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2017年10月29日日曜日

SAPHO症候群


本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

背景
  • SAPHO(Synovitis-Acne-Pustulosis-Hyperstosis-Osteitis) 症候群は皮疹と、骨・関節症状が特徴的な疾患である
  • 症状が多様であるため、Sterno-Costo- Clavicular Hyperostosis (SCCH) 、pustulotic arthro-osteitis (PAO) 、Chronic relapsing multifocal osteomyelitis(CRMO、小児に多い)とも呼ばれることがある
    • 骨(骨過形成、骨炎)関節(滑膜炎)症状
      • 主に前胸壁(胸鎖関節、胸骨柄結合、肋軟骨)、脊椎、仙腸関節が病変
      • 四肢の小関節を病変とするのは稀
      • 骨過形成
        • 慢性の骨膜反応、皮質骨肥厚
      • 骨炎
        • 皮質骨、海綿骨の炎症
        • 単発性 or 多発性
      • 溶骨が骨硬化に先行することもある
    • 皮膚症状
      • 掌蹠膿疱症、重度のざ瘡、乾癬
  • 1987年に、ChamotらがSAPHO症候群を提唱
  • 診断基準
    • 1988年にBenhamouらが以下を提唱
(Clin Exp Rheumatol.6(2):109-12,1988から引用)
診断項目
1 重度のざ瘡を伴う関節病変
2 掌蹠膿疱症(PPP)を伴う関節病変
3 四肢、脊椎、胸鎖・胸肋関節の骨肥厚症
4 体軸もしくは末梢の慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)
判定
上記4項目中1項目を満たし、下記除外項目がない場合に診断される
除外項目
化膿性骨髄炎、感染による胸壁の関節炎、感染性掌蹠膿疱症、手掌角化症、びまん性特発性骨増殖症(DISH)、レイチノイド療法に伴う骨関節病変


    • Kahnらの診断基準もある
      • 以下のいずれかを満たす
        • CRMO
        • 急性、亜急性、慢性の関節炎+PPP、膿疱性乾癬、重度ざ瘡のいずれか
        • 無菌性骨髄炎+PPP、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、重度ざ瘡のいずれか
    • Govoniら2003年ACRでのannual meetingで提唱したのは下
      • これによれば骨病変が診断に不可欠

  • 疫学
    • SAPHO症候群の疫学は不明なことが多い
    • ヨーロッパに多く(1/10,000人)、日本は比較的少ない(2.85/10,000,000人)
    • 日本が少ないのは認知の問題かもしれず、SCCHやPAOに混ざっている可能性がある
    • 海外では男性のほうが多いと報告もあるが、国内の報告では女性が多い
    • 発症年齢は2峰性で、10-20歳台 & 50歳台

    • CRMOは10歳代が多い
      • SAPHO症候群の10-20歳台のピークはこれを反映しているのかもしれない
    • HLA-B27との関連が以前言われていたほどより弱いことがわかり、脊椎関節炎との関連についても不明である
  • pathogenesis
    • 感染症、自己免疫、遺伝因子などがいわれている
  • 鑑別診断
    • 感染症、悪性腫瘍、骨Paget病、 Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis(DISH)など
    • 骨病変のみの場合は鑑別が難しい
    • 一般細菌、真菌、抗酸菌などが鑑別に上がる場合は骨生検が必要である
  • 治療に関しても確立されたものはない
    • NSAIDs、ステロイドなど
    • Propionibacterium acnesに対する抗生剤が有効であることも報告されている
    • 骨病変に関してはビスホスホネート製剤が有効
    • 難治性の場合にはMTX生物学的製剤などのDMARDsが使用される
    • 扁桃腺炎があればそれを治療するとPPPやSAPHO症候群の胸鎖関節病変が改善することも報告されている
  • 予後
    • 再燃と寛解を繰り返すが、長期的予後は比較的良好



日本からの67例のSAPHO症候群の報告Hiroshi Okuno er al, Clinical features and radiological findings of 67 patients with SAPHO syndrome, Modern Rheumatology, 28 October 2017
  • 方法
    • 東北大学で2002-2013年にBenhamouらの診断基準によってSAPHO症候群と診断された67例(44:女性、23:男性)を解析
  • 結果
    • 臨床所見(table1)
      • 平均発症年齢:48.5歳
      • 平均診断時年齢:53.1歳
      • 併存症
        • 扁桃腺炎
        • 歯科疾患
        • 副鼻腔炎
        • 金属アレルギー
        • 甲状腺炎
        • 下痢・便秘
        • 皮膚症状

    • 皮膚症状の内訳
      • 掌蹠膿疱症
      • ざ瘡
      • 乾癬
      • 皮膚症状が先行することが多い
        • 先行する場合、平均10.8年前に先行
        • 後で発症する場合、平均4.7年後


    • 初発症状は多くは局所の疼痛
      • 3人はlow gradeの発熱あり
      • 疼痛部位の内訳は下
    • 検査所見
      • CRP、ESR増加:60-70%程度のみ
        • WBC増加に関してはわずか16%
      • RF、CCP抗体、ANA陽性:2%程度
        • RF、CCP抗体陽性患者は右股関節痛の訴えがあったが、画像的には関節炎ではなく大腿骨の病変であり、ACR-EULAR 2010のRA分類基準も満たさなかった
      • MMP-3増加:26%
      • ASO増加:18%

    • 骨生検
      • 他疾患と鑑別目的で29.8%で施行
        • いずれも一般細菌、真菌、抗酸菌は陰性
        • 非特異的な炎症細胞浸潤もしくは慢性骨髄炎の所見を全例で認めた

    • 画像所見
      • X線(100%)、骨シンチ(46.3%)、CT(83.6%)、MRI(85.1%)を施行
      • 以下の部位に所見が認められた
        • 骨に所見あり:97%
          • 前胸壁:77.6%
          • 脊椎:41.8%
          • 長管骨:14.9%
          • 骨盤、顔面、肩甲骨:1.5%
          • 手指骨:0%
        • 関節に所見あり:46.2%
          • 大関節(肩、股、膝、肘、足):13.4%
          • 小関節(手、手指、足趾):4.5%
          • 腱付着:13.4%

  • 61歳女性
    • X線(A):鎖骨の透過性低下
    • CT(B):胸骨の骨過形成、胸鎖関節の強調
    • 骨シンチ(C):胸鎖関節の集積亢進



  • 26歳女性
    • CT(A):終板の不整、椎間板狭小化、椎体辺縁のerosion
    • MRI(B):T1強調画像での椎体領域の低信号、造影での不均質な取込み増加



