一部の健常人にも陽性となることがある
    • AAV患者のANCAと、健常人におけるMPOに対する自己抗体は、epitope specificityが異なり、これが疾患活動性とも関連している
  • 最近では、好中球顆粒蛋白のmRNA発現と、LDG populationがAAV患者に認められており、通常治療に対する反応性を予測できることが報告されている
  • PR3を膜表面に発現している活性化していない好中球のサブセットや、MPO/PR3のプロモーター領域の遺伝子修飾が、AAVのバイオマーカーになりうるかもしれない


<自己炎症性疾患における好中球>
  • 好中球の機能に関連する単一遺伝子の疾患の発見は、我々の自己免疫への理解を促進した
  • ヒトとマウスモデルでは、好中球・遺伝子・molecular pathwayの違いがあるので、ヒトの単一遺伝子疾患を研究することで、好中球の新しいbiologyを発見できるかもしれない

単一遺伝子自己炎症性疾患
  • 自己抗体や抗原特異的T細胞が陰性で、突発的な発熱、炎症反応を示すのが特徴である
    • 獲得免疫というより、自然免疫の異常による疾患であることを示唆している
  • 他の骨髄系細胞のように、好中球は、pattern- recognition receptors に多様なレパートリーを有しており、それによって自然免疫を活性化できる
    • in vitroで好中球を用いた実験を行う必要があるが、ヒト好中球におけるpattern- recognition receptors の理解が不足しており、多様な自己炎症性疾患における機能の研究は主にmonocyte/macrophage cell linesで行われてきた
  • 活性化した好中球のneutrophil phenotypeは、familial Mediterranean fever(FMF)の発作間欠期でも認める
    • FMFでは、NETsは、IL-1βによる炎症を制御している
  • inflammasome関連分子であるNLRP3, NLRC4, NLRP12のpoint mutationの存在は、自己炎症性疾患に対するIL-1阻害治療が有効であることを示している
    • 自己炎症性疾患におけるIL-1β産生源はmonocyteであるが, 好中球も病態に関与している
      • Neutrophilic urticarial dermatosis(NUD)は、neonatal-onset multisystem inflammatory disease (NOMID)における組織学的な特徴である
      • Chronic atypical neutrophilic dermatosis with lipodystrophy and elevated temperature (CANDLE) syndrome は、immunoproteasomeの機能異常による疾患であるが、未熟な好中球が皮膚に浸潤しているこが特徴である
      • しかしながら、これらの疾患における好中球の機能については、わかっていない

痛風
  • 痛風の病態では、自然免疫が重要である
  • ヒトにおけるプリン代謝産物の最終産物である尿酸が、ナトリウムが豊富な液体において針状のmonosodium urate monohydrate (MSU) 結晶へ結晶化することによって発症する
  • 以下の機序によって、NLRP3 inflammasomeの活性化を介して、MSU結晶は関節や組織において炎症を誘導する
    • MSU結晶をmonocyteが貪食し、endosomeが細胞内でacidic lysosomeと融合する
    • phagolysosome内のpHが低下することで大量のナトリウムを放出し、細胞内の浸透圧が急激に増加し、アクアポリンを介した自由水の流入が生じ、細胞内のカリウム濃度が低下する
    • 細胞内のカリウム濃度低下がNLRP3 inflammasome活性化を起こし、pro IL-1βを活性化IL-1βへ変化させる
    • MSU結晶によるinflammasome活性化とサイトカイン放出は、好中球を引き寄せる
  • 急性の痛風発作は、結晶は発作間欠期にも残存するが、self-limitingである
    • 他の軟部組織を病変とする炎症性疾患の発症と異なり、数日間で症状が消退する
    • これは、MSU結晶誘発性の炎症を抑制する機序があることが示唆される
      • IL-10, TGFβ, proinflammatory macrophage → antiinflammatory macrophageへのスイッチが、機序として考えられる
  • 最近の報告では、痛風における炎症・抗炎症の異なる機序も提唱されている(figure3)
    • MSU結晶が存在する炎症部位に好中球が引き寄せられ、NETsを形成する
    • 好中球の数が少ない間は、炎症性サイトカイン(IL-6, TNF), 好中球誘導物質(CXCL8), 好中球活性化因子(CCL3, CXCL10)などの炎症メディエーターが放出され、それによってさらに好中球が増加する
    • NETsも最初は単一であったのが、NETsの集合体(aggregated NETs)が形成されてくる
    • NETsの集合体によって、MSU結晶はDNAや顆粒蛋白に捕捉され、セリンプロテアーゼ(好中球エラスターゼ、PR3など)によって炎症性メディエーターが不活化される




好中球を標的にした治療

  • ステロイドは、好中球のアポトーシスを抑制し、好中球による炎症を増強させることが報告されている
    • 機序として報告されているのは、antiapoptotic Bcl-2 family membersの発現増加、NF-κB活性化、アポトーシスの経路に関わる物質の抑制、アポトートシス蛋白の阻害など
  • コルヒチンは、抗炎症作用があるが、特に好中球に作用する
    • 機序としては、好中球などの免疫細胞における微小管の重合を阻害することで、phagocytosisの抑制やpathogensのlysosomeへの移送が抑制されることが考えられている
  • ダプソンは、白血球の走化・細胞障害機能を抑制する
    • 好中球の接着機能を阻害することで、血管外への遊走を抑制する
  • シクロホスファミドによる好中球減少はよく知られた有害事象であるが、実のところ、どのようにして顆粒球の機能へ影響し、好中球へどれほど影響するかはわかっていない
  • NET形成・clearanceを標的にした薬剤は、NETosisが病態に関連している疾患には有効だろう
    • ヒドロキシクロロキン、シクロスポリンAは、生理的濃度において、PAD enzyme の阻害 or ROS産生源への作用で、NETosisを阻害し、lupus動物モデルにおいて有効であることが示されている

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