  • 25歳女性
    • 大腿骨の骨膜肥厚



フランスからの41例の報告
uhani, et al: The SAPHO syndrome. J Rheumatol 2015;42:329–34
  • characteristics(table1の一番右。他のシリーズとの比較)
    • 前胸部疼痛が初発症状として多い
    • 女性が多い
    • 初発症状〜診断まで平均12ヶ月
    • HLA-B27は測定された36例で全て陰性
    • 治療
      • コルヒチン
        • 6例で使用されたがいずれも効果なし
      • ステロイド内服
        • 寛解まではいかないが症状改善
      • SASP
        • 6例で使用し、1人のみ関節病変改善、1人はPPPに著効
      • MTX
        • 4例に使用され、関節病変に対して10ヶ月時点で2例は無効、1例はわずかに有効、1例は有効だった
      • 抗生剤
        • アジスロマイシンで治療された7例において、1例ではgood response、1例ではpartial response、5例では無効
        • ドキシサイクリンで治療された2例では、1例で無効、1例は副作用のため中止
        • なお、この報告では反応性関節炎を除外しきれていない
      • ビスホスホネート製剤
        • パミドロン酸(180mg/回)で26例治療し、6ヶ月時点で22例が有効、疼痛に関しては17/22例で50%以上改善(100%改善が7/22例)
      • TNF阻害剤
        • IFX使用した1例では著効し3年間有効だった
        • ETNで9ヶ月間治療しADAにスイッチした例ではいずれも無効だった

  • 骨シンチでの左顎骨集積亢進


  • 仙腸関節MRI、CT
    • 左仙腸関節の前面に位置する軟部組織の炎症、左S1神経孔周囲の骨過形成

  • 右腸骨翼の広範な骨硬化病変、右恥骨の骨硬化

  • 8年間の頚椎病変の変化



<SAPHOとRAの合併例>
Wenrui Xuらの報告(Medicine (2017) 96:1(e5724)
  • 59歳、女性
  • 2005年3月より両側PIP・手関節痛と朝のこわばりあり、RF・CCP抗体陽性(437 AU/mL)でRAと診断(table1)
  • PSL 20mgで治療
    • 2ヶ月後、症状安定しておりPSL10mg+LEF10mgへ変更し維持量として継続
  • 2015年4月、腰痛、左胸鎖関節痛、掌蹠膿疱症が1ヶ月間で発症し、受診
    • X線:腰椎に変性あり
    • CT:左胸鎖関節の硬化性変化と皮質骨のerosionあり
    • 血液検査:炎症反応増加(table1)
    • 上記より、SAPHO症候群と診断されPSL15mgへ増量したが、2ヶ月後に皮膚症状・骨関節症状が再燃
    • 骨シンチ:bull's head sign陽性

    • CT, MRI:腰椎の椎体角病変が多発(figure2 A-F)
    • 右手関節MRI:PIP・MCP関節の滑膜増殖と関節液貯留あり(figure2 G-H)

  • tripterygium wilfordii polyglycosidium (TWP, 0.6g tid) +PSL15mgで治療開始し、症状は改善
    • その後PSL中止した際に再燃し、PSL再開

生物学的製剤によるhypersensitivity reactions (HSR) のreview


Rafael Bonamichi Santos, MD, Violeta Régnier Galvão, MD, PhD
Monoclonal Antibodies Hypersensitivity Prevalence and Management 

Immunol Allergy Clin N Am 37 (2017) 695–711

本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

背景

  • 最初の抗体製剤は、それぞれの疾患に特異的な蛋白構造の変異や欠失をターゲットに1970年代に開発された
    • 現在では悪性腫瘍、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患の治療の主流を担っているが、これらの薬剤によるhypersensitivity reactions (HSR) も増加している
  • 抗体製剤の第一世代は、特異的な抗原に結合する部位と、Fc受容体に結合するFc領域を有するmonospecific/bifunctional抗体だった
    • 2009年に、catumaxomabが悪性腫瘍に伴う腹水の治療に承認んされた
  • bispecificな抗体製剤には、3種の型が存在する
    • Trifunctional抗体
      • 2つの異なる抗原に結合する部位に加え、単球・マクロファージ、NK細胞、樹状細胞などのFc受容体に結合するFc領域を有し、標的細胞を攻撃する
    • Chemically linked Fab
      • Fab領域のみ有し、2つの異なる抗原に結合する
      • 1つのFabは標的細胞に結合し、もう1つはマクロファージなどのFc受容体を有する免疫細胞に結合する

    • Bispecific T-cell engager: (BiTE)法
      • 2つの単鎖抗体(single-chain variable fragments)で構成される融合蛋白。それぞれの蛋白は異なる抗体、アミノ酸で構成される。
      • 種々の標的抗原に対する抗体と、T細胞の活性化能を有する抗CD3抗体を結合させた二重特異性抗体を介して、標的細胞に細胞障害性T細胞(CTL)を引き寄せ、抗CD3抗体の機能によってCTLを活性化し、その細胞障害活性によって標的細胞を効果的に除去する
※単鎖抗体

  • 抗原結合ドメイン(Fvドメイン)をフレキシブルリンカーで連結した融合タンパク質
  • IgG に比べ分子量が1/5と小さく、血管から組織への移行はIgG そのものよりスムーズに行える
  • 微生物でも比較的容易に発現可能なので大量生産できる


<メカニズム>
  • モノクローナル抗体製剤が有効性を発揮するメカニズムには、下記があげられる
    • 標的分子の機能を正常化する
      • IFX(TNF阻害剤)
    • 標的受容体を阻害して、シグナル経路を調節するもの
      • ipilimumab(抗CTLA-4抗体)
    • 細胞のアポトーシスを誘導するもの
      • 細胞障害型
      • 補体介在型
      • 製剤のFc領域に毒性分子を有するもの
        • tositunomab, brentuximabなど

<HSRの種類>
  • HSRの種類について
    • type1
      • 投与後30−120分で出現
      • 以前に投与歴があり感作されている
        • cetuximabは例外。この薬剤に対するIgE介在性反応はマダニ(Amblyomma americanum)に以前に噛まれていると生じうる
      • 皮膚、呼吸器、消化管、心血管、神経系などあらゆる臓器が障害される
        • 皮下投与された場合には局所反応が生じる
      • 投与後1時間で軽快する
    • IgG介在性
      • これに関してはまだ研究されている段階である
      • 動物モデルでは、抗体製剤に対するIgG抗体が産生され、それがマクロファージ・好塩基球・好中球などのFcγ受容体に結合し、血小板活性化因子を放出する
      • また、大きな免疫複合体によって補体経路が活性化され、アナフィラキシーを生じることも言われている
        • このタイプではtype1に臨床症状が似ている
    • type3
      • 免疫複合体(抗体とその抗体に対する抗体)が皮膚・腎臓などの臓器の小血管に沈着して生じる
      • 投与後5ー7日で生じることが多い
      • 発熱、倦怠感、筋痛、関節痛、紅斑、浮腫、紫斑、結膜充血など
    • type4
      • 遅発性の細胞障害性HSRは、いくつかの皮下投与で生じる
      • 典型的には4回目の投与後で生じる
      • 投与後1時間で投与部位局所の反応が始まり、数日で軽快する
      • SJS, TENなど重篤となることもある
    • cytokine storm reactions
      • FcγR受容体を有するマクロファージなどの免疫細胞活性化によって放出されたpro-炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1、IL-6)が原因
      • 重篤化することは少ない
        • anti-CD28 mAb の治験では、これによって6人のボランティアが多臓器不全に陥ったことは念頭に置いておく必要がある
      • 脱感作が考慮される
    • 混合型
      • type1に関連するcytokine stormである
      • 皮膚反応や特異的IgE抗体が陽性となる


<抗体別の各論>


  • TNF阻害薬
    • IFX(レミケード)
      • キメラ型TNFα阻害薬
        • 初回投与時にHSRが生じうるが、最も頻度が高いのは7回目の投与である
      • IgG型の抗IFX抗体陽性であることが HSRのリスクとなる
      • IgE介在性の反応も報告されている
      • HSRを生じた人では、IFXに対する皮膚試験とIgE型抗IFX抗体がそれぞれ28%, 21%で陽性になる
        • 健常人ではそれぞれ3%, 10%
      • 遅発性反応は投与後1-14日で生じうる
        • type3反応に似て発熱、倦怠感、筋痛、関節痛、紅斑、浮腫、紫斑、結膜充血を呈することもある
    • ETN(エンブレル)
      • TNF受容体とIgGの融合蛋白である
      • 投与部位局所反応は37%の症例で認める
      • IgE介在性のHSRも報告されており、脱感作は比較的成功する
    • ADA(ヒュミラ)
      • 完全ヒト化TNFαモノクローナル抗体
      • 投与部位局所反応は20%で認める
      • 皮膚試験陽性の場合には、即時型HSR, 即時型投与部位局所反応、遅発型投与部位局所反応が起こりうる
    • GOL(シンポニー)
      • TNFαに対するヒト化IgG1kモノクローナル抗体製剤
      • 投与部位局所反応を4.4-20%で認める
      • 皮疹を3.1-10.9%で認める
    • CZP(シムジア)
      • TNFαに対するヒト化モノクローナル抗体製剤
      • 投与部位局所反応は0.8-2.3%と報告されている
      • アナフィラキシーの報告なし

  • CD20抗体
    • RTX(リツキサン)
      • キメラ型CD20抗体
        • IgE介在性HSRを5-10%で生じる
        • 初回投与で即時型HSRを起こしうる
          • B細胞系悪性腫瘍に対して投与する場合には、前投薬を行っても半数以上で生じる
        • cytokine storm型、血清病型(type3)も報告あり
    • Ofatumumab(Arzerra)
      • 完全ヒト化CD20抗体
      • 半数の患者で、cytokine storm型の即時型反応を生じる
      • 投与時反応は2回目以降では稀
    • Obinutuzumab(Gazyva)
      • 細胞溶解性CD20抗体
      • 初回投与時反応は38-65%と多い
        • 嘔気、倦怠感、めまい、下痢、高血圧、紅潮、頭痛、悪寒など
        • 重症となるのは20%
      • 古典的即時型HSRも報告されている
        • 血圧低下、頻脈、呼吸困難、気管支痙攣、喘鳴など

  • 抗human epidermal growth factor receptor 2 (HER2) 抗体
    • Trastuzumab(ハーセプチン)
      • human epidermal growth factor receptor 2 (HER2) に対するヒト化モノクローナル抗体製剤
      • 40%の症例で初回投与時に悪寒、発熱を生じるが、重症化するのは稀である
      • 皮膚試験陽性のIgE介在性HSRは起こりうるが、脱感作は有効である
      • 膿疱やざ瘡様の皮疹も副作用として報告されている
    • Pertuzumab(Perjeta)
      •  (HER2) に対するヒト化モノクローナル抗体製剤で、HER2陽性乳がんに対してTrastuzumabとドセタキセルと併用する治療が承認されている
      • 発熱、悪寒、頭痛、倦怠感など投与時反応が報告されている
      • 38歳の乳がん患者において、2回目の投与の際に、好塩基球反応(BAT)陽性IgE型HSRとトリプターゼ増加が報告された。彼女は脱感作によって再投与が可能となった

  • 抗IgE抗体
    • Omalizumab(Xolair)
      • ヒトIgEに発現する受容体に対して結合する高親和性のヒト化抗体
      • アナフィラキシーの頻度は0.2%
        • トリプターゼは増加しておらず、抗体に対する特異的IgE抗体やIgG抗体も見つかっておらず、そのメカニズムは不明
        • 投与後1日経過してから発症した遅発性のアナフィラキシーも報告されている
        • 添付されているポリソルベートに対する反応も考えられている
      • 投与1−5日後に生じる血清病(type3)症状も報告されている
      • 投与部位局所反応は45%
        • 投与1時間で生じ、8日間程度で消失
      • 脱感作ができたケースも報告されている

  • 抗CD30抗体
    • Brentuximab vedotin(Adcertris)
      • キメラ型
      • 12%で悪寒、嘔気、呼吸困難など投与時反応が生じる
      • アナフィラキシーを生じた症例に対して脱感作が成功した症例も報告されている

  • 抗EGFR受容体抗体
    • Cetuximab(Erbitux)
      • IgG1キメラ型抗体
      • 初回投与で重度の即時型HSRを生じた症例の大半でα-1,3-がラクトースに対するIgE抗体が陽性
        • これはマダニに以前に噛まれていることと関連する
      • 治療前にトリプターゼ増加とCetuximabに対するIgE抗体が陽性である重症アナフィラキシーも報告されており、事前にCetuximabに対するIgE抗体をスクリーニングすることが有効かもしれない

  • 抗VEGF抗体
    • Bevacizumab(Avastin)
      • IgG1ヒト化抗体
      • 非特異的な皮疹や紅皮症を生じることがある
      • 硝子体内投与で遅発性の皮膚反応を呈した症例も報告されている
      • 静脈内投与で皮疹、浮腫など即時型HSRを呈した症例も報告されているが、脱感作も成功している

  • IL-6に対する抗体
    • Tocilizumab(アクテムラ)
      • IL-6受容体に結合するヒト化モノクローナル抗体製剤
      • アナフィラキシー症例では皮膚試験陽性となりうる
      • 脱感作も報告されている
      • CD4陽性T細胞と好酸球浸潤を伴う皮疹を呈した遅発型HSRも報告すレテいる

  • CCケモカイン受容体4に対する抗体
    • Mogamulizumab(Poteligeo)
      • IgG1ヒト化抗体
      • 71歳の女性で、T細胞白血病に対して使用した8回目の投与でSJSを発症した症例が報告されている

  • Epithelial Cell Adhesion Molecule/CD3 に対する抗体
    • Catumaxomab(Removab)
      • ラットとマウスのハイブリッド型、IgG2モノクローナル抗体製剤
      • cytokine storm型症状の報告あり


<どのtypeか特定するバイオマーカー>
  • type1
    • トリプターゼが増加
      • 反応が生じた30-120分時点で血中のトリプターゼを測定し、増加していれば2日以降に再び測定する
      • 正常範囲より増加、もしくはbaselineより20%以上かつ2 ng/mL以上増加していれば、肥満細胞が活性化していることを示唆する
      • 即時型HSRでも正常となる例があり、これは好塩基球を介したアナフィラキシーの場合である
    • 皮膚反応陽性
      • IgE型反応を疑う場合、被疑薬である抗体投与後2-4週間以内に行う
      • 投与濃度は下の通り
 
    • 好塩基球反応(BAT)陽性
      • 即時型HSRの際に有効
  • cytokine storm型
    • IL-1, IL-6, TNFαを測定する
  • type4
    • 皮内反応が遅発性に陽性化する


<HSRの際の対応>
  • エピネフリンの投与が遅れないことが重要
    • エピネフリンの反応が悪い際には、血管内volume不足やβ遮断薬の使用を疑い、補液とグルカゴンを使用する
    • ステロイドと抗ヒスタミン薬はエピネフリンの代わりにならない
  • 気管痙攣にはアルブテロール吸入
  • 投与局所部位反応には局所のリドカイン投与や冷却、ステロイド外用が有効


<脱感作>
  • 即時型HSRに対しては脱感作が有効かもしれない
  • まずは以下のアルゴリズムで脱感作を試みるべきか検討する


    • IgE介在性HSRでは脱感作が成功しやすいが、IgG型やcytokineでは重症度による
    • 脱感作方法の例は下の通り
      • 5.7時間かけて、3種類の溶解液を作成して、12段階を要する
      • 最初の溶解液に含まれる製剤は1/100、次は1/10、最後は最後は目標投与量からそれまでの投与量を差し引いて計算する
      • 最終段階に最も時間をかけて投与する
      • これで問題ない場合にも、成功は一過性のことがあるので、毎回同じプロトコールでそれ以後は投与する必要がある

      • 前投薬は最初のHSR重症度に準じて使用
        • アセチルサリチル酸、モンテルカスト、アセトアミノフェンは、flushing、気管痙攣、発熱に対してそれぞれ使用する
      • アナフィラキシーだった場合には、16段階/4種類の溶解液を使用する方法も報告されている
      • 脱感作中にHSRが再び生じることも30%の頻度であり、最終段階で最も多い
        • その際には中止する
        • 再び生じた場合には、当初のHSRより軽症のことが多いが、アナフィラキシーも生じうる
        • 16段階/4種類の溶解液を使用する方法に切り替えれば成功することもある
    • 皮下投与製剤の場合でも上記のような脱感作が有効なことがある

    2017年10月26日木曜日

    リウマチ膠原病疾患の治療、検査の歴史

    Gerd R. Burmester,  
    Nature Reviews Rheumatology 13443448 (2017)

    はじめに

    • リウマチ膠原病疾患は、T2Tの概念によって、非常に予後が改善された
      • RA, PsA, AS, GPA, SLEなど。
    • しかしながら、SSc, OA, 線維筋痛症などは有効な薬剤が未だ少ない
    • 今回は、これまでのリウマチ膠原病疾患の治療の歴史を振り返る


    治療

    <糖質コルチコイド>
    • 初めてRAに使用されたのは1948年であり、ブレークスルーを起こした
      • その2年後にノーベル賞を受賞
    • SLEの予後改善など、大きく治療に貢献した
    • しかしながら、様々な副作用もある

    <SSZ>
    • 1942年にsulfapyridineと5-amino salicylic acidを含むものとして開発
    • スルフォンアミドが抗菌作用、サリチル酸が鎮痛作用を有すると言われている
    • 現在は3剤併用療法(MTX, HCQとともに)に特に使用されるが、最も頻用されるのは脊椎関節炎の末梢関節病変だろう

    <MTX>
    • 1946年に初めてRAに使用された
    • 1980年代にはPsAにも使用し、皮膚病変によく効いた
    • 現在は、ステロイドどともにRAのアンカードラッグとも言われている
    • RA以外にも、多くのリウマチ膠原病疾患において、ステロイド減量効果を有する免疫抑制剤として使用されている
    • MTXが使用できるまでは、金製剤、SSZが唯一使用可能なcsDMARDsだった
    • その次に、LEFがMTX不応もしくは禁忌症例に使用されるようになった
      • この時代の治療は、治療の選択肢が少なく、薬剤の使用量も副作用なくすることが第一であったため、有効な治療ができなかった
      • そのため、副作用を増やすことなく有効性を上げるために、csDMARDsの併用が用いられるようになった
      • また、これらの治療で早期治療介入することで、大きく予後改善をもたらすことができるようになった

    <生物学的製剤>
    • 生物学的製剤によって、さらに大きくリウマチ膠原病疾患治療が発展した
    • TNFが治療ターゲットとして特定され、TNF阻害薬が開発された
      • さらにその後、TNF阻害薬は脊椎関節炎、乾癬、若年性特発性関節炎にも使用されるようになった
    • TNF阻害薬以外に、他の治療標的(IL-1, IL-6, IL-17, IL-12/23、B細胞、共刺激分子など)の阻害薬もリウマチ膠原病疾患に対して有効であることが判明してきた
    • これらの市場は1990年代には存在しなかったが、今や世界で€100 billion/年を超える市場に成長した
    • ここ数年で、JAK経路も治療標的とされ、RAに対して複数のRCTが組まれ、有効性や安全性が確認された
      • トファシチニブ、バリシチニブがRAに対してすでに承認されている

    <外科的治療>
    • 関節置換術はOAに対してよく行われる手術である
      • RAに対しては薬物治療が発展し、頻度が減ってきた


    診断

    <リウマチ因子、ACPA>
    • 1949年、H.M.Roseがリウマチ因子を報告した
      • しかしながら、1937年にErik Waalerによって最初に報告されていた
    • リウマチ因子は、当初、羊の赤血球を使用して検査していたが、今は様々なグロブリンの愛想タイプを特定できる比濁分析法やELISAを利用している
    • 1964年には、Nienhuisらが、舌下の粘膜細胞にあるケラトヒアリン顆粒を認識する特異的な抗体であるanti-perinuclear factor (APF) を報告した
      • 15年後に、RAに特異的で、食道粘膜のケラチンや毛嚢に反応する、抗ケラチン抗体(AKA)を発見した
    • 1993年にフィラグリンが RA患者の血清で発見され、APFやAKAは(pro)フィラグリンに反応することが判明し、改めて抗フィラグリン抗体と呼ばれるようになった
    • ブレークスルーだったのは、peptidyl-arginine deiminaseの発見であった
      • これはフィラグリンやビメンチンなどを含む分子のシトルリン化に関わっており、シトルリン化されたそれらは自己免疫原性を有するようになる。これがいわゆるanti-citrullinated protein antibodies (ACPAs)である
      • これにより、CCP抗体などの新しい検査の開発に繋がった
    • その後わかったこととして、カルバミル化やアセチル化などもRAの自己免疫原性をもたらし、RA発症に関わっていると言われている


    <抗核抗体、ANCA>
    • Hargravesらによって1948年に発見されたLE細胞は、SLEの診断に関して重要な発見だった
    • Miescherは、ヒト白血球に対する免疫をつけたウサギの血清がLE細胞を産生し、子牛の胸腺細胞由来の核がLE細胞現象を消失させることを発見した
      • この"LE因子"を、抗核抗体と呼んだ。その後、DNAが抗原であること特定した。
    • ANCAは、1985年にvan der Woudeらによって発見され、血管炎の診断に大きく貢献した

    <自己抗体以外>
    • ASに対して、HLA-B27が関与していることは1973年に発見されて以来、リウマチ疾患に関する遺伝的研究が進んだ

    股関節・膝関節手術の周術期における、DMARDs使用に関するガイドライン

    Arthritis Care & Research Vol. 69, No. 8, August 2017, pp 1111–1124

    本文中の図やグラフは元論文より引用しております。
    2017 ACR/AAHKSによる、股関節・膝関節手術の周術期における、DMARDs使用に関するガイドライン




    2017年10月25日水曜日

    高安病患者における妊娠経過について:ノルウェーの集団研究より


    Arthritis Care & Research
    Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1384–1390 

    本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

    背景

    • 高安病は、大動脈とその第一分枝を病変とする全身性血管炎である
    • 潜在的に進行し、非特異的な症状を呈するので、診断が遅れやすい
      • 血管炎により、血管狭窄・閉塞、血管拡張、動脈瘤が生じる
      • 臨床的には四肢末梢循環不全、慢性高血圧、脳血管障害、心血管障害が生じる
    • 疫学
      • スカンジナビアのコホートでは、高安病の発症率は1年あたり 0.4-2/100万人と報告されている
      • ノルウェイでの有病率は25/100万人だった
      • 妊娠可能年齢の女性に発症するのが典型的なので、妊娠に及ぼす影響が重要である
      • 既報では、妊娠が疾患活動性に影響することはなかったが、妊娠合併症である高血圧・子癇・早産・流産・子宮内胎児発育不良に関連するといわれている
        • 妊娠合併症の頻度は報告によってまちまちであり、日本・北米・ヨーロッパからの報告では妊娠予後は良好だったが、インドからの報告では不良だった
        • フランスの多施設研究では、高安病患者において53%でなんらかの妊娠合併症を発症した
    • 上記のような専門施設からの報告では一般人口と比較してデータを出すことが難しく、これまで患者申告による報告がなかったので、今回の研究ではそれに関して調べた

    方法
    • 2013年、ノルウェイの南東に在住する全ての高安病患者を含むコホートを設立した
      • 組み込み基準はACR分類基準もしくは石川診断基準を満たす

    ※高安大動脈炎分類基準:ACR1990
    <項目>3項目以上で分類する。
    1. 高安大動脈炎と関連する症状や所見が40歳以下で出現
    2. 一つ以上の四肢、特に上肢で、運動時に筋肉の疲労感や不快感が増悪する
    3. 片側または両側上腕動脈の脈動の低下
    4. 両上肢間で収縮期血圧が10mmHg以上差がある
    5. 片側あるいは両側の鎖骨下動脈、あるいは腹部大動脈で血管雑音を聴取する
    6. 大動脈、主要分枝、四肢の中枢の大血管で画像上の狭窄や閉塞を認める。ただし動脈硬化、線維筋性異形成などによるものではない




      • 人数:78人(女性68人)
      • 妊娠・出産回数、妊娠結果などについては質問票を利用。妊娠合併症はカルテも利用。
      • 画像検査によって以下の通り分類
        • : 大動脈弓分枝のみ
        • a:上行大動脈、大動脈弓とその分枝
        • b:Ⅱa+胸部下行大動脈
        • 胸部下行大動脈、腹部大動脈、腎動脈、あるいはそれらの組み合わせ
        • 腹部大動脈、腎動脈、あるいはその両方
        • 全大動脈とその分枝、Ⅱb


    • 疾患活動性についてはNIHの基準を利用
      • 2つ以上を活動性ありと診断
        • 全身症状
        • CRP or ESR上昇
        • 血管病変による虚血症状(四肢の破行、脈拍欠失、bruits、血圧の左右さ、血管炎による疼痛)
        • 画像上での新規血管病変の出現
    • 寛解の定義
      • 臨床所見・検査所見の正常化
      • 新規血管病変なし
    • 寛解維持の定義
      • PSL < 10mg/dayにて、上記寛解を少なくとも6ヶ月間維持している

    結果
    <Characteristics of this cohort>
    • 上記コホートにおける女性68人のうち、58人(88%)から同意をえて解析(table1)
      • 平均発症年齢:30.3歳
      • 平均フォロー期間:11.7年
      • 妊娠歴あり:44人(76%)
        • 計妊娠回数:110回
          • 発症前の妊娠:73回
          • 発症後の妊娠:37回


      • 妊娠した女性(44人)のうち、出産した人数:41人
        • 出生した新生児の数:76人
        • 2回以上出産した人数:27人(47%)
        • 高安病発症後に出産した人数:17人
          • 出生した新生児の数:25人
          • これらのうち、2000年以後に出産:79%
          • このうち4例は、発症後に生まれ、診断は出産後だった
            • 1人は海外で妊娠、出産した。重症子癇、脳梗塞を起こした。
            • もう1人は35週で早産だった。
            • もう1人は妊娠経過中にCRP増加、血管痛あり第3半期で診断された。27週で緊急で帝王切開した。
        • 早産、過期産、中絶の頻度は、高安病発症前後の妊娠で差はなかった
          • しかしながら、帝王切開の頻度は高安病発症後の妊娠で有意に多かった


      <妊娠前後の疾患活動性について>

      • 高安病発症後に妊娠し、無事に出産した17例のうち、14例で妊娠前の疾患活動性のデータを得られた
        • 寛解でなかった人(NIH>0):10人(60%)
        • 無治療で寛解を維持(>6ヶ月間):3人(18%)
        • 寛解(<6ヶ月間):1人(6%)
      • 高安病発症後に妊娠した計23人(計24妊娠)のうち、妊娠前6ヶ月以内のL/Dについて
        • CRP増加 or ESR増加:15妊娠(63%)
        • NIH ≧ 2:14妊娠(58%)
      • 高安病発症後に妊娠した計23人の、研究期間中の最終フォロー時点での疾患活動性
        • 寛解:17人(74%)
        • 寛解を維持:14人(61%)
          • これらは、高安病発症後に妊娠していなかった人(それぞれ53%, 28%)よりも有意に高い値(p=0.02, OR 4; 95% CI 1.2-12.7)

      <妊娠をした人としていない人の違い(table3)>
      • 妊娠しなかった人の14例のうち、2例は発症時点で50歳以上だった
        • 残りの妊娠しなかった12例について
          • 6例(50%)は広範な血管病変(type Ⅴ)を有していた
            • 妊娠例のうち、type Ⅴ症例は4/16(25%)だった
          • 5例(42%)は腎動脈狭窄を認めた
            • 妊娠例のうち、腎動脈狭窄症例は1/16(6%)だった
          • IFXでの治療例が67%と多かった
            • 妊娠例のうち、IFX治療症例は19%だった
          • 全例でDMARDs, ステロイド使用していた
            • 妊娠例のうち、使用していた割合はそれぞれ56%, 75%



      <妊娠前・中・後の治療について>

      • 高安病発症後に妊娠して出産した17例のうち、
        • 妊娠中にPSL使用:8例(47%)
          • PSL>10mg/day:2例
          • AZA併用:1例
        • 妊娠前、妊娠中にIFX使用:1例
          • その症例では2人出生し、そのうち1人は早産だった(30週)。そして、2人出生する前に、PSL+AZA治療中で2人流産している。
        • 妊娠前のみIFX使用:1例
          • その症例では1人出生し、35週で早産している
        • 上記IFX使用症例は、いずれも妊娠前・妊娠中の疾患活動性は高かった
      • 妊娠前における治療薬剤
        • PSL:83%
        • DMARDs:57%
        • 生物学的製剤:34%
      • 妊娠を経験した人における、研究期間中の最終フォロー時点における治療薬剤
        • PSL:61%
        • DMARDs:39%
        • 生物学的製剤:17%
      • 妊娠しなかった人における、研究期間中の最終フォロー時点における治療薬剤
        • PSL:83%
        • DMARDs:74%
        • 生物学的製剤:46%


      <一般集団との比較(table4)>

      • 23人妊娠し、そのうち17人(74%)が出産を経験した
        • 17人のうちMRBNのデータが利用可能な16人を、一般集団のレジストリーから年齢でマッチさせたコントロールを抽出して比較
          • 妊娠し、無事に出生した割合:高安病患者群で有意に低い
          • 帝王切開率:高安病患者群で有意に高い
            • 帝王切開したかどうかは、罹患年数・疾患活動性、治療内容とは関連なかった
            • 帝王切開した症例のうち、妊娠前の疾患活動性のデータが判明した3例において、全ての症例で疾患活動性が高かった
          • 高安病患者群において、死産なし、胎児発育不全なし
          • 平均出産週数:高安病患者群で37.5週と有意に短かった
          • Apgar score:有意差なし(9.5 vs. 9.3)
            • 高安病患者内において、Apgar score < 7 の出産例はなかった
          • NICU入室症例も有意差なし
          • 奇形を有する新生児の割合も有意差なし(6.7% vs. 3.3%, p=0.5)




      <妊娠の際における患者の精神状態について(table5)>

      • 少なくとも1つ以上の不安なことがあった患者の割合:80%




      まとめ
      • 高安病患者の妊娠経過は比較的良好だった
        • 一般人口と比較して
          • 2週間ほど出生週数が短かった
            • しかしながら、子宮内胎児発育不全症例はいなかった
          • 出生率は低い
            • 1.5 vs. 2.1
          • 母子ともに重篤な合併症は増えない
        • 日本で報告されたものを支持する結果だった
          •  Hidaka N, Yamanaka Y, Fujita Y, Fukushima K, Wake N. Clinical manifestations of pregnancy in patients with Takayasu arteritis: experience from a single tertiary center. Arch Gynecol Obstet 2012;285:377–85. 
        • しかしながら、フランスからの既報では、半数において母子ともに合併症を発症すると報告されていた
          • この報告では、半数が妊娠中に診断された症例であ理、半数以上がアフリカ人であることも影響しているだろう
          • 実際に、子癇前症・子癇・IUGRの頻度に関しては、今回の結果と同等だった
        • インドからの既報では、高血圧や母体死亡などの割合が多かった
          • この報告では、半数において腎動脈狭窄を認めていた
            • 今回の報告では、妊娠例で腎動脈狭窄を認めたのは1例のみ。この症例では、妊娠中に発症し、重症の子癇と脳梗塞を発症したが、無事に出生した
        • これらを踏まえると、高安動脈炎のtypeと、妊娠前・中・後のいつ診断されたかによって妊娠予後が変わると考えられる
          • 妊娠前に診断されている場合には、専門医による密な経過フォローが可能である
      • 帝王切開の割合は高かったが、その半数では特に妊娠合併症が明らかでなかったにも関わらず施行された
        • このことからは、医療者側が血圧管理などの面から帝王切開を選択したものと考えられる
      • 高安病患者のうち、60%が妊娠前に疾患活動性を有していた
        • 妊娠症例では、74%が妊娠前に寛解に入っており、61%が寛解を維持していた。
          • 一方で、妊娠しなかった症例では、寛解していたのは28%のみだった。かつ、DMARDs、生物学的製剤の使用割合も妊娠した患者群よりも多かった。
      • 今回の症例のうち、1/3の割合で、腎動脈狭窄、冠動脈狭窄、肺動脈狭窄、疾患活動性が高いこと、生物学的製剤を使用していることで医師から妊娠を控えるよう言われていた

      2017年10月24日火曜日

      妊娠経過中におけるRA疾患活動性低下と関連する因子:PSL使用なし、血清反応陰性


      Arthritis Care & Research
      Vol. 69, No. 9, September 2017, pp 1297–1303


      本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

      背景

      • 妊娠では、40-70%のRA患者がは疾患活動性の低下を経験する
        • 16-27%では寛解するものの、50%では第三期ににおいて疾患活動性が高いままである
      • 妊娠中の母体RA活動性と妊娠予後は負の相関があり、低疾患活動性を維持することが重要である
      • 多くのDMARDsは妊娠中は使用できず、主にはPSL, SASP, HCQであり、最近ではTNF阻害薬も増えてきた
        • 副作用の観点からも、可能な限り妊娠中の薬剤は使用を控えたい
        • TNF阻害薬は、第1半期の安全性が懸念され、多くは妊娠が判明したら中止される
          • 胎児のFc受容体への親和性が高いTNF阻害薬は、第2・3半期に胎児へ移行し、母体より血中濃度が高くなるため、一部の専門家は妊娠20週以前に中止した方がいいという
        • PSLは早産、妊娠高血圧、妊娠糖尿病、前期破水に関連があると言われている
        • しかしながら、これら薬剤の使用を控えることが、活動性再燃のリスクにも繋がるため、慎重な漸減が必要である
      • 今回の研究では、妊娠初期におけるどういった要素が第3半期におけるRA低疾患活動性に関連があるか調べた
        • 単変量解析を行った既報では、自己抗体の有無、DAS28-CRP、PSLの使用が挙げられていた。しかしながら、これらを多変量解析を行った研究はまだなく、SASPの使用、出産回数、過去のMTX使用歴、erosionの有無、RA罹患期間などを含めて多変量解析を行った

      方法
      • the Pregnancy-Induced Amelioration of Rheumatoid Arthritis(PARA)studyという、妊娠中におけるRAの疾患活動性のデータを集めたオランダの前向きコホートを解析した
      • 対象
        • 1987分類基準を満たすRA患者
      • 2002年〜2008年にかけて、妊娠希望もしくはすでに妊娠中(第1半期)の475人のRA患者がスクリーニングされ、369人がRAPA studyに組み込まれた
        • そのうち205人が1回以上妊娠した
        • 12週以内に流産した、DAS28-CRPが欠損している患者は除外
          • 168人(190妊娠)が解析された
            • そのうち110人が妊娠前DAS28-CRPのデータあり

      結果

      • 解析された168人(190妊娠)のcharacteristics(table1)
        • 第1半期における平均年齢:32.2歳
        • 平均罹患期間:4.8年
        • RF or ACPA陽性:75.3%
          • RF陽性:70%
          • ACPA陽性:61.1%
        • seronegative(RF, ACPA陰性)
          • 24.7%
        • erosionあり:62.1%
        • 平均DAS28-CRP
          • 第1半期:3.6 ± 1.2 
            • 低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2):40.5%
            • 寛解(DAS28-CRP < 2.6):22.6%
          • 第3半期:3.3 ± 1.2
            • 低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2):50%
            • 寛解(DAS28-CRP < 2.6):30.5%
          • 産後12週目:3.5 ± 1.1
        • 治療
          • PSL使用:42.1%
            • 第1半期:36.8%
            • 第3半期:30.5%
            • 平均使用量:7.5mg/day
          • SASP:32.6%
            • 第1半期:30.0%
            • 第3半期:26.8%
            • 平均使用量:2000mg/day
          • HCQ:3.2%
            • 第1半期:2.6%
            • 第3半期:2.1%
            • 平均使用量:200mg/day
          • drug-free
            • 第1半期:44.7%(85人)
            • 全妊娠期間:39.0%(74人)
              • 第1半期の後から治療を開始した11人は、6人PSL、5人SASP
          • PSLを使用していた患者の平均DAS28-CRP
            • 第1半期:4.8
            • 第3半期:4.6
            • 低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)を達成していた患者は皆無
          • 過去にMTX使用歴あり:61.1%
            • 全例、妊娠が判明した時点で中止
          • 過去にbDMARDs使用歴あり:17.4%
            • 全例、妊娠が判明した時点で中止



        • 第3半期において低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)と関連していた因子(table2)
          • 単変量解析で以下は有意に負の関連あり
            • 第1半期においてDAS28-CRP ≧ 3.2
            • 自己抗体陽性
            • 第1半期においてPSL使用
          • 多変量解析で以下は有意に負の関連あり
            • 第1半期においてDAS28-CRP ≧ 3.2
        • 第3半期において寛解(DAS28-CRP < 2.6)と関連していた因子(table2)
          • 多変量解析で以下は有意に負の関連あり
            • 第1半期においてDAS28-CRP ≧ 3.2
            • 自己抗体陽性





        • 第1半期における疾患活動性で、低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)である群とそうでない群(DAS28-CRP ≧ 3.2)に分けた層別化解析(table3)
          • 第1半期において低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)だった患者群
            • 第1半期におけるPSL使用、自己抗体陽性:いずれも第3半期における低疾患活動性達成とは関連なし
          • 第1半期において低疾患活動性でなかった(DAS28-CRP ≧ 3.2)だった患者群
            • 第1半期におけるPSL使用第3半期における低疾患活動性達成の関連あり
            • seronegative第3半期における低疾患活動性達成の関連あり



        • 第1半期において低疾患活動性でなかった(DAS28-CRP ≧ 3.2)だった患者群を、さらに第3半期における疾患活動性で低疾患活動性(DAS28-CRP < 3.2)の群と寛解(DAS28-CRP < 2.6)の群に分けて層別化解析(table4)
          • 第1半期におけるPSL使用:低疾患活動性の群のみで関連あり
          • seronegativeであること:寛解の群のみで関連あり


        • 第3半期において低疾患活動性を達成したのは95人
          • 第1半期において低疾患活動性だった77人のうち、74%が第3半期においても低疾患活動性を維持
          • 第1半期において低疾患活動性じゃなかった人のうち、第3半期において低疾患活動性を達成した割合が最も高かった患者群は、第1半期ににおいてPSLを使用していなかった患者

        • 第3半期において寛解達成したのは58人
          • 第1半期において低疾患活動性だった77人のうち、第3半期において寛解に達したのは45人(58.4%)
          • 第1半期において低疾患活動性じゃなかった人のうち、第3半期において寛解に達したのは5人のみ(5.5%)
            • 第1半期において低疾患活動性じゃなかったがseronegativeだった22人のうち8人(36.4%)が第3半期において寛解に達した

        まとめ
        • 以下の項目が、第3半期において低疾患活動性を達成することと関連していた
          • PSLを使用していない
          • 血清反応陰性
            • 以下のことは関連しなかった
              • 第1半期におけるSASPの使用
              • 出産回数
              • 過去のMTX使用
              • erosionの有無
              • RA罹患期間は有意に関連しなかった
              • 胎児の性別(データなし)
        • 母と胎児の遺伝因子が妊娠期間中のRA改善に影響を与えることが既報で報告されているが、実臨床で遺伝子を調べていないのであまり有用ではない
        • 妊娠経過におけるDAS28-CRPの低下は、もともと疾患活動性が高いほうが低下の程度が大きいことが既報で示されていたが、そういった患者群で実際に低疾患活動性もしくは寛解を達成できる割合は少なかった
        • PSLを使用している患者は、第1半期における疾患活動性が高かった(3.9 vs. 3.4)
          • しかしながら、第1半期において高疾患活動性(DAS28-CRP > 5.1)だった18人のうち、10人はPSL使用し、8人は使用しなかった
            • PSLを使用した10人のうち、8人は第3半期においても高疾患活動性だった
            • PSLを使用しなかった8人のうち、第3半期においても高疾患活動性だったのは4人
              • これらの結果を見ると、PSLそのものが妊娠経過におけるRA改善を妨げている可能性も否定できない
        • 今回の結果では、妊娠中に治療の漸減・中止を考慮するのは、すでに寛解もしくは低疾患活動性にある患者のみではなく、高疾患活動性でも血清反応陰性でありPSLを使用していない患者でも考慮されるかもしれない
          • 自己抗体陽性でPSLを内服している高疾患活動性の患者は、妊娠経過中は治療を弱めないほうがいいだろう
          • しかしながら、RCTで比較したわけではないので、推奨はできない
        • limitation
          • 妊娠経過中にbDMARDsを使用している患者はいない
          • 第1半期においてPSLを使用していた人がPSLを中断して第3半期の疾患活動性を高くし、PSLの使用が負の関連として検出された可能性は否定できない
            • 第1半期においてPSLを使用しており第3半期では中止していたのは12人であり、このうち1例のみ、第1半期で低疾患活動性で第3半期で疾患活動性が増加している
            • また、第3半期において第1半期よりPSL使用量が減っていた14例においては、第3半期において疾患活動性が増加していたのは2人のみだったので、上記limitationは当てはまらないだろう

        2017年10月22日日曜日

        csDMARDs抵抗性のPsA患者に対するトファシチニブの有効性:vs. プラセボ(vs. ADA)


        n engl j med 377;16 nejm.org October 19, 2017 

        本文中の図やグラフは元論文より引用しております。

        背景

        • 乾癬性関節炎(PsA)は、乾癬患者のうち、6 - 42% で生じ、末梢性関節炎、腱、靱帯、体軸を病変とする
          • ガイドラインでは、MTXを含むcsDMARDsが第一選択で、それらが不応の場合にはTNF阻害剤、IL-12/23阻害剤、IL-17阻害剤などのbDMARDsもしくはapremilast が推奨されている
        • トファシチニブは経口のJAK阻害薬であり、PsA患者の病態に関与していると思われるcommon gamma chainのようなシグナルに関与する
        • 今回はthe Oral Psoriatic Arthritis Trial (OPAL) phase3試験であり、ADAと比較してTofaの有効性・安全性、構造変化を12ヶ月間の観察期間で調べた

        方法

        • 対象
          • 18歳以上
          • 6ヶ月以上前にPsAと診断され、CASPAR基準を満たす
          • 少なくともcsDMARDsに治療抵抗性
          • TNF阻害剤 naive 
        • 試験デザイン
          • 多国間の126施設で実施
          • 2014/1-2015/12
          • 観察期間:12ヶ月間
          • ランダムに割付(2:2:2:1:1)
            • Tofa 5mg 1日2回 
            • Tofa 10mg 1日2回 
            • adalimumab(ADA) 40mg s.c. 2週間毎
            • placebo 3ヶ月間 → Tofa 5mg 1日2回 
            • placebo 3ヶ月間 → Tofa 10mg 1日2回 
          • 全例、試験期間中はcsDMARDsを単剤で維持量で使用
        • primary endpoint
          • 3ヶ月時点でのACR20達成率
          • 3ヶ月時点でのbaselineからのΔHAQ-DI


        結果
        • 422人が割り付けられ、373人が治療を完遂(figure1)


        • baseline characteristics(table1)
          • 平均LEI, SJC、MTX使用率:全てADA群で低い傾向
          • ステロイド使用率:Tofa10mgで低い傾向




        • 有効性(table2, figure2)
          • 3ヶ月時点でのACR20達成率
            • Tofa 5mg群:50%
            • Tofa 10mg群:61%
            • ADA群:52%
            • placebo群:33%
              • Tofa群はいずれもplaceboと比較して有意
          • 3ヶ月時点でのbaselineからのΔHAQ-DI
            • Tofa 5mg群:-0.35
            • Tofa 10mg群:-0.40
            • ADA群:-0.38
            • placebo群:-0.18
              • Tofa群はいずれもplaceboと比較して有意
          • 12ヶ月時点でのTofa 5mg群、Tofa 10mg群、ADA群のACR20, ΔHAQ-DIは同等
          • week2時点でTofa群、ADA群はplacebo群と比較して有意にACR20達成率が高い




        • HAQ-DIが臨床的に有意な改善を意味する0.35以上の改善をbaselineから3ヶ月時点で達成できた割合
          • Tofa 5mg群:53%
          • Tofa 10mg群:55%
          • ADA群:51%
          • placebo群:31%


        • 3ヶ月時点でのACR50達成率(table2)
          • Tofa 5mg群:28%
          • Tofa 10mg群:40%
          • ADA群:33%
          • placebo群:10%
            • Tofa群はいずれもplace群と比較して有意
        • 3ヶ月時点でのACR70達成率
          • Tofa 5mg群:17%
          • Tofa 10mg群:14%
          • ADA群:19%
          • placebo群:5%
            • Tofa群はいずれもplace群と比較して有意

        • 3ヶ月時点でのPASI75達成率は、Tofa両群でplacebo群と比較して有意
        • 3ヶ月時点でのLEI、Dactylitis Severity Scoreは、Tofa 10mg群でplacebo群と比較して有意
        • 3ヶ月時点でのFACIT-F, SF-36は、Tofa両群でplacebo群と比較して有意



        • radiographic progressionについて
          • 全ての群でわずかに進行を認めた
          • しかしながら、12ヶ月時点で、全ての群において、radiographic non-progressionの定義であるΔmTSS ≦ 0.5だった割合は91-98%だった

        • 安全性
          • 3ヶ月間における有害事象の頻度
            • Tofa 5mg群:39%
            • Tofa 10mg群:45%
            • ADA群:46%
            • placebo群:35%
          • 3ヶ月間における重度有害事象の頻度
            • Tofa 5mg群:3%
            • Tofa 10mg群:1%
            • ADA群:1%
            • placebo群:1%
          • 12ヶ月間における重度有害事象の頻度(有害事象によって治療を中断した割合)
            • Tofa 5mg群:7%(6%)
            • Tofa 10mg群:4%(3%)
            • ADA群:8%(4%)
          • placebo→Tofa 5mgスイッチ群で4ヶ月時点(変更後1ヶ月)で心血管合併症により死亡
          • 重症感染症は計4例
            • そのうち3例はTofa群
              • インフルエンザ、虫垂炎、肺炎
            • もう1例はADA群
              • 単純ヘルペス、streptococcal pyoderma 
          • 帯状疱疹は4例、全てTofa群
          • 悪性腫瘍は4例(膀胱癌:day1、外陰部癌:day11、浸潤性乳管癌:day232、基底細胞癌:day103)、全てTofa群


          • 最も頻度の多い有害事象は上気道感染症

          • placebo群以外で好中球減少、LDL増加、HDL増加あり
            • 以下はなし
              • リンパ球減少症(0.5×10cells/L)
              • 好中球減少症(1.0×10cells per/L)
              • ΔHb低下 ≧ 0.8g/dL 
          • 正常上限3倍以上のAST増加
            • Tofa群:5例
            • ADA群:3例
          • 正常上限3倍以上のALT増加
            • Tofa群:5例
            • ADA群:9例


        まとめ
        • トファシチニブが、csDMARDsに治療抵抗性のPsAに対して、ADAと同等の有効性があることを示した
          • しかしながら、今回の試験ではADAとトファシチニブを比較するようなデザインではなく、そういった解析も行なっていない
        • トファシチニブの有効性は、5mg 1日2回でも10mg 1日2回でも、PsAの末梢性関節炎、皮膚病変、腱付着部炎、指尖炎に対してあまり変わらなかった

        トファシチニブ開始後のリンパ球数、リンパ球サブセットの推移と感染症の関連について

        Evaluation of the Short‐, Mid‐, and Long‐Term Effects of Tofacitinib on Lymphocytes in Patients With Rheumatoid Arthritis Ronald van Voll